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よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド診断と治療社 | 書籍詳細:よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド
喘鳴を科学する

埼玉医科大学医学部小児科/埼玉医科大学病院アレルギーセンター

徳山 研一(とくやま けんいち) 編集

初版 B5判 並製 196頁(+B4折込チャート1枚) 2015年11月30日発行

ISBN9784787822208

定価:本体5,000円+税
  

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小児の喘鳴には喘息,気道感染症,異物,後鼻漏,GERなど様々な原因疾患があり,複数の発生機序がある.そのメカニズムをしっかりと理解したうえで原因別の適切な診断・治療ができるよう,アレルギー,呼吸器,感染症分野の専門家がわかりやすく解説.巻頭には鑑別に役立つ診断フローチャートを収載.専門医だけでなく,小児の喘鳴診療に携わる医療関係者すべての方にご活用いただきたい1冊.

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目次

カラーチャート  綴込
カラー口絵  前付
執筆者一覧  
序文−メカニズムを理解して喘鳴の治療を科学する−  徳山研一 
第1章 喘鳴を科学する−病態の正しい理解のために−
A 喘鳴理解の基礎知識
 1.喘鳴はなぜ発生するのか  高瀬真人   
 2.喘鳴の表記のしかた  高瀬真人   
 3.喘鳴の病態の多様性  徳山研一   
 4.喘鳴の定性的・定量的な評価方法とその臨床応用  古賀健史,徳山研一  
TOPICS.肺音解析による喘鳴性疾患の診断の展望  土生川千珠  
B 喘鳴の病態を正しく理解する
 1.平滑筋収縮  吉原重美  
 2.気道分泌  荒川浩一  
 3.気道粘膜浮腫(血管透過性の亢進)  徳山研一  
 4.気道の先天異常・奇形  長谷川久弥  
 5.気道内の腫瘤(内部からの圧迫)  鈴木 悠  
 6.外部からの圧迫  樋口昌孝  
 7.気道異物  足立雄一  
 8.誤 嚥  増田 敬  
 9.胃食道逆流症(GERD)/咽喉頭逆流症(LPRD)  吉田之範  
10.うっ血性心不全  安原 潤,住友直方  
11.心因性喘鳴  亀田 誠  
第2章 喘鳴性疾患の診断・治療の考え方
A 喘鳴性疾患の診断へのアプローチ  植田 穣,徳山研一  
B 喘鳴の診断
 1.問 診  井上壽茂  
 2.身体所見  大嶋勇成  
 3.血液検査  盛田英司,徳山研一  
 4.微生物検査  宮田一平,尾内一信  
 5.画像検査  望月博之  
 6.生理機能検査  望月博之  
 7.内視鏡検査<前鼻鏡・上気道内視鏡>  上條 篤  
 8.内視鏡検査<軟性気管支鏡>  樋口昌孝  
C 喘鳴に対する治療法−総論−
 1.薬物療法の目的と分類  藤澤隆夫,長尾みづほ  
 2.吸入療法  足立雄一 
 3.理学療法−適応となる疾患と方法の実際−  上田康久 
 4.鼻汁吸引と鼻腔洗浄  寺田明彦 
 5.人工呼吸管理  植田 穣,徳山研一 
 6.手術(外科的対応)−適応となる疾患と術式−  古村 眞 
 7.喘鳴性疾患を診察する場合の心理的配慮・心理療法  亀田 誠 
第3章 主な喘鳴性疾患の病態と治療
 1.後鼻漏症候群  白川清吾,山口公一 
 2.アレルギー性鼻炎  星岡 明 
 3.クループ/急性喉頭蓋炎  岡田賢司 
 4.アナフィラキシー  西本 創 
 5.気管支喘息  徳山研一 
 6.細気管支炎  吉原重美,田村元子 
 7.気管支炎・肺炎  板野篤志,徳山研一 
第4章 Expert Eyes
CASE 01 喘鳴が続く場合にステロイド全身投与を続けるべき?  徳山研一 
CASE 02 鼻汁と喘鳴を反復する乳児,何が考えられるか?  徳山研一 
CASE 03 アレルギー性鼻炎の加療により喘鳴が改善し,
運動能力の向上した喘息男児  徳山研一 
CASE 04 呼吸困難感はないがwheezesが持続する中学生男児  徳山研一 
CASE 05 2週間前にピーナッツを食べてむせた子どもが
発熱と喘鳴を発症した場合,すぐ専門病院に紹介すべきか?  足立雄一 
CASE 06 喘鳴のない運動誘発喘息?  亀田 誠 
CASE 07 胃食道逆流症の合併した乳児喘息に
吸入ステロイド薬は使用すべきか?  吉原重美 
CASE 08 乳児期に繰り返す喘鳴の原因は?  渡部浩平,増田 敬 
CASE 09 ガイドラインに準じた治療が無効な
難治の喘息に対する対応は?  望月博之 
CASE 10 高用量吸入ステロイドを使用しても喘鳴が続く「難治性喘息」  長尾みづほ,藤澤隆夫 
CASE 11 薬剤不応性,通年性の気管支喘息発作……
本当に気管支喘息発作?  長谷川久弥 
CASE 12 反復性喘鳴から長引く咳と喘鳴に移行した場合の対応は?  高瀬真人 
CASE 13 「乳児難治喘息」 どう対応すべき?  勝沼俊雄,鈴木亮平 


Index

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序文

-メカニズムを理解して喘鳴の治療を科学する-

 子ども,特に年少児では,よくゼーゼーやヒューヒューといった呼吸に伴う雑音,すなわち喘鳴が聴取されます.これは気道がもともと狭いためで,様々な原因で起こります.そのため原因の鑑別診断をすることが重要なのですが(それによって治療方針も変わります),必ずしも十分になされていない場合がみられます.
 例えば,ゼーゼーするので,即喘息と診断され,喘息治療薬が投与されるといったことは少なくないようです.それで症状が改善すればよいのですが,効果がないのに同じ治療が継続されていることがあります.このような状態に不安を感じ,セカンドオピニオンを求めて受診される患児ご家族が時にいらっしゃいます.実際,受診時の聴診ではゼーゼー聴こえるのですが,鼻水を垂らしていて口腔内の視診では後鼻漏があり,鼻汁を吸引してあげるだけで喘鳴がすっきり消失,などという場合も少なからずあります.このような症例で考えられる問題点は,喘鳴の原因が適切に診断されていないことに加え,治療効果がなかったにもかかわらず診断を再考しようとせず,漫然と治療を継続していたということです.
 一方,診断は正しくても喘鳴に対する治療がovertreatmentなのではないかと思われることがあります.例えば,重症な喘息発作で入院した子どもに初期治療をしっかり行うことは大切なのですが,呼吸困難がすでに消失している時期にゼーゼー(ほとんどは wheezesではなくrhonchiです)が続くという理由で,全身ステロイドなどの強力な治療が依然として行われているような場合です.症例によりますが,喘息発作の回復期には気道過分泌の結果生じた分泌物が残るため,喘鳴は長引くものです.このような症例に全身ステロイドをまだ続ける必要があるでしょうか?
 こういった喘鳴の診断・治療にまつわる問題が生じる背景として,以下のようなことが考えられます.一つは,喘鳴をきたす疾患を鑑別するということに慣れておらず,ゼーゼーしている患児に対して,通り一遍の対応・治療ですませている場合です.一方,喘鳴の原因疾患は正しく診断されているのですが,喘鳴の発生機序の多様性については考慮されず,とにかく喘鳴が聴こえている間は原因疾患の治療を画一的に継続する,という場合があるかもしれません.喘鳴の治療にあたっては,喘鳴の出現する機序は単一ではなく,それぞれの喘鳴の病態に応じて治療法が異なることを認識しておく必要があります.すなわち,喘鳴の出現機序を目の前にいる患児ごとに頭の中で整理しながら,その場その場でベストな治療法を選択していく必要があります.しかしながら,現在までこれらの点を踏まえた医学教育が十分なされてきているとは思えません.
 そこで,子どもの喘鳴を診察する機会のある先生方(小児科医,子どもを診察する小児科以外の先生方,あるいは研修医の方たち)を対象に,喘鳴発生の機序を考えた喘鳴性疾患の解説書を刊行したいと考えました.このため,第1章では喘鳴の考え方と喘鳴発生の複数の機序につき概説しました.第2章では喘鳴性疾患診断へのアプローチ法と必要な検査を解説し,喘鳴に対する治療法について,それぞれの考え方と適応症状・疾患を示しました.これらを踏まえ,第3章では代表的な喘鳴性疾患の病態とそれに基づく治療法について述べました.第4章では喘鳴について日常遭遇する事例を集め,エキスパートの先生方に診断や治療についてのアドバイスをいただきました.
 喘鳴の診療は画一的でなく,その場その場で適切な対応は異なってくると思われます.また正解は必ずしも一つとは限りません.個々の症例の喘鳴の原因診断や治療を決めるのは,読者である先生方自身です.本書を参考に,個々の症例の治療法についてのベストアンサーを考えていただければと思います.本書は喘鳴性疾患について新たな視点から解説したフロンティア的な出版物のため,喘鳴の分類法などについてはまだまだ改変すべき点があろうかと思います.またエビデンスが不十分で,経験的な記述にならざるを得なかった内容もあります.これらの点を含め,色々とご意見・ご批判いただければ幸いです.
 喘鳴はone of the common signsですが,日常診療において適切な対応が必ずしも行われていない現状があります.現在,医学の領域では様々な診療ガイドラインが作成され,効率的な診断・治療が求められています.“喘鳴”という症状に対して,本書がより科学的な診療を行うための一助となれば幸いです.

2015年10月
埼玉医科大学医学部小児科 教授
埼玉医科大学病院アレルギーセンター 副センター長
徳山研一


※追記:
本書では混乱を避けるため,できるだけ用語の統一に配慮しました.例えば,高音性の呼気性喘鳴にはwheezeとwheezesの2通りの表記方法がありますが,wheezesに統一しました.
また巻頭に代表的喘鳴疾患診断のためのフローチャートを掲載しましたので,ご活用下さい.