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甲状腺疾患と自己抗体検査診断と治療社 | 書籍詳細:甲状腺疾患と自己抗体検査

群馬大学大学院医学系研究科臨床検査医学

村上 正巳(むらかみ まさみ) 編集

初版 A5判 並製 80頁 2010年08月04日発行

ISBN9784787817877

定価:本体2,800円+税
  

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日常で甲状腺患者をフォローしている,一般開業医を含む甲状腺非専門医を対象とし,甲状腺自己抗体とその検査キットの使い方,意義などをわかりやすく説明している.

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目次

Contents

執筆者一覧
この本のねらい


第1章 甲状腺自己抗体測定試薬の発展 
  ………………………………………磯崎 収
 1.バセドウ病の病因としての抗TSH受容体抗体の発見と
  その測定法の進歩
  a.バセドウ病の発見と病因論の変遷
  b.long-acting thyroid stimulator (LATS)の発見 
  c.LATSやLATS-Pがヒト甲状腺を直接刺激する証明 
  d.ラジオレセプターアッセイによるTSH結合阻害抗体の測定と
TRAb測定キット 
  e. 甲状腺刺激抗体の測定 
  f. 第2世代TRAb測定法 
  g. 第3世代のTRAb測定法と自動化された迅速測定法
 2.橋本病の発見と甲状腺自己抗体測定の進歩
  a.橋本 策による橋本病発見
  b.実験的甲状腺炎による橋本病の再評価と橋本病患者の
甲状腺自己抗体の同定
  c.凝集法による甲状腺自己抗体測定
  d.高感度測定による抗TPO抗体,抗Tg抗体測定
  e.高感度抗TPO抗体,抗Tg抗体の測定意義 


第2章 甲状腺疾患の診断と治療

A 甲状腺機能亢進症とTRAb 
  ………………………………………伊藤光泰
  a.バセドウ病のメカニズム 
  b.バセドウ病の症状 
  c.破壊性甲状腺炎について
 1.診断におけるTRAb測定の意義 
  a.TRAbを用いた病態鑑別 
  b.TRAb測定のタイミング 
 2.治療におけるTRAb測定の意義 
  a.治療経過におけるTRAb値の解釈 

B 甲状腺機能低下症とTgAb,TPOAb
  ………………………………………笠木寛治 
 1.診断における測定意義 
 2.測定値の解釈 

C 妊娠と自己抗体  
  ………………………………………百渓尚子 
 1.妊娠および胎児への疾患の影響 
  a.バセドウ病 
  b.甲状腺機能低下症 
 2.必要な甲状腺関連検査
  a.甲状腺機能検査 
  b.TRAbの測定 
  c.抗甲状腺抗体(TgAb,TPOAb)の測定 
 3.妊娠中の管理の実際 
  a.バセドウ病 
  b.甲状腺機能低下症 
  c.甲状腺機能正常の橋本病 

D 他の自己免疫疾患との関係 
  ………………………………………宇佐俊郎 
 1.糖尿病における自己抗体 
 2.膠原病における自己抗体 
 3.重症筋無力症における自己抗体 
 4.自己免疫性甲状腺疾患における他の自己免疫疾患の自己抗体 


第3章 甲状腺疾患診療の実際と自己抗体検査 
  ………………………………………村上正巳 
 1.甲状腺疾患でみられる甲状腺腫,症状と身体所見 
  a.甲状腺腫 
  b.症状と身体所見 
 2.甲状腺疾患でみられる臨床検査所見
 3.甲状腺機能検査 
 4.甲状腺自己抗体検査
  a.抗TSH受容体抗体 
  b.抗サイログロブリン抗体,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 
 5.甲状腺疾患の画像検査
  a.超音波検査 
  b.シンチグラフィ 
 6.甲状腺疾患の診断 
  a.バセドウ病 
  b.甲状腺機能低下症 
  c.橋本病 
  d.無痛性甲状腺炎
  e.亜急性甲状腺炎 
 7.保険診療の実際
  a.外来迅速検体検査加算
  b.検査オーダー上の留意点

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序文

この本のねらい 
 甲状腺疾患は内分泌疾患のなかで最も多く経験される疾患であり,良性の慢性疾患,なかでも自己免疫疾患が多いという特徴がある.代表的な臓器特異的自己免疫疾患であるバセドウ病と橋本病においては,甲状腺に発現するタンパクに対する自己抗体が患者血中に検出される.
 サイログロブリン(thyroglobulin : Tg)は,甲状腺濾胞内のコロイドの主成分として蓄えられている分子量約66万の甲状腺特異的な糖タンパクであり,Tgの分子内で甲状腺ホルモン(T4,T3)の合成が行われる.甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase : TPO)は,Tg分子内のチロシンのヨード化反応とヨードチロシンの縮合反応を触媒する膜結合型酵素であり,甲状腺ホルモンの合成に主要な役割を果たしている.このような甲状腺ホルモンの合成は,下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone : TSH)により促進されるが,TSHは甲状腺の濾胞上皮細胞膜に存在するTSH受容体に作用して甲状腺機能を調節している.
 甲状腺機能亢進症をきたすバセドウ病においては,TSH受容体に対する自己抗体が出現し,甲状腺機能を持続的に刺激することがその病因である.また,甲状腺機能低下症の主要な原因である橋本病においては,TgやTPOに対する自己抗体が出現し,その病態に関わっている.このほか,一部の甲状腺機能低下症においては,TSH受容体に対する抑制型の自己抗体が検出される.近年,これらの甲状腺自己抗体の測定方法が改良され,検査の感度が向上し検査に要する時間も短くなっている.
 甲状腺疾患の患者は様々な症状を呈し,その初発症状からいろいろな診療科を受診することがある.甲状腺疾患の診断のポイントは,まず甲状腺疾患の存在を疑うことであり,甲状腺機能検査に加えて自己抗体検査を実施することにより,適切に診断することができる.
 本書では甲状腺疾患診療のエキスパートの先生方に,「自己抗体検査」にスポットを当てて,「今さら聞けない甲状腺の検査」について分かりやすく解説していただいている.本書で述べられている検査を適切に選択して実施し,その結果を的確に評価すれば,一般に甲状腺疾患の診断は困難ではない.本書をきっかけにして,自己抗体検査を中心とした甲状腺の検査の使い方と読み方に親しんでいただくこと,また,日常診療に生かしていただくことができれば幸いである.

 2010年7月
村上正巳(群馬大学大学院医学系研究科臨床検査医学)