産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2019年 Vol.86 No.増刊号 2019-04-04
新時代のホルモン療法マニュアル

定価:8,250円(本体価格7,500円+税)
「産科と婦人科」編集委員会
大須賀 穣 髙松 潔 田中 守 渡部 洋(五十音順)
■第1章 総論
1 GnRHアナログ製剤の種類と特徴 大須賀 穣
2 ゴナドトロピン製剤の種類と特徴 工藤正尊
3 エストロゲン製剤の種類と特徴 安井敏之
4 黄体ホルモン製剤の種類と特徴 北脇 城
5 ホルモン療法と発がんリスク 小川真里子・他
6 ホルモン製剤の有害事象 岡野浩哉
7 妊娠・出産に伴うホルモンの生理的変化 石本人士
■第2章 各論
A 生殖内分泌
1 思春期早発症 生水真紀夫
2 無月経 城田京子
3 黄体機能不全 明星須晴・他
4 機能性子宮出血 升田博隆
5 月経困難症 楠木 泉
6 一般不妊治療における排卵誘発 銘苅桂子
7 生殖補助医療(ART)における排卵誘発 江頭活子
8 多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) 原田美由紀
9 高プロラクチン血症 北原慈和・他
10 早発卵巣不全 鈴木由妃・他
11 男性不妊症 宮本敏伸・他
12 多毛症 沖 利通
13 不育症 今枝憲郎・他
B 女性医学
1 避妊(contraception) 安達知子
2 緊急避妊 北村邦夫
3 月経調節 下平和久
4 子宮内膜症・子宮腺筋症 谷口文紀
5 PMS/PMDD 江川美保
6 子宮筋腫 山田しず佳・他
7 性同一性障害(GID) 中塚幹也
8 ターナー女性の管理 岡田有紀子・他
9 更年期障害 樋口 毅
10 骨粗鬆症 倉林 工・他
11 脂質異常症 篠原康一
12 過活動膀胱(OAB) 吉澤 剛・他
13 骨盤臓器脱(POP) 中田真木
14 女性性機能障害(FSD) 二宮典子・他
15 ドライシンドローム 平野茉来・他
C 周産期
1 切迫早産 大槻克文・他
2 Basedow病・甲状腺機能低下症 百渓尚子
3 糖尿病・妊娠糖尿病 税所芳史・他
4 胎児肺成熟 谷垣伸治・他
5 妊娠中期分娩誘発 成瀬勝彦
6 妊娠末期陣痛誘発・弛緩出血 千草義継
7 頸管熟化 杉村 基
8 産褥乳汁分泌管理 青木宏明
D 腫 瘍
1 子宮内膜増殖症 太田 剛
2 子宮体癌 長谷川清志・他
3 子宮平滑筋肉腫 竹原和宏
4 子宮内膜間質肉腫 小林陽一
5 卵巣癌 金野陽輔・他
6 乳癌 大住省三
7 がんの転移再発予防 下平秀樹・他
8 女性がんの化学予防 平沢 晃
9 アロマターゼ阻害薬と婦人科がん 黒星晴夫
10 がんのサポーテッドケア 横山良仁
◆注目の製品 レルミナⓇ錠40mg 大須賀 穣
◆主な略語一覧
◆事項索引
◆処方薬索引
ホルモンという言葉は,古代ギリシャ語で「刺激する」とか「興奮させる」という意味を持つ「ὁρμᾶν」が語源とされており,ロンドン大学の生理学の教授であったErnest Starlingが1905年に初めて使ったといわれています.特定の細胞でつくられ,血流で運ばれて,ホルモン特異的標的臓器(細胞)に作用して特定の応答を引き起こす物質(南山堂医学大事典)と定義されているとおり,直接的に関連がなさそうな臓器間のネットワークを担うものとして人体の機能には欠かせないものです.特に産婦人科領域では視床下部-下垂体-卵巣という重要な系があるため,ホルモンは排卵・月経発来といった生殖内分泌領域,さらに妊娠成立と妊娠中の諸機能維持といった周産期領域はもちろんのこと,ホルモン感受性腫瘍の問題やベストサポーティブケアの観点から腫瘍領域にも関係してきます.また,エストロゲン受容体は女性性器のみならず,ほぼ全身に分布していることが知られていますから,ホルモン変化は多くの病態・疾患の要因となり,女性医学領域にも重要です.つまり,女性はホルモンに支配されているといっても過言ではないでしょう.逆に,女性への対応はホルモン療法抜きでは成り立たないともいえます.さらに,近年,新規ホルモン製剤の開発や従来とは異なった新たなホルモン製剤の応用も始まっています.
しかし,患者さんからよく聞く訴えは「自然な方法がよいので,ホルモン剤はいや」ではないでしょうか? 実はホルモンこそ体内にある自然な方法です.にもかかわらず,産婦人科医にとってもホルモン療法は何か不安のある,ブラックボックス的な印象があるようで,ホルモン嫌いという先生もいらっしゃるようです.その理由の一つはホルモンカスケードが複雑でよくわからない,つまりホルモン変化による病態のメカニズムが理解しにくいことだと思います.これが有害事象出現時に対応に苦慮することにもつながります.また,最近の新しいホルモン製剤の導入に対し,食わず嫌いとなっていることもあるのではないでしょうか? さらに,都市伝説となっている「ホルモン剤=危険」といった根拠のない思い込みもあるかもしれません.
そこで,本特集ではホルモン療法への疑問と不安を払拭していただき,安心・安全かつ有効にホルモン製剤を使っていただくために,各種ホルモン療法のメカニズムと効果,また,実臨床ですぐに役立つような処方例をそれぞれの分野のエキスパートにまとめていただきました.診療における座右の書としてお使いいただき,平成に続く新時代でのホルモン療法がさらにレベルアップすることを期待しています.
(「産科と婦人科」編集委員会)