産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2016年 Vol.83 No.11 2016-10-18
子宮筋腫の最前線

定価:本体2,700円+税
企画 大須賀 穣
1.子宮筋腫の薬物療法:わが国での現状 / 楠木 泉
2.子宮筋腫の薬物療法:これからの導入が期待される薬物 / 谷口文紀
3.腹腔鏡下子宮筋腫核出術 / 太田啓明・他
4.腹腔鏡下子宮全摘術:巨大子宮筋腫に対する工夫 / 塚田和彦・他
5.集束超音波治療法の現状 / 大森真紀子・他
6.子宮動脈塞栓術(UAE)の現状 / 井上裕美・他
7.子宮筋腫合併不妊の取り扱い / 菊地 盤
8.妊娠中の子宮筋腫の非手術的管理 / 長谷川潤一・他
9.妊娠中の子宮筋腫の手術療法 / 田中幹二・他
10.まれな子宮筋腫の取り扱い / 福田美香・他
11.子宮筋腫と子宮肉腫の最新鑑別法
―画像診断Radiomics解析法 / 吉田好雄
12.子宮筋腫の起源:幹細胞からの理解 / 小野政徳・他
13.子宮筋腫発育についての最新の理解 / 石川博士
14.子宮筋腫と不妊症 / 吉野 修・他
連載
若手の最新研究紹介コーナー
子宮筋腫とエピジェネティック異常
―子宮筋腫バイオマーカーとその応用 / 前川 亮
新規選択的エストロゲン受容体モジュレーターによる
子宮筋腫治療薬開発 / 李 賓
Essay外界事情
Metronidazole—Associated Encephalopathy / 矢沢珪二郎
Essay青い血のカルテ
ディオニューソス(バッカス)の起源はニキビ菌 / 早川 智
総説
腹腔鏡下手術の現状と癒着防止材使用の工夫 / 伏木 弘・他
症例
後腹膜原発と診断した巨大平滑筋腫の1例 / 山本 櫻・他
まれな異所性妊娠の2症例
― 子宮角部妊娠 vs. 卵管間質部妊娠 / 大塚晃生・他
厳重な周産期管理により良好な予後が得られた
遺伝性血管性浮腫合併妊娠の1例 / 大野原良昌・他
子宮筋腫は,産婦人科医にとって最もなじみの深い疾患の一つである.現在は手術から離れていらっしゃる先生でも子宮筋腫の手術を経験されていない方はいないくらい,一般的な疾患である.今から30年ほど昔を振り返ると,子宮筋腫は子宮全摘術の対象として日常的であった.しかしながら,妊娠年齢の急速な高齢化と種々の理由により子宮温存を希望する患者が増加したため子宮全摘術は減少し,子宮筋腫核出術が急増してきた.また,近年では子宮筋腫に伴う月経困難症などの症状を適応としていくつかの新薬が登場し,医師にとっても患者にとっても治療の選択肢が広がっている.さらに,子宮動脈塞栓術や集束超音波治療法といった治療も行われるに至り,子宮筋腫の治療は百花繚乱の時代を迎えているといえる.
一方,妊娠年齢の高齢化は子宮筋腫合併不妊症や子宮筋腫合併妊娠に遭遇する頻度を増加させ,臨床の現場へ新たな問題を投げかけている.たとえば,子宮筋腫合併不妊症に対して妊娠するために体外受精,手術をどのように組み合わせるかはもちろん重要な問題であるが,最終的には母児ともに満足できる無事な出産に至るための妊娠後のことも考えて治療を組み立てなければならない.すなわち,治療法の進歩,社会背景の変化に応じて,考え方も進歩させていく必要に迫られている.
翻って,子宮筋腫の病因・病態についてみると,これまで研究があまり進んでいなかった.しかしながら近年の多様な研究手法の進歩とあいまって,基礎研究においても最近相次いで興味深い報告がなされている.
本特集では最先端の子宮筋腫の治療法を第一線の臨床で活躍する先生方に解説していただくとともに,基礎研究についても新進気鋭の先生方に解説していただく.これにより,現時点での子宮筋腫の治療と研究を総括し,読者の先生方の日常の臨床のグレードアップにお役立ていただければ幸甚と考える次第である.
(東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 大須賀 穣)