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悩める“痛み”のケーススタディ診断と治療社 | 書籍詳細:悩める“痛み”のケーススタディ
痛みの臨床力アップのために

獨協医科大学医学部総合診療医学講座

志水 太郎(しみず たろう) 編集

初版 B5 並製 280頁 2024年09月26日発行

ISBN9784787826794

定価:5,940円(本体価格5,400円+税)
  

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雑誌「診断と治療」にて好評を博した特集「診断困難な痛み」を1冊にまとめ,日常的によくみられる痛みに関する様々な愁訴に特化した,珠玉のケース集.診断推論のエキスパートによる問診や身体所見,診断に至る経過をはじめ,痛み診断のパール,編者と著者による各ケースについての質疑応答などを収載.「見方を変えたら診断できた!」「試行錯誤の後に診断にたどり着いた!」といった,日常診療に役立つ視点の現場必携の書.

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目次

はじめに  志水太郎
本書掲載の痛みの一覧
執筆者一覧

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Ⅰ 総 論
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1 診断の要点,そして病歴と診察の重要性  志水太郎
2 痛み治療の麻酔科的アプローチ  濱口眞輔
3 痛み治療の心療内科的アプローチ  大武陽一
4 痛み治療の東洋医学的アプローチ  寺澤佳洋,加島雅之
5 痛み治療の精神科的アプローチ  越智紳一郎

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Ⅱ 各 論 見方を変えたら診断できた!
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Case 1 背部の焼けるような痛み
 時にはシャーロック・ホームズのように…4Cを使う  和足孝之
Case 2 “全身”が痛くて動かせない
 痛いところをまず診よう! 見た目や紹介状には要注意  中本 順,天野雅之
Case 3 関節痛・屈曲困難
 解剖から考える 「指が曲がらない・関節が痛い」の知っておくべき原因  猪飼浩樹
Case 4 右背部~右腹部の痛み
 “Outside the box”を意識した腹痛の診療  鈴木智晴
Case 5 手のしびれと浮腫,肩の痛みを主訴に受診したが,仕事ができなくなった!
 身体症状症の診断で患者は治るのか?  清田雅智
Case 6 発熱・全身の筋肉痛
 もうこれ以上検査をしないでください!! 最後に頼るのはやはり…  宮上泰樹
Case 7 右の乳房が痛い
 痛む場所,少し離れてみてみよう!  天野雅之
Case 8 繰り返す腹痛
 原因不明の腹痛の場合に,確認しておきたいコト  藤原元嗣,多胡雅毅
Case 9 痛みの後から右手に力が入らない
 痛みの後に麻痺をきたした場合は支配神経を明らかにせよ!  飯野貴明,鋪野紀好
Case 10 こめかみがズキズキと痛い
 慢性疾患でフォローアップ中の患者の急性疾患の合併に注意!  佐々木陽典
Case 11 誰もわかってくれないくらいにズキッと痛い
 原因がよくわからないとされたときに疑うべき側胸部痛  和足孝之
Case 12 受診を自己中断している患者の足潰瘍
 痛いのは足だけか?  水本潤希
Case 13 胸が痛くて動けない
 何回も繰り返す痛みと発熱といえば…  鈴木富雄
Case 14 発熱・筋肉痛
 キーワードはチーズ!? 悪夢的カムバックとなった発熱・多関節炎の1例  宮上泰樹
Case 15 「左腕の痛み」
 「しびれ」の「しびれ」る鑑別診断  山田悠史
Case 16 若い女性の発作的な胸痛
 疑問が解けたら痛みも解けた  水本潤希
Case 17 急激な腹痛
 出会いはスローモーション 笑顔で救急搬送されてきた中年男性  和足孝之
Case 18 お腹が痛いです.痛くて歩くこともできず,歩くとき,特に右足を前に出すときに痛いです
 診断はCarnett が教えてくれた:患者の痛みの訴えのここを聞き逃すな  賴母木直樹,奥村光一郎,綿貫 聡
Case 19 体動時に必ず左臀部がチクチクと痛む
 「歩くときにお尻が痛い」 それ,本当に整形疾患ですか?  平田理紗,多胡雅毅,藤原元嗣
Case 20 睾丸痛が先行した下腹部痛
 睾丸が病気の存在を示すsentinelになる!  清田雅智
Case 21 全身の耐え難い痛み
 その痛み,線維筋痛症じゃないの!?  吉田常恭
Case 22 食欲低下と全身倦怠感,発熱を訴える
 わたし,コロナにかかってないですか!?  瀬山裕英,矢吹 拓
Case 23 両手の爪がチクチクする
 現場でよくみられる医学的に説明がなされていない病態  高瀬啓至
Case 24 頭がずっと痛かった
 一度違うと思っても…  保浦修裕,三好雄二,綿貫 聡
Case 25 左下腹部痛
 Take a step back and look at the bigger picture  徳田嘉仁
Case 26 わき腹がしめつけられるように痛い
 原因探しの旅は今日で終わりにしませんか?  鈴木富雄
Case 27 両足の裏がズキズキ痛い
 ベトナムから来日した若年男性,近医で半年以上診断がつかなかったその原因は?  小森大輝,高橋宏瑞
Case 28 全身がピリピリと痛い
 増悪寛解因子が明確な全身痛では,器質疾患の可能性を十分に検討せよ!  鋪野紀好
Case 29  頭痛,悪心,めまい,視力低下,聴力低下,全身の痛み
 もれなく・くまなく,漏れを探せ!  山本 祐
Case 30 ストレスで増悪する腹痛・頭痛へのアプローチ
 「本当に」痛みの原因はないのだろうか?  田宗秀隆

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Ⅲ 各 論 試行錯誤の後に診断にたどり着いた!
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Case 31 両下腿の痛み
 疼痛+αでは,Semantic qualifier 化した疼痛および“α”にまつわるPivot and Cluster 戦略を利用せよ!  鈴木智晴
Case 32 左下腿の痛み
 診断のつかない慢性疼痛の患者では,「目薬」で寄り添いながら,診断を諦めない!  佐々木陽典
Case 33 全身が痛い
 心因性という先入観の前に…  吉田常恭
Case 34 急性の左顔面痛
 非典型なときこそ病歴は活きる  西村康裕,上田剛士
Case 35 痛い部位が絞りこめない!
 「痛い」って,どれくらい痛いか数値化できます?  田宗秀隆
Case 36 慢性的な腹痛
 それでもやっぱりお腹が痛いんです  矢吹 拓
Case 37 両下腿の浮腫およびつっぱるような痛み
 メトホルミンが著効する特発性浮腫とは  入山大希,高橋宏瑞
Case 38 右の顔面が四六時中痛い
 ずっと痛いんです.何とかしてもらいたいんです!  大武陽一
Case 39 右眼が痛い
 検査エラーも診断に活かせ!  三高隼人,山田悠史

索 引

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序文

 本書は以前,雑誌「診断と治療」の担当編集者との懇話より組まれた,特集「診断困難な痛みに向き合うケーススタディ:明日からできる痛みへのアプローチ」(2020年5月号)に端を発している.それは痛みという観点からの特集だった.編者は国内において診断の質研究を主導する立場であり,また診断戦略学という独自の実践的な診断理論体系を持っていて,関心の方向性が雑誌の特集と一致していたため,特集を組む際のハードルはなかった.
 日本は国際的にみても診断推論が“お家芸”の1つであり,この領域に日夜勤しむ内科医,総合診療医たちにより,昭和の時代から商業誌の寄稿・peer review articlesで様々な文献が残っている.その系譜は令和に至っても衰えることを知らない.それは,2023年に栃木県宇都宮市で開かれた第26回日本病院総合診療医学会の,Diagnostic Excellenceを主題にした学会の参加者数(1,500名超)がこれまで診断を扱ったどの国際的カンファレンスよりも多くの集客数を達成したという事実でも裏付けられている.そのようななか,痛みという日常的によくみられる愁訴に特化したケース集として,雑誌の特集は信頼する先輩・後輩諸氏のご指導・ご協力を仰ぎ,狙い通り好評を博した.その後,同誌で「続・診断困難な痛みに向き合うケーススタディ:明日からできる痛みへのアプローチ」(2022年2月号)として第2弾の特集が組まれるほどに継続した.このまま雑誌の特集に留めてしまうのは惜しいとの判断から書籍化の運びとなった.
 編者は2023年に,診断におけるトピックを扱うジャーナル「Diagnosis」(De Gruyter社)のEditorialで,Editor—in—ChiefのMark L.Graberと下記に示す臨床医の診断能力を規定する式を示した(図).このような式で臨床医の診断能力を呈示することが,医師の個の力としての診断能力の訓練のためのロードマップを呈示することにつながると考えての試みである.直観的な理解を可能にするため,式は四則演算のみを使った表現を試みた.この式の本質は,知識や思考の柔軟性,推論能力,アイディアを最大化し,不確実な様々な要素を最小限にセーブするということで診断の最大のパフォーマンスを測ることができるというメッセージである.
 本書の著者の先生方から集まった,教育的にも珠玉のケース集を通して,痛みの診断のExcellenceを追求する助けとしていただけると幸いである.

2024年7月

獨協医科大学医学部総合診療医学講座
志水太郎

※上記文中の「図」については,本書の「はじめに」をご参照ください.