「脳卒中治療ガイドライン2015」に準拠し,脳卒中診療の各段階の必要事項を網羅した実用的ハンドブック.単なるガイドラインの列挙と解説に留まらず,脳卒中の基礎,診断,治療,予防,リハビリと幅広い分野が効率的にまとめられており,臨床の場ですぐに役立つ.2色刷りからフルカラーへと変更され,イラストを増やすなど,視覚的にも理解しやすい内容となった.脳卒中診療に携わるすべての医師,医療従事者にお勧めしたい.
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目次
推薦の序 鈴木則宏
編集の序 高嶋修太郎
執筆者一覧
Ⅰ 総論 ― 解剖,病型,診察,検査
A 脳血管の解剖 高嶋修太郎
B 脳動脈閉塞と臨床症候群 伊藤義彰
C 脳卒中の病型分類と各病態 高木 誠
D 脳卒中初期の診療手順と救急処置・救急隊との連携 奥寺 敬
E 脳卒中の診察の実際
1 問診のポイント 竹川英宏,平田幸一
2 内科的診察法 竹川英宏,平田幸一
3 神経学的診察法 星野晴彦
4 脳卒中関連スケール 寺山靖夫
F 脳卒中の救急検査―血液,心電図,X 線検査など 伊藤義彰
G 画像診断の基礎
1 頭部CT 野口 京
2 頭部MRI 野口 京
3 頭部MRA,頭部CTA,頭部血管造影 野口 京
4 脳血流測定①―SPECT,PET 中川原譲二
5 脳血流測定②―キセノンCT,CT/MR 灌流画像(CTP/MRP) 野川 茂
6 超音波検査 矢坂正弘
Ⅱ 脳卒中の一般治療
A プライマリケア
1 呼吸管理 田口芳治
2 血圧管理 田口芳治
3 合併症対策①―合併症一般,消化管出血,発熱 道具伸浩
4 合併症対策②―嚥下障害,栄養管理 小張昌宏
5 脳卒中関連症状への対応①―痙攣,抑うつ,中枢性疼痛 伊藤義彰
6 脳卒中関連症状への対応②―血管性認知症(VaD) 髙尾昌樹
B 脳卒中の危険因子と一次予防
1 危険因子の管理 八木田佳樹
2 ハイリスク群の管理 八木田佳樹
Ⅲ 脳梗塞,TIA
A 急性期の診断と治療
1 アテローム血栓性脳梗塞①―病態と診断 足立智英,高木 誠
2 アテローム血栓性脳梗塞②―治療 中村麻子,岡田 靖
3 心原性脳塞栓症①―病態と診断 高嶋修太郎
4 心原性脳塞栓症②―治療 宮下光太郎
5 ラクナ梗塞①―病態と診断 奥田 聡
6 ラクナ梗塞②―治療 奥田 聡
7 その他の脳梗塞 高嶋修太郎
8 一過性脳虚血発作(TIA)の診断と治療 高嶋修太郎
9 血栓溶解療法 青木淳哉,木村和美
10 急性期の血管内治療(血栓回収療法) 桑山直也
11 脳保護療法 長尾毅彦
12 急性期の抗血小板療法 中瀬泰然
13 急性期の抗凝固療法 中瀬泰然
14 脳浮腫管理,開頭外減圧療法 高嶋修太郎
15 血液希釈療法,フィブリノゲン低下療法 長尾毅彦
16 低体温療法 成冨博章
17 画像検査で病巣が確認できない場合の考え方と対応 髙木繁治
18 治療開始後も症状が進行する場合の考え方と対応 山村 修,濱野忠則
B 慢性期の治療
1 慢性期の危険因子の管理と再発予防 松島勇人,細見直永
2 慢性期の抗血小板療法 内山真一郎
3 慢性期の抗凝固療法 内山真一郎
4 慢性期の外科的治療①―CEA vs. CAS 黒田 敏
5 慢性期の外科的治療②―血管形成術,ステント留置術 桑山直也
6 慢性期の外科的治療③―EC-IC バイパス 黒田 敏
Ⅳ 脳出血
A 高血圧性脳出血の病態と診断 大木宏一
B 高血圧性脳出血の非手術的治療 棚橋紀夫
C 脳出血の外科治療 石原秀行,鈴木倫保
D 脳血管奇形 桑山直也
E その他のハイリスク脳出血 安部貴人
Ⅴ くも膜下出血(SAH)
A くも膜下出血(SAH)の病態と診断 藤中俊之,吉峰俊樹
B くも膜下出血(SAH)の治療 下田祐介,寳金清博
Ⅵ 無症候性脳血管障害
A 未破裂脳動脈瘤 菅 貞郎
B 無症候性脳梗塞 荒木信夫
C 無症候性脳出血 荒木信夫
D 無症候性頚部および脳主幹動脈狭窄・閉塞 黒田 敏
Ⅶ その他の脳血管障害
A 慢性硬膜下血腫 堀口 崇
B 脳静脈・静脈洞血栓症 高嶋修太郎
C 動脈解離 山脇健盛
D もやもや病(Willis 動脈輪閉塞症) 野川 茂
E 脳アミロイドアンギオパチー(CAA) 浜口 毅,山田正仁
F MELAS 飯塚高浩
G CADASIL,CARASIL 永田栄一郎
Ⅷ 若年者の脳卒中
A 若年者の脳卒中 高嶋修太郎
Ⅸ リハビリテーション
A リハビリテーションの概念,評価方法 大塚友吉,里宇明元
B 急性期のリハビリテーション 新藤恵一郎,里宇明元
C 回復期,維持期のリハビリテーション 水野勝広,里宇明元
Ⅹ 脳卒中専門医に必要な基礎的トピックス
A 脳循環代謝 髙橋愼一
B 血液脳関門 棚橋紀夫
C 血管内皮細胞機能 棚橋紀夫
D 血小板/ 血液凝固系の病態 棚橋紀夫
E 虚血性脳組織傷害の機序 伊藤義彰
XⅠ 脳血管障害の疫学・社会医学
A 疫学―死亡率,発症率,わが国の特徴,年次推移 清水高弘,長谷川泰弘
B 脳卒中センターと脳卒中専門病棟(SU) 橋本洋一郎,稲富雄一郎,平野照之
C 脳卒中地域連携パスと脳卒中診療ネットワーク 橋本洋一郎,米原敏郎,寺崎修司
D 患者支援体制,福祉介護 藤井由記代,中山博文
E 医療経済,医療保険,包括医療制度(DPC/PDPS) 長谷川泰弘
用語解説
・脳底動脈先端症候群(top of the basilar syndrome) 伊藤義彰
・MLF(medial longitudinal fasciculus)症候群(内側縦束症候群) 伊藤義彰
・閉じ込め症候群(locked-in syndrome) 星野晴彦
・偽性球麻痺(pseudobulbar palsy) 星野晴彦
・脳血管性パーキンソン症候群 星野晴彦
・視床性失語症(thalamic aphasia) 星野晴彦
・無動性無言(akinetic mutism) 星野晴彦
・磁化率強調画像 野口 京
・intraarterial signal 野口 京
・T2-shine through 野口 京
・デュアルエナジーCT(DECT) 野口 京
・misery perfusion(貧困灌流) 中川原譲二
・HITS(high intensity transient signals) 矢坂正弘
・境界領域梗塞(borderzone infarction) 足立智英,高木 誠
・出血性梗塞 高嶋修太郎
・striate-capsular infarction 高嶋修太郎
・潜因性脳卒中(cryptogenic stroke) 高嶋修太郎
・ABCD2 スコア 高嶋修太郎
・一過性黒内障(amaurosis fugax) 高嶋修太郎
・spectacular shrinking deficit(SSD) 高嶋修太郎
・アスピリン抵抗性(aspirin resistance) 中瀬泰然
・一過性全健忘(transient global amnesia;TGA) 髙木繁治
・プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR) 中瀬泰然
・海綿状血管腫 桑山直也
・脳血管攣縮(cerebral vasospasm) 下田祐介,寳金清博
・症候性正常圧水頭症
(symptomatic normal pressure hydrocephalus) 下田祐介,寳金清博
・架橋静脈(bridging vein) 堀口 崇
・Notch3 永田栄一郎
・片頭痛 永田栄一郎
・遅発性神経細胞死(delayed neuronal death) 伊藤義彰
・虚血耐性現象(ischemic tolerance) 伊藤義彰
・虚血後過灌流(post-ischemic hyperperfusion) 伊藤義彰
・治療時間枠(therapeutic time window) 伊藤義彰
和文索引
欧文- 数字索引
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序文
推薦の序
この度,装いも新たに『必携 脳卒中ハンドブック 改訂第3 版』が出版された.本書の初版は,脳卒中学の泰斗で,脳卒中診療のエキスパートである富山大学病院神経内科の田中耕太郎前教授と高嶋修太郎前診療教授によって編集された名著である.初版は2008 年に出版され,世の脳卒中臨床家に好評をもって受け入れられた.その後,脳卒中臨床の進歩とともに,内容,執筆者を刷新した改訂が行われ,2011 年に改訂第2 版が発刊された.
そして今回,新たな編集者として,大阪市立大学医学研究科神経内科の伊藤義彰教授を迎え,前回の改訂以上に質・量とも充実した形で改訂第3 版が出版されることとなった.脳卒中を専門とする臨床医にとって誠に喜ばしいことである.
本書の歴代の編集者である田中先生,高嶋先生,伊藤先生は,みな慶應義塾大学医学部神経内科の出身で,3人とも慶應義塾大学名誉教授 後藤文男先生の高弟である.慶應義塾大学医学部神経内科は,昭和30 年代,現在の神経内科の前身となる相澤豊三内科の時代から,臨床テーマとして脳卒中,そして研究テーマとして脳循環測定による脳機能研究を掲げ,教室をあげて邁進してきたという歴史を有する.神経内科の初代教授である後藤先生は,教室の研究テーマを「脳循環の自動調節機序の解明」とし,亜酸化窒素(N2O)法やキセノンCT 法によるヒト脳循環測定,および動物実験を主体とする脳血管の神経性調節の基礎研究を進め,「脳循環調節のdualcontrol 理論」を確立した.本書の歴代編集者は,これらの基礎・臨床研究に直接携わり,後藤名誉教授の昼夜を問わない厳しい指導によって鍛えられたつわものである.
本書の編集方針は,脳卒中の基礎・臨床について,このように素晴らしい基礎知識のうえに貫かれている.また,執筆者の陣容をみても,各項目に現在の脳卒中学および脳卒中診療の各領域のオピニオンリーダーが配され,日進月歩の本領域についてしっかりとcatch up した内容となっており,本書の特徴となっている.さらにその内容も教科書的な記述に留まらず,実際の診療現場に即した項目がふんだんに盛り込まれており,まさに「必携すべきハンドブック」といえよう.極めて専門性の高い用語については,本文内に別項として「用語解説」が設けられているのも実用的である.加えて,これまでの脳卒中関連書籍には見出せなかった脳循環代謝や血液脳関門,そして虚血性脳組織傷害など,脳卒中診療にあたって必須である脳循環の基礎知識も網羅されていることに感謝したい.
心原性脳塞栓症の二次予防における直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant;DOAC)の出現と一般化,急性期脳血栓回収療法の一般化とデバイスの急速な改良と機能の進歩など,脳卒中診療は時々刻々と進化している.そのような状況において,本書が世に出たことは誠に時宜を得ている.編集者達の同門の一人として,本書の出版を心から祝すとともに,本書を世の脳卒中診療に携わっておられるすべての医療者に躊躇なくお勧めしたい.
2017 年8 月吉日
一般社団法人日本脳卒中学会 前理事長
慶應義塾大学医学部神経内科 教授
鈴木則宏
編集の序
本書の初版は,富山大学神経内科在職中の田中耕太郎先生と筆者が編集の任にあたり,2008 年に出版された.そして,その後の好評につき,2011 年には改訂第2 版が出版され,これまた好評を博した.このことは,本書が一般的な脳卒中診療の教科書とは異なり,臨床で必要な知識を網羅しながらも,短時間で要点を把握し,病態・診断・治療を論理的かつ明瞭に理解できる構成・内容であったためと考えられる.脳卒中診療を目指す若手医師,日本脳卒中学会専門医を志す医師にとって,参照すべき書籍として受け入れられてきたのではないだろうか.
しかしながら,改訂第2 版が出版されてからはや6 年以上が過ぎ,また2015 年には『脳卒中治療ガイドライン2015』が刊行され,新たな構成・内容に刷新すべき時期がやってきた.本改訂では,改訂第2 版まで筆者とともに本書の編集を担っていただいた田中先生のご意思もあり,新たに編集に参画いただいた伊藤義彰先生(大阪市立大学大学院医学研究科神経内科 教授)と筆者で徹底的な議論を交わし,編集者と執筆者の世代交代,構成・内容の大幅な見直しを行い,『脳卒中治療ガイドライン2015』に準拠するとともに,脳卒中に関連する最新知見を数多く取り込んだ.本書は,単なるガイドラインの列挙と解説に留まらず,脳卒中に関連する基礎知識,診断,治療,予防と,幅広く,様々な領域を総合的にまとめたハンドブックとして位置づけられる.書籍体裁についても,2 色刷りからカラー刷りへと変更し,またイラスト点数を増やすなど,ビジュアル的にも理解しやすく,より実用性を高めた形へと全面的なリニューアルを行った.
さて現在,脳卒中診療に従事している医師は,脳神経外科あるいは脳卒中内科の先生方が圧倒的に多い.しかしながら,神経内科医である筆者としては,全国の神経内科医の先生方にもっと積極的に脳卒中診療に取り組んでいただきたいと期待している.なぜなら,脳卒中は脳血管が存在するどの部位でも発症し,多彩な神経症状を呈するので,脳卒中診療は神経内科医が神経診察や病巣診断をマスターする絶好の機会となるからである.加えて,脳卒中の原因疾患は多様であり,また脳卒中患者は様々な疾患を併発することから,脳卒中診療では内科診療全般の知識も要求される.さらに,脳神経外科的な治療を必要とする場合もあり,内科医,脳神経外科医,放射線科医など多くの診療科の迅速な協力体制が不可欠である.このように,脳卒中診療では,一次予防,診断,急性期治療,リハビリテーション,再発予防など各段階で多職種が協力し合い,適切な治療を実施することが重要である.
本書は,脳卒中診療に携わる医師および医療従事者すべてを読者対象としており,脳卒中の各段階における必要事項を網羅した実用的なハンドブックになったと確信している.本書が1 人でも多くの方に読まれ,脳卒中診療の発展の糧となれば,編集者として望外の喜びである.
最後に,極めて多忙な診療や研究の時間を割いて原稿をお寄せくださった先生方,本改訂版から編集に新たに加わり多大なる貢献をしていただいた伊藤義彰先生,関係各位にこの場を借りて感謝申し上げる.
2017 年8 月吉日
編集者を代表して
独立行政法人地域医療機能推進機構 高岡ふしき病院 院長
高嶋修太郎