保育のスペシャリストを目指す方のための好評テキスト改訂第3版!授業はもちろん保育現場で役に立つ情報が満載.子どもの発育・発達から,主な小児疾患の特徴と対応,保護者との情報共有や関連機関との連携など,子どもの健康に関する現状や課題がわかりやすく学べる.各項目末の「振り返りの問題」でおさらい可能.今回の改訂では,新型コロナウイルス感染症に関する内容の追記や予防接種スケジュール表など,本文,図表ともに最新情報にアップデート.
ページの先頭へ戻る
目次
口絵
改訂第3版序文
改訂第2版序文
初版序文
本書の使い方
カリキュラムと本書との対応
編著・編集協力
第1章 子どもの健康と保健
①保健活動の意義と目的
1.子どもの保健とは
2.子どもの保健で扱うこと
3.保育所保育指針での取り扱い
4.これからの子どもの保健
振り返りの問題
資料 保育所保育指針(抜粋)
②子どもの出生と母子保健の意義
1.胎児の発育
2.出生の過程
3.出生後の新生児
4.母子保健の意義
振り返りの問題
③現代社会における子どもの健康に関する現状と課題
1.母子保健の現状
2.出生に関する統計
3.死亡に関する統計
4.子どもの発育の変化
5.乳幼児の運動・言語機能発達の変化
6.子どもの体力・運動能力の変化
振り返りの問題
第2章 子どもの発育・発達と保健
①子どもの身体発育と運動機能の発達
1.子どもの発育と発達
2.乳幼児の身体計測の仕方
3.標準的な子どもの身体発育
4.発育の評価の仕方
5.身体発育に影響を与える因子
6.子どもの運動機能の発達
振り返りの問題
②生理機能の発達と生活習慣
1.体温調節の発達
2.呼吸系の発達
3.循環系の発達
4.体液調節の発達
5.消化機能の発達
6.排泄機能の発達
7.睡眠の発達
振り返りの問題
第3章 地域における保健活動と子どもの虐待防止
1.地域における保健活動
2.子どもの虐待の現状
3.子どもの虐待の実際
4.子どもの虐待への対応
5.子どもの虐待防止の取り組み
振り返りの問題
第4章 子どもの健康状態の観察と体調不良時の把握
1.子どもの健康状態の把握
2.子どもの体調不良時によくみられる症状
振り返りの問題
第5章 子どもの病気
①子どもの免疫の発達と感染症の特徴
1.子どもの免疫の発達
2.感染症とは
3.感染症の主な症状
4.主なウイルス感染症
5.細菌性感染症
6.血液媒介性感染症
7.その他の感染症
振り返りの問題
②感染症の予防および適切な対応
1.感染経路と対策
2.学校感染症
3.予防接種
4.母子感染症の予防
5.血液媒介性感染症の予防
振り返りの問題
③救急疾患の特徴と適切な対応
1.重症な状態の判断と対応
2.事故や怪我のときの特徴と対応
3.急性疾患による救急対応
振り返りの問題
④新生児の病気,新生児期にわかる先天性の病気の特徴と対応
1.早産児と低出生体重児とは
2.早期新生児の病気
3.染色体異常症
4.先天性心疾患
5.新生児の消化器疾患
6.先天性神経疾患
7.先天性代謝異常症,先天性内分泌異常症
8.先天性の血液・免疫疾患
振り返りの問題
⑤アレルギー疾患の特徴と適切な対応
1.アレルギーとは
2.アレルギーの診断
3.乳幼児期のアレルギー疾患
4.食物アレルギー
5.アトピー性皮膚炎
6.気管支喘息
7.花粉症
8.アナフィラキシー
9.集団生活におけるアレルギー児への対応
振り返りの問題
⑥慢性疾患の特徴と適切な対応
1.子どもの慢性疾患とは
2.子どもの慢性疾患の種類と特徴
3.子どもの慢性疾患の支援制度
振り返りの問題
第6章 保護者との情報共有と家族の支援
1.集団生活前健診(入所時健診,入園時健診)
2.保護者との健康情報の共有
3.子どもの家族支援
4.子育て支援
振り返りの問題
第7章 子どもの健康診断と関係機関との連携
1.妊婦健診
2.出生前診断
3.新生児のスクリーニング検査
4.乳幼児健診
5.学校健診
6.健診と関係機関との連携
振り返りの問題
振り返りの問題 答え
索引
さらに深める!
●日本の保育所の歴史と保健活動
●母子健康手帳の歴史
●子どもの健康に関する海外との比較
●染色体異常児の発育
●低出生体重児の発育
●生活習慣の時代変化
●海外での子育て支援
●病児保育や病後児保育のときの記録の仕方
●感染症の歴史
●予防接種の変遷
●心肺蘇生法の変遷
●出生前診断の課題
●食物アレルギーと離乳食開始の変遷
●プレパレーションとは?
●障害児や慢性疾患児への子ども同士の理解
●乳幼児健診の変遷と課題
ページの先頭へ戻る
序文
改訂第3版序文
『子どもの保健テキスト』を発行してから6年,改訂第2版は発行してから3年が経ちました.発行当時学生だった方々も保育所,幼稚園,障害児施設など様々な分野でご活躍のことと思います.この間にも子どもをめぐる環境は少しずつ変化してきました.
2020年より流行した新型コロナ感染症もようやく通常の感染症としての扱いになってきましたが,季節性に流行する子どもの感染症はまだ流行期が定まらず,保育の現場では臨機応変の対応が求められています.予防接種はいくつか定期接種に加わって,ようやく先進国なみになってきましたが,年齢制限のある予防接種を定期接種の期間内に終えることができない方や,予防接種の副反応への懸念から接種しそびれる方もいたりしています.接種しそびれる方がいるのは課題として残っています.
子育て支援の政策も少しずつ広がりつつありますが,まだ日本全体の少子化を食い止めるには至っていない様相です.社会全体で支える子育ての方向性を子どもの健康という視点からも見守っていきたいところです.
保育所の役割も保護者の就労に関わらない支援や子どもの障害や病気に関わらない保育など,次第に専門性の高い対応を求められてきています.今後は,子育て支援で主導的な役割を保育に関わる専門職の方々が担っていくことになるでしょう.
その保育の質の向上のためにも,このテキストが子育てを社会の中心に据えていただくことに少しでもお役に立っていただければ幸甚です.
今回も診断と治療社の方々には,大変お世話になりました.日々変化する子どもの環境に私達も一緒に歩んで行けたらと願っています.
2024年9月吉日
小林美由紀
改訂第2版序文
『子どもの保健テキスト』を発行して早くも3年が経ちました.
この間,新たなワクチンが定期接種になったり,新型コロナ禍で感染症の流行が変化したりと様々な変化がありました.特に新型コロナウイルスの流行では,感染そのものは,子どもは重症化することが少ないということでしたが,子どもたちの生活に大きな影響を及ぼしました.感染予防のために子どもたちに欠かせない活動が制限されたり,マスクをつけることで,大人の表情や口元が読み取れなかったり,楽しい食事が黙食となったりと,子どもたちの発達については,今後は注意深く追っていく必要があります.
このように,社会の変化に大きく影響されるのは,大人より子どもである分,私たちは子どもたちの本来の成長を促すように見守る責務があると言ってもよいでしょう.
今回の改訂では,時代とともに変化している知見を加えるとともに,適切な表現への修正などを行いました.保育士の役割も多様な分野に広がっているとともに,キャリアアップをするために,日々知識や技能の向上が求められています.
今現在だけでなく,数年後にどのように成長しているかという将来を見据えた保育や支援が今後,より必要になってくることと思います.そのためにも一緒に伴走していくことができればと思っています.
今回の改訂におきましても診断と治療社の編集部の方々には多大な協力をいただきました.日々進歩する小児科の知見については,森脇浩一先生に多くの助言をいただきました.この場を借りて感謝するとともに,現場で子どもたちを支えている方々の一助となれば幸甚です.
2021年10月吉日
小林美由紀
初版序文
万葉集に「銀も 金も 玉も 何せむに 勝れる宝 子に及かめやも」(山上憶良.銀も金も玉もどれほどのことがあろうか.どんな宝も子どもには遠く及びはしない)という歌があります.古来,わが国では子どもの存在を喜び尊ぶ気持ちがあったのでしょう.けれども,実際には,元気に育て上げるというのはなかなか難しい時代が長く続いていました.どうしたら子どもたちを病から守り,健康に成長させられるかということは,大きな課題でした.
そのなかで,保育所は,働かざるを得ない保護者や養育が行き届かない子どもたちの栄養や環境衛生,生活習慣に目配りをすることで,命を守り育ててきたと言えます.そのことは,保育士養成課程の前身である保母養成教育課程で,小児保健に関連する内容が多く盛り込まれていたことにも現れています.
近年,子どもたちの環境や栄養状態の改善,医療の進歩により,乳幼児の死亡率は減少し,子どもたちが生活する環境も随分と様変わりしました.
保育所で子どもを保育する保母が国家資格の保育士となり,資格を取るために学ばなければならない「小児保健」は,「子どもの保健」となりました.子どもが病気にならないように保健衛生を整え,看護する医療的なことだけでなく,多様な子どもたちをより健康に豊かに育てることを目指すようになったのです.さらに保育所は,単に子どもを預ける場所ではなく,地域に開かれた子育て支援や助言をする役割を求められるようになってきています.保育者は,かつての「子を守る」ことだけでなく,「保育のスペシャリスト」としての活躍が求められているとも言えるでしょう.
また,社会の成熟とともに,多様な人々への配慮が求められるようになってきています.従来,保育に関わる方々は,子どもの健康を考えながら,一人ひとりの子どもの成長に目配りすることを行ってきています.そうしたことは今後さらに,様々な背景をもつ子どもへの配慮や共存にも活かせるのではないかと考えています.
2018年の保育士養成課程の改定で,「子どもの保健」の知見が「乳児保育」「保育の心理学」にも広げられました.それを機に,保育のスペシャリストを目指す方々が,子どもたちの健康をより深く,将来を見据えた知識と技能を身につけられるよう,本書を執筆しました.
執筆にあたり,貴重な助言をいただいた埼玉医科大学総合医療センター小児科教授の森脇浩一先生,きめ細かな編集と校正をしてくださった診断と治療社の編集部の皆さんには,大変お世話になりました.
子どもたちが,「守り育てる」存在から「未来を共に切り拓く」仲間となるよう,「子どもの保健」がその支えとなるように,願っています.
2018年9月吉日
小林美由紀