診断と治療
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2020年 Vol.108 No.11 2020-11-06
350人に1人 一般内科医が診る人工透析患者

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 菅野義彦
◆人工透析療法の現状
腎代替療法の適応と選択 寺脇博之
血液透析の現状と将来 秋山健一,他
腹膜透析の現状と未来 中元秀友,他
わが国における腎移植の現況 岩本 整,他
長時間・頻回透析 友 雅司
透析療法の差し控え・継続中止 酒井 謙
人工透析以外の血液浄化 吉金かおり,他
◆透析/移植患者への対応
血液透析患者が一般内科外来を受診したときの注意点 小林一雄,他
血液透析患者に行ってよい検査と処置 栗橋健夫
腹膜透析患者,腎移植後患者が一般外来を受診したら注意すること 丸野紗也子,他
◆高齢化の進む透析患者への対応
透析患者の認知症 庄司哲雄
サルコペニア・フレイルと運動療法 鈴木一裕
◆透析をとりまく環境,関連情報
透析施設に求められる機能(栄養指導,リハビリテーション,訪問医療など) 平山智也
透析患者と社会保障 西脇宏樹,他
透析医療と医療安全 小松康宏
労働者としての透析/移植患者 伊従正博
災害と透析医療 菊地 勘
透析療法を通した海外協力 兵藤 透,他
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
発熱,皮疹,肝脾腫を認めた60代男性 水島伊知郎,他
◎注目の新薬
デエビゴ®(レンボレキサント) 小曽根基裕
◎医療裁判の現場から
抗凝固薬を服用中の患者に対する内視鏡的大腸ポリープ切除術の術前休薬期間をめぐって 太田善大
わが国でも1960年代に臨床応用が始まった人工透析療法は,治療の進歩に伴いその患者数が当初の数百人から現在30万人を超えるまでになった.2018年末の統計から算出すると国民378.8人に1人が透析患者となり,成人に限れば350人に1人以上という計算になる.
従来透析患者の診療は透析専門医を中心に行われ,透析を理由に侵襲度の高い種々の治療の適応外とされた時期もあった.しかし,技術の進歩や知識の蓄積,さらに合併症を予防する薬剤の開発,治療費をめぐる患者環境の改善により,初期とは比べ物にならないくらい安全に,また必要とするすべての人に透析療法を行うことができるようになった.そのため高齢での透析導入が増加,さらに透析患者の生存率も向上したことから,患者全体の高齢化が進み,多くの合併症を有する患者が増加している.実際にかかりつけの透析専門医では対応できない合併症について,腎臓および透析専門医以外を受診することも少なくない.また都市部では若年患者も再び増加してきており,社会の中で透析患者を見かけることが稀ではなくなっている.医療の中で社会の中で透析患者に対して配慮が必要なこと,不要なことを改めて考えてみる必要がある時代になったと考えている.
本特集ではまず,わが国の透析医療が50年以上の時間をかけて進歩してきた最新の状態を知っていただき,さらに透析療法や腎移植を受けている患者が普段のエリアから出たときに,そこで対応する方々が直面する問題について解説をいただいた.透析療法を専門とされている先生方はもちろん,専門とされていない実地医家の先生方にも役立つ内容になれば幸いである.
東京医科大学腎臓内科学分野
菅野義彦