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目次
執筆者一覧
はじめに
前眼部――総論
1 スリットランプとスリット写真は違う
2 スリットランプの威力とは
3 角膜を見る;その1――直接照明法
4 角膜を見る;その2――間接照明法
5 角膜を見る;その3――広汎照明法
6 角膜を見る;その4――徹照法
7 角膜を見る;その5――虹彩からの反帰光を使う
8 角膜を見る;その6――強膜散乱法
9 角膜を見る;その7――鏡面反射法
10 角膜を見る;その8――コバルトブルーのフィルターを使う
11 眼瞼,結膜を観察する
12 生体染色の基本;その1――ローズベンガル
13 生体染色の基本;その2――フルオレセイン
前眼部――各論
14 前“顔”部をまず見よう
15 眼瞼を観察する
16 眼瞼縁を観察する
17 球結膜をよく見よう
18 充血の仕方に注意
19 上方の球結膜に注意
20 瞼結膜を見る
21 結膜異物はどこにある?
22 ティアメニスカスの観察
23 角膜上皮の混濁の原因は?
24 角膜実質の混濁の原因は?
25 淡い上皮下混濁を見る
26 潰瘍の部位で原因を推測する
27 角膜の神経を見る
28 角膜の新生血管を見る
29 輪部の健常性を評価する
30 角膜混濁眼,白内障手術はどうする?
31 角膜内皮の病変を見る
32 角膜裏面沈着物を見る
33 フルオレセイン染色と点状表層角膜症
34 治りやすい上皮欠損,治らない上皮欠損
35 フルオレセインを使って涙を見る
36 フルオレセインで上皮の質を見る;その1
37 フルオレセインで上皮の質を見る;その2
38 フルオレセインで上皮の質を見る;その3
39 ハードコンタクトレンズの検査――何を見るか
40 ソフトコンタクトレンズの検査――何を見るか
水晶体
41 白内障の見方;その1――白内障が語る過去
42 白内障の見方;その2――これは誰が見ても白内障
43 白内障の見方;その3――前項の続き
44 白内障の見方;その4――本当に濁っているの?(1)
45 白内障の見方;その5――本当に濁っているの?(2)
46 白内障の見方;その6――本当に濁っているのに?
47 白内障の見方;その7――乳幼児の白内障の見方
48 白内障の見方;その8――核の硬さは?
49 白内障の見方;その9――手術をしても大丈夫?(1)
50 白内障の見方;その10――手術をしても大丈夫?(2)
51 水晶体の位置異常
硝子体,網膜
52 細隙灯を利用した後眼部疾患の観察にあたって
53 前置レンズの特徴
54 コンタクトレンズ(Goldmann三面鏡)による観察
55 高屈折凸レンズによる倒立実像の観察
56 前部硝子体を見る
57 後部硝子体剥離を見る
58 網膜裂孔を見る
59 網膜剥離を見る
60 黄斑円孔を見る
61 アトピー性網膜剥離
62 網膜隆起病変の観察
63 網膜血管病変の観察
参考文献
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序文
はじめに
眼科には検査や治療のための機器が数多くあり、レジデントは短い期間のうちにこれらの機器の使い方を覚える必要がある。機械や器具の数は年々増えており、すべての機器の用い方に習熟するのは大変になってきている。しかしながら、いくら機器が増えても、スリットランプと眼底鏡が眼科診療のもっとも基本的で重要性の高い機器であることには異論はないと思う。しかも、新しい診療や治療のための機器の中には、スリットランプを応用したものやスリットランプの構造が組み込まれているものが少なくない。光凝固装置、YAGレーザー、スペキュラーマイクロスコープ、フレアセルメーター、フルオロフォトメーターなど、数え上げるときりがないくらいである。
本書の企画を立てた動機の一つは、レジデントと一緒に症例を診たあとディスカッションをした際に、レジデントには見えていない所見があることに気づいたためである。
本来、このようなことは症例をとおして一つ一つ教えていくべき事なのかもしれない。筆者のうち二人はデューク大学に留学した経験があるが、実際に米国では外来患者のワークアップをまずレジデントが行い、そのあとにスタッフが一緒に診察し、レジデントの診察内容をチェックするというシステムが取られていた。こうした形が本来理想的であると思われるが、デューク大学で最も忙しい外来と呼ばれていたFoulks教授(現ピッツバーグ大学チェアマン)の外来でも1日(午前・午後)の予約患者が30名程度であったことを考慮する必要がある。1回の診察で見る患者数が多く、レジデントに見せられる時間が限られる日本の現状ではなかなかむずかしいことが多いのではないだろうか。本書が、教える側と教えられる側、双方のフラストレーションを減らすために少しでも役立てば幸いと考えている。
本書ではスリットランプの機械そのものや基本的な操作の説明は一切していない。スリットランプの操作を一通り知っている者を対象としたからである。
一つ一つの項目は短く独立しているので、どこから読んでも、どこで止めてもかまわない。暇なときに寝転がってパラパラとめくるような本を目指したつもりである。
このような内容が1冊の本になるのか、あるいはしてよいものか、私たちは悩んだものである。本書が全く受け入れられなくても困るが、あまり受け入れられても逆に困るような気がしている。
本書を完成させるのに多大な時間と労力、そして素晴らしい撮影技術を提供していただいた慶應義塾大学眼科、世木秀氏ならびに杏林大学眼科の山本晃先生に感謝の意を表します。また、筆の遅い3人を叱咤激励して、1冊の本にまとめあげていただいた診断と治療社の小岡明裕氏にもこの場を借りて深謝いたします。
2001年9月
山田昌和/黒坂大次郎/平形明人