産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2020年 Vol.87 No.2 2020-01-17
一から学びなおす 婦人科がん化学療法有害事象の管理

定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 渡部 洋
1.消化管障害―化学療法誘発性悪心・嘔吐 / 安部正和
2.消化管障害―下痢・消化管穿孔 / 富田友衣・他
3.皮膚・粘膜障害 / 葭葉貴弘・他
4.肺障害 / 松元 隆
5.血管障害 / 本多つよし・他
6.循環器障害 / 小宮山慎一・他
7.肝障害 / 宮原大輔・他
8.腎・膀胱障害 / 利部正裕・他
9.末梢神経障害 / 百村麻衣・他
10.アレルギー反応 / 中村隆文
11.発熱性好中球減少症・敗血症 / 嶋田貴子・他
12.電解質異常 / 大槻健郎・他
13.腫瘍崩壊症候群 / 櫻井 学
14.インフュージョンリアクション / 河村美由紀・他
15.治療関連骨髄性腫瘍(二次性白血病・骨髄異形成症候群) / 横須幸太・他
連載
若手の最新研究紹介コーナー
The impact of the Great East Japan Earthquake on obstetric complications:results from the Fukushima Health Management Survey / 村田強志
来たれ! 私たちの産婦人科 第38回
島根大学医学部産科婦人科 / 京 哲
症例
臨床的侵入奇胎による黄体化過剰反応が原因で発症した巨大卵巣茎捻転に対して腹腔鏡下に温存手術を行った1例 / 松木翔太郎・他
左卵管妊娠の疑いで緊急腹腔鏡下手術を施行し,腹膜妊娠と診断した1例 / 本多秀峰・他
腟閉鎖術後に手術加療し診断した子宮体癌の1例 / 村岡純輔・他
卵巣腫瘍と術前診断された子宮筋腫水腫変性の2例 / 村岡由真・他
近年の婦人科がん化学療法は,有効性のみならず安全性と認容性が担保される治療法として確立されていることから,薬剤の投与も通院での外来化学療法が主体となってきている.しかし,婦人科がん化学療法のkey—drugであるシスプラチンがわが国で保険承認され,化学療法が婦人科がんにおいて手術および放射線療法と並ぶ有効な治療戦略として認識されはじめた1980年代前半の化学療法黎明期においては,有害事象の管理に日々苦慮させられる主治医泣かせの治療であった.
現在は当たり前に使用されている顆粒球コロニー形成刺激因子(G—CSF)および5—HT3受容体拮抗薬のわが国での保険承認はそれぞれ1991年,1992年であるため,特に白血球減少,好中球減少や嘔吐および食思不振への対応は困難を極めた.このため,当時の化学療法患者を担当する若手産婦人科医師は,好中球減少が確認されると,予防的抗菌薬と血球増多のための対症治療薬を処方し,面会禁止のうえ,病室の準クリーンルーム化を指示し,滅菌エプロンとマスク装着による訪室を行っていた.さらに一番の苦労は,消化器症状や倦怠感のために治療中止を訴える患者に化学療法の継続を説得することであった.現在の外来化学療法室から,にこやかな笑みとともに自宅へ帰って行かれる患者の姿をみると,まさに隔世の感がある.
昨今の婦人科がん治療の臨床では卵巣癌を中心に新規分子標的薬の保険承認がなされており,これまでの殺細胞性抗腫瘍薬とは異なった新たな有害事象の発生も報告されている.そこで本号では,婦人科がん化学療法の最前線に立つ婦人科腫瘍医,および婦人科がん化学療法が安全に管理可能となった時代から婦人科腫瘍医を目指した若手医師を対象に,がん化学療法に伴う有害事象の管理について学びなおす特集を企画した.本特集号が,がん化学療法を受けておられる患者のQOLの維持への寄与とともに安全かつ有効な婦人科がん化学療法の展開の一助となれば幸いである.
(東北医科薬科大学産婦人科 渡部 洋)