小児科診療
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連載「Photo Quiz」ではビジュアルに画像診断のポイントを解説.
2020年 Vol.83 No.9 2020-08-07
NICU卒業生の予後と診療のポイント

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /和田雅樹
Ⅰ.代表的な新生児疾患
超低出生体重児 /平澤恭子
SGA(small for gestational age)児 /中野有也
late preterm児 /小嶋絹子
慢性肺疾患-在宅酸素療法を中心に /須藤陽介・他
気道病変-持続陽圧呼吸療法や気管切開を中心に /山田洋輔
低酸素性虚血性脳症(HIE)-低体温療法を受けた児を中心に /柴崎 淳
低血糖-高インスリン血性低血糖症児を中心に /小林 玲
未熟児網膜症 /中尾志郎・他
新生児薬物離脱症候群-向精神薬使用母体児を中心に /河田 興・他
Ⅱ.先天異常・染色体異常
21トリソミー /高橋伸浩・他
18トリソミー症候群 /西 恵理子・他
13トリソミー /川崎秀徳
先天性心疾患-手術例を中心に /島田衣里子
先天性甲状腺機能低下症 /長崎啓祐
Ⅲ.先天性感染症
サイトメガロウイルス /森岡一朗・他
風 疹 /榊原清一
HBV・HCV /乾 あやの・他
クラミジア /有山雄太・他
梅毒-先天梅毒について /細川真一
トキソプラズマ /菅 秀太郎・他
症例報告
Haemophilus influenzaeによる急性腎盂腎炎を契機に慢性腎臓病が判明した7歳男児例 /大石賢司・他
和田雅樹 /東京女子医科大学母子総合医療センター新生児医学科
超早産で生まれた赤ちゃんは急性期の危機的な状況を乗り越え,その後,貧血や代謝性疾患,発育・発達の問題と向き合いながら退院していきます.新生児医療にかかわる医療スタッフはそれまでの苦労を知っているからこそ,愛情と敬意を込めて,NICUを退院していく子どもたちを「NICU卒業生」とよんでいます.
わが国の新生児死亡率は1980年代後半に世界のトップに立ち,その後もトップレベルを維持し続けています.一方で在胎24週未満の超早産児や重篤な疾患を合併した染色体異常の児の生存退院も増加し,「NICU卒業生」のなかには,以前では管理の難しかったような様々な合併症,後遺症をもちながら,在宅医療に移行する例も増えています.また,出生時にNICU管理は必要ではなかったものの,先天的な疾患や感染症のために新生児期・乳児期に検査や治療を要し,その後,小児科外来でのフォローアップが必要な子どもたちも多く存在します.これら胎児・新生児期に問題のあった子どもたちは,感染症をはじめ,発育・発達障害のリスクも高く,小児科外来や入院診療において一般小児科医がかかわっていくこともまれではありません.
今回,新生児期の代表的な疾患をはじめ,先天異常や染色体異常,長期にわたって管理が必要な先天性感染症について取り上げ,その予後および退院後の診療で重要な点に焦点を当てた特集を企画してみました.各疾患の病態生理や急性期の管理・治療は成書に譲るとして,本特集では亜急性期から慢性期,そして外来診療での管理に関して,各疾患の診療経験が豊富な先生方に解説していただきました.
わが国の超低出生体重児の生存率は80%を超えていますが,身体発育に関する問題や様々な発達障害のリスクもあり,一方でSmall for Gestational 児のDOHaDの問題も指摘されています.このように,「NICU卒業生」が健やかに成長していくためには,新生児医療から小児医療,さらにその後の管理へと継続した医療の連携が必要となっています.
本特集ではNICUフォローアップ外来のみではなく,小児科外来や健診の場面で「NICU卒業生」にかかわる際にも知っておくべき知識がまとめられています.各疾患の予後,診療時の注意点などを理解していただき,「NICU卒業生」や新生児期に問題のあった児のその後の診療にお役立ていただければと思います.