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書籍詳細

小児神経学診断と治療社 | 書籍詳細:小児神経学

国立精神・神経センター病院名誉院長 東京都立東部療育センター院長

有馬 正高(ありま まさたか) 監修

国立精神・神経センター精神保健研究所所長

加我 牧子(かが まきこ) 編集

国立精神・神経センター精神保健研究所知的障害部部長

稲垣 真澄(いながき ますみ) 編集

初版 B5判 並製 584頁 2008年06月10日発行

ISBN9784787816559

定価:本体12,000円+税
  

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近年次々と発表される新知見や新動向により,小児神経学の分 野はめざましい発展を遂げている.本書は小児神経学の第一線で 活躍するエキスパートがその最新かつ多彩な知見をまとめあげた. 小児神経科専門医の到達目標・研究項目に示された約600の疾患 を網羅し,その病態から治療までをわかりやすく,ビジュアルに 解説した教科書.すべての小児神経学を学びたい医師必携の1冊!

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目次

口絵カラー
監修の序
編集の序
執筆者一覧
略語一覧

総説
小児神経学的な診察と評価……………………………有馬正高
1 先天異常症候群
 1 Down 症候群………………………………………平野 悟
 2 その他の染色体異常症候群…………………………笛木 昇
 3 奇形症候群
  1)遺伝子異常が判明した先天異常症……………萩野谷和裕
  2)遺伝学的基礎が未判明の疾患…………………田中総一郎

2 神経発生異常
 1 神経系の発生,中枢神経系奇形,migration の異常
   ……………………………………………………加藤光広
 2 大頭症,小頭症…………………………宮本雄策・山本 仁
 3 水頭症…………………………………………………斎藤義朗

3先天代謝異常
 1 先天代謝異常――総論………………………………桜川宣男
 2 アミノ酸代謝異常症…………………………………遠山 潤
 3 糖炭水化物代謝異常症………………………………大戸達之
 4 ムコ多糖症……………………………………………岩田秀樹
 5 有機酸代謝異常症…………………………………佐々木征行
 6 脂質代謝異常症………………………………………大澤麻記
 7 リソゾーム・ペルオキシゾーム病…………………難波栄二
 8 金属代謝異常症………………………………………清水教一
 9 ミトコンドリア病……………………………………後藤雄一

4 神経変性疾患
 1 小脳・脳幹・脊髄変性疾患…………………………松坂哲應
 2 末梢神経変性疾患……………………………………須貝研司
 3 大脳変性疾患――白質変性症,灰白質変性症,基底核変性症
   …………………………………………………………吉川秀人
 4 Rett 症候群……………………………………………鈴木文晴
 5 神経変性疾患の脳病理………………………………伊藤雅之

5 神経皮膚症候群
 1 神経皮膚症候群――総論……………………………林 雅晴
 2 結節性硬化症……………………………大越優美・林 雅晴
 3 神経線維腫症…………………………………………今村 淳
 4 Sturge-Weber 症候群………………………………糸数直哉
 5 その他の神経皮膚症候群……………………………川谷正男

6 周産期神経系疾患
 1 周産期脳障害――総論………………………………松井 潔
 2 胎内感染症  伊住浩史
 3 低酸素・無酸素性脳障害……………………………亀井 淳
 4 脳性麻痺の疫学と病型………………………………鈴木文晴
 5 脳性麻痺のリハビリテーション……………………岩崎裕治
 6 頭部画像診断……………………………高嶋幸男・飯田浩一
 7 神経病理……………………………………………小保内俊雅
 8 重症心身障害児・者の医学…………………………小沢 浩

7 神経系感染症
 1 髄膜炎…………………………………………………田中竜太
 2 脳炎・脳症……………………………………………水口 雅
 3 遅発性感染症――SSPE,プリオン病………………山内秀雄

8 自己免疫性神経疾患
 1 小舞踏病,PANDAS……………………………………三牧正和
 2 neuropsychiatric SLE……………………………佐久間 啓
 3 多発性硬化症…………………………………………四俣一幸
 4 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)………………………長澤哲郎
 5 Guillain-Barr 症候群,Fisher 症候群,
   慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー…………佐久間 啓
 6 顔面神経麻痺(Bell 麻痺)…………………………小林 治
 7 急性小脳失調………………………………………石井希代子

9 神経系の外傷
 1 外傷性中枢神経障害…………………………………小林朋佳

10 中毒性疾患
 1 中毒――金属・アルコール・毒素………………古島わかな
 2 薬物中毒………………………………………………矢野文子
 3 細菌毒素………………………………………………重藤由紀

11 脳腫瘍
 1 脳腫瘍……………………………………宮田理英・林 雅晴

12 脳血管障害
 1 脳出血・脳梗塞………………………………………山中康成
 2 もやもや病……………………………………………赤坂紀幸
 3 小児急性片麻痺…………………………横山美奈・福水道郎

13 てんかんなどの発作性疾患
 1 けいれんの鑑別診断…………………………………中川栄二
 2 てんかん――定義・疫学・発作分類………………中川栄二
 3 てんかん症候群の分類………………………………中川栄二
 4 てんかん――内科的治療……………………………須貝研司
 5 小児難治てんかんの外科治療………………………大槻泰介
 6 てんかんの神経科学…………………………………岡  明

14 神経筋疾患
 1 筋疾患の診断学………………………………………小牧宏文
 2 脊髄性筋萎縮症………………………………………村上信行
 3 先天性ミオパチー……………………………………岡田麻里
 4 重症筋無力症…………………………………………須藤 章
 5 筋ジストロフィー……………………………………小牧宏文
 6 筋強直性疾患…………………………………………遠藤雄策
 7 炎症性筋疾患…………………………………………嶺間博隆
 8 その他の筋疾患………………………………………曽根 翠
 9 筋疾患の病理…………………………………………埜中征哉

15 脊髄疾患
 1 神経管閉鎖不全,Chiari 奇形,Dandy-Walker 奇形,
   脊髄の異常……………………………………………斎藤義朗
 2 その他の脊髄疾患……………………………………井手秀平

16 末梢神経疾患
 1 末梢神経疾患………………………………………富士川善直

17 発達障害
 1 診断の考え方……………………………稲垣真澄・加我牧子
 2 精神遅滞(知的障害)………………………………加賀佳美
 3 学習障害………………………………………………稲垣真澄
 4 自閉症…………………………………………………橋本俊顕
 5 Asperger 症候群の特徴と対応………田中恭子・内山登紀夫
 6 注意欠陥/多動性障害………………………………井上祐紀

18 心身症,睡眠障害,その他の小児神経疾患
 1 摂食障害………………………………………………芳賀彰子
 2 チック,遺尿,遺糞,夜尿,心因反応……………小穴信吾
 3 睡眠障害………………………………………………福水道郎
 4 頭痛……………………………………………………荒木 敦
 5 自律神経系疾患………………………………………宮島 祐
 6 小児内科疾患に伴う神経障害
  1)肝疾患,腎疾患,血液疾患などに伴う神経障害…鈴木聖子
  2)栄養に関連した神経障害……………………………矢野文子

索引

TOPICS
■小児神経学における画像診断…………………………佐々木征行
■自閉症の非侵襲的脳機能検査………………軍司敦子・加我牧子
■自閉症への支援――TEACCHの考え方を中心に……高橋和俊
■遺伝子治療の最前線…………………………………井上 健
■ケミカルシャペロン療法…………………………………鈴木義之
■精神遅滞の遺伝子探索アプローチ……………………久保田健夫
■学習障害の遺伝学……………………………………杉田克生
■熱中症――heat strokeの臨床を中心に………………岡  明

*本書で使用する用語は原則,日本小児神経学会用語委員会編
小児神経学用語集(改訂第2版)に準拠した.

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序文

監修の序

胎生期から小児期を通じて,脳の成長と発達はめざましい.脳重
量は2歳で成人の3/4に達し,神経細胞の生成と細胞移動やグリア
細胞の分化,そして樹状突起,棘,髄鞘等の形成も活発である.
大脳,脳幹,脊髄,末梢神経等の各部の機能の分化も明らかにな
り,人間に特徴的な,運動,知覚,記憶,認知,言語,感情表現
などの多彩な発達もみられる.
一方,受精から学童期にかけては,遺伝子,母体に依存する環境,
生後の環境などの様々な影響により,ヒトに共通する生存可能な
範囲内ではあるが,すべての人間が形態的にも機能的にも個人差
をもって生活を営むことになる.この発達期には,身体各所に先
天的または後天的の変異が起こりやすく,独特な器質的,機能的
変化が生じやすい.特に,脳神経の変化は様々な生活の機能に永
続的な異常をきたしやすいので,医療の専門的な対応が求められ,
1950年頃から欧米に続いてわが国でも小児の脳神経疾患に対する
専門的診療を行う病院が散見されるようになった.
当初は,医師それぞれの個人的な必要性や興味に応じて,対象と
する疾病,異常の種類や対応が選ばれる傾向があったが,1960年
頃から小児神経研究会,次いで日本小児神経学会として,臨床家
と研究者が集い,全国的な発表と意見交換が行われるようになっ
た.
以来,この分野における専門的臨床医学の必要性は,患者・家族
や日本医学会等多くの関係者に認められ,知識と経験を積んだ学
会会員の増加とともに2001年から“小児神経科専門医”の制度も
確立された.
“小児神経科専門医”とは,受精から成人に至る成長発達期に発
症する神経機能障害の専門的診療に必要な知識,技能,経験を有
することを,日本小児神経学会が認定した医師であると定められ
ている.この診療に必要な知識の基盤である小児神経学は,小児
医学をはじめとする関連領域医学の一専門領域であると同時に,
神経科学/脳科学の専門領域の一つでもあるとし,専門医が目指
すべき専門的知識,専門的技能,専門的経験の範囲と内容につい
て到達目標が示されている.
専門医の到達目標は,「I.総論」,「II.疾患各論」に大別さ
れている.総論においては,神経発達の基礎となる遺伝,発生,
分化などの基本的知識をもち,精神神経発達の臨床的評価の能力
を有することが専門診療の重要な基盤であるとしている.これは,
年齢に応じた小児の神経学的症候の解釈に際して考慮すべきこと
であり,成人の神経診断学と両輪をなすといえる.
本書は,到達目標の「II.疾患各論」の21項目に示された疾患に
重点をおいて編集され,小児神経科の第一線で中心的役割を担っ
ている方々に執筆を分担していただいた.日進月歩する,疾患の
発見,病態の解明と,多くの社会的要請が続くなかで,本書『小
児神経学』を標準的な参考書として利用していただければ幸いで
ある.

2008年5月 有馬正高


編集の序 

「これが世界で初めての小児神経学の教科書ですよ」と古めかし
いFordの教科書を,編集者の一人に見せてくださったのは,リソ
ゾーム病研究者であると同時に,脳性麻痺や発達障害のお子さん
を診察しておられた鈴木義之先生だったと記憶しています.1975
年頃の話です.駆け出しの小児科医にとって,小児神経疾患の患
者さんは診断も治療も難しく,この教科書を読んで本格的に神経
病の勉強をしなくては,と強く思った次第です.
FordとFreud Sは同時代に活躍し,Freudは歴史上初めての
neurologistとされるCharcot JMのもとに留学し,一時期ウィー
ン小児病院の小児神経科医長にも就任しています.有名なサルペ
トリエール病院の臨床講義をFreudは聴いていた,という話をう
かがったのも鈴木先生からでした.その後,Charcotの臨床講義
風景を描いた挿絵のなかにFreudやTouretteの名前を発見して,
小児神経学の系譜に感銘を受けた思い出があります.
また,もう一人の編集者は1984年の入局直後に,当時の主任教授,
竹下研三先生からずっしり重い教科書を2冊(MenkesとSwaiman)
見せていただき,一年かけてじっくりと読むようにと,教えを受
けたことがあります.医局には坂本吉正先生の『小児神経診断学
』,吉倉範光先生の『小児臨床神経学入門』が置かれている時代
でした.
Farmerのテキストもすでに存在していました.現在までに,小児
神経学の教科書は毎年のように出版され,日本でも,福山幸夫先
生・太田富雄先生の翻訳によるDekabanの『乳幼児の神経学』な
ど古典的な名著だけでなく,新しい教科書・モノグラフが何冊も
出版されています.そのなかで私たちが『小児神経学』と銘打っ
た教科書を発刊できることになるとは,思ってもいませんでした.

本書『小児神経学』は,国立精神・神経センター武蔵病院(現国
立精神・神経センター病院)や神経研究所,精神保健研究所にお
いて十数年の間,監修者・編集者とともに学んだ臨床医や研究者
を中心に,小児神経疾患の病態から治療に至るまで,その詳細を
85名のエキスパートに分担執筆いただいた点に特徴があります.
さらに,本年3月に改訂された「小児神経科専門医のための到達
目標・研修項目」に示されている600に及ぶ疾患に沿って記載さ
れている点も他書にない特徴であると思います.
分担執筆というと,とかく書きぶりも,内容やレベルもばらばら
になりがちです.しかしながら本書は,執筆いただいた先生方が
編集者の意図や思惑をはるかにしのいだ形で,文字通り精魂こめ
て丹念に書いてくださっています.力作揃いのため,予想してい
たページ数を越えてしまった結果,無理を申し上げて割愛・修正
いただいた原稿もたくさんあります.それでも大著となった本書
を手にとっていただければ,すぐに了解いただけると思いますが,
本書は,多数の執筆者による,臨床小児神経学についての多彩な
知見が組み込まれた,日本人による日本人のための日本語の教科
書となりました.
本書の校正・編集作業のなかで,多くの原稿を読ませていただく
ことで編集者の二人は小児神経学分野の進歩について大変勉強が
でき,企画を立ち上げたことの特権をしみじみと味わわせていた
だきました.国立精神・神経センターでは,1995年以来毎年夏に
小児神経学セミナーを行っています.その内容は2003年に発行さ
れた『小児神経学講義――臨床に役立つエッセンスと最新のエビ
デンス』(診断と治療社)に詳しいわけですが,本書は,その講
義内容を深くかつ,広く発展した全集的な形に結実しています.
すなわち,臨床小児神経学とその科学的背景の最先端について学
びたいと思っておられる方々にとって,間違いなく役に立つテキ
ストであると自負し,自信をもってお薦めする次第であります.
最後に,本書の発行にかかわっていただいた多くの方々に深謝い
たします.特に,その企画から出版までは,診断と治療社の柿澤
美帆さん,海津 綾さんをはじめとする担当の皆様の叱咤激励がな
ければ,とても完成させることはできませんでした.ここに感謝
の気持ちを表しつつ,編集の辞といたします.

2008年5月吉日
本書が先生方のお手元で,長く役に立つことを願いつつ
加我牧子
稲垣真澄