小児科診療
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2020年 Vol.83 No.12 2020-11-12
医療安全とともに学ぶ「小児の鎮静」

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /草川 功
Ⅰ.鎮静と医療安全
日本の医療安全制度と病院認証制度の発展 /小松康宏
「MRI 検査時の鎮静に関する共同提言」ができるまで /阪井裕一
「MRI 検査時の鎮静に関する共同提言」公表後に何が変わったか?:放射線科の立場から /相田典子
麻酔科医から見た「MRI 検査時の鎮静に関する共同提言」 /大嶽浩司
「Sedation Essence in Children under restricted Environment:SECURE講習会」について /久我修二
Ⅱ.鎮静の基礎
薬物動態の基礎 /小原崇一郎
小児に使用する鎮静薬の特徴と注意点 /糟谷周吾
鎮静薬の管理上の問題点 /後藤一美
Ⅲ.医療現場における鎮静の実際
救急外来での鎮静・鎮痛 /林 卓郎・他
腎臓領域の鎮静 /平本龍吾
血液・腫瘍領域の鎮静 /平林真介
循環器領域の鎮静 /三浦 大
神経領域の鎮静 /山中 岳
呼吸器領域の鎮静:気管支鏡検査時の鎮静 /池田健太・他
消化器内視鏡検査の鎮静・麻酔 /櫻井ともえ・他
小児集中治療領域の鎮静 /西村奈穂
新生児領域での鎮静 /久枝義也・他
Ⅳ.鎮静の今後
薬に頼らない子どものMRI検査への挑戦―子ども中心の視点から― /平田美佳
小児鎮静にかかわる医療事故の過去・現在・未来 /中下裕子
患者安全のために:最高質安全責任者(CQSO)養成プロジェクトについて /長尾能雅
「小児の鎮静」の将来 /山田紗也子・他 1802
原 著
福岡県におけるRSウイルス流行期間の検討 /岡田賢司・他
症例報告
非侵襲的陽圧換気療法が有効であった先天性両側声帯麻痺の1例 /今西梨菜・他
小児科診療/第83巻(2020年)総目次
草川 功 /聖路加国際病院小児科
わが国の小児医療において,鎮静は,何らかの処置・検査を行うための補助的な医療行為であり,あくまでも検査・処置という目的を遂行するための手段の1つと考えられていた.一方,欧米においては,鎮静は麻酔科医,あるいは,専任の担当医の仕事となり,鎮静は,補助的医療から1つの医療となってきた.特に米国では医療の質と安全を保つため,鎮静に関するガイドラインが数多く作成されるようになり,すでに何度も改定が行われている.このような世界の流れは,日本にも押し寄せ,小児医療現場で,検査のための鎮静が原因で子どもの生命にかかわる事例が出てくるようになった現状とあわせ,鎮静が子どもにとって大きなリスクであることが認識されるようになってきた.
そこで,日本小児科学会医療安全委員会では,まず,MRI検査時という特殊状況のなかでの鎮静に対して,医療者の意識改革をもたらすべく,「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」を2013年5月に公表した.この提言では,鎮静に対する考え方の基本である,①鎮静は自然睡眠と全く異なる,②鎮静の深さは「一連のもの」である,③どの鎮静薬も危険である,の3つを忘れることなく,子どもたちの安全を守るためにはどのように行動すべきかが述べられている.この提言には,具体的な薬剤の種類や使用量,処置の実際の方法などの記載はないが,逆に,MRI検査時だけではなく,あらゆる処置や検査時の鎮静に通ずる基本的な考え方がしっかりと述べられている.そして,この提言公表後に同委員会では,この基本的な考え方を全国に普及させるべく,医師,看護師,放射線技師が1チームとして参加することを基本としたSedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)コースという小児鎮静を理解するための講習会を11回開催してきた.
この提言は2020年2月に改訂されたが,その基本的な考え方は全く変わっていない.より安全な鎮静のために『推奨度が上がった部分』があること,過剰な鎮静を避けるためにも必要な『薬に頼らない鎮静』についての項目,科学的理解を深めるために『薬剤投与経路の特徴』の項目,そして,『Q&A』の項目の3項目が新たに追加されたことが相違点である(詳細は日本小児科学会HP『MRI 検査時の鎮静に関する共同提言』改訂版を参照).
提言が公表されてから7年がたち,医療界全体の医療安全に対する意識が高まるとともに,小児の鎮静に関してもいろいろな領域でガイドライン作成などの変化がみられている.
今回は,医療安全全体に対する考え方の変化,活動状況,そして,そのなかでも特に小児における鎮静に関する理解を深めるために,提言作成の歴史,提言公表による変化,そして,現在の小児領域での鎮静の実際,をそれぞれの第一線で活躍されている先生方にお願いした.この特集号を読むことで,小児の鎮静のすべてがわかるといっても過言ではない.この特集号の読者によって,子どもたちの安全がより守られることを信じている.