産科と婦人科
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充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2020年 Vol.87 No.6 2020-05-19
婦人科がん臨床研究のトレンドを知る

定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 渡部 洋
1.わが国における婦人科悪性腫瘍の臨床研究の歴史 / 落合和徳
2.海外トピックス:子宮頸がん / 三上幹男
3.海外トピックス:子宮体がん / 進 伸幸・他
4.海外トピックス:卵巣がん / 廣瀬 宗・他
5.アジアにおける婦人科がん臨床研究の展開 / 杉山 徹
6.婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG):子宮頸がん / 武隈宗孝・他
7.婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG):子宮体がん / 竹原和宏・他
8.婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG):卵巣がん / 島田宗昭・他
9.婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG):支持・緩和医療 / 吉田好雄・他
10.日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)婦人科腫瘍グループ / 石川光也
11.東北婦人科腫瘍研究会(TGCU) / 横山良仁
12.北関東婦人科がん臨床試験コンソーシアム(GOTIC) / 藤原恵一・他
13.関西臨床腫瘍研究会(KCOG) / 伊藤公彦・他
14.三海婦人科癌スタディグループ(SGSG) / 佐藤慎也・他
15.西日本婦人科悪性腫瘍研究会(WJGOG) / 西尾 真・他
連載
若手の最新研究紹介コーナー
3次元子宮内膜組織を用いた新規受精卵着床 in vitro モデルの構築−再生医療技術の産婦人科分野への応用研究− / 藏本吾郎
来たれ! 私たちの産婦人科 第42回
山形大学医学部附属病院 産科婦人科学講座 / 山谷日鶴
症例
仙骨子宮靱帯に着床し診断に苦慮した腹膜妊娠の1例 / 勝間慎一郎・他
妊娠中の便秘を契機に発症した若年者虚血性大腸炎の1例 / 田中良明・他
近年は産婦人科全領域においてevidence—based medicine (EBM)の概念が浸透し,患者のよりよい治療予後を目指した臨床研究が積極的に実施されている.特に婦人科腫瘍学分野においては,患者ゲノム情報に基づいたprecision medicine の展開や新規分子標的薬の開発による保険適用承認薬剤の増加,さらにはロボットや腹腔鏡を用いた婦人科悪性腫瘍手術の低侵襲化の進展などによって,婦人科がんの治療戦略は急速な進化を遂げている.このため,国内外において新たな臨床研究が計画され,数多くの興味深い検証成績が報告されてきている.
婦人科悪性腫瘍に対する抗悪性腫瘍薬治療に関する臨床研究は,婦人科悪性腫瘍研究機構(Japanese Gynecologic Oncology Group: JGOG)および日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)婦人科腫瘍グループを主とする全国臨床研究組織の牽引によって大規模臨床第3相試験が実施され,新たなevidenceをわが国から世界に向けて発信してきた.また将来的な有効性検証を前提とした,第1相試験,第2相試験については,地方の多施設共同研究組織によっても精力的な検証が行われている.
そこで本特集号では,婦人科がん臨床研究の歴史と今後の方向性,欧米を中心とした海外と近年活性化の著しいアジアにおける婦人科がん臨床研究の動向,国内の代表的な婦人科がん臨床研究組織であるJGOGおよびJCOG婦人科腫瘍グループで実施されている最新の臨床研究の解説,さらには東北,関東,関西,中四国,および九州の各地方の婦人科がん多施設共同臨床研究組織の活動の現況と現在実施されている臨床研究について解説をいただくこととした.
2018年に施行された臨床研究法による臨床研究実施体制の変更や,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針の改訂などによって,婦人科がん臨床研究を取り巻く環境は大きく変化を遂げてきている.しかし,臨床研究は日常臨床から生まれるclinical questionやclinical needsを解決し,科学的かつ有効な治療を患者に還元することを目的とすることには変わりはない.本特集号が,婦人科がん患者の予後改善とともに,婦人科腫瘍医の臨床研究に対するさらなるモチベーションの向上に寄与できることを願う.
(東北医科薬科大学産婦人科 渡部 洋)