小児科診療
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2020年 Vol.83 No.4 2020-03-13
小児血液・腫瘍疾患の最前線

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /滝田順子
Ⅰ.診療のトピックス
難治性小児急性リンパ性白血病に対するCAR-T細胞療法 /平松英文
小児造血器腫瘍に対するハプロ移植 /菊田 敦
急性リンパ性白血病に対する抗体薬 /今村俊彦
急性骨髄性白血病に対する分子標的薬 /富澤大輔
高リスク神経芽腫に対するGD2抗体療法 /高橋義行
小児がんに対する陽子線治療 /副島俊典
横紋筋肉腫に対する治療の新知見 /宮地 充
血友病に対する治療の新展開 /野上恵嗣
人工知能と白血病の診断・治療の展望 /宮野 悟
Ⅱ.研究の最前線
急性T細胞性リンパ性白血病の分子病態 /木村俊介
白血病と薬剤感受性遺伝子の最前線 /田中庸一
Down症候群関連白血病の分子病態 /照井君典・他
小児固形腫瘍のゲノム医療の展望 /市川 仁
遺伝性腫瘍に対するゲノム医療体制 /熊本忠史
神経芽腫の分子病態 /渡邉健太郎
髄芽腫の予後因子 /中野嘉子
軟部肉腫の病理と遺伝子異常 /大喜多 肇
小児がんにおける患者腫瘍組織移植モデル構築の今後の展開 /加藤 格
症例報告
突発性発疹を契機に発症したparoxysmal tonic upgaze of childhoodの1例 /長堀由香里・他
滝田順子 /京都大学大学院医学研究科発達小児科学
昨今の分子生物学的基礎研究と臨床研究の進歩を背景に,小児血液・腫瘍学の分野はめざましい変化を遂げています.次世代シーケンサーの台頭により,この数年でがんの分子病態の解明が急速な勢いで進み,その成果はアクショナブルな変異の同定とそれに見合った分子標的薬の導入を目指したクリニカルシーケンスとして,実地診療に役立つ時代となりました.わが国においてもがんのゲノム医療は,国家的プロジェクトとして推進され,2018年4月には,全国に11か所のがんゲノム医療中核病院が選定されました.さらに2019年には全国に34か所のがんゲノム医療拠点病院と100か所のがんゲノム医療連携病院が新たに選定されたことに加えて複数の遺伝子パネルが保険収載され,質の高いゲノム医療を広く国民に届ける体制が整いました.したがって,小児がんにおけるゲノム医療の役割も以前にも増して重要になってくるものと考えられます.
一方,臨床面においても近年開発された遺伝子導入T細胞療法(CAR-T療法)は,再発・難治の急性リンパ性白血病(ALL)に対して劇的な効果を示すことが明らかとなり,わが国において2019年に早くも保険収載されました.すでに保険収載されている二重特異性抗体製剤(ブリナツモマブ)や抗腫瘍性抗生物質結合抗CD22モノクローナル抗体薬(イノツズマブ,オゾガマイシン)とあわせると,再発・難治ALLに対する治療のオプションはいっそう拡大しました.今後,これらの治療法をどのように選択してゆくべきか,エビデンスが積まれることと思います.また,わが国発の研究開発により,インヒビターを有する血友病Aに対する画期的なバイスペシフィック抗体薬(エミシズマブ)が開発され,血友病患者さんの治療の歴史が塗り替えられようとしています.
本特集では,各分野で中心的にご活躍の先生方に最近の小児血液・腫瘍疾患の研究,臨床における最先端の情報を網羅的に概説していただきました.これらの新しい知見が小児血液・腫瘍学を学ぶ若い先生方や研修医の先生方にとって日々の診療や研究の糸口としてお役に立ちますことを祈念いたします.また血液腫瘍の分野でご活躍の熟練の先生方をはじめ,専門を超えた多くの先生方の知識の整理にお役立ていただけましたら幸いです.