診断と治療
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2019年 Vol.107 No.10 2019-10-04
高齢終末期に向かう医療

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 鈴木則宏
◆総論
超高齢社会と終末期医療 高林克日己
終末期医療(人生の最終段階の医療)とは 木澤義之
終末期における医療の提供体制 濃沼信夫
終末期医療をめぐるわが国の動向 木村 厚
諸外国の高齢者終末期医療 宮本礼子,他
終末期医療end-of-life careと臨床倫理 箕岡真子
終末期医療の医療的側面 垣添忠生
◆終末期医療の現場
介護老人保健施設における看取りの現状と課題,病院との連携 折茂賢一郎
在宅での看取りの現状と課題,病院との連携:看取りにかかわる人材育成の可能性 小澤竹俊
緩和ケア病棟の現状と将来 宮森 正
療養病床での終末期医療の現状と課題 二宮里美,他
救急・集中治療における終末期 横田裕行
◆疾患による終末期医療の様々
疾患別の終末期医療の必要性 松本衣里
悪性腫瘍の終末期医療 橋口さおり
神経難病患者の終末期医療 荻野美恵子
心不全の終末期医療 筒井裕之
◆終末期医療に必要な周辺医療
終末期医療のメンタルケア 栃木 衛,他
終末期のリハビリテーション治療 宮田知恵子,他
終末期の栄養体液管理 大屋清文
疼痛を有する終末期患者のケア 橋本龍也,他
◆終末期医療の将来
終末期医療の未来展望 堀江里奈,他
座談会
◎高血圧合併の高尿酸血症に対する臨床的アプローチ
~2つのガイドライン推奨に基づく考察~
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
海外渡航歴があり,改善が悪い咽頭痛と悪寒戦慄を訴えた44歳男性 中村隆久,他
◎注目の新薬
がん免疫療法としてのPD-1/PD-L1阻害抗体 河上 裕
現在,わが国は未曾有の高齢化を迎えつつあり多死社会に直面している.したがって,これまで培ってきた疾病治療と予防,機能の維持向上を目的とした医療・ケアに加えて「人生の質の高い終末期」をどう過ごすことができるかを十分考慮したうえでの医療が必要となってきている.病院を含む医療機関は,終末期とどう向き合い地域社会のニーズにどう対応していくべきかが課題となっている.終末期医療をめぐる諸問題は,単に医療機関の関係者にとって重要な課題であるのみか国民にとっても方向性を解決すべき喫緊の課題となっている.患者個人および家族の意思を尊重しつつ,生命の尊厳をめぐる種々の倫理的問題を踏まえ,万人が納得しうる穏やかな看取りを地域ごとにどのように実現しうるかについて,病院,施設,在宅を含む地域社会および国全体での議論が必要である.
療養型病床を有する病院では,地域包括ケア時代の今,在宅や介護施設での穏やかな看取りにどうかかわるかが大きな課題となっている.また,在宅や介護施設からの救急対応や終末期患者の生命維持などの倫理的問題にどう向き合うべきかについても大きな課題である.時代のニーズから,在宅医療での看取りは今後その数が増加することが予想されているが,ケアの一役を担う家族が抱える課題も無視できず,今後体制の整備が必要である.さらに悪性腫瘍患者の終末期の医療を担う緩和病棟の役割の重要性も増している.さらに,終末期医療における救急医療はどうあるべきか,そして終末期患者を取り巻く周囲へのメンタルケアの必要性も課題となっている.
本特集では,わが国の現在の終末期医療の現状と課題を見据え,今後のわが国の終末期医療が進むべき方向性を医学・医療の立場で考えることを目的とした.
慶應義塾大学名誉教授/湘南慶育病院院長
鈴木則宏