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頭痛クリニック3診断と治療社 | 書籍詳細:頭痛クリニック3
群発頭痛は頭痛診療能力の試金石

寺本神経内科クリニック院長 

寺本 純(てらもと じゅん) 著

初版 B5判 並製 96頁 2009年03月10日発行

ISBN9784787816962

定価:本体3,000円+税
  

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救急病院での緊急画像検査でも異常が認められない群発頭痛は,多くの場合見落とされて他の頭痛として診療されるが,その落とし穴を的確に指摘しつつ,診療のノウハウを詳述した本書は,群発頭痛の診療技術習得に最適.ボツリヌス毒素が奏効するので,その施注法についても詳述.著者自身の豊富な臨床統計データの最新版も併載した.好評シーリーズの第三弾.

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目次

はじめに
著者紹介


総  論

A 診療に先立って
 1 群発頭痛は少ないのか? 
 2 群発頭痛が少なくみえるいくつかの理由 
 3 群発頭痛患者の受診を高めるコツ 
B 群発頭痛という病名
 1 病名確立までの沿革 


各  論

診断篇
 A 診断に先立って
 B 診断上重要な臨床所見
  1 一次性頭痛のなかでは最も痛みの強い頭痛である 
  2 頭痛は,決まった片側に出現する 
  3 頭痛発作は数日に1回,ないし1日に数回の出現頻度である 
  4 1回当たりの頭痛発作時間は30分から数時間である
  5 頭痛発作を反復する期間(群発期)は1か月弱から数か月続く 
  6 群発期は,数年に1回,ないし1年に数回現れる 
  7 発作中は同側で流涙,鼻汁分泌,鼻づまり,縮瞳,眼瞼下垂などがみられる 
  8 群発期の非頭痛時間帯に飲酒すると頭痛を誘発,非群発期には誘発なし 
  9 発作中,頭痛に耐えるときに体に力を入れている 
 C 診断上参考となる臨床所見
  10 頭痛発作直前に前ぶれが出現することが多い 
  11 男性に多い 
  12 身長が高めである 
  13 血圧は概して低めである 
  14 愚痴っぽい性格ではない 
  15 女性は妊娠中,頭痛が出現しにくい 
  16 若年期に発症するが,中年期ないし初老期に発症する例もある 
  17 年代とともに症状が不鮮明となり,高齢化で消失する 
 D 診断上のその他の諸問題
  18 頭痛発作中の意識は清明である 
  19 群発期の誘発条件として考えられるものは? 
  20 ときどき左右逆転例がある  
  21 悪心・嘔吐を呈することがある 
  22 慢性群発発作と相互に移行することがある 
  23 発作間欠時間帯にも頭痛が持続することがある 
  24 アロディニアを併発することがある 
  25 まれながら家族例がある 
  26 一生に1回だけの群発頭痛は存在するか? 
治療篇
 A 治療に先立って
  1 予防薬の意義が大きい治療法である 
  2 プラセボ効果がほとんどみられない頭痛である 
  3 患者の理解度が極めて高い頭痛である 
  4 再診率が極めて高い頭痛である 
 B 群発頭痛の抑制治療
  1 主たる治療法 
 C 特殊な場合の治療法
  1 特殊あるいは特定の場合に用いる治療法 
 D 予防治療
  1 一般的な予防治療 
  2 特殊な場合の予防治療 
臨床統計
 A 緒  言
 B 各  論
  1 発症時年齢分布 
  2 受診時年齢分布 
  3 病  型 
  4 群発期の長さ 
  5 群発期の出現時期 
  6 群発頭痛の発作回数 
  7 頭痛発作の出現時間帯 
  8 頭痛発作の持続時間 
  9 頭痛の罹病側 
  10 頭痛発作直前の前駆症状 
  11 寛解期の長さ 
  12 身長と体重 
  13 血  圧 
  14 予防薬の成績 
  15 炭酸リチウム 
  16 ボツリヌス毒素 

参考(外国における臨床統計) 
文  献
付録―読者への呼びかけのページ

索  引
和文索引
欧文索引

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序文

はじめに 
 本書では,『頭痛クリニック3』として群発頭痛をとりあげた.群発頭痛はその名前は今でこそ結構知られるようになってきたが,診断の水準としてはまだ十分なものとはいえないのが現状である.発作中の激しい痛みは,慢性頭痛のなかでは最も強いことが知られている.痛みのために救急病院を訪れることもまれでないが,多くは器質性疾患を疑われ,CTやMRIなどの緊急画像検査が実施されることが多い.しかしながらそれらの画像には異常は認められず,検査などを実施している間にたいていは発作が終了してしまうので,担当医もあまり検証することなく過ぎていくことが多い.
 しかし,初診の群発頭痛患者の過半数が,問診表に群発頭痛と自ら記載しているのを筆者は多く経験している.とりわけ,それはその頭痛で医療機関を受診したことがあり,他の病名が告げられているかあるいは群発頭痛であることを伝えられていない患者のなかでみた結果である.これはすなわち,多くの患者は自己自身でインターネットなどを使って調べたうえで,群発頭痛であることを自己診断していることを示す.
 このことからわかるように,特別な医学知識がなかったとしても,自覚症状をきちんと把握・分析でき,かつ一般向けレベルの医学情報と照合させれば,素人でもほぼ正確に診断に至ることができるのが,群発頭痛の特徴である.これに対し,片頭痛や緊張型頭痛では,よほど典型的でない限り,患者が独自で正確な診断を下すことはできない.
 医師からみて診断レベルで突き当たる可能性が著しく少ない疾患であるといえるが,そのゆえか,診療技術は広まっていない.
 群発頭痛の患者数は少ないと記載した文献は少なくない.しかしはたしてそうであろうか? 国内の頭痛診療に力を入れている施設の医師に質問すると,外来患者数で比較するとだいたい片頭痛の1/10くらいであるという回答が得られる.筆者の施設では,再診の患者,投薬のみの患者を含めると,必ず毎日複数の群発頭痛の受診がある.
 わが国では群発頭痛の疫学統計はまだ存在しない.しかしながら上記のような頭痛専門医の経験から,群発頭痛は多い頭痛とまではいえないかもしれないが,決して少ない頭痛と考えるべきでない,といえよう.
 群発頭痛が少ない頭痛と評価されるのにはいくつかの要因があるような気がする.頭痛外来を設置している大規模医療機関では頭痛診療の曜日が限定されており,患者の受診機会が少ないという問題があるので,実際以上に少なく感じてしまうであろう.その結果,研究対象にもならないし,製薬会社も色目を使ってくれないので,片頭痛に比較するとほとんど無視に近い状況である.
 さらに筆者からみると,群発頭痛患者のパーソナリティーによるところが関係しているような気がしてならない.すなわち,群発頭痛の患者は,最終的な診断に至るまでにいくつかの医療機関を訪れており,ことごとく誤診を受けているにもかかわらず,過去の治療に対してうらみ,つらみをいわない.前医に対する批判を一切しないというのはこの異常な権利社会のなかでは驚くべき点である.いったとしても,せいぜい愚痴か泣きごと程度である.片頭痛ではnervousな,緊張型頭痛ではnoisyな患者を散見するが,群発頭痛ではこのようなことはめったにない.痛くても社会的主張をあまりしない“淡白”なパーソナリティーが社会的認知を遅らせている側面もあるのではないだろうか.
 筆者は,すでに2005年までに400例あまりの臨床統計を『臨床頭痛学』(2005年,診断と治療社)に記載したが,現在では,600例を越えており,本書を出版するにあたり再集計した.外国の臨床統計ではKudrowの報告が最も多数例であるが,それでも500例未満であり,本書での集計結果は国際的にみても最多である.また,それだけではなく,わが国と欧米人との臨床像でみられる若干の差異などについても言及した.
 読者が今後,群発頭痛を診療するにあたり,本書がその基礎的知識の確立に寄与できるものと考えている.

 2009年2月
 寺本神経内科クリニク院長
 寺本 純 識