HOME > 書籍詳細

書籍詳細

血液透析安全ガイドブック診断と治療社 | 書籍詳細:血液透析安全ガイドブック

札幌北クリニック

大平 整爾(おおひら せいじ) 編集

日鋼記念病院腎センター

伊丹 儀友(いたみ のりとも) 編集

初版 B6判 並製 320頁 2008年12月15日発行

ISBN9784787816757

定価:本体3,800円+税
  

立ち読み機能は、ただ今準備中です  


腎機能代替療法の主体である血液透析で医師・看護師・技士のチーム連携により無事故を目指すためのガイド.トラブルやヒューマンエラー防止のため、チャートで各手順を示した.

関連書籍

ページの先頭へ戻る

目次

序文   
執筆者一覧   


A維持透析の概要

1.日本の透析医療の現況   
 ………………………………………秋葉 隆
a我が国の慢性透析の概況
b我が国の透析患者の原疾患と死亡原因,その経年変化
c我が国の慢性透析患者の将来

◆ 我が国の透析医療費の変遷   
 ………………………………………大平整爾 

2.透析導入基準と患者への説明   
 ………………………………………伊丹儀友 
a腎代替療法
b透析導入基準
c腎代替療法の適応について
d尿毒症症状・兆候
e慢性腎臓病
f患者への説明のポイント
gかかりつけ医や腎臓・透析専門医でない医師に是非知ってもらいたいこと

◆ 欧米のガイドライン   

3.患者心理とその理解   
 ………………………………………大平整爾 
a揺れ動く患者の心理
b患者個々の特性
c患者・家族が医療者に寄せる信頼感と満足感
d患者・家族と医療者の関わり方
e患者との意志疎通で医療者が心がけるべき事項
f透析医療の抱える諸問題 

難しい医学用語を避ける     
返答の違い 

4.透析医療における医師の役割   
 ………………………………………大平整爾 
a現代医療の複雑多岐化
bチーム医療の必要性
c医療行為の責任
dコーディネーター(調整役)の存在
e医療職間の人間関係

5.透析医療における看護師の役割   
 ………………………………………水附裕子 
a対象の特徴
b透析療法を担う看護師の能力
c看護師の実践力

6.透析医療における臨床工学技士の役割   
 ………………………………………峰島三千男 
a臨床工学技士のニーズ
b臨床工学技士業務の現状
c透析医療における臨床工学技士の業務とその役割
d新しい時代の臨床工学技士に求められるもの


B維持血液透析導入の準備

1.腎機能代替療法の選択   
 ………………………………………伊丹儀友 
a腎移植
b透析(HD,PD)
c透析中止

◆ 被囊性腹膜硬化症   

2.食事療法   
 ………………………………………金澤良枝,中尾俊之 
a血液透析患者に対する食事療法の目的
b食事摂取基準
c食事指導のステップ
d身体活動レベルや身体状況の把握
e食事管理の評価  

食事指導のコツ   

3.透析医療と医療保険制度   
 ………………………………………太田圭洋 
a高額療養費の高額長期疾病(特定疾病)の特例
b自立支援医療(更生医療)
c障害者医療費助成制度
d介護保険
e障害年金
f身体障害者手帳

◆ 後期高齢者医療保険制度   
◆チャート 保存期腎不全・透析患者治療中に医師が記載する書類   

4. バスキュラーアクセスの作製時期・作製手技と選択・管理 
 ………………………………………久木田和丘,川村明夫 
aバスキュラーアクセスの特徴
bバスキュラーアクセスの開存率
cバスキュラーアクセスの合併症
dバスキュラーアクセスを長持ちさせるコツ

◆チャート 維持透析のバスキュラーアクセス確保   
内シャント作製のコツ   
内シャントは必要悪   

5.水質管理・透析液   
 ………………………………………川西秀樹 
a透析液水質管理
b透析液組成  

透析液水質基準 
◆チャート 透析液清浄化の概念   

6.体重管理   
 ………………………………………政金生人 
a体重管理はなぜ重要か
b適切なドライウエイトの設定
cどうして透析間に体重が増えるのか
d体重管理をうまくやるコツ

◆チャート 透析低血圧の対策チャート     
体重管理の御法度     
最も確実! 長時間透析   

7.血液浄化器,治療条件の選択   
 ………………………………………峰島三千男 
a各種血液浄化法と機能分類
b透析量の評価法
c透析指標(ガイドラインから)
dダイアライザー,透析膜の選択  

適正透析(一人ひとりの患者に適した治療)の実践     
urea kinetic modeling(UKM)     
compartment model     
K/DOQIのガイドライン     
日米透析患者の違い   
◆チャート 血液浄化器,治療条件の選択   


C維持血液透析の実際

1.維持血液透析の具体的な流れ   
 ………………………………………大平整爾 
a患者入室前にスタッフの行う準備
b患者の入室
c体重の測定
dベッドとその周辺の整理ならびに一般状態の観察,問診
eその日の透析条件の設定
fバスキュラーアクセスの観察
g皮膚消毒,穿刺,針の固定
h血液透析の開始:穿刺針と血液回路の接続,抗凝固薬注入
i血液透析施行中の計器チェックと患者観察と話し合い
j血液透析の終了(返血,止血,血圧測定など)
k透析後の体重測定とその際の患者の状態
l後片づけ
m透析操作の基本

◆チャート 血液透析実施の流れ   
バスキュラーアクセスの観察   

2. バスキュラーアクセス穿刺の実際,血流量の決定,返血,止血
 ………………………………………前波輝彦,菅野靖司 
a穿刺前に学ぶこと
b穿刺手技
c穿刺ミス
d血流量の決定
e返血
f止血

人工血管使用内シャント穿刺のコツ   
人工血管使用内シャント穿刺「線でさすな,点でさせ!」   
止血時間の延長   
止血の強さ   

3. 血液透析施行中の合併症と対策   
 ………………………………………柏木哲也,栗原 怜 
a血圧低下,ショック
b悪心・嘔吐,腹痛
c筋けいれん
d頭痛
e発熱,戦慄
f皮膚瘙痒感
g胸痛
h不整脈
iむずむず脚症候群
j血管痛・シャント肢痛
k呼吸困難

空気誤入   

4.血液透析施行中の患者ケア   
 ………………………………………佐藤久光 
a医師の指示を確実に実施し,記録すること
b安全に治療を施行するために
c安楽な透析治療のための援助
d透析中の積極的なケア
e透析中の処置
f透析中の合併症の予防
g精神疾患のある患者のケア

5.血液透析施行中の計器管理   
 ………………………………………上村恵一 
a計器管理を行うタイミング
b血液回路側内圧監視
c透析液側内圧監視
d透析条件設定値監視
e血液回路目視監視

◆チャート 血液透析施行中の計器管理   
警報発生時   
静脈圧異常   

6.終了時および帰宅時の注意事項   
 ………………………………………中原宣子 
a計画通りの透析が行われたか
b返血
c必要薬剤の投与
d止血処置・バスキュラーアクセスの観察
eバイタルサインと一般状態の観察
f離床時の注意事項
g透析後の体重確認
hベッド周辺の整理
i帰宅確認

判断「十分な血流量がとれているか」   
透析中の注射薬の注入〔静脈側〕   
透析中の輸血〔動脈側〕   
止血時間の延長要因と解決策   
◆チャート 終了時および帰宅時の注意事項   


D日常の患者ケア

1. カルシウム,リン,副甲状腺ホルモン,二次性副甲状腺機能亢進症   
 ………………………………………大浦真紀,重松 隆 
aカルシウム管理
bリン管理
c副甲状腺ホルモン管理
d二次性副甲状腺機能亢進症

2.貧血   
 ………………………………………鈴木正司 
a貧血とは
b腎性貧血の原因
c腎性貧血に対するESA療法
d我が国の腎性貧血治療ガイドライン
e ESA治療時の留意点

新しい概念「CRA症候群」   
Erythropoiesis stimulating agent(ESA)   
◆チャート ESA療法   

3.血糖管理   
 ………………………………………阿部雅紀,海津嘉蔵 
a血糖コントロールと予後
b血糖管理の指標
c糖尿病透析患者の血糖管理の実際
d血液透析中の血糖変動
e自己血糖測定198  血糖管理の指標   
コツ 透析患者の血糖管理方法   

4. 血圧管理(降圧薬・心血管疾患)   
 ………………………………………杉本徳一郎,三瀬直文 
a血液透析患者の高血圧
b血圧の管理
c安心安全な透析
d透析患者の低血圧
e内シャントと心機能の関係

5.ウイルス性肝炎およびその他主要感染症   
 ………………………………………原田孝司 
a透析患者の易感染性
b血液媒介感染症(肝炎ウイルス)
c接触性感染
d飛沫感染
e空気感染

透析施設での肝炎ウイルス院内感染事故   
針刺し事故   

6. 透析合併症(短期的・長期的)   
 ………………………………………中山昌明,加藤順一郎 
a血液透析患者の基本的な病態
b血液透析の合併症ケア

◆ 酸化ストレスとは   
食塩コントロール   
透析患者の認知障害について   

7. 投薬・服用順守・サプリメント   
 ………………………………………太田美由希,平田純生 
a投薬(処方指示)
b服薬順守
c OTC薬
dサプリメント

薬の整理のコツ   
do処方について   
コンプライアンスとアドヒアランス   
◆チャート 薬剤処方のフローチャート   

8.メンタルケア   
 ………………………………………堀川直史 
a透析患者の精神医学的問題とその重要性
b透析患者のメンタルケアの要点
c支持的対応
d理解を深めるために有用な基礎的知識
e向精神薬療法
f医療者のメンタルヘルス

支持的対応の注意点   
患者の対処方略を支える   
アカシジア   

9. 骨・関節障害   
 …………………………今井 亮,岩元則幸,小野利彦 
a血液透析に関連した骨・関節障害
b腎不全に関連する骨病変
c腎不全に関連するアミロイドーシス
d日常よく遭遇する疾患

10.検査値の読み方とコツ   
 ………………………………………今田崇裕 
a透析患者に特有な検査値
b適正透析の基準となる検査値
c長期透析患者の重要な合併症である骨代謝に関与する検査値
d新規導入患者数の43%を超える糖尿病性腎不全の検査値

カリウム管理の注意   
上手な検査値の整理   
透析導入初期の透析の仕方   


E知っておくべき応用ケア

1.小児透析   
 ………………………………………伊丹儀友,中島泰志 
a小児透析の特徴
b小児血液透析
c合併症

抗凝固はモニタリングが重要   
ドライウエイトの探し方   

2.妊産婦透析   
 ………………………………………久保和雄 
a透析患者の妊娠・分娩の現状
b透析妊婦の透析管理
c妊娠許容条件

周産期死亡率   
妊産婦透析患者の透析回数   
妊産婦透析の診療報酬   
連日透析時の透析液について   
羊水過多   
抗凝固薬の選択   

3. 腎移植   
 ………………………………………中村雅将,水口 潤 
a日本国内での移植の成績
b腎移植の適応
c腎移植までの流れ

4. 緊急透析の実際   
 ………………松田兼一,森口武史,針井則一,後藤順子 
a患者背景
b病態のチェック
c緊急透析施行目的の確認
d血液浄化療法の決定
e操作条件の決定

◆チャート 緊急透析施行手順   
全身性炎症反応症候群(SIRS)と高サイトカイン血症   

索引   
編者略歴   

ページの先頭へ戻る

序文

わが国における腎機能代替療法の主体は依然として血液透析にあり,この意味で日常的に施行され全国的には年間約4千万回にもおよぶ毎回の維持血液透析が個々の患者にとって安全かつできるだけ苦痛の少ないものでなければなりません.患者の高齢化,長期透析患者の増加や基礎疾患としての糖尿病性腎症・腎硬化症の増加は,往時に比べて,血液透析の施行を明らかに困難にしてきています.これに対応するためには,透析関連の機器の進歩・発展のみに頼らずに,個々の透析スタッフが,変貌してきている患者背景に呼応して一層知識と実技を磨き上げていく必要があります.
本書は,これから本格的に維持血液透析療法に従事しようとしている若手の医師・看護師・技士を対象として,透析療法の基本と実技とを,日常臨床に即応して,できるだけ分かりやすく簡明に示そうと企画されました.
血液透析の実施には様々なプロセスがあり,各プロセスに関しては,次第に医師・看護師・技士の役割分担が明確に専門化されてきています.しかし透析医療はチーム医療の代表的な医療形態であり,それぞれの担うべき専門分野を適確に履行していくためにはそれぞれの守備範囲だけではなく,同時に他職種の業務に対しても関心を持ち一通りの知識を身につけることが望まれます.その上で,己の専門領域を一層深めていく必要があるでしょう.
血液透析に関わるトラブルや事故の原因は多種多様であり,透析室に勤務するすべてのスタッフが直接・間接に関わることを銘記しなければなりません.したがって,安全な透析の施行はチームとしての協働が求められます.その基盤は,�安全構造 �安全文化(風土)にありますが,前者には人員の配置・管理,指示系統・責任体制の樹立,業務手順の確立や使用機器の整備・管理などが含まれ,後者にはスタッフの心理的距離(人間関係の勾配),意思疎通の認識,チーム指向,自己・他者の受けるストレスの認識・管理,モラルモチベーションの向上,ヒューマンエラーの収集・分析,自己能力の向上への意欲などが挙げられます.これらの各項目を施設の特性に適合させて検討することが肝要です.
膨大な医療事故の解析を顧みるとヒューマンエラーが看過できず,他人を当てにする「リンゲルマン・ラタネの手抜きモデル」,いくつかのチェックポイントをすり抜けて発生する「スイスチーズモデル」,最初のスタッフが発生させた危険を引き継いだ者がより大きな危険に発展させてしまう「スノーボールモデル」などから,予防策を学ばなければなりません.
忘れがちな点は,安全な血液透析の遂行には患者自身の参画が必要不可欠なことであり,この領域に関する患者への指導と教育も徹底しなければなりません.そのためには,当然ながら指導教育にあたる透析スタッフが確実なworking knowledgeを取得しておくことが求められます.
William Oslerの述べた「医療は不確実の科学であり,確率の技である」を絶えず心に抱き,謙虚さと慎重さを忘れないことが肝要であり,換言すれば,医療は極めて理性的・合理的に進行する科学的な業務だとのみ考えられがちなのですが,日常臨床はむしろ著しく感情的な要素を加味した人間関係の上に立脚していることを認識すべきということになります.これは医療者-患者・家族間の関係だけではなく,医療者間の関係についても言えることであり,良好な,しかし,厳しさをも秘めた人間関係が求められると認識したいと思います.
私どもは慢性腎不全で透析医療を受ける患者をあらゆる方面から助力して,その人なりの最大限の社会復帰を可能にする業務を担うことになります.ご多用中にご執筆いただいた執筆者各位に心から感謝しつつ,本書がこの目的の遂行に対して日々のベッドサイドでお役に立つことを願っております.皆様の一層のご健闘とご研鑚を祈念いたします.

平成20年12月吉日
大平整爾