診断と治療
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2020年 Vol.108 No.10 2020-10-06
動脈硬化予防のための肥満・脂質異常症診療戦略

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 森田啓行
◆動脈硬化の病態・早期診断法・リスク
動脈硬化の病態・病理像 山下 篤,他
動脈硬化の早期診断:形態学的検査法 濱口浩敏
動脈硬化の早期診断:血管機能検査法 冨山博史,他
動脈硬化のリスクとしての肥満症・メタボリックシンドロームの臨床的位置づけ 益崎裕章,他
動脈硬化のリスクとしての脂質異常症 石橋 俊
ガイドラインに基づく評価と包括的管理 荒井秀典
◆肥満・脂質異常の病態・診断基準
肥満の成因・病態生理 志鎌明人,他
肥満症の診断基準 高吉倫史,他
脂質異常症の成因・病態生理 野原 淳
脂質異常症の診断基準・鑑別診断 男澤悠貴,他
◆動脈硬化予防のための肥満・脂質異常の治療
食事療法 藤岡由夫
運動療法 木庭新治
脂質異常症の薬物療法:治療開始のタイミングと管理目標値 山下静也
スタチンとエゼチミブ 宮島雅子,他
PCSK9阻害薬 岡﨑啓明
高齢者における肥満症・脂質異常症の治療 田村嘉章,他
小児期における肥満・脂質異常症の治療 土橋一重
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
2週間前からの発熱を主訴とした45歳男性 高橋智弘
◎注目の新薬
テリボン®皮下注28.2μgオートインジェクター(テリパラチド酢酸塩)萩野 浩
ヒトは血管とともに老いる“A man is as old as his arteries.”と言われる.軽度の動脈硬化は若年期から発生するが,加齢とともに動脈硬化が進行し,脳心血管疾患の発症準備状態になる.前もって動脈硬化リスクを十分に管理することにより動脈硬化進行を抑え,脳心血管疾患発症に至らないようにすることができる.すなわち,動脈硬化を基盤として発症する疾患は事前のリスク管理により予防可能ということである.発症してしまった脳心血管疾患を,専門医が迅速的確に診断し治療すること,医療支援体制を整備することはもちろん重要であるが,「脳心血管疾患は予防できる疾患である」ことを再認識し,一般内科医が日常的に診察している数多くの動脈硬化リスク保有群に対して徹底したリスク管理を行い脳心血管疾患発症を予防することが,発症者の絶対数を減ずるために必要不可欠と言える.わが国の医療政策をみても,脳卒中・循環器病対策基本法の「基本的施策」の第一に「循環器病の予防等の推進に係る施策」(第12条)が挙げられるなど,循環器病の予防は国民の健康寿命の延伸等を図り,あわせて医療介護の負担軽減に資するための有効な方策と考えられている.
本特集では「動脈硬化進行予防のための肥満・脂質異常診療戦略」というテーマを掲げ,肥満・脂質異常の病態の詳細,動脈硬化の早期診断と包括的リスク管理および治療のエッセンスをエキスパートの先生方にご解説いただいた.肥満・脂質異常に関しては,日本動脈硬化学会から「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」,日本肥満学会から「肥満症診療ガイドライン2016」,日本糖尿病学会から「糖尿病診療ガイドライン2019」,日本老年医学会から「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」「高齢者脂質異常症診療ガイドライン2017」と数多くのガイドラインが次々に発行・公開されているが,一般内科医の先生方がこれらをすべて頭に入れるのはとても骨の折れる作業である.本特集では上記ガイドラインの執筆にも関わったエキスパートの先生方に,ガイドラインのエッセンスも含めて各分野をわかりやすくご解説いただいた.現時点での最新の知見がコンパクトにまとめられている.動脈硬化の予防医療,なかでも肥満・脂質異常診療を行う際に,本特集を御活用いただければ幸いである.
東京大学大学院医学系研究科循環器内科学講座
森田啓行