小児痙縮・ジストニア診療ガイドライン2023診断と治療社 | 書籍詳細:小児痙縮・ジストニア診療ガイドライン2023
日本小児神経学会 監修
小児痙縮・ジストニア診療ガイドライン策定ワーキンググループ 編集
初版 B5判 並製 168頁 2024年02月01日発行
ISBN9784787826190
定価:3,850円(本体価格3,500円+税)冊
ボツリヌス治療,脊髄後根切断術,バクロフェン髄腔内投与,深部脳刺激療法など,痙縮・ジストニアの治療法がわが国でも徐々に普及している.適切な時期に適切な治療を導入し,経過に応じて他の治療へ移行することで,運動障害の回復がいっそう促進され,また骨格変形や合併症を最小限に抑制できる可能性がある.本ガイドラインは,患児の特性や病態,罹病範囲や重症度に応じて,各専門医らが協力・連携して治療にあたれるよう,その共通の指針となるべく策定された.
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目次
発刊にあたって
序文
Introduction
小児痙縮・ジストニア診療ガイドライン2023 作成組織
略語一覧
ガイドラインサマリー
小児痙縮・ジストニアのおもな治療アルゴリズム
第1章 痙縮とジストニア
1-1 小児の筋緊張亢進の種類
1-2 痙縮の定義
1-3 ジストニアの定義
1-4 原因不明の痙縮・ジストニアに行うべき検査
第2章 脳性麻痺
2-1 脳性麻痺の定義
2-2 脳性麻痺のおもな病型分類
2-3 脳性麻痺の重症度分類
第3章 経口治療薬
CQ3-1 脳性麻痺,痙縮・ジストニアの治療において,経口筋弛緩薬はどのような病型・重症度に推奨されるか?
CQ3-2 どのような痙縮に経口筋弛緩薬が推奨されるか?
CQ3-3 どのようなジストニアに経口筋弛緩薬が推奨されるか?
CQ3-4 ジアゼパムの効果と副作用は?
CQ3-5 チザニジンの効果と副作用は?
CQ3-6 ダントロレンナトリウムの効果と副作用は?
CQ3-7 バクロフェンの効果と副作用は?
CQ3-8 トリヘキシフェニジルの効果と副作用は?
CQ3-9 レボドパはどのようなジストニアに有効か?
CQ3-10 多剤併用は有効か?
CQ3-11 経口筋弛緩薬以外に,効果が期待できる薬剤は?
第4章 ボツリヌス治療
CQ4-1 脳性麻痺,小児痙縮・ジストニアの治療において,ボツリヌス治療はどのような病型・重症度に推奨されるか?
CQ4-2 ボツリヌス治療は何歳から治療できるか?
CQ4-3 ボツリヌス治療はいつまで続けられるか?
CQ4-4 ボツリヌス治療は軽症の脳性麻痺に推奨されるか?
CQ4-5 ボツリヌス治療は重症の脳性麻痺に推奨されるか?
CQ4-6 ボツリヌス治療中のモニターは有用か?
第5章 バクロフェン髄腔内投与療法
CQ5-1 脳性麻痺,痙縮・ジストニアの治療において,バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法はどのような病型・重症度に推奨されるか?
CQ5-2 バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法は,何歳から治療できるか?
CQ5-3 バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法は,どのような痙縮に推奨されるか?
CQ5-4 バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法は,どのようなジストニアに推奨されるか?
CQ5-5 バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法は,どのような合併症あるいは副作用があるか?
第6章 脊髄後根切断術
CQ6-1 脳性麻痺,痙縮の治療において,脊髄後根切断術はどのような病型・重症度に推奨されるか?
CQ6-2 脊髄後根切断術は何歳から治療できるのか?
CQ6-3 脊髄後根切断術は,どのような痙縮に推奨されるか?
第7章 定位脳手術
CQ7-1 小児ジストニアの治療において,定位脳手術はどのような病型・重症度に推奨されるか?
CQ7-2 小児の二次性ジストニアの治療において,定位脳手術は推奨されるか?
CQ7-3 遺伝性(一次性)ジストニアの治療において,定位脳手術は推奨されるか?
CQ7-4 小児ジストニアに対する定位脳手術は何歳から治療できるか?
第8章 整形外科手術
CQ8-1 脳性麻痺,(小児)痙縮・ジストニアの治療において,整形外科手術はどのような変形・拘縮に推奨されるか?
CQ8-2 歩行改善のため,下肢の整形外科手術はいつ行うべきか?
CQ8-3 下肢の拘縮・変形の改善のため,整形外科手術はいつ行うべきか?
CQ8-4 股関節亜脱臼のため,整形外科手術はいつ行うべきか?
CQ8-5 上肢機能改善に手術療法は推奨されるか?
CQ8-6 脊柱変形に対する手術療法は推奨されるか?
付録
パブリックコメント・外部評価への返答
公開前評価への対応
文献スクリーニング
索引
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序文
発刊にあたって
日本小児神経学会は小児神経疾患の診療における標準化を目指しており,2011年にガイドライン統括委員会を発足させ,今日まで各種診療ガイドラインの策定に努めてまいりました.本ガイドラインは,日本小児神経学会「小児痙縮・ジストニア診療ガイドライン策定ワーキンググループ」によって原案が作成され,本学会員からのパブリックコメント,日本リハビリテーション学会,日本小児整形外科学会,日本小児神経外科学会による外部評価,さらに日本医療機能評価機構EBM普及推進事業によるAGREE II評価を経て発刊に至りました.本ガイドライン策定にご尽力されました本ワーキンググループ委員・アドバイザーならびにご協力いただきました関連学会,小児神経学会会員の皆様には,心より感謝申し上げます.
脳性麻痺はもとより,特に乳幼児期に発症した中枢神経障害による運動麻痺においては,生涯にわたる痙縮やジストニア・固縮による異常姿勢によって,日常生活活動や生活の質の低下のみならず,様々な合併症をみます.近年,痙縮やジストニアを顕著に軽減することができるボツリヌス治療,バクロフェン髄腔内投与,脊髄後根切断術,淡蒼球内節脳深部刺激療法が国内でも普及しつつあります.適切な時期に,病状にあった適切な治療を導入し,経過に応じて他の治療へ移行することができるようになりました.今後は,運動障害の回復がいっそう促進され,また骨格変形や合併症を最小限に抑制できる可能性が期待できます.
本ガイドラインで示された治療選択は画一的なものではなく,個々の患児の特性や地域の医療水準の状況を念頭において行わなければならず,推奨は参考にすぎません.さらに重要な点として,本ガイドラインは医療の質の評価,医事紛争や医療訴訟などの判断基準を示すものではないため,医療裁判に本ガイドラインを用いることは認めていません.
本ガイドラインが,小児リハビリテーションを担当する本学会員や小児科医,リハビリテーション科医と療法士,小児整形外科医,小児脳神経外科医の皆様にとって,役立つものであることを願っています.本ガイドラインをご活用いただき,皆様からのフィードバックをいただくことにより,今後の改訂に役立てて参りたいと思います.
2023年12月
日本小児神経学会
理事長 加藤 光広
ガイドライン統括委員会担当理事 前垣 義弘
ガイドライン統括委員会前委員長 福田冬季子
ガイドライン統括委員会委員長 柏木 充
序文
かつて中枢性運動障害をもつ小児において,それに随伴する痙縮やジストニアによる異常姿勢に対する治療の選択肢はあまりなく,局所的には装具療法,全身的には経口筋弛緩薬が主流でした.整形外科手術やフェノール神経ブロックなども多用され,一部の症状は改善されましたが,もっと早い時期からさらに効果的に治療できる手段が渇望されていました.
2000年代になり,ボツリヌス治療,脊髄後根切断術,バクロフェン髄腔内投与,深部脳刺激療法などがわが国でも徐々に普及されはじめました.これらの治療は,痙縮やジストニアを劇的に軽減することができ,脳性麻痺などの予後は大きく改善されるようになりました.軽症の患児においては,上肢機能・立位・歩行機能の発達を大幅に促進できるようになりました.また,重症の患児においては,安定した姿勢保持の獲得,骨格変形の進行抑制や疼痛の軽減,着替えなどの介護負担を大幅に軽減できるようになりました.
患児それぞれの特性や病態,罹病範囲や重症度に応じて,これらの新たな治療を適切に選択,組み合わせて最適な治療を行うためには,神経小児科医,小児整形外科医,リハビリテーション科医と療法士,小児脳神経外科医らが協力・連携することが極めて重要です.そのためにはエビデンスに基づいた治療アルゴリズム・診療ガイドラインが活用され,患児にかかわる各科の先生方が共通の指針をもって,診療に携われることが望まれます.本ガイドラインは,このような責務にできるだけ応えるべく策定されております.
本ガイドライン策定ワーキンググループの委員・アドバイザーは,小児神経学会会員のみならず,リハビリテーション科医,小児整形外科医,小児脳神経外科医にも参画していただきました.また,本ガイドライン(案)は,日本小児神経学会会員からのパブリックコメントに加え,外部評価として日本リハビリテーション学会,日本小児整形外科学会,日本小児神経外科学会からも貴重なご意見を頂き,丁寧に修正いたしました.さらには,本学会ガイドライン統括委員会および本学会事務局,診断と治療社の担当者,日本医療機能評価機構EBM普及推進事業の担当者の皆様から多大なご支援を頂きました.すべての皆様に,心から深謝し,御礼を申し上げます.
今後も治療の進歩はとどまることなく,中枢性運動障害に対する幹細胞移植・iPS細胞を用いた治療も期待されます.よりよい診療のために,新たな知見を取り入れ,現場の皆様方のご意見を頂きながら,将来に向けた改訂作業を開始しなければなりません.引き続きよろしくお願いいたします.
2023年12月
日本小児神経学会
小児痙縮・ジストニア診療ガイドライン策定ワーキンググループ委員長 根津 敦夫