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SGLT2阻害薬入門診断と治療社 | 書籍詳細:SGLT2阻害薬入門
新時代の2型糖尿病治療薬

東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授

宇都宮 一典(うつのみや かずのり) 編集

初版 B5判 並製 96頁 2014年05月25日発行

ISBN9784787820990

定価:本体3,000円+税
  

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グルコースの再吸収を阻害し,排泄を促進することによる血糖降下作用という,これまでにないまったく新しい作用機序をもつ経口血糖降下薬であるSGLT2製剤6成分7製品が,2014年中に登場する.本書はSGLT2阻害薬の開発の経緯,作用,効果,他剤との併用,使用上の注意点を正しく理解し,適切な処方を行うための入門書.図表を多用し,製剤一覧も掲載し,わかりやすく解説.糖尿病診療に関わる専門医・一般医必読の書.

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目次

発刊にあたって/目 次/執筆者一覧
総 論
A 糖尿病の新規治療薬の開発状況と展望—SGLT2阻害薬を中心に—
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・窪田直人,小畑淳史,門脇 孝
 1.はじめに
 2.グルコース再吸収とSGLTの役割
 3.SGLT2阻害薬
  a.SGLT2阻害薬の特徴
  b.SGLT2阻害薬の誕生
 4.SGLT2阻害薬の安全性
 5.糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の位置づけ
 6.おわりに
B SGLT(ナトリウム/グルコース共輸送担体)とは
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・川浪 大治,宇都宮一典
 1.はじめに
 2.SGLTの機能と制御
  a.SGLTとGLUTによるグルコース代謝調節機構
  b.SGLTアイソフォームと機能
   ①SGLT1,SGLT2
   ②SGLT3
   ③その他のSGLT
  c.SGLTを制御する因子
   ①細胞内シグナル
   ②HNF−1
  d.糖尿病におけるSGLTの制御
 3.SGLTの遺伝子変異と疾患
 4.おわりに
C SGLT2阻害薬開発の経緯・・・・・・・・・・・・・・・稲垣暢也,藤田義人
 1.はじめに
 2.腎臓におけるグルコース再吸収機構の解明とSGLT阻害薬の開発のはじまり
  a.フロリジンの発見
  b.腎近位尿細管におけるグルコーストランスポーターの同定
  c.家族性腎性糖尿
  d.2型糖尿病におけるSGLT2の発現上昇
 3.SGLT2選択的阻害薬の開発
  a.フロリジンの糖尿病治療応用への試み
  b.T−1095の開発
 4.最新のSGLT2阻害薬の開発状況
 5.おわりに

各 論
A 作用機序・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・卯木 智,前川 聡
 1.血糖値の恒常性維持における腎臓の役割
 2.糖尿病では尿糖排泄閾値が上昇している
 3.SGLT2阻害薬の開発経緯
 4.SGLT2阻害薬による尿糖排泄閾値低下と尿糖排泄増加
 5.薬理作用に関連した臨床効果
  a.ベースラインのHbA1c別の効果の違い
  b.循環血漿量,血圧低下
  c.体重減少
  d.低血糖
 Column:SGLT2阻害薬のパラドックス
B 血糖改善効果—臨床成績から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・柏木厚典
 1.腎尿細管におけるグルコース再吸収とSGLTs
 2.SGLT2阻害薬の血糖降下薬としての背景
  a.特異的SGLT2阻害薬の有用性
  b.遺伝性腎性尿糖
  c.糖尿病と腎尿細管上皮細胞SGLT2発現の亢進
 3.SGLT2阻害薬の開発
  a.臨床効果−血糖低下作用,体重減少作用
   ①ダパグリフロジン(Dapagliflozin)
   ②カナグリフロジン(Canagliflozin)
   ③イプラグリフロジン(Ipragliflozin)
   ④その他の薬剤
  b.臨床効果−降圧作用・脂質代謝改善作用
  c.副作用と服薬に影響する因子
   ①低血糖
   ②尿路・生殖器感染症・頻尿
   ③心血管イベント
 4.まとめ
C 副作用と使用上の注意点・・・・・・・・・・・・・・竹田孔明,谷澤幸生
 1.はじめに
 2.副作用
  a.低血糖
  b.尿路・性器感染症
  c.多尿・頻尿・脱水
  d.肝腎機能障害
  e.悪性新生物
 3.日本人における報告8
  a.ダパグリフロジン(Dapagliflozin)
  b.カナグリフロジン(Canagliflozin)
  c.トホグリフロジン(Tofogliflozin)
  d.ルセオグリフロジン(Luseogliflozin)
 4.使用上の注意
 5.おわりに
D 他剤との併用上の注意点・・・・・・・・・・・・・・・・・・山田祐一郎
 1.ビグアナイド薬との併用
 2.SU薬との併用
 3.DPP−4阻害薬との併用
 4.チアゾリジン薬との併用
 5.グリニド薬やαグルコシダーゼ阻害薬との併用
 6.併用の積極的意義
E 糖尿病治療薬としての意義と課題・・・・・・・・・・・小原健司,加来浩平
 1.はじめに
 2.SGLT2阻害薬の臨床的意義
  a.腎近位尿細管におけるグルコース再吸収とSGLTs
  b.糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の意義
  c.SGLT2阻害薬の有効性と安全性
 3.SGLT2阻害薬の今後の課題
 4.おわりに
F 海外での使用状況と評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小田原雅人
 1.はじめに
 2.SGLT2阻害薬
 3.腎尿細管でのグルコース再吸収とSGLTs
 4.選択的SGLT2阻害薬
 5.選択的SGLT2阻害薬の臨床的効果
 6.安全性
 7.おわりに

製剤一覧
索 引

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序文

発刊にあたって
 2型糖尿病は,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の二つの病態を基軸に発症する.日本人の糖尿病は,もともと痩せ型であり,内臓脂肪型肥満によるインスリン抵抗性を基盤とする欧米人とは異なり,インスリン分泌不全を先行病態とすると考えられてきた.この相違は血管合併症の疾患構造に反映され,日本人の合併症による死亡原因をみると糖尿病腎症を中心とする細血管症が多く,心筋梗塞などの動脈硬化性疾患は少なかった.ところが昨今,生活習慣の欧米化に伴って,日本人でも内臓脂肪型肥満が増加し,その結果,心血管疾患が癌とともにわが国の死亡原因の中で大きな位置を占めるに至っているのである.日本人の糖尿病の病態が大きく変貌しつつあることを示す証左である.国際的にみても,現代の日本人ほど2型糖尿病の病態において,多様な民族はないであろう.
 糖尿病治療の目的は,合併症の予防と進展の抑制であることはいうまでもない.そのためには,個々の患者の病態やリスクに応じ,治療の個別化を図らなければならない.単に高血糖の是正のみを目指した介入研究が,必ずしも期待通りの結果をもたらしていないことは,治療目標の個別化の必要性を裏付けるものと理解できる.合併症の防ぐための血糖管理に求められる条件は,重症な低血糖のない安定した血糖プロフィールの達成とインスリン抵抗性に起因する高血圧,脂質異常の是正である.しかし,糖尿病の薬物療法を進めるにあたって,血糖の厳格なコントロールと体重の増加は,悩ましい関係にある.高血糖の是正を目指せば,体重の増加をきたすことが避けられなかったからである.
 そうした中,新たな機序により高血糖を是正する薬剤,SGLT2阻害薬が登場した.尿糖の排泄を促進し,高血糖を改善するとともに排泄された尿糖分のカロリーを失うことから,確実に体重の減少をもたらす効果を示す.従来の薬剤がもつジレンマを,払拭するものといえる.しかし,臨床治験の成績を詳細にみてみると,その効果についていまだ不明な点,あるいは安全性に関して注意すべき事項など,今後検討しなければならない課題は少なくない.本書では,SGLT2阻害薬の薬効から臨床的有用性,適正使用のために注意すべき副作用,諸外国における評価などについて,本剤の開発に実際に関わられたわが国を代表する諸先生方に執筆をお願いした.本書をご覧いただければ,SGLT2阻害薬の全容をご理解いただけるものと自負している.
 これまで糖尿病の薬物療法は,生理的な状態に復することを目指して行われてきた.これに対してSGLT2阻害薬は,生理的な調節機構を破たんさせ,病態の改善を図る薬剤である.したがって,薬効の詳細ならびに対象となる患者像について,慎重な論議が必要である.今後,適正な使用を通してエビデンスが蓄積され,新たな糖尿病治療の選択肢として,本剤の意義が確立されることを期待してやまない.

 2014年4月

東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授
宇都宮一典