本書は「告知」に関する理論と実際を見事に統合しているという点で,これまでのものとは異なる.特に日常の臨床において,すぐに適応できるように,その記述は実際的にわかりやすく,具体的に解説してある.医師,ナース,ソーシャルワーカー,宗教家など,告知に関わる人のみならず,この問題に関心を持つ一般の人にも読んでいただきたい好著.
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目次
推薦のことば 柏木哲夫
監訳者の序 恒藤 暁
謝辞 口バート・バックマン
第1章 序論
Ⅰ この本はなぜ必要なのか
Ⅱ この本を誰が読むべきか?
Ⅲ 本書の構成に関する注釈
1.基本原則
2.ポイント
3.症例
4.“専門家”と“患者”
Ⅳ 本書の目的
1.適切に悪い知らせを伝える割合を増加させる
2.より安心して仕事を行い,患者を援助する能力を高める
3.患者と家族からより学ぶようになる
Ⅴ 悪い知らせを上手に伝えることはなぜ価値があるのか
Ⅵ 真実を話すべきか?
Ⅶ 誰が悪い知らせを伝えるべきか?
要約
第2章 悪い知らせを伝えることはなぜ難しいのか
Ⅰ 悪い知らせの定義
Ⅱ なぜ悪い知らせは悪いのか
1.社会的要因
2.患者側の要因
3.医師側の要困
Ⅲ さらに大きな困難:死への直面
1.死に対する社会的態度
2.患者の死に関する恐怖
3.死へのプロセスの3 段階モデル
要約
第3章 基本的なコミュニケーション技術
Ⅰ 医療従事者として聞く態度
Ⅱ なぜ患者は不幸なのか
1.医師が患者の話を聞いていないこと
2.医師は医学用語を類繁に使うこと
3.医師は患者を見下して話をすること
Ⅲ 面談のための基本的なステップ
1.聞くための準備
2.質問すること
3.効果的に傾聴すること(患者が話をするように促すこと)
4.聞いていることを示すこと
5.応答をすること
Ⅳ “医療従事者としての対話”と“社会生活における会話”
要約
第4章 悪い知らせの伝え方-6段階のアブローチ-
Ⅰ 一般的な見解
1.悪い知らせを伝える面談の性質
2.このアプローチにどのくらいの時間が必要か
3.提案すること
Ⅱ 6段階のアプローチ
1.第1段階:面談にとりかかる
2.第2段階:患者がどの程度理解しているかを知る
3.第3段階:患者がどの程度知りたいかを理解する
4.第4段階:情報を共有する(整理と教育)
5.第5段階:患者の感情に応答する
6.第6段階:計画を立てて完了する
要約
第5章 患者の反応
Ⅰ 患者の反応に応答する際の一般的な心得
1.患者の反応の評価
2.凝縮された肖像
3.許容できる行動
4.適応反応と不適応反応とを区別する
5.解決できることとできないことを見分ける
6.対立:対処するための一般的な心得
7.セカンド・オピニオン
Ⅱ 特定の反応
1.信じられないという気持ち
2.ショック
3.否認
4.置き換え
5.探求
6.恐怖と不安.
7.怒りと非難
8.罪悪感
9.希望, 絶望,抑うつ
10.過度の依存
11.泣くこと,涙を流すこと
12.なぜ私が?
13.安堵感
14.脅し
15.ユーモア
16.誘惑
17.取り引き
18.やっかいな質問
19.子どもに悪い知らせを伝えること
20.意味の探求
要約
第6章 他の人々の反応
Ⅰ 家族や友人の反応
1.家族や友人:一般的な事柄
2.患者の 反応に似た家族の反応
3.家族にだけみられる特有な反応
4.患者としての家族
5.病気の子どもを持つ親
Ⅱ 医療従事者の反応
1.逆転移の概念
2.身を引くこと
3.後退すること
4.怒り
5.罪悪感
6.拒絶すること
7.誰にでも限界がある
Ⅲ 医療従事者のチーム内における問題
1.「患者には話すべきではない」と医師が言う時
2.患者による医療チームの操作
Ⅳ 倫理的および法的な問題
Ⅴ 文化的な問題
要約
第7章 結論
付録1 悪い知らせを伝えるアプローチを用いた面談
付録2 Ground Rules
付録3 参考文献
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序文
推薦のことば
日本緩和 医療学会理事長大阪大学人間科学部教授
淀川キリスト教病院名誉ホスピス長
柏木哲夫
「告知に関して,すばらしい本が出た」.本書を通読してそう感じた.
「告知」を扱った書物は日本人の著者のものも,翻訳されたものも含めて,かなり多く出版されている.それらは二つに大別される.理論的なものと 実際的なものである.前者は実際の臨床には役に立ちにくい.後者はどのような理論に基づいて書かれているのかわからず,著者のひとりよがりで はないかと思えるものもある.
本書は「告知」に関する理論と実際を見事に統合しているという点で,これまでのものとは異なる.特に日常の臨床において,すぐに適用できるように,その記述はわかりやすく,具体的である.
著者が本書で特に強調しているのはコミュニケーションの重要性である.そしてそれを学ぶことが可能な技術として位置づけていることである.日本においても近年インフォームド・コンセント(IC)の重要性が叫ばれているが,私はI Cの真髄はI CCとIS Cだと思っている.ICCとはInform ,Communication ,Consentのことである.すなわち,InformとConsentとの聞にCommunication が入る必要があると言うことである.ISCとは Inform,Sharing,Consent である.
Communication不足はターミナルケアの場のみならず日本の医療のすべての場において言えることである.医学教育の中でCommunication についての教育があまりにもおろそかにされている.例えば人の話をよく聞く技術(Listening skills)を身につけていない医師があまりにも多すぎる.
ICという考え方はよいのであるが,それを支える Communication がしっかりなされな ければ絵に描いた餅になってしまう.すなわちInformし,十分に時間をとって質問に答え,患者の話もよく聞くようなCommunicationをとり,患者が十分納得してConsentをする(ICC)ということが大切なのである.
告知においてもう一つ大切な概念は「悪い知らせを分かち合う」,すなわちShareすることである.Giving Information(情報を提供すること)とSharing Information(情報を分かち合うこと)とは違う.前者は一方的であり,後者は相互的である.ICという言葉には何か一方的な感じが付きまとう.情報(Information)を一方的に提供(Give)し,同意(Consent)を取り付けるというような感じである.IとCとの聞に情報をShareするとい う意味でのSが入り「ISC」となった時に情報は一方的に与えられるものではなく,分かち合えるものになるのである.情報をShareすることは常に大切であるが,つらい情報,悪い情報(bad news)の場合は特に重要である.がんを告げる場合等は特にこの「ISC」という概念が大切になる.
本書はこの二つの概念,CommunicationとSharingを理論的に,そして何よりも実際的にわかりやすく解説している.告知の困難さに困っている人に解決を与えてくれる書物である.訳も的確で読みやすい.医師,ナース,ソーシャルワーカー,宗教家など,告知に深く関わる人のみならず,この問題に関心を持つ一般の人にも読んでいただきたい好著である.
2000 年1 月
監訳者の序
今日,情報開示やインフォームド・コンセントが盛んに叫ばれる時代となっています.医療従事者が,患者さんおよびそのご家族と十分にコミュニケーションを図りながら,患者さんの自己決定権を最大限に尊重することは,Quality of Life (QOL)の向上につながり非常に重要です.しかし,がん患者さんの遺族調査によると,遺族の方々が最も改善を望んでいたことは「医療従事者の患者および家族とのコミュニケーションであった」と報告されています.すべての医療従事者が,適切に真実を伝えることが可能となるコミュニケーション技術を身につけることが急務となってきていると思われます.
本書は,臨床における実践を念頭に置きながら,非常に具体的に記述された“コミュニケーションの教科書”といっても良い程の素晴らしいものです.多数の国々で翻訳されており,コミュニケーションのバイブルと言っても過言ではありません.著者のRobert Buckman博士は,「悪い知らせを伝えることは,医療従事者の職務の重要な部分である.それは,学ぶことが可能な技術である.そして,多忙な臨床現場において利用することが可能である」と述べています.本書では,理解を助けるために著者が随所に工夫を凝らしています.各章に要約があり,巻末には付録として著者と患者役の女優とが6段階のアプローチに則った,具体的な面談での会話を記載しています.本文では,コミュニケーションの実践的な秘訣を47の基本原則として格言のように述べています.原文に興味のある方のために巻末に収録しました.さらに,ポイントや症例も多数盛り込まれており,多忙で十分に時間を割くことのできない医痕従事者においては,各々を拾い読みするだけでも本書のエッセンスを理解することができるようになっています.しかし,コミュニケーション技術を向上させたいと心から願っている読者は,是非とも始めから終わりまでの全部を読んでいただきたいと願っています.
翻訳にあたっては訳者らが翻訳したものを基に,監者訳が原文と一文一文照らし合わせながら臨床の場面にふさわしい表現となるように心がけ,場合によっては原文の意を損ねない範囲で意訳しました.本書が,一人でも多くの医療従事者に活用され,患者さんおよびそのご家族とのコミュニケーションが向上することを強く願う次第です.
最後に,本書の出版に至るまでお世話になった診断と治療社編集部の久次武司氏に心からの謝意を表します.
1999 年12月
淀川キリスト教病院ホスピス長
恒藤 暁
偉大なるAlon Dembo医師と,インスピレーション豊かで忘れられない愛するEdward Joseph Kason氏の二人に本書を捧げる.
謝辞
本書の着想は医師や研究者,作家などの多くの人々の響影により発展してきた.トロント大学において「而談技術」講座(Interviewing Skills course)の中で「悪い知らせを伝える」 講座( Breaking Bad News course)を教えていたYvonne Kason博士とは,編集の段階で一つ一つの項目について綿密に検討を重ねた.
「悪い知らせを伝える」講座の始まりは,マンチェスター大学のPeter Maguire博士と共にビデオの脚本作りの中で,試みられ発展したものである.専門家としてMaguire博士の親切な意見がなければ,本書の執筆をあきらめていたかもしれない.また,多くの指導者達,特にEve Wiltshaw 博士,Robin Skynne r博士,Jane Dorsett 氏から多くの実践的技術を学んだ.洞察力の指針となる方々がおられ,彼らと私との見解の一致を認めた.特に臨床分野ではEric Cassell博士,研究分野ではDouglas Maynard博士がそうであった.お三人には,本稿を校閲していただき,かつ建設的なご意見を頂いた.更にBrian Doan博士にも貴重な情報をいただいた.関連事項を扱っている論文や書籍については,本文において繰り返し述べることをせず章の末尾に参考文献として強調した.
私が教えていたと思われているが,忠者さんにはむしろ私自身が教えられていた.これらの多くの患者さんとそのご家族,University of Toronto Pressの沈着冷静なIan Montagnes氏,何が必要かを私自身がわからなかった時でさえ,文献のコピ ーや参考文献,文献検索を提供して下さったPeggy Kee氏,いつでもどこでも執筆を可能とし書けないことの言い訳をしないようにしてくれたシャープのノート型パソコンの発明者,そして最後の土壇場で,助けて下さったマイクロソフト社のAnne Gardner氏(彼女がいなければ文字どおりすべてが失われていた)にたいへんお世話になった.心から感謝を申し上げたい.
「悪い知らせを伝える」講座の基礎となった教育ビデオは,カナダやアメリカではTelegenic Videos, 20 Holly Street # 300, Toronto, Ontario Canada M4S 3B1から,イギリスではLinkward Productins, Shepperton Studio Centre, Studios Road, Shapperton, Mdidlesex,TW17 0QD,Englandから販売されている.
ロバート・バックマン
1991年 トロントにて