診断と治療
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2020年 Vol.108 No.4 2020-04-07
最新の高血圧診療-「高血圧治療ガイドライン2019」後の展開

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 森田啓行
◆高血圧治療ガイドライン2019で変わる高血圧診療
高血圧治療ガイドライン2019:何が変わったか 田中正巳,他
高血圧関連の大規模臨床試験 鷹見洋一,他
◆高血圧の成因,分類,疫学
血圧値の分類 成田圭佑,他
高血圧の疫学 久松隆史,他
本態性高血圧の発症機序 熊谷裕生,他
二次性高血圧 成瀬光栄,他
◆高血圧の治療
高血圧の治療計画 石光俊彦,他
高血圧非薬物療法の実際 冨山博史,他
高血圧薬物療法の進歩 中川 仁,他
臓器障害合併時の高血圧治療 三浦哲嗣,他
外科手術前,周術期の高血圧管理 稲葉達郎,他
高齢者の高血圧治療 赤﨑雄一,他
女性の高血圧治療 鈴木洋通
小児の高血圧治療 山村智彦,他
治療抵抗性高血圧 河野雄平
高血圧緊急症の治療 多胡素子,他
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
末梢性顔面神経麻痺,眼球運動障害と起立困難で受診した75歳女性 野溝崇史,他
◎注目の新薬
スキリージ®(リサンキズマブ) 鎌田昌洋
総 説
高気圧酸素治療の現状と新たな展開 合志清隆
高血圧症は,心不全,腎不全,脳心血管病,心房細動の主要なリスク因子であり,健康寿命延伸にとって血圧の適切な管理は不可欠である.平成28年国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると50歳以上の男性,60歳以上の女性では60%以上が高血圧患者であり,高血圧症は依然としてわが国のコモン・ディジーズと言える.したがって,血圧の適切管理を考えるにあたっては,ハイリスク群を注意深く経過観察し管理・治療を行うハイリスクアプローチだけでは不十分であり,健診で「健常者」から広く高血圧予備群を掘り起こし,教育と生活習慣是正(減塩,適正体重維持,節酒,禁煙)を行うポピュレーションアプローチが必要である.実際,健診による血圧スクリーニングの普及,生活環境の変化,降圧治療の進歩・普及により,国民の収縮期血圧平均値は男性・女性ともに着実に低下してきた.しかし,降圧治療を受けていても降圧不十分なケースが少なくない,逆に過降圧が問題になるケースもみられるなど,診療現場での細やかな個別治療が求められている.一方,60歳未満男性の拡張期血圧に関しては低下傾向が明らかでなく,拡張期血圧を下げる取り組みも今後の課題である.
従来の高血圧治療ガイドライン(2014年)が改訂され,2019年4月に「高血圧治療ガイドライン2019」として公表された.高血圧の基準値は「診察室血圧140/90 mmHg以上」に据え置かれたが,130~139/80~89 mmHgは「高値血圧」,120~129/80 mmHg未満は「正常高値血圧」,120/80 mmHg未満は「正常血圧」に分類された.また,一般成人,75歳以上高齢者,冠動脈疾患患者などの降圧目標は,2014年のガイドラインにおける降圧目標よりも厳格化された.ガイドライン改訂にあたりシステマティックレビューが実施され,最新のエビデンスが反映された結果,より厳格な降圧が推奨されるに至った.
本特集では「高血圧治療ガイドライン2019」で何が変わったのか,何が追加されたのか,を踏まえつつ,高血圧に関する最新の理解と最善の標準治療,および管理の実際を高血圧診療・研究のエキスパートの先生方にまとめていただいた.日々の高血圧診療においてすぐに役立つ知識・情報がコンパクトに詰まっており,医学生,研修医,若手医師だけでなく,高血圧専門外来担当医師,実地医家の先生方にも読み応えのある一冊になっている.実臨床の手引書としても御活用いただければ幸いである.
東京大学大学院医学系研究科循環器内科
森田啓行