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書籍詳細

Super Lecture 臨床糖尿病眼科学診断と治療社 | 書籍詳細:Super Lecture 臨床糖尿病眼科学

東京逓信病院眼科医長

善本 三和子(よしもと みわこ) 著

東京逓信病院眼科部長

松元 俊(まつもと しゅん) 著

吉川眼科クリニック院長

吉川 啓司(よしかわ けいじ) 著

初版 B5判 並製 全頁カラー印刷 158頁 2012年01月10日発行

ISBN9784787816429

定価:本体6,800円+税
  

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糖尿病網膜症の診療に際して,日頃から疑問に思っているであろう細目を洗い出し,それらを再構成して,初心者から中級者,さらにはベテランの生涯学習向けに,最新の治療法を詳述した.上級医から直接指導を受けなければいけない治療法であっても,極めて再現性の高い記載がなされているため,非常に高いレベルまで学ぶことができる,類書のない手引き書.

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目次

まえがき――「本書の成立事情」と「特長」 /松元 俊
本書の使い方
執筆者一覧
あとがき――「オゴソカ」と「アハハ」 /吉川啓司

 A 糖尿病眼科診療の実際
  1 糖尿病の基礎知識
  2 糖尿病患者の眼科診察の流れ――問診
  3 糖尿病患者の眼科診察の流れ――前眼部
  4 糖尿病患者の眼科診察の流れ――眼底検査
  5 糖尿病患者の眼科診察の流れ――初診時説明
  6 糖尿病患者の眼科診察の流れ――経過観察の方法
  7 糖尿病網膜症の検査――蛍光眼底造影(FA)
  8 糖尿病網膜症のレーザー治療――レーザー治療の基本的事項
  9 糖尿病網膜症のレーザー治療――レーザー治療の実際
 10 糖尿病黄斑症に対するトリアムシノロンTenon 嚢下注射
 11 糖尿病網膜症と白内障手術
 12 糖尿病網膜症の病期分類
 13 福田分類の解説
 14 福田分類の実際

 B 症例から学ぶ
 Q01 レーザーはもう十分にしてあるから,このまま落ち着いてくれるはずですよね!
    過去の病歴不明.レーザー治療を受けた記憶がある.しかし,最近,数年間は眼科には通院していない

 Q02 初診時,増殖網膜症! ここまで悪かったら,即,手術を考えるべきか!?
    網膜前出血と巨大な乳頭新生血管,増殖膜を認める網膜症.糖尿病の受診歴なし

 Q03 「異常血管」ってどうやって探したらいいですか?
    異常血管の見つけ方①:まず,アーケード血管沿いを探す

 Q04 「異常血管」ってどうやって探したらいいですか?
    異常血管の見つけ方②:視神経乳頭から少し離れた中間周辺部を探す

 Q05 新生血管を見つけたら,必ずPRPが必要ですか?
    新生血管の勢いは様々

 Q06 黄斑部の耳側ってレーザーしてはいけないのですか?
    黄斑部耳側以外はレーザー治療がされているが…

 Q07 黄斑部の耳側ってレーザーしてはいけないのですか?
    黄斑部の耳側にもレーザー治療がされている症例

 Q08 眼底出血がほとんどなくて,血糖コントロール良好なら大丈夫?
    7年前に心筋梗塞.今は眼底出血少数.HbA1c 5%優等生症例!

 Q09 派手な軟性白斑が消えたら,網膜症はよくなっているのでしょうか?
    3年前に軟性白斑数か所出現.その後,消失.血糖コントロール不良症例

 Q10 ちょっと変だけど,「単純網膜症」でいいですよね!?
    ずっと小さな出血斑のみで,血糖コントロール良好な紹介例

 Q11 網膜症に左右差があります.どのような点に注意したらよいですか?
    左右差のある網膜症:1段階程度の差ではあるが,現在active ! 進行中!

 Q12 網膜症の左右差は,ずっとそのままなの?
    左右差のある網膜症:2段階以上の差で現在inactive !

 Q13 乳頭黄斑線維束(papillomacular bundle)上の白斑は,何を意味しているの?
    papillomacular bundele上のべったりした厚い白斑

 Q14 白内障もあるが,網膜症にはどんなことに注意が必要なのかなあ?
    出血斑や白斑がみえる程度の白内障だが…

 Q15 網膜上膜って黄斑症と関係があるの?
    FAで黄斑部周囲に過蛍光.その後にERMが生じた例

 Q16 PRPをすると必ず黄斑浮腫は悪くなるの?
    PRP後に黄斑浮腫が消えた例

 Q17 黄斑浮腫の治療の際に,注意することは?
    黄斑浮腫の治療後15年で急激に視力が低下した例

 Q18 黄斑部に近い硬性白斑や毛細血管瘤にもレーザーを照射しますか?
    黄斑部近くに毛細血管瘤や硬性白斑が目立つ例

 Q19 黄斑部近くにある毛細血管瘤はすべてレーザーしたほうがよいの?
    黄斑部近くの毛細血管瘤:FAで漏出著明!

 Q20 黄斑部近くにある毛細血管瘤はすべてレーザーしたほうがよいの?
    黄斑部近くに毛細血管瘤と硬性白斑はあるが,FAで漏出がはっきりしない例

 Q21 視神経乳頭の周囲はレーザーをしてはいけないのかなあ?
    視神経乳頭周囲はレーザー治療されていなかった例

 Q22 PRPのときって,黄斑部の耳側はどれくらいレーザーしますか?
    視神経乳頭外新生血管のある未治療の増殖網膜症症例のレーザー治療

 Q23 レーザー治療は,どれくらいの期間で終了するのがよいでしょうか?
    予定したレーザー治療! 終わってみたら,いろいろな事情で,半年以上が経過していた例

Q24 以前レーザー治療をしたのに,硝子体出血を起こしてしまって…レーザーが効かなかったのかなあ?
    「レーザー治療施行済み」の紹介例

 Q25 後極部を中心にレーザー治療を行いました.その後,視力もよいので,ホッとしていますが…
    後極部の無血管野だけにレーザー治療を行った血糖コントロール不良例

 Q26 FA所見に基づいてPRPを施行.無事,予定どおり終了.PRPが済んだから当分は安心ですよね?
    「病気の勢い」に見合ったレーザー治療が必要なんです

 Q27 頑張ってレーザー治療をしました.まだまだ追加が必要?
    レーザー光凝固を約1,600発施行! まだ追加が必要な例

 Q28 頑張ってレーザー治療をしました.まだまだ追加が必要?
    レーザー凝固斑は少し少なめにみえたが,結果的には十分だった例

 Q29 PRPの結果,新生血管が完全に消失することってあるのでしょうか?
    硝子体出血を起こして,増殖網膜症から単純網膜症に戻った例

 Q30 初診時,硝子体出血! もはや硝子体手術以外には何もできないのでしょうか?
    硝子体出血がありながらも,硝子体手術前のレーザー治療が有効であった例

 Q31 白内障手術前に,レーザー治療をするかどうか,いつも悩んでいます
    白内障手術前のレーザー治療が黄斑浮腫を悪化させたと考えられる例

 Q32 糖尿病網膜症に網膜血管閉塞が合併すると悪化しやすい?
    切迫型静脈閉塞を疑い,抗血小板薬を内服していたにもかかわらず虚血がどんどん進行した例

 Q33 糖尿病網膜症に網膜血管閉塞が合併すると悪化しやすい?
    増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後にBRVOを起こし,黄斑浮腫が遷延した例

 Q34 腎障害が先行している糖尿病患者の場合,網膜症の「姿・形」が少し違いませんか?
    高血圧性腎症患者の糖尿病網膜症例

 Q35 目の前の患者さんの「これから」ですが,どこに注目すればよいですか?
    初診時HbA1c 12%,眼底出血・白斑多数,治療中断歴(+)例

 Q36 この患者さんの「これから」も同じですか?
    初診時HbA1c 10.8%,眼底出血・白斑多数,治療中断歴(+)例

 Q37 この患者さんの「これから」は両眼とも同じでしょうか?
    初診時HbA1c 12%,眼底出血・白斑多数,全くの初診例

 Q38 星状硝子体症を認めたとき,どのように観察していきますか?
    星状硝子体症にて眼底透見が困難な例


 Column
 1 新生血管の活動性をどのように判断するか
 2 PRPの適応となる糖尿病網膜症
 3 黄斑浮腫と網膜光凝固との関係
 4 糖尿病網膜症の診療にOCTは有用か?
 5 糖尿病患者とコーチング
 6 軟性白斑
 7 広角倒像レンズと角膜障害
 索  引
 和文索引
 欧文索引

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序文

 まえがき――「本書の成立事情」と「特長」
本書の著者名を御覧になって,「あれ? 素人が糖尿病の本を書いてる!?」と驚かれた読者の先生方もいらっしゃると思う.共著者のうち,吉川および松元の両名は,《緑内障専門医》と称しているからである.

長年眼科医をやっていると,自分の専門領域(サブスペシャリティ)以外の知識は,研修医の頃に指導医に教わったままであることが多い.学会やセミナーが充実している現代では,本来,自己研鑽で不得意領域を新しい知識に更新していかなければならないのだが,無理して出席してみても断片的な《新しい知識》のみが得られるばかりで,系統だった新しい知識や考え方はなかなか身につかないのが現状である.一念発起して,苦手領域の新しい教科書を読み始めても,最近の本の多くは分担執筆で,なかには,分担執筆者同士で意見の食い違いがみられることもあり,学問的には正しいのであろうが,門外漢にとってはクリアカットでないので,現場でどうすればよいか迷ってしまう.

今回,診断と治療社から「糖尿病網膜症についての,非専門医が日常診療で迷っていそうなことや,疑問に思っているような問題点を網羅的に洗い出して,それに対してクリアカットでわかりやすい本を作っていただけないか?」というお話があったのを幸い,畑違いであることは十分承知していたものの,《門外漢のほうが,かえって,無知な自分にもわかる本を作れるんじゃないか?》と勝手に考えてお引き受けした次第である(依頼してきた出版社の編集の人も,それを見越してのことのようだった,と今にしては,そう思われる).

もちろん門外漢の二人のみで書けるはずもないので,東京逓信病院の同僚で糖尿病網膜症の診療を生涯の仕事としている善本に参加を促した.

われわれ《緑内障屋》もそうだが,人は得意分野の話になると基礎的な知識の説明は省略して,自分の興味のある最先端の話題に集中しがちである.専門家であればあるほど,この傾向は強く,それが門外漢を阻害する一因になっていると思う.そこで,本書を作るに当たっては,まず門外漢の両名が糖尿病網膜症の診療で日頃疑問に思っていることを善本にぶつけてそれを解説する実際の症例をあげてもらった.本書後半の「B 症例から学ぶ」がそれである.このケーススタディのなかには様々な判断場面が含まれているが,門外漢たちが,《緑内障屋》特有の粘着気質で,「その判断をしたのはなぜか?」,「判断の元になった基礎知識は?」としつこく追究した.その結果が総論ともいうべき「A 糖尿病眼科診療の実際」であり,「Column」および参照マーク「☞」である.これらによって糖尿病網膜症専門医の思考回路をあぶりだし,それに必要な基礎知識も明らかにしたつもりである.

出来上がってみると,患者のキャラクターを知ることが大切であること,糖尿病患者のこれまでの経過を知ることも重要であること,など,病気を全人的に把握しようとする善本の診療姿勢を色濃く反映したものとなった.緑内障と同じように慢性疾患である糖尿病網膜症の診療においても,やはり病気/患者(「病気on患者」)と考えなければならないのだなと実感した次第である.

本書の校正でゲラを何度も読み返したあと,今まで嫌いだった糖尿病網膜症の診療が,「面白いかも」と思えるようになった.まさに企画段階で吉川が提案した本書のコンセプト《50の手習い,26の春》のように,眼科の経験は長いが糖尿病が苦手の眼科医や,これから糖尿病網膜症を学ぼうとする意欲的な眼科研修医の座右の書としてお使いいただき,糖尿病網膜症診療に対する興味をもっていただければ幸いである.
2011年師走
東京逓信病院眼科部長 松元 俊


あとがき――「オゴソカ」と「アハハ」

 ヒョンなことから東京逓信病院(TTH)眼科の松元俊先生と善本三和子先生の「本作り」のお手伝いをすることになってしまった……

 TTHは都内屈指の病院で,松元先生が眼科部長を務めている.彼は,いつも,「厳かな顔(オゴソカ)」をしている.むしろ,「オゴソカ」以外の顔はあまり,みせない……
 善本先生は,TTHの眼科医長として糖尿病を中心に診察されている.「『オゴソカ』も,『糖尿病はほぼすべて彼女に任せている」,というのがわれわれヤジウマ連の一致した意見である.ところが「オゴソカ」いわく,「『否,教わっている』というほうが実態で……」.事ほど左様に,「オゴソカ」は,彼女に「全幅の信頼」を置いているのである.
 善本先生は,根っからのマジメ人間であるが,箸が転がったりでもすれば,その美しい顔がひどく歪んでしまうほどに,「アハハ,アハハ,アハハ」と大笑いする.

 その,「オゴソカ」と「アハハ」が,TTHの糖尿病の診療について「本」にまとめることを計画した.それで,その「本」は主として初学者を対象にすることとしたため,「オゴソカ」から「協力しろ!」と私に指示が下った.直ちに,言い訳をした.「確かに,糖尿病も含め,全く,勉強不足であることは間違いない,しかも,ゴジュウを過ぎていて,オジサン過ぎる! 『協力しろ』,といっても無理だ!」.
 「オゴソカ」,答えてのたまうに,「眼科の臨床も進歩してオル.ダカラ,生涯にわたる勉学を要する.年齢? ソンナノ,カンケイない!」.
 かくして,反論の余地は,完膚なきまでに奪われた……

 「で,何を協力するの?」,おそるおそる言上してみるに,「オゴソカ」が言下に宣言した.「糖尿病網膜症の診療で困っていること,よくワカランことを,包み隠さず,ヨシモトに告白セヨ,それらへの対策を『本』にまとめる.一般の眼科の先生方の診療に直結するように,写真や図が中心になる.『本』が完成した暁にはTTHで推進している病診連携にも役立つはずである」と.なるほど,秋の空のように明快である!

 「ナ~ンダ,善本先生に告白! といっても,糖尿病についてか~」と,やや,落胆…….そんな,微妙な気分を全く無視して,「オゴソカ」はさらに続ける.「研修医など若い人の困っている点も吸い上げて,内容に盛り込む」.
 「ハァ」.
 「ツマリ,ゴジュウの手習いに向けての『本』だな.それとジュウゴの春,否,研修医だからニジュウシ,違う・・・ニジュウロクの春にも向けた『本』をめざすワケダ!」

 というわけで,糖尿病診療について困っていること,ワカラナイこと……を「アハハ」に包み隠すこと一切これなく,すべてを告白し,それが整理・整頓され,「本」になった……
 「オゴソカ」からの指示がきっかけではあったが,出来上がった「本」を読んだり,見たりすることができる今は,ただただ「オゴソカ」と「アハハ」,並びに協力いただいた皆さんに,深甚からの感謝を捧げるのみ……

 付け加えれば,この「本」を「ニジュウロクの春」や「ゴジュウの手習い」に留まらず,サンジュウ・シジュウ・ロクジュウ・ナナジュウ……の眼科の先生方とも是非共有したい! 心底,そう,思う……

2011年12月吉日
吉川眼科クリニック院長 吉川啓司