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書籍詳細

新しいめまいの診断と治療診断と治療社 | 書籍詳細:新しいめまいの診断と治療

いとう耳鼻咽喉科院長

伊藤 文英(いとう ふみひで) 著

初版 A5判 並製 112頁 2011年01月11日発行

ISBN9784787818317

定価:本体3,500円+税
  

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耳鼻咽喉科医としてめまいの診療に携わっている著者が,診断困難なめまい症例について,長年の診療経験に基づき,具体的な例を挙げながら診断と治療を検証.

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目次

推薦のことば 
はじめに 
chapterⅠ
めまいの診断と治療
 A.末梢前庭障害・中枢前庭障害 
 B.椎骨脳底動脈系の循環障害  
chapterⅡ
めまいのみの疾患
 A.椎骨脳底動脈循環不全 
 B.めまいのみの疾患の治療的診断  
chapterⅢ
椎骨脳底動脈系の循環障害によると考えられた
 頭位性めまい症例
 A.頭位性めまい症例に対する治療的診断 
 B.症例 1 64歳,女性 主訴:頭位性回転性めまい
症例 2 63歳,女性 主訴:頭位性回転性めまい
症例 3 50歳,女性 主訴:頭位性浮動性めまい
症例 4 67歳,女性 主訴:頭位性回転性めまい
 B.頭位性めまいの病態と臨床的特徴  
chapterⅣ
めまい症例の検討
 A.症例検討の前に 
症例 1 61歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 2 74歳,女性 主訴:頭位性回転性めまい
症例 3 77歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 4 48歳,男性 主訴:頭位性回転性めまい
症例 5 31歳,女性 主訴:体動時回転性めまい
症例 6 80歳,男性 主訴:頭位性回転性めまい
症例 7 77歳,男性 主訴:発作性回転性めまい
症例 8 76歳,男性 主訴:発作性回転性めまい
症例 9 54歳,女性 主訴:体動時回転性めまい
症例 10 34歳,女性 主訴:体動時回転性めまい
症例 11 37歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 12 32歳,女性 主訴:体動時回転性めまい,両耳閉感
症例 13 81歳,男性 主訴:浮動性めまい,両耳鳴の増強
症例 14 67歳,男性 主訴:浮動性めまい「フラフラ」,左耳鳴
症例 15 58歳,男性 主訴:上下性のめまい,左耳鳴
症例 16 61歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 17 57歳,女性 主訴:発作性回転性めまい,左耳鳴
症例 18 67歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 19 26歳,女性 主訴:発作性回転性めまい,両耳閉感
症例 20 54歳,女性 主訴:浮動性めまい,耳閉感
症例 21 25歳,女性 主訴:体動時回転性めまい
症例 22 42歳,女性 主訴:体動時回転性めまい
症例 23 71歳,男性 主訴:頭位性回転性めまい
症例 24 70歳,女性 主訴:回転性めまい
症例 25 52歳,女性 主訴:回転性めまい
症例 26 31歳,男性 主訴:浮動性めまい
症例 27 78歳,男性 主訴:回転性めまい
症例 28 69歳,女性 主訴:体動時回転性めまい,左耳鳴の増強
症例 29 73歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 30 74歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 31 34歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
症例 32 75歳,女性 主訴:発作性回転性めまい
 B.症例検討を終えて 
chapterⅤ
耳鳴・難聴,頭痛・頭重感,咽喉頭異常感(異物感)
 ―椎骨脳底動脈系に潜在する循環障害―
 A.椎骨脳底動脈系に潜在する循環障害が引き起こす症状 
症例 1 41歳,女性 主訴:左耳鳴,体動時回転性めまい
症例 2 70歳,女性 主訴:右耳鳴,体動時浮動性めまい
症例 3 68歳,男性 主訴:左耳鳴,体動時浮動性めまい
症例 4 65歳,女性 主訴:右耳鳴
症例 5 75歳,男性 主訴:左耳鳴
症例 6 72歳,女性 主訴:左耳鳴
症例 7 77歳,女性 主訴:右耳鳴
症例 8 73歳,女性 主訴:両側聴力の低下
症例 9 33歳,男性 主訴:耳閉感,発作性咳嗽
症例 10 59歳,男性 主訴:聴力低下
症例 11 59歳,女性 主訴:咽喉頭異常感
症例 12 51歳,女性 主訴:咽喉頭異常感
症例 13 42歳,男性 主訴:鼻閉,頭重感
症例 14 41歳,男性 主訴:頭痛,首・肩凝り
症例 15 45歳,男性 主訴:前頭部痛,首・肩凝り,耳痛
 B.症例検討を終えて 
おわりに 
索引

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序文

推薦のことば
 私達の身体の平衡は,直接的には体支持運動系と,眼運動系によっておこなわれる。前者は姿勢を整え身体を移動させるのに役立ち,後者は注視のため眼球を動かす役を負っている。しかし,これらのシステムが運動や姿勢制御を合目的的かつ効率よく遂行するためには,前庭系による反射的制御が必要である。前庭系は広義には一部の小脳,脳幹を含むが,機能の中心に位置するのが,内耳(半規管,耳石器)と,延髄(と橋の移行部)にある前庭神経核であることは,本書の著者,伊藤文英博士が冒頭で指摘,強調しておられる通りである。
 四肢躯幹や眼に器質的疾患や神経麻痺がないのに,これらの器官が平衡を保てない場合,そのほとんどが前庭系の異常によっている。具体的には起立・歩行障害(偏倚と失調),ふらつき,眼振のかたちであらわれる。また,多くの場合,自覚症状としてのめまいが訴えられる。前庭系は主として無意識的な反射を司るが,一部,大脳皮質にも投射して空間識の形成に深く関与し,またこれにより前庭系の異常が意識として自覚される。典型的には回転感,傾斜・転倒感,ふらふら感であるが,漠然としためまいは他種の原因によっても生じるので,この自覚症状としてのめまいをどう評価し,診断に利用するかは,診療者の経験に大きく依存する。ことに他覚的所見が得られない場合,自覚症状の分析が診断の鍵となる。
 伊藤氏は大学時代,私の同僚であるが,とりわけ,耳鼻咽喉科医の立場からのめまい疾患の診療に大きな力を注がれた。原因のわかっている疾患,あるいは診断基準に合致した疾患の診断,治療は,どちらかと言えば容易である。しかし,めまい疾患は他覚的所見を欠き,自覚症状のみが訴えられることが少なくない,と言うより,このような患者が大きな部分を占める。伊藤氏はとりわけ,このような診断困難な症例に取り組まれた。丹念に自覚症状を問診し,経過やその他の状況から診断仮説を立て,治療を通してそれを検証する。いわゆる,治療的診断を重ねられた。
 伊藤氏は長年の経験から,次の結論を得ている。すなわち,蝸牛症状(難聴,耳鳴り,聴覚過敏)のないめまい(ことに反復性回転性めまい)患者には,聴力検査で低音部に無自覚性の難聴(多くは両側性,かつ,しばしば左右対称的)をみとめることが多く,また,ときに耳閉塞感・圧迫感,耳痛,一過性耳鳴,首・肩凝りがともなわれる。過労が誘因になることもあり,あるいは頭痛,まれには咽喉頭異常感症が合併する。そして多くの例で血圧異常(低血圧が少なくない)をみとめ,脳・内耳循環改善薬ないし血管拡張薬,脳代謝改善薬,低血圧例では昇圧薬などの併用処方で症状が改善する。とくにめまいの改善と,低音部聴力低下の正常化が並行する。これらのことからかかる患者においては,めまいの発症病態として椎骨脳底動脈循環不全(vertebrobasilar insufficiency;VBI),延いては内耳の微小循環障害が潜在すると考えられる。
 他覚的所見のない患者において,VBIの存在を証明することは困難なことであり,上の結論は多数例の経験と治療的診断の蓄積なしには引き出し得ない。そしてこの結論は,臨床診断学的にも大きな意味がある。なぜならば,聴力検査によって低音部の(ことに無自覚性の)難聴を検出することによって,潜在的なVBIの存在の可能性を診断できるからである。また伊藤氏はこの経験を通して,頭重・頭痛,耳閉塞感,一過性耳鳴,耳痛,首・肩凝り,咽喉頭の異常感など,従来いわゆる付帯症状とみなされていたものが,脳幹症状,あるいはVBIに起因する自律神経症状であり得ることを示している。
 本書は診断困難なめまい症例について,具体的な例を挙げながら診断と治療を検証している。もとより医学は,経験に始まり,経験によって最終判断が下される。この意味で,臨床例の蓄積は大きな力であり,本書がこの方面の診療に携わる方々に裨益するところは多大である。伊藤氏は現今,医療の第一線で活躍しておられるが,以前と変わらぬ熱心さで臨床例から学ぶスタンスを保ち続けておられる。ここに敬意を表すると同時に,今後の一層の完成をご期待申し上げる。
 平成22年 夏
 群馬大学名誉教授
亀井民雄


はじめに
 筆者は長年,学生への図書選定に携わってきたが,約20年以上前から今日に至るまで,耳鼻咽喉科学の教科書におけるめまい疾患についての記述は,大略同様である。すなわち,メニエール病に対する詳細な記述に,良性発作性頭位めまい症と前庭神経炎の簡潔な説明が続き,椎骨脳底動脈循環不全については,その記述はあったりなかったりする。何よりも,現在使用されている耳鼻科の教科書に未だ「椎骨脳底動脈系の循環障害はめまいのみを引き起こすことが圧倒的に多い」という事実が記載されていないのは,大きな問題であると感じている。
 臨床の第一線においては,めまいのみを発症する症例に遭遇することが圧倒的に多く,メニエール病や前庭神経炎に遭遇することは稀であり,教科書からの知識だけでは殆ど対処できない。実際のめまいの診療に,めまいの教科書が殆ど役に立たないのは,第一線の耳鼻科医にとっては不幸なことである。
 内耳や脳幹の循環は椎骨脳底動脈系に属するので,椎骨脳底動脈系の虚血性循環障害時にはめまいや平衡障害が発症する。しかしその発症機序に関して未だ解明されていない点が多く,メニエール病や良性発作性頭位めまい症として片付けられていることも多い。
 筆者は長年に亘るめまい患者の診療から,椎骨脳底動脈系の循環障害は,脳幹症状を合併しないめまいのみを引き起こすことが圧倒的に多いのではないかとの疑問をいつも持っていた。この問題を解決するため,内耳障害の既往のない,一過性で反復性のめまいのみが訴えられた256症例を対象に治療的診断が行われた。
 初診時,オージオグラム上認められた両側低音部の低下は,治療開始2~4週後のめまい消失時には,回復ないし回復傾向を示していた。この事実から,低血圧,降圧薬による血圧低下,動脈硬化などが原因で,椎骨脳底動脈系に循環障害が潜在しており,そのため脳循環自動調節能が低下している。そして,脳灌流血の低下は両側前庭神経核に一過性の血流差を引き起こす。さらに椎骨脳底動脈系に潜在する循環障害は,迷路動脈を介し両側の低音部の低下を引き起こし,また,両側の前庭神経核の血流差は一過性のめまいを発現すると考えられる。
 要するに,一過性で反復性のめまいのみの症例は,聴力検査(気・骨)で両側の低音部の低下が認められれば,椎骨脳底動脈循環不全が強く疑われる。これが多くの症例から得られた筆者の結論である。
 本書の出版の目的は,何となくもやもやしている椎骨脳底動脈循環不全によるめまいに対し,その診断と鑑別について述べ,さらに治療に言及し,めまいの日常診療に役立たせていただくことにある。めまいの診療に苦慮されている臨床医家の先生方に,本書が新しい診断と治療への足掛かりになれば望外の喜びである。
 平成22年12月
伊藤文英