産科と婦人科
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充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2020年 Vol.87 No.10 2020-09-17
分子標的薬を極める−基礎から臨床まで−

定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 渡部 洋
1.分子標的薬剤開発の現況と展開 / 田畑潤哉・他
Ⅰ.分子標的薬の基礎
2.塩基除去修復 / 井出 博・他
3.DNAミスマッチ修復 / 有田通恒・他
4.相同組換え修復 / 斎藤慎太・他
5.血管内皮増殖因子 / 樋田京子・他
6.チロシンキナーゼ / 小根山千歳
7.免疫チェックポイント分子 / 水谷輝之・他
Ⅱ.分子標的薬の有効性検証
8.PARP阻害薬 / 徳永英樹
9.血管内皮増殖因子阻害薬 / 松元 隆
10.チロシンキナーゼ阻害薬 / 河村美由紀・他
11.免疫チェックポイント阻害薬 / 中井英勝・他
Ⅲ.分子標的薬と臨床
12.PARP阻害薬を用いた自験例 / 添田 周・他
13.血管内皮増殖因子阻害薬を用いた自験例 / 簗詰伸太郎・他
14.チロシンキナーゼ阻害薬を用いた自験例 / 黒川哲司・他
15.免疫チェックポイント阻害薬を用いた自験例 / 奥井陽介・他
連載
若手の最新研究紹介コーナー
Engraftment Potential of Maternal Adipose—Derived Stem cells for in Utero Transplantation / 川嶋章弘
来たれ! 私たちの産婦人科 第46回
東京女子医科大学産婦人科学教室 / 田畑 務
原著
当院における子宮頸部腺癌pT1b1症例の後方視的検討 / 長尾有佳里・他
症例
腟原発悪性リンパ腫の1例 / 澤田育子・他
婦人科悪性腫瘍は他領域の悪性腫瘍に比して分子標的薬剤の開発と展開が遅れていたが,近年,血管内皮増殖因子阻害薬,poly (ADP—ribose) polymerase (PARP)阻害薬,チロシンキナーゼ阻害薬,および免疫チェックポイント阻害薬といった新規薬剤の保険適用が次々と承認され,婦人科悪性腫瘍の治療は新時代を迎えている.
分子標的薬剤は,従来の殺細胞性薬剤と薬理作用が根本的に異なり,悪性腫瘍細胞の増殖にかかわる特定の分子を抑制することから抗腫瘍効果を発揮するが,その標的となる蛋白や遺伝子の基本的な機能については意外に知られていない.また,分子標的薬剤が出現した当初は,悪性腫瘍細胞に特異的に発現する分子のみ攻撃すると理解されていたため,細胞毒として正常細胞にも異常を生じる殺細胞性薬剤と違い,薬剤投与による有害事象が認められないとされていたが,諸臓器悪性腫瘍への分子標的薬剤治療例が蓄積されてきた結果,従来の抗悪性腫瘍薬には認められない予想外の副作用が生じることも判明している.
そこで本号では,婦人科悪性腫瘍治療に用いられる分子標的薬剤に対する読者の理解を深める目的で,まず,免疫チェックポイント阻害薬やPARP阻害薬の有効性規定因子であるDNA修復機構,および代表的な薬剤標的分子である腫瘍増殖因子について,その機能と病的意義について基礎的な解説をいただいたうえで,欧米を中心に検証されている婦人科悪性腫瘍に対する各種分子標的薬剤の治療有効性および有害事象に関する臨床研究成績と新規分子標的薬剤開発の現況についての報告をお願いし,さらには分子標的薬剤を用いた治療症例をもとに治療の実際や注意点に関する具体的な解説をいただく特集を企画した.
本特集号が産婦人科医の分子標的薬剤に対する理解を深め,薬剤の適正使用および安全な治療適用が行われるとともに,婦人科悪性腫瘍患者の有効な長期予後改善に寄与されることを願う.
(東北医科薬科大学産婦人科 渡部 洋)