こんな感染症の本を待っていた!医療のなかでも最も身近でありながら、苦手意識の強い感染症をわかりやすく,見やすく,身につくように熟練のエキスパートが熱意をもって解説し,難解な用語に対しては脚注解説を設けました.川崎医科大学附属病院における,感染症診療のすべてが詰まっています.感染症を専門としていない医師や医療スタッフ,医療系学生をはじめ,感染症診療に携わるすべての方々に必ず役立つ,必携の1冊です.
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目次
カラー口絵
序文
執筆者一覧
Part1 症状(主訴)からのアプローチ
1 発熱 桑原篤憲
2 咳嗽・喀痰 小賀 徹
3 鼻炎・鼻汁 假谷 伸
4 呼吸困難 小賀 徹
5 咽頭痛 大石智洋
6 胸痛 吉岡大介
7 悪心・嘔吐 羽井佐 実
8 腹痛 羽井佐 実
9 下痢 羽井佐 実
10 頭痛 上野太輔
11 意識障害 上野太輔
12 貧血 和田秀穂
13 腰背部痛 古市州郎
14 関節痛 赤木貴彦,藤田俊一
15 発疹 田中 了
16 黄疸 岡田敏正
17 頸部リンパ節腫脹 山村真弘
Part2 部位別・臓器別感染症からのアプローチ
A.呼吸器感染症(耳鼻咽喉科系を含む)
1 (普通)感冒 山下直人
2 急性咽頭炎・扁桃炎 山下直人
3 急性中耳炎・外耳道炎 濵本真一,原 浩貴
4 急性鼻・副鼻腔炎 假谷 伸,原 浩貴
5 インフルエンザ 山下直人
6 急性気管支炎 白井 亮
7 市中肺炎 白井 亮
8 肺結核・非結核性抗酸菌症 小橋吉博
9 COVID-19 大石智洋
B.消化器感染症
1 Helicobacter pylori感染症 半田 修,塩谷昭子
2 感染性腸炎 松本啓志,塩谷昭子
3 虫垂炎・腹膜炎 吉松和彦
4 ウイルス性肝炎 仁科惣治
5 急性胆囊炎・胆管炎 岡田敏正
C.血流感染症
1 感染性心内膜炎 根石陽二
2 心外膜炎 根石陽二
3 感染性大動脈瘤 柚木靖弘,金岡祐司
D.尿路・泌尿器感染症
1 尿路感染症 依光大祐,佐々木 環
2 無症候性細菌尿 和田佳久,佐々木 環
3 前立腺炎・精巣上体炎 宮地禎幸
E.皮膚・軟部組織感染症
1 蜂窩織炎 山本剛伸
2 糖尿病性足壊疽 大西真奈,伏見佳朗,金藤秀明
3 壊死性軟部組織感染症 井上貴博,椎野泰和
4 動物咬傷 上野太輔
F.性感染症
1 尿道炎(淋菌,クラミジア) 宮地禎幸
2 骨盤内炎症性疾患 河村省吾,下屋浩一郎
3 梅毒 杉山聖子
4 尖形コンジローマ 宮地禎幸
5 HIV感染症 和田秀穂,福田寛文
G.中枢神経系感染症
1 髄膜炎 森 仁
2 脳炎 森 仁
H.骨・関節の感染症
1 骨髄炎 古市州郎
2 化膿性関節炎 古市州郎
I.その他,全身性の感染症
1 敗血症 井上貴博,椎野泰和
2 寄生虫感染症(日本海裂頭条虫症) 沖野哲也
3 人畜共通感染症(マダニ刺咬症) 沖野哲也
Part3 外来で押さえておくべき病原微生物
1 レンサ球菌属(Streptococcus~):肺炎球菌,A群β溶血性レンサ球菌除く 大石智洋
2 肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae) 石松昌己
3 A群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes) 石松昌己
4 インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae) 石松昌己
5 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 石松昌己
6 腸内細菌(Enteric bacteria) 石松昌己
7 非定型菌 大石智洋
8 呼吸器系ウイルス:COVID-19,インフルエンザを除く 大石智洋
9 消化器系ウイルス 大石智洋
10 発疹をきたすウイルス 大石智洋
Part4 外来・地域での感染症診療レベル向上のために
1 子どもの診かた 田中孝明
2 妊産婦の診かた:問診,検査,処方 齋藤 渉,下屋浩一郎
3 海外渡航者・外国人の診かた 依田健志
4 外来でできる感染対策:診療所における標準予防策 平田早苗
5 在宅における感染症診療と感染予防策(患者家族から医療者まで) 世良紳語
6 地域における感染症診療をめぐる医療連携 平田早苗
7 感染症診療と「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」 藤井哲英
付録
1 抗菌薬 藤井哲英
2 抗真菌薬・抗原虫薬・駆虫薬 藤井哲英
3 抗ウイルス薬 藤井哲英
4 薬剤感受性 石松昌己
5 妊婦における薬 齋藤 渉,下屋浩一郎
6 小児適応のある抗菌薬 大石智洋
7 おもな感染症の治療期間 大石智洋
8 医療施設内でのおもな感染症に対する予防策と隔離期間 世良紳語
9 おもな感染症における感染経路と潜伏期間(出席停止期間) 大石智洋
10 届出感染症一覧 平田早苗
11 定期接種・任意接種 中野貴司
12 海外渡航別ワクチン 依田健志
索引
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序文
COVID-19のこれまでにない大流行により,感染症の恐ろしさが再認識されたと思います.そして,そのような感染症をいかに制御するかは,重要なテーマであります.
したがって,感染症について,より専門的な知識が必要とされる場面も少なくなく,近年,感染症の専門資格も増設され,より専門的な感染症の知識を学ぶための成書も多く見受けられます.一方で感染症は,ご存知のように,外来でもかなり多くを占める疾患で,少なくとも成人の方で,これまで一度も感染症にかかったことのない方は,皆無ではないかと思います.つまり,感染症は疾患の中でもかなり身近な疾患で,医療に携わる者であれば,感染症専門でなくとも,避けて通れない疾患かと思います.
しかし,身近であるがゆえに,なんとなくわかったつもり,という事柄もかなり多いのではないかと思います.私は医科大学で感染症の講義を教えていますが,例えば,ある用語について,患者さんにどう説明するか尋ねると,かなり説明に戸惑う光景をよく目にします.頭ではわかっていたつもりでも,実際に理解されていないため,説明できないのではないかと思います.感染症も含め,医学はどんどん進歩していき,内容もより高度になっていくと思いますが,やはり,きちんとした理解があってこそ,さらに踏み込んだ内容も理解でき,また,正しい理解が適切な診療につながり,それが多くの患者さんに還元されるのではないかと思います.
そのような思いを込めて,本書は,医療に携わるすべての皆様,特に感染症専門でない医師が,ご自身の専門診療科以外の感染症患者さんに出会った場合や,医療現場で感染症の患者さんに接する機会のある医療スタッフ,臨床実習で感染症患者さんに遭遇する医療系学生などにもご活用いただけるよう,なるべく平易な表現を心がけ,難解な用語には,可能な限り注釈をつけるよう工夫いたしました.
執筆は,川崎医科大学附属病院において,日々の診療に携わっている医療スタッフが,それぞれの専門分野について担当しています.当院は多くの医療系学生も受け入れているため,医療系学生の疑問などにも精通しており,すでに述べたように,感染症患者さんに携わるなるべく多くの方々に,なるべくわかりやすく理解していただきたいという目標で編集いたしました.当院は大学病院なので,多くの診療科を有しておりますが,異なる診療科の間,そして異なる職種の間のつながりがとても強く,フレンドリーな雰囲気の中で日々診療をしております.多くのスタッフの皆様とともに診療をしている中で,私が頼み込んだ執筆者が熱意をもって執筆してくださった本書は,きっと,読者の皆様にご満足いただけるのではないかと思いますが,もし,内容等につきご意見等ございましたら,ぜひ,ご教示いただければ幸いに存じます.
この1冊を手に取っていただいた皆様に,本書が少しでもお役に立てますよう願っております.
2024年4月
大石智洋