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書籍詳細

大阪府立母子保健総合医療センター編
性分化疾患ケースカンファレンス診断と治療社 | 書籍詳細:性分化疾患ケースカンファレンス

大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科

位田 忍 (いだ しのぶ) 編集主幹

大阪府立母子保健総合医療センター泌尿器科

島田 憲次(しまだ けんじ) 編集主幹

初版 B5判  152頁 2014年07月11日発行

ISBN9784787821010

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定価:本体7,000円+税
  

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大阪府立母子保健総合医療センター性別判定会議で取り上げられた性分化疾患(DSD)の経験に基に再編された症例集.疾患の分類や検査、発生学、遺伝子などの基礎的知識から,稀少疾患であるDSDに対する医学的・社会的対応,家族・児への説明,多職種によるチーム医療のありかたなど,臨床の場でDSD症例に遭遇した医療者にとって診療のヒントとなる1冊.

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目次

序文
執筆者一覧
略語一覧
Ⅰ.総 論
 1 性分化疾患の基礎知識
  1. 内科的診断のアプローチ
  2. 検査とデータの読みかた
  3. 性別判定
 2 発生学(Embryology)
 3 性分化疾患にかかわる染色体と遺伝子
 4 病理診断
 5 画像診断
 6 外科的アプローチ
 7 心理的アプローチ 
 8 尿ステロイドプロフィルによる診断
Ⅱ.ケースカンファレンス
 第1章 性染色体異常に伴う性分化疾患(sex chromosome DSD)
 1 Y染色体をもつTurner症候群
  case 1 gonadoblastomaを伴った45,X/46,XYモザイクTurner症候群の9歳女子
 2 45,X/46,XY(混合型性腺異形成)
  case 1 性別判定が困難なため緊急搬送された新生児症例
  case 2 尿道下裂と一側非触知性腺にて紹介された症例

 第2章 46,XY性分化疾患(46,XY DSD)
 A 性腺(精巣)分化異常
 1 完全型性腺異形成(Swyer症候群)
  case 1 原発性無月経でみつかったいわゆる46,XY sex reversalの症例
 2 Frasier症候群
  case 1 巣状糸球体硬化症治療中の二次性徴未発来の1例
 3 Denys-Drash症候群
  case 1 尿道下裂と両側停留精巣の治療中に末期腎不全となった症例
  case 2 尿道下裂,両側停留精巣の術前にWilms腫瘍が発見された男子例
 4 campomelic dysplasia
  case 1 campomelic dysplasiaの1例
 5 精巣退縮症候群(testicular regression syndrome/vanishing testis syndrome)
  case 1 両側非触知精巣,マイクロペニスを認めた新生児の1例
 6 卵精巣性(ovotesticular)DSD
  case 1 高度尿道下裂と考えられたが性腺生検を施行し46,XX卵精巣性DSDの診断に至った症例
  case 2 生後3か月時に卵精巣性DSDの確定診断に至り,男性から女性へと戸籍の変更を行った症例
  case 3 停留精巣の手術時に性腺の形態異常にて性分化疾患を疑われた症例
 B アンドロゲン合成障害・作用異常
 1 アンドロゲン生合成障害
  case 1 社会的性別を女子から男子に変更した5α-還元酵素欠損症の1例
  case 2 乳児期の副腎不全を契機に診断されたStAR異常の症例
  case 3 外性器異常,精神発達遅滞で紹介された社会的女子のSmith-Lemli-Opitzの1例
 2 アンドロゲン不応症
  case 1 鼠径部腫瘤を契機に新生児期に診断に至った完全型アンドロゲン不応症の症例
  case 2 生後1か月にhCG負荷試験にて診断された部分型アンドロゲン不応症の症例
 3 LH受容体異常(Leydig細胞無形成・低形成)
  case 1 LHとテストステロンが低値を示したambiguous genitaliaの男子例

 第3章 46,XX性分化疾患(46,XX DSD)
 A 性腺(卵巣)分化異常
 1 46,XX male(46,XX testicular disorders of sex development)
  case 1 尿道下裂で紹介されたSRY陰性46,XX maleの症例
 B アンドロゲン過剰
 1 先天性副腎過形成(21-水酸化酵素欠損症)
  case 1 外性器異常と色素沈着が治療により改善した症例
 2 胎児胎盤性アンドロゲン過剰(POR異常症)
  case 1 外性器異常と鎖肛を主訴とし,Antley-Bixler症候群を伴ったPOR異常症の女子例
 3 母体性(luteoma,外因性など)
  case 1 母体アンドロゲン産生腫瘍による女子胎児の男性化症例
 第4章 その他
 1 高度尿道下裂
  case 1 新生児期に高度尿道下裂を認めた症例
  case 2 当初女子と判断された子宮内発育遅延の極低出生体重児の1例
 2 総排泄腔外反症
  case 1 巨大臍帯ヘルニアに合併した男子総排泄腔外反症
  case 2 特異な外性器形態を示した男子総排泄腔外反症

column
神話のなかのintersex
CAIS症例の腟に対する処置
21-水酸化酵素欠損症―看護アプローチ
21-水酸化酵素欠損症―セクシュアリティ
21-水酸化酵素欠損症―新生児の取り扱い

reference
精巣退縮症候群の陰茎伸展測定法
POR欠損症(異常症)の診断の手引き
妊娠中のアンドロゲン過剰の原因


索引

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序文

 この度,大阪府立母子保健総合医療センター・編『性分化疾患ケースカンファレンス』が発刊されることになりました.20年来コンビを組んできた島田憲次先生が退官される機会に,母子医療センターで行っている性別判定会議(gender assignment committee)で取り上げた疾患の経験を著書としてまとめることにしました.
 1991年7月に大阪府立母子保健総合医療センターに小児部門が併設され,大阪大学小児科から私が参加することになり消化器・内分泌科(当時は第一小児内科)が立ち上がりました.泌尿器科には兵庫医科大学から島田憲次先生が赴任されました.島田先生は小児泌尿器科医として当時すでに全国的な活躍をされていましたので,近畿圏だけでなく全国の施設から性分化疾患(disorders of sex development:DSD)を含めた小児泌尿器疾患が島田先生へ紹介されてきていました.小児部門のスタートに当たり島田先生と話し合い,DSDの臨床管理方法を共同で検討することこそが小児病院であり巨大な周産期センターである母子医療センターの使命ではないかとの考えで一致しました.社会的性別判定への提言を行うための性別判定会議は,医師や看護師に加えて臨床心理士やMSWによる多職種カンファレンスで,現在まで多数の症例を検討してきています.
 時を同じくして1991年に精巣決定因子のSRYが同定されたことをきっかけにした性分化過程の科学的解明により社会の対応に変化が起こり,昔は「タブー」であったDSDが「疾患」として扱われるようになってきました.ハワイ大学Milton Diamond教授が当院での講演の中で,DSDの現場で大切なことは本人に対して「嘘」をつかないことであり,「嘘」があっては真のサポートはできない,自己決定をあくまでも尊重することを強調されていました.時代とともにDSDの対応は変化してきています.今までの私たちの経験により執筆した本書の内容がもっと進化すべきときがくるでしょう.しかし,稀少疾患であるDSDに遭遇したときに医療者が医学的そして社会的にどのように対応するかのヒントになり,それが患者と家族の不利益を少なくすることに多少でも寄与できるものと願っています.

 倫理面への配慮のため,取り上げている症例は,母子医療センターでの経験に基づいて編集者の責任で作成した「模擬ケース」であることにご理解いただきたいと思います.
 医学的診断に欠かせない遺伝子解析をしていただいた緒方 勤先生,深見真紀先生,道上敏美先生,生化学的検討をしていただいた塚原正人先生に感謝申し上げます.
 最後に編集にご協力いただき,辛抱強く助言をいただき発行にこぎつけていただいた,診断と治療社 坂上昭子様,土橋幸代様,堀江康弘様に感謝します.

2014年6月
大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科 位田 忍



 新生児の性分化疾患に初めて出会ったのは,当センターに赴任した1991年でした.それまでも自分なりに小児泌尿器科疾患をみてきたつもりでしたが,このときの心の動揺は今でも記憶に新しく,「どんな検査をすればよいのか?」「性別はどう判断すればよいのか?」「家族への説明は?」と,頭の中が真っ白になり,早速自分の机に戻り教科書を開いて,それこそ一夜づけで勉強をしました.多分,新生児,乳児を相手にしておられる先生なら,病院の規模にかかわらず,同じような子どもを前にして,どうすればよいのか,途方に暮れたという経験をおもちの方があると思います.今でも新しいDSD症例が紹介されるたびに,教科書を開き,ステロイドマップを見直さないと,病態や治療の方向がはっきりと掴めないことが多々あります.経験がまだ少なかった最初の頃の私たちの対応を反省し,院内の性別判定委員会(現・会議)を位田委員長のもとに立ち上げるとともに,もっと広い年齢層にも対応ができるよう,思春期・青年期の問題もいろいろな立場からの話し合いがもてる工夫を考えております.今回,診断と治療社の協力を得て,同じような問題で困っておられる医療者の方々に向け,私たちがDSDの臨床で得た苦い経験や,多職種チームを作り,そこから得たDSDの捉えかた,考えかたを,少しでもお伝えできればと思い,本書を企画しました.DSDの分類や治療方針は時代とともに大きく変わっております.今回の内容が完全とは私自身も考えておりませんが,少なくともDSDの子どもと家族に対しては,多職種による取り組みが必要なことだけは,正しい方向と信じております.

2014年6月
大阪府立母子保健総合医療センター泌尿器科 島田 憲次