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メタボリックシンドロームシリーズ

低アディポネクチン血症と動脈硬化学診断と治療社 | 書籍詳細:低アディポネクチン血症と動脈硬化学
―メタボリックシンドロームの病態―

財団法人住友病院院長

松澤 佑次(まつざわ ゆうじ) 監修

大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学

船橋 徹(ふなはし とおる) 編集

初版 B5判 並製 232頁 2011年04月01日発行

ISBN9784787818294

定価:本体5,000円+税
  

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内臓脂肪という源流にかえってメタボリックシンドロームの病態を基礎的のみでなく臨床的にも研究し,なぜ内臓脂肪が重要なのか,低アディポネクチン血症がどのように多彩な病態と関連するか,について説明した.さらに最近の研究成果を中心にメタボリックシンドロームの病態をわかりやすく,かつ科学的に解説した.メタボリックシンドロームの病態理解を通じて日頃の健康活動にも活かせる書.

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目次

Contents


監修の序 /松澤佑次 
編集の序 /船橋 徹 
総説
 メタボリックシンドロームの概念と変遷 /船橋 徹

第1章 脂肪細胞と脂肪組織の生物学

1)脂肪細胞の構造
a.白色脂肪細胞の微細構造 /西田 誠
b.皮下脂肪組織と内臓脂肪組織に違いはあるか
 ―白色脂肪細胞の形態学,特に,ヒト脂肪細胞を中心に(小児の脂肪細胞を含む)
 /杉原 甫,末崎幸生,青木茂久

2)脂肪細胞の分化と増殖
a.脂肪組織の増量機序,すなわち,脂肪細胞の肥大と増殖(ヒトを中心に)
―肥大脂肪細胞はβ14面体となる /杉原 甫,末崎幸生,青木茂久 
b.脂肪細胞の分化と増殖の分子メカニズム /清水亜紀,前田法一
c.内臓脂肪と皮下脂肪の分化,増殖の差異 /前田法一

3)脂肪細胞の機能
a.脂肪合成と脂肪分解 /火伏俊之
b.内臓脂肪と皮下脂肪の機能特性 /山岡正弥
c.アディポサイトカイン /岸田 堅

4)脂肪細胞と脂肪組織の病態
a.ヒトの,肥満とメタボリックシンドロームの場合の脂肪細胞
―肥満者での脂肪組織の小血管の変化から血圧上昇を説明できるか
  /杉原 甫,末崎幸生,青木茂久
b.内臓脂肪と皮下脂肪の過剰蓄積
―脂肪細胞機能異常(アディポトキシシティー)とは /船橋 徹,清水亜紀
c.脂肪組織の炎症,酸化ストレス,線維化 /平田 歩,藤田幸一
d.脂肪組織の血流と低酸素 /中川靖彦

5)アディポネクチン /木原進士,吉田卓也,小林祐次,清水亜紀

6)低アディポネクチン血症 /木原進士,船橋 徹

7)動脈硬化の病態
a.動脈硬化の成立 /岡本芳久
b.動脈硬化の病理 /橘真由美,岩佐葉子,上田真喜子
c.動脈硬化の臨床病態 /熊田全裕

第2章 メタボリックシンドローム,低アディポネクチン血症と病態

1) 糖代謝異常
―インスリン抵抗性,2型糖尿病 /井上佳菜,前田法一

2) 脂質代謝異常 /中辻秀朗,山本和美,山下静也

3) 血圧異常 /大橋浩二

4) 食後代謝異常 /中辻秀朗,岸田 堅

5) 冠動脈疾患 /大内乗有

6) 脳血管疾患 /前田法一

7) 心機能異常 /藤田幸一,前田法一,中辻秀朗

8) 腎疾患 /小村徳幸

9) 呼吸器疾患 /樫根 晋

10) 肝疾患 /鎌田佳宏

11) 消化管疾患 /西原承緒

第3章 内臓脂肪を基盤としたメタボリックシンドローム,動脈硬化性疾患対策

1) 内臓脂肪に着目したメタボリックシンドローム対策 /船橋 徹

2) 尼崎内臓脂肪研究 /岸田 堅,岡内幸義,中辻秀朗 

3) 千里スタディ /中辻秀朗 

4) メタボリックステーション(全身動脈硬化診療) /岸田 堅

おわりに――内臓脂肪蓄積とメタボリックシンドロームの病態の再検証 /船橋 徹 

索引

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序文

メタボリックシンドロームシリーズ
監修の序

 
 飽食と運動不足の環境の中で暮らす現代人において,エネルギーの体内への蓄積,すなわち肥満が避けがたい状況になっており,肥満を基盤にした糖尿病,高血圧,脂質異常などのいわゆる生活習慣病が,最終的に心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の発症につながることが21世紀の大きな医学的課題になっている.しかし,すべての肥満が病気の発症要因となるのではなく,腹腔内の内臓脂肪の蓄積が多彩な生活習慣病の発症を決める要因になるという事実がわが国の肥満研究を通じて明らかになり,内臓脂肪症候群という概念が提唱された.欧米でも,高コレステロール血症とは独立した動脈硬化のハイリスク病態として,インスリン抵抗性や肥満(腹部肥満)を含むマルチプルリスクファクター症候群が近年注目され,メタボリックシンドロームという名前で2005年に発表されたが,これはわが国の動脈硬化学会,肥満学会,糖尿病学会,高血圧学会など関連8学会の合同委員会で,内臓脂肪症候群と共通の概念であることが確認され,わが国のメタボリックシンドロームの概念と診断基準が2005年4月に発表されて,その後医学会はもちろん一般社会でも多くの関心を集めている.その間,内臓脂肪蓄積がなぜ多くの病態の発症要因になるのかについて脂肪細胞研究(アディポサイエンス)がわが国で急速に発展するとともに,メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に焦点を当てた予防医学の国家的戦略の特定健診・特定保健指導の制度が2008年にスタートしたのもご存じのとおりである.このような背景をもとに財団法人代謝異常治療研究基金の特別研究助成のテーマとして,本研究基金のコンセプトに最も相応しい対象疾患としてこのメタボリックシンドロームが選ばれ,1年目は「メタボリックシンドロームの病態」,2年目は「メタボリックシンドロームの治療」,3年目は「メタボリックシンドロームの疫学」について,全国から公募し,多数の応募プロジェクトの中から厳正な審査の結果,大阪大学の船橋徹准教授のグループ,京都大学の中尾一和教授のグループ,札幌医科大学の島本和明教授(現学長)のグループが選ばれ,いずれも3年間の期間で,それぞれのテーマの研究を進めていただいた.

 いずれの研究グループも,これまでの業績に加えて,本研究基金をもとにした新しい研究成果を数多く出しており,それらを盛り込んで「病態」「治療」「疫学」の3部作のテキストブックを作成していただくことになった.これらはメタボリックシンドロームの全貌を理解するためのバイブル的なテキストブックになるものと思われ,これら3冊をわが国でまだまだ増加の一途をたどっている生活習慣病,心血管病の診療や予防対策に活用していただければ,財団法人代謝異常治療研究基金の意義がさらに大きくなるものと思われる.


2011年3月

財団法人住友病院
松澤佑次



低アディポネクチン血症と動脈硬化学

―メタボリックシンドロームの病態―
編集の序

 メタボリックシンドロームは個人にマルチプルリスクファクターを合併する動脈硬化疾患の易発症状態である.もともとアメリカのReavenがシンドロームXと名づけたことに始まる.その後インスリン抵抗性症候群と呼ばれるようになったが,動脈硬化を生じる病態機構が明らかでなく,したがって有効な予防対策も存在しなかった.一方疫学的に肥満は,耐糖能異常,高血圧,高トリグリセライド血症,低HDLコレステロール血症をもたないと独立した危険因子としては,そう強くないことが示され,これらの異常を合併しやすい動脈硬化のハイリスク肥満とそうでない肥満を区別する必要が生まれた.そこで着目されるようになったのが脂肪分布である.当教室では内臓脂肪蓄積が重要であることを示し,内臓脂肪が蓄積し動脈硬化のマルチプルリスクを合併する状態を内臓脂肪症候群と名づけた.1990年代初頭の脂肪組織発現遺伝子解析,1997年からの未来開拓推進事業「脂肪蓄積と血管病発症の分子機構の解明」で,脂肪細胞が多彩な生理活性物質を分泌する内分泌細胞であることを明らかにするとともに,アディポネクチンという抗動脈硬化分子を発見した.2003年からはアディポミクスという特定領域研究が立ち上げられ,全国レベルで脂肪細胞科学が著しく進歩した.このような脂肪細胞機能異常を中心とした病態解明が進み,わが国では2005年に内臓脂肪蓄積を上流とした動脈硬化のマルチプルリスク病態をメタボリックシンドロームと定義する診断基準が発表された.さらに2008年からは内臓脂肪蓄積を解消して動脈硬化疾患を予防するための特定健診・特定保健指導制度が開始された.しかしながら世界的にはいまだ内臓脂肪や脂肪細胞機能異常に対する認識は十分でなく,内臓脂肪蓄積によらないリスクファクター集積と区別されない状況も生じ,その中でウエスト周囲径の論議が行われるようになった.

 このような背景の中,財団法人代謝異常治療研究基金により私たちの研究,「メタボリックシンドロームの病態解明と低アディポネクチン血症概念の樹立」に助成いただき,内臓脂肪という源流にかえってメタボリックシンドロームの病態を基礎的のみでなく臨床的にも研究し,なぜ内臓脂肪が重要なのか,低アディポネクチン血症がどのように多彩な病態と関連するか,について世界に発信する機会をいただいた.さらに本研究を含めた最近の研究成果を中心にメタボリックシンドロームの病態をわかりやすく,かつ科学的に解説する目的で本書を纏める機会をいただいた.松澤佑次前教授の時代から下村伊一郎現教授にいたる当教室の肥満・動脈硬化研究の流れや共同研究施設の研究成果を含めている.読者に脂肪細胞と動脈硬化の理解を深めていただくために佐賀大学名誉教授の杉原 甫先生,大阪市立大学教授の上田真喜子先生に病理学的な章をお書きいただいた.可能な限り原著論文をお読みいただきさらに理解を深めていただければと望むものである.メタボリックシンドロームの病態理解を通じて脂肪細胞と血管の科学に興味をもっていただき,日頃の健康活動に活かしていただければ幸いである.
 常に進むべき道を照らしていただいている現住友病院院長,松澤佑次先生に深謝し,序の言葉とさせていただく.

2011年3月

大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学

船橋 徹