産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2020年 Vol.87 No.12 2020-11-18
女性のうつに強くなる

定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 髙松 潔
1.「うつ」とは? / 桑原優仁・他
2.女性ホルモンと気分変化 / 根本崇宏
3.脳科学研究からみたうつ病 / 板井江梨・他
4.プライマリ・ケアにおける面接 / 平島奈津子
5.うつの診断に用いられる問診票とその特徴 / 平出麻衣子
6.うつの治療―1)向精神薬の種類とその使い方・やめ方 / 松本泰幸・他
7.うつの治療―2)漢方療法 / 大澤 稔
8.うつの治療―3)心理療法 / 竹内武昭・他
9.月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD) / 大坪天平
10.不妊とうつ / 各務真紀・他
11.妊娠中のうつ / 佐藤昌司
12.がんサバイバーのうつ / 市倉加奈子・他
13.更年期のうつ / 小川真里子・他
14.老年期のうつ / 下田健吾
連載
若手の最新研究紹介コーナー
Small—molecule inhibition of Wee1 kinase by AZD1775 selectively sensitizes human papilloma virus(HPV)—associated cervical cancer to DNA—damaging therapies / 小林 理
来たれ! 私たちの産婦人科 第48回
防衛医科大学校病院産科婦人科 / 高野政志
原著
スマートフォンを用いた子宮頸がん検診アプリの開発と利用効果 / 松浦祐介・他
症例
子宮頸部細胞診ASC—USでハイリスクHPV検査が偽陽性を示した1例 / 髙﨑和樹・他
腹腔内に多発した卵殻状石灰化像を伴う播種性卵巣囊胞性成熟奇形腫の1例 / 服部早苗・他
「21世紀はこころの時代」といわれて久しいですが,近年の社会状況の変化もあいまって,精神疾患は増加しています.特に,うつ病は女性が男性の2倍多いことが知られており,一生のうちに5人に1人が一度は罹患する病気といわれています.うつ病とまでいかなくとも,女性では月経前症候群や月経前不快気分障害,周産期うつ,更年期の抑うつなどホルモン変化に伴ってうつを発症しやすい時期があります.
しばしば,「うつはこころの風邪」などといわれますが,早期における適切な対応が欠けると症状が遷延し,治療に難渋することが知られています.特に,身体的症状がメインの病態では見過ごされることも少なくないため,プライマリ・ケアの場面ではうつを疑ってみる姿勢は重要です.また,うつ病患者の初診受診科は産婦人科が内科に次いで多いという報告もあるため,産婦人科はうつをピックアップするための重要な診療科の1つです.さらに近年,不妊女性,がんサバイバーや老年期のうつも大きな問題となっています.しかし,メンタルに関連することは避けて通りたいという産婦人科医も少なくないのではないでしょうか.
一方,治療としては,従来の三環系抗うつ薬などとは異なり,現在では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のように産婦人科医でも処方しやすい薬剤も臨床に導入されています.しかし,実際には処方経験がないと使いにくく,いわゆる抗不安薬に頼っているという話もよく耳にします.また,いわゆる抗不安薬は依存や認知症リスクの問題があることも知られています.さらに,心療内科や精神科へ紹介するにしても,どのような場合にお願いすればよいのか,迷うことも多いのではないでしょうか?
このように,産婦人科医もうつを含めて,こころの問題を避けては通れない,というよりも積極的に取り組む必要があるにもかかわらず,系統的にこの分野を学ぶ機会が少なく,対応に難渋することが多いように思われます.そこで本特集号では,女性のうつに関する基礎知識,診断や各種治療法の実際,さらに,各ライフステージや病態ごとのうつへの対応法についてエキスパートの先生方に解説いただきました.女性のうつに対する明日からの診療における座右の書となれば幸いです.
(東京歯科大学市川総合病院産婦人科 髙松 潔)