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小児心身医療の実践診断と治療社 | 書籍詳細:小児心身医療の実践

こども心身医療研究所/大阪総合保育大学

冨田 和巳(とみた かずみ) 著

初版 B5判 並製 232頁 2014年09月24日発行

ISBN9784787821164

定価:本体4,300円+税
  

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現代の子どもの育ちと環境を勘案し,医療の現場で子どもの心を診るにはどのような視点からとらえるべきなのか,各症候への対応や考え方,また最新の薬剤情報をふまえ,心身医療の現場で役に立つテクニックを網羅した.

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目次

序章 本書における私の基本的主張

第1章 医学から心身医学へ
 ―人間を扱う学問「序説」
A. この世と人間の根源は「矛盾」
―最初に押さえる問題―
1. 命の基本にある「矛盾」
2. 人間の成り立ち
B. 医学は自然科学か?
1. 科学とは何か?
2. 自然科学と考える医学の二重の誤り心身医学序説
3. 心と身体の関係
4. 医学の危険性を心身医療が阻止する
5. 心身医学は非科学でなく超科学
6. 心身医学と心身症
7. 軽視された心身医学,心身症
8. わが国における小児心身医学
9. 一般小児科での心身医学の必要性
第2章 外来での心身医療の実践  外来診療のエッセンス
1. 目の前にいる子ども(患児)の問題把握
2. 親をどのように診るか(子どもと同じ問題をもつ場合が多い)
3. 引き金になった出来事をどのように考えるか?
4. 診療開始(できる段階まで行い,専門家に紹介する)
5. 最大,かつ最重要な問題
A.一般外来での実践
1. 医師ならできる/しなければならない心身医療
2. 不定愁訴(身体症状)への対応(総論)
3. 心身医学的問診
4. 身体症状をどのように診るのか
5. 主訴をどのように考えるか
6. 心身医療の流れ
7. 心身医療の特殊性
8. 治療(指導)に関する注意
B.専門(心療)外来をつくる
1. 診療の形態
2. 心療専門外来での心得
3. 心療外来の特殊性
4. 特に熱心な医師の注意すべきこと
5. 上手に治療する心得
6. 治療拒否の子ども
7. 連携
第3章 小児心身医学総論
A. 心因性疾患とは?
1. 症状・行動をストレスによる子どもの表現として診る
2. 3つの表現の違い
3. 心身症,神経症,精神病の違い
4. 心因性疾患発症の原因
5. 思春期での心身症,神経症,精神病の相互関係
6. 心因性疾患の分類
7. 心因性疾患診断のむずかしさ
B.心身症の捉え方
1. 定義のむずかしさ
2. 最大の特徴は表現の拙さ
3. 失感情症(alexithymia)の意味
4. 子どもの心身症
5. 子どもの心因性疾患のもつ意味
第4章 小児心身症とその周辺疾患
A. 心身症
1. アレルギー(allergy)疾患
2. 起立性調節障害(orthostatic disregulation:OD)
3. 自律神経失調症(不定愁訴症候群)
4. 慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome:CFS)
5. チック
7. 呼吸器系心身症
8. 排泄器官の心身症
9. 月経前緊張症
10. 他科の領域と考えられている心身症
B. 神経症
1. 幼児期の神経症
2. 思春期の神経症
C. 不登校(学校不適応)と関連する問題
1. 不登校(学校不適応)
2. 不登校に深く関連した問題①:家庭内暴力
3. 不登校に深く関連した問題②:引きこもり
D. 発達障碍
1. 発達障碍総論
2. 発達障碍各論①:精神遅滞(知的障碍)
3. 発達障碍各論②:自閉症
4. 発達障碍各論③:自閉症スペクトラム(ASD)
5. 発達障碍各論④:注意欠如/多動性障碍(AD/HD)
6. 発達障碍各論⑤:学習障碍(LD)
7. 分類不能の発達障碍
E. 精神科的疾患
1. 統合失調症
2. うつ病
3. 躁うつ病(双極性障害)
4. 解離性同一性障害(多重人格)
5. 性同一性障害(性別違和)
6. 自殺念慮・企図
F. 心身医療の必要な身体疾患
1. 軽度に経過する疾患
2. 先天奇形・染色体異常
3. 進行性疾患・致死的疾患
4. 病気の説明・告知の問題
5. 心因性疾患の救急
G. 行動の問題
G.1  子どもの問題行動
1. 盗み
2. 虚言(嘘をつく)
3. いじめ
4. 喫煙
5. 飲酒
6. 性的逸脱行動
7. 反社会的行動(非行)
G.2  親の問題行動
1. 被虐待児症候群
2. 養育放棄(neglect),心理的虐待
3. 愛情遮断症候群
4. 代理ミュンヒハウゼン症候群(MBSP)
H. 薬物療法
1. 基本的な考え方
2. 向精神薬の小児への与え方
3. 投与量・期間など
4. 向精神薬の種類
5. 薬物の副作用
6. 代替(補完)医療
7. 漢方薬と心身症
第5章 子どもの心を多角的に考える
A. 小児科臨床から考える「心の発達」
1. 心の芽生えと発達
2. 自尊心・表現・対人関係の重要性
3. 触覚の重要性
4. 自然に出る母性性(母親の重要性)
5. 困った母性(母性のもつ二面性)
6. 現代の困った母親
7. 幼児期の環境(父親が与える環境)
8. 2歳の重要性
9. その後の成長を考える
10. 素因と子どもの身近な環境
11. 先進国の子どもの心と身体
B. 心理学的にみる心の発達
1. 口愛期(0歳から2歳前後)
2. 肛門期(2~3歳過ぎ):禁止を知る時期・排泄の自立
3. 社会的存在への準備期(3~11歳)
4. 思春期:自立への思いと依存欲求が揺れるとき
5. 青年期
C. 知能の発達
1. 感覚や行動で思考する時期(感覚運動期:0~2歳頃)
2. 心象(image)で思考する時期(前操作期:2~7歳頃)
3. 言語で思考する時期(操作期:7~12歳頃)
4. 集中的思考と拡散的思考
D. 心理検査の概要
1. 検査の種類
2. 検査実施の説明
3. 検査結果の説明
4. よく使われる心理検査
E. 心理治療
1. 心理治療の具体的に目指すもの
2. 主要な心理治療をどのように捉えるか
3. 心理治療は有効なのか?
4. おもな心理治療(医師にも可能なもの)
5. 概念を知っておくべき治療技法
6. 教育・生活習慣を重視した治療
第6章 子どもとその環境「私論」
A. 子どもの環境(入門)(時間と空間)
B. 生態学と歴史でわが国をみる
1. 国のはじまりと文化
2. 文化差による子育ての違い
3. 母性優位の日本
4. わが国の近現代史
5. 敗戦によるもう一つの悲劇
C. 現代日本社会を考える
1. 現状の根底にあるもの
2. 子どもの問題は米国から輸入されてきた(疾患から事件まで)
3. 欧米型先進国としての問題
D. 子どもが健全に育つ家庭のあり方
1. 家庭の出発点(しばしば認識されていない)
2. 家庭は夫婦関係に始まる
3. 子どもの誕生・子育て
4. 子育ては「誉める」ことから始まる
5. 子育ては家庭で行う(外部委託はいけない)
6. 有名人・学者の子育ての真似はダメ
7. 子どもをどのような大人に育てるか
8. 伝統的行事は子どもの成長に大切
9. 家庭も集団社会
10. 家庭での母性と父性
11. 親自身の自立
12. 古い価値観と「躾」が家庭の基本
13. 家庭に行き過ぎた民主主義は似合わない
14. 核家族の3要素
15. 共働き
16. 専業主婦に価値をおくこと
17. 兄弟葛藤の問題
18. 祖父母との関係,嫁姑関係の問題
19. 父ちゃんっ子,お婆ちゃんっ子
20. 家族の別離
E. 教 育
1. 学校ほど大切なところはない
2. 教育の基本を考える
3. 義務教育(公教育)の目的
4. 戦後教育の致命的欠点
5. 時代を経て,年々悪化する戦後教育
6. 教育界の試みの失敗
7. 学校の受難:学校・教師も困っている現実
8. 学校の現状
9. 最終に位置する大学の堕落
10. それでも筆者は学校・教師に声援を送りたい!
11. 最後に
F. 報 道
1. 報道の本質をみる
2. 報道は商売である
3. 「劇場化した」側面をもつ報道内容
4. 少年事件報道の誤り
5. 教育放送の怖さ
6. 識者の一言(コメント)には注意する

索 引

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序文

はじめに

 環境整備によってわが国の衛生状態がよくなり,予防接種が次々と開発され,細菌からウイルスにまで効果のある薬が登場する時代です.身体の健康は保たれ,病気にかかる機会も減り,かかっても軽快・治癒に向かうことが以前に比べると多くなっています.この状態は身体疾患の減少・軽症化を促してきましたが,身体の免疫力は弱くなり,物の豊かな時代は我慢する力を弱くさせ,「心身の弱い」人間をつくりあげました.身体と心を一緒に考える心身医学の重要性がさらに増しています.
 しかし,「6年間の『身体』中心の医学教育」と「現行の医療保険制度」は,「心身への医療対応」を困難なものにしています.この状況であっても,臨床を少し「広い視点で診る医師」は「これを何とかしなければ」と考えますが,残念ながら実行はむずかしいようです.
 本書はそのような思いをもつ一般小児科医だけでなく,子どもを診るすべての科の医師に,弱くなった身体と心を,医療の場でどのような視点から診るようにするのか,筆者の40年に及ぶ小児心身医療の実践から述べる目的で企画されました.平成15(2003)年に診断と治療社から発刊された『小児心身医学の臨床』を基本にし,新たな環境変化(社会変化と発達障碍の急増など)や新薬などの情報を可能な限り取り入れ,以後10年余りの筆者の臨床経験を加え,全面的に書き直したものです.なお,旧版は筆者の責任編集・監修で分担執筆したものですが,今回は単著になっています.旧版の執筆者(現在および過去に『こども心身医療研究所』で働いた方々)にも間接的に協力いただいたことになりますので,ここにお名前をあげて改めてお礼申し上げます.
 「人は誰しも大人にならない,子どもが年をとるだけだ」とユダヤの諺は言っています.筆者は小児心身医療の場で親と深くかかわり,身体はともかく,心から診ると「大人は子どものなれの果て」と常に感じるようになりました.このようなことから,成人を診る医師にも子ども時代を考えてほしいと思うので,本書は成人の心身医学の書でもある,と考えています.
 心身医学は英語でbio psycho socio eco-ethical medicine〔eco-ethical=ecological(生態的)+ethical(倫理的)の合成語〕ともよばれるように,「身体と心」だけでなく「社会から生態(自然環境)」にも目を向けます.本書で,医学に直接関係のないようにみえる教育や文化・歴史についても,通常の医学書よりも詳しく述べているのは,「社会・生態」を重視しているからです.何よりも総合的・有機的な「ものの見方」が基本にならなければならないのが心身医学である,と長年の実践から筆者は結論づけています.
 なお,身体医学中心の教育を受けた医師は,「心」を診るのに苦手意識をもちますが,心は物質が「命」を宿して「身体」になり,そこに出現した「感覚」から芽生えたもの(p.3)と考えると,肉体・生命・感覚の3つを扱う医師が,最後に出現した心をもう一つ加えて診るのは,それほどむずかしいことではないのです.医師たるもの,本来の器質的疾患を診るときも,心に目を向けたほうがよりよい医療を行えると考え,心身医療を実践してほしいと思います.
 多くの医師が心身医学・心身医療に興味をもち,実践していただくことを期待しつつ…….

平成26(2014)年8月25日
冨田 和巳


【旧版の共著者】(五十音順,所属は現在)
大堀 彰子  こども心身医療研究所(臨床心理士)
加藤  敬  こども心身医療研究所(臨床心理士)
小柳 憲司  長崎県立こども医療福祉センター小児心療科(小児科医)
高津 尚子  (故人,内科医)
土居 あゆみ 岡山大学医学部小児科(小児科医)
仲野 由季子 こども心身医療研究所(小児科医)
錦井 友美  国立病院機構長崎病院小児科(小児科医)
藤本 淳三  こども心身医療研究所(精神科医)
藤原 由妃  こども心身医療研究所(臨床心理士)