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書籍詳細

エビデンスに基づいた
患者中心の医療面接診断と治療社 | 書籍詳細:患者中心の医療面接

札幌医科大学医学部地域医療総合医学講座 教授

山本 和利(やまもと わり) 監訳

Robert C. Smith(ロバート C スミス) 原著

初版 B5判 並製 352頁 2003年08月10日発行

ISBN9784787812988

定価:本体4,800円+税
  

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医療面接は傾聴だけでは完結しない.根拠に基づいた面接の基本構造を,患者さんとの実際のやりとりに沿ってやさしく解説.医療・看護・保健にかかわるすべての人に.

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目次

監訳者のことば

緒  言
 導  入
 面接の歴史的変遷
 患者の物語が医療面接の鍵である
 結  び
 文  献

序  文
 文  献

教育者のための序文

謝  辞

Chapter 1 面接
 面接により生物心理社会的な物語がつくられる
 統合された面接
 実践課題
 文  献
Chapter 2 促進の技法
 質問技法
 関係構築の技法
 促進の技法すべてを統合する
 患者主体の面接と医師主体の面接をさらに定義し例示する
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献
Chapter 3 患者主体の面接
 面接の場面設定(ステップ1)
 解決すべき課題(主訴やその他の関心事)を訊く(ステップ2)
 現病歴を訊き始める(ステップ3)
 患者主体で現病歴を訊き続ける(ステップ4)
 医師主体のプロセスへ移行する(ステップ5)
 基本的な面接技法よりも上級を目指すには
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献
Chapter 4 症状を明確に訊き出す技法
 すべての症状を一般的な言葉に言い換える
 個々の症状を正確に把握する
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献
Chapter 5 医師主体の面接
 現病歴の後半と他の現在困っている問題:一般的概観(ステップ6)
 現病歴と他の現在困っている問題の続き:
 すべての一次データと二次データの年代順の記述(ステップ7)
 健康問題(ステップ8)
 既往歴(ステップ9)
 社会歴(ステップ10)
 家族歴(ステップ11)
 システム・レビュー(ステップ12)
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献
Chapter 6 高度な面接.面接を異なる状況と他の現実問題に応用すること
 患者主体と医師主体のプロセスのバランスをとること
 よくある面接の状況がどのように扱われるか
 コミュニケーションの難しい患者
 小児患者
 高齢患者
 学生に特有の問題
 治  療
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献
Chapter 7 高度な面接―患者・医療従事者関係
 意識下の対応が患者との関係に影響する
 人間関係に影響する患者の特質―患者の個性のスタイル
 人間関係の非言語的側面
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献
Chapter 8 患者の物語の要約と提示
 患者の物語の要約
 診療記録:患者の物語の“記録”
 患者の物語の提示
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献
Chapter 9 患者教育
 情報の提供
 情報の提供と行動への動機づけ
 要  約
 練習問題
 実践課題
 文  献

Appendix A Annals of Internal Medicine からの研究レポート
 面接における研修医のための強化トレーニングの効果:
 ランダム化比較試験
 謝  辞
 文  献
Appendix B 初版の序文
 人間のふるまいを科学的に考えていくこと:
 生物医学モデルから生物心理社会モデルへ
 文  献
Appendix C 感情の表出の例
Appendix D Jones 夫人の初期評価の全記録
 データ元
 情報源と信頼性
 主訴と問題点
 現病歴
 健康問題
 既往歴
 社会歴
 家族歴
 身体診察
 初期診断,初期治療のための介入
 アセスメント:生物心理社会的描写(患者の物語)
 治療と検査計画
Appendix E 精神状態の評価
 完全な精神状態の評価

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序文

監訳者のことば

 私が研修医として赴任していたころには,医療面接についての実習などは皆無であった.指導的立場の医師自体が患者の話を聴かないし,聞いたとしてもその内容は診療録にドイツ語でほんの数行書かれるだけであった.それを反面教師として医師記録を整備し,問題指向型診療記録や退院要約を新たに作成し,診断レベルを上げることに神経を注いだ.しかし担当患者さんが増えると効率を重視して,患者さんには上半身裸で靴下を脱いで中待合で待ってもらってのち,流れ作業で数分の診察をするような外来診療を続けていたようにも思う.今思い返すと診療する患者数や疾病診断数を誇っていただけなのかもしれない.山間の病院に赴任し初めて一人一人をゆっくり時間をかけて診察したが,そのころは高度医療機器もないためにただただ話を聴いていただけのような気もする.今にして思うが,「患者中心の医療」を展開するには患者と疾患に対する知識・技能や家族・地域に対する知識・技能であるprimary care medicine,医療に対して科学的に取り組むevidence-based medicine,患者の背景や生き様を重要視するnarrative-based medicineなどの習得が不可欠であるのに,そのような知の枠組みがなかった.このような視点で医療を展開するためには患者との間に良好な人間関係を構築することが不可欠であり,そのためにはしっかりとした面接技法を習得することが大きくものをいう.本書はその点に応える十分な内容をもっているといえるだろう.
 本書は医療面接のマニュアル本としても使えるが,根拠に基づいた面接の基本構造がどのように組まれているかを詳細に理解するうえでも役立つだろう.そのような点からもまず全体を通読することをお勧めする.そうすることによって読者は医療面接が傾聴だけで成り立っているのではないということを実感するであろう.
 翻訳に当たっての大切な点に触れておく.一部のマスメディアではpatient-centered interviewingを「患者本位の医療面接」と呼んでいるが,「自分本位」とはいっても「他人本位」とは使うことはないと考え,あえて価値観を含んでいる場合にはpatient-centeredを「患者中心」と訳すことにした.また原著にはpatient-centered interviewing, patient-centered process,doctor-centered processという用語が頻用されるが,原著者は,patient-centered interviewingであるためには patient-centered processとdoctor-centered processを統合する必要があると全編を通じて論じている.そこで読者の無用な混乱を避けるために,patient-centered interviewingは「患者中心の医療面接」,patient-centered processを「患者主体のプロセス」,doctor-centered processを「医師主体のプロセス」と訳し分けることにした.「患者中心の医療面接」は原著者が推進する方法であるが,「医師中心の医療面接」は放棄すべき過去の方法論である.ところが本文を読んでもらえばわかるように「患者主体のプロセス」,「医師主体のプロセス」にはよい悪いの価値観は含まれていないのである.
 本書のもう一つの魅力はAppendix Bの,初版によせたGeorge Engelの序文を読めることであろう.「生物医学モデルから生物心理社会モデルへ」の推進に多大な貢献をした今は亡きEngelの,格調高く感銘を与える文章を割愛するに忍び難かったからであろうと推測される.「人間のふるまいを科学的に考えていくこと」に興味をもたれる医師にとって非常に参考になる内容が述べられている.17世紀自然科学から派生した20世紀の生物医学的思考を,生物学・物理学的な世界観から説き起こし,進化論,相対性理論,量子力学,一般システム理論,熱平衡からかけ離れた状態の熱力学,カオスと複雑系などにも言及している.そして,患者の語りを体系的に聴き出していこうとする努力に十分な価値があると,われわれを勇気づけてくれるのである.読み進めるなかでEngelの個人的な医療体験を物語として知ることができるのもうれしい驚きである.
 本書を手にされて購入を迷っている諸氏で,医療面接を技能として習得したいと思っている場合にはChapter 1に目を移してほしい.理論や哲学が好きで患者中心の医療を模索している場合にはAppendix BのEngelの文章を一読していただきたい.医療従事者が本書に出会ったことにより一人でも多くの患者さんの思いや苦悩が汲み取られ診療に生かされるとしたら幸いである.
 
2003年7月10日
山本和利