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小児筋疾患診療ハンドブック診断と治療社 | 書籍詳細:小児筋疾患診療ハンドブック

国立精神・神経センター病院名誉院長

埜中 征哉(のなか いくや) 監修

国立精神・神経センター病院小児神経科

小牧 宏文(こまき ひろふみ) 編集

初版 B5判 並製 240頁 2009年04月10日発行

ISBN9784787816993

定価:6,380円(本体価格5,800円+税)
  

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小児の筋疾患について臨床的側面からまとめた他に類書のないはじめての書.「実際の診療に役立つ」というコンセプトのもと,筋疾患の診療・研究の第一線で活躍する経験豊富な医師たちが,病態や診断にとどまらず,実際のマネジメントに重きをおいて解説した.小児筋疾患医療のノウハウがつまった一冊.写真も多数掲載した.専門家はもちろん,小児筋疾患に携わる医療関係者にも是非手にとっていただきたい.

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目次

小児筋疾患診療ハンドブック

CONTENTS

口絵カラー 

監修のことば 
編集のことば
執筆者一覧


Ⅰ 総 論
 1 筋疾患――総論
 ………………………………………埜中征哉
 2 診断学
 ………………………………………小牧宏文
 3 電気生理検査
 ………………………………………大矢 寧
 4 筋病理
 ………………………………………西野一三
 5 骨格筋画像診断
 ………………………………………小牧宏文
 6 非侵襲的換気療法
 ………………………………………小牧宏文
 7 筋疾患児の全身麻酔
 ………………………………………中井哲慈
 8 社会資源――活用の仕方
 ………………………………………岡 佑美
 9 遺伝カウンセリング・出生前診断
 ………………………………………後藤雄一,池上弥生

Ⅱ 各 論
 1 Duchenne型筋ジストロフィー
  1)臨床症状と経過
 ………………………………………埜中征哉
  2)ステロイド療法
 ………………………………………小牧宏文
  3)呼吸障害
 ………………………………………小牧宏文
  4) 心合併症
 ………………………………………小牧宏文
  5)栄養
 ………………………………………小牧宏文
  6)リハビリテーション
 ………………………………………小林庸子
  7)整形外科的対応
 ………………………………………竹光正和
  8)成人期・進行期医療
 ………………………………………尾方克久
  9)認知機能
 ………………………………………桂 千晶
  COLUMN 教育との連携  
 ………………………………………小牧宏文  
  TOPICS 治療研究の現状  
 ………………………………………中村昭則,武田伸一  
  TOPICS 筋ジストロフィー患者登録データベース
    ――特にDuchenne型筋ジストロフィーに関連して  
 ………………………………………中村治雅  
 2 ジストロフィノパチーの遺伝子診断
 ………………………………………南 成祐
 3 Becker型筋ジストロフィー
 ………………………………………森 まどか
 4 肢帯型筋ジストロフィー
 ………………………………………大矢 寧
 5 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
 ………………………………………林 由起子
 6 Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー
 ………………………………………林 由起子
 7 福山型先天性筋ジストロフィー
 ………………………………………米谷 博,斎藤義朗
 8 メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー
 ………………………………………杉浦千登勢
 9 Ullrich型先天性筋ジストロフィー
 ………………………………………小牧宏文
 10 ネマリンミオパチー
 ………………………………………佐々木征行
 11 ミオチュブラーミオパチー
 ………………………………………宮原綾子
 12 中心核ミオパチー
 ………………………………………宮原綾子
 13 セントラルコア病
 ………………………………………小牧宏文
 14 先天性筋線維タイプ不均等症
 ………………………………………中川栄二
 15 ミトコンドリア病
 ………………………………………後藤雄一
 16 Pompe病
 ………………………………………佐々木征行
 17 先天性筋強直性ジストロフィー
 ………………………………………斎藤義朗
 18 脊髄性筋萎縮症
 ………………………………………清水裕子
  TOPICS I型脊髄性筋萎縮症のケア  
 ………………………………………渡辺美緒  
 19 若年性皮膚筋炎/若年性多発性筋炎
 ………………………………………伊藤秀一,横田俊平
 20 重症筋無力症
 ………………………………………近藤章子
 21 Guillain-Barr症候群
 ………………………………………佐久間 啓
 22 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
 ………………………………………根津敦夫
 23 遺伝性運動感覚性ニューロパチー
 ………………………………………須貝研司

索 引

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序文

監修のことば

 本書を企画・編集してくださったのは編者の小牧宏文先生です.小牧先生の編者のことばを拝見して二人の経歴の共通点を再確認してびっくりしています.二人とも熊本大学医学部の出身で,大学病院の小児科に籍を置き,しばらくして国立療養所西別府病院(現,国立病院機構西別府病院)に赴任して筋ジストロフィーの患者さんに接していることです.ただ,小牧先生は1991年から,私は1969年から西別府病院勤務ですから,その差なんと22年.

 私が西別府病院に赴任したのは今から40年も前になります.その頃は筋ジストロフィーの患者さんに対する世の中の偏見も強く,子どもさんは家の一部屋に閉じこめられ,教育もちゃんと受けるチャンスがなかったと聞いています.当時は国立療養所には結核患者がおもに入院していたのですが,化学療法の普及などで入院ベッドが空くようになりました.そこで国は全国あちこちの国立療養所に筋ジストロフィー病棟(正確には筋萎縮症病棟といいます)を新設し,筋ジストロフィーのお子さんたちが医療と教育を受けられるようにしました.
 私が西別府病院に赴任したとき,2番目の病棟が開設されることになりました.その頃の入院患者さんの大半はまだ歩けるお子さんで,元気に付設する養護学校に通っていました.新しい病棟に引っ越すときに,私が重い荷物をやっと持ち上げて運んでいると,あるお子さんが「先生って,力なかね.そげなものも,運べんとね」と笑って話しかけてくれました.最初は何とも複雑な気持ちでした.本人は手も挙げられず,座ったままのお子さんです.自分の力が弱いことを棚にあげて,と思いましたが,次の瞬間.ああ,この子たちは自分が病気だなんて意識していないのだ.普通の子どもと同じ気持ちで明るく生きているのだと嬉しくなりました.「先生は,力も根性もなかとたい」と答えると,みんな「先生,がんばれ」と応援してくれました.子どもたちはみんな私の友だちだ.一緒に楽しく過ごそうと思いました.でも,大学の都合で1年間の勤務で病院を去ることになりました.私が病院を去るときは患者さんたちが病院の玄関まで見送ってくださいました.涙,涙でした.

 時が過ぎ,現在では病気のお子さんは親御さんのところから,能力に合わせて普通学級に,あるいは特別支援学校にと通学するようになりました.社会の偏見も少なくなりました.そして,リハビリテーションが徹底し,人工呼吸器が導入され,心合併症にも対応できるようになり,Duchenne型の患者さんでは平均寿命が10年以上も延長しています.本書が筋疾患の患者さんたちのマネジメントに少しでも役立ち,患者さんたちのQOLがさらに向上することを心から願っています.よい本ができたと自負しています.
 編集に多大な時間を費やしてくださった小牧宏文先生,国立精神・神経センターを中心とした執筆者の先生方,本書の完成に大きな力を注いで下さった診断と治療社の編集部の方々,特に海津 綾さまに深く感謝いたします.

2009年4月
根本治療が確立し,筋疾患がなくなる日が近いことを念じつつ
埜中征哉



編集のことば

 私が筋疾患の患者さんにはじめて出会ったのは1991年,小児科医になって2年目の秋でした.国立療養所西別府病院(現,国立病院機構西別府病院)では当時筋ジストロフィーの専門病棟が二つあり,そこには多くの長期入院の患者さんが在院していました.そのなかでも小学1年生から20歳代のDuchenne型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)の患者さんが,同じ病棟で医療・教育を受けつつ生活しておられる姿は非常に印象的であったと同時に,何ともいえない複雑な思いを抱いたのを覚えています.当時は筋ジストロフィーの情報が簡単に手に入る時代ではなく,6ヶ月の勤務の間,見よう見まねで診療を行っていたように記憶しています.その4年後の1996年に現在も勤務している国立精神・神経センター病院(当時,国立精神・神経センター武蔵病院)で,筋疾患の患者さんに再会しました.そこで最初に担当したのはDMDの中学生でした.現在であれば非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)を含む呼吸ケアによりうまくしのげたのかもしれませんが,肺炎がきっかけで気管切開を余儀なくされてしまいました.でも,その患者さんは大学を卒業し,現在も目標をもって元気に生活されています.
 多くの筋疾患の根本的治療は未だ開発されていません.しかし,医療の進歩によって延命のみならずQOLは確実に向上してきています.私たち筋疾患の医療に携わる人間は単に延命だけでなく,成人期に向けて充実した生活を送ってもらうために何を提供していくべきかを常に考慮しておく必要があると思います.つまり先を見越した医療の提供を考えていくことはとても重要で,それにより患者さんの予後やQOLは大きく変わりえるものだと確信しています.

 本書は,「実際の診療に役に立つ」という単純かつ明快なコンセプトのもとに作成されました.小児科医,小児神経科医,リハビリテーション科医,整形外科医,神経内科医,麻酔科医の他,リハビリテーションにかかわるセラピスト,看護師などの筋ジストロフィーをもつ患者さんの診療に携わる医療関係者に必ず役に立つ内容だと思います.また,本書の類書はなく,これまでに培われてきた筋疾患の医療のノウハウを専門家以外の医療者に提供することも目的としています.筋疾患の多くは希少疾病に該当します.必ずしも筋疾患を多く経験していない医療機関でも診療を行わざるをえない現状があると思います.今でも小児期発症の筋疾患の診療に関する情報は十分行き渡っているとはいえませんが,わが国でも筋ジストロフィー研究班などにより筋疾患の専門病院で行われてきた筋疾患の医療・ケアに関する知見の集積が行われてきました.その専門的医療を広く普及させることに本書が寄与できれば大きな喜びです.
 本書は筋疾患の診療や研究に実際に携わっている国立精神・神経センターの医師などによって執筆されました.実体験に基づくリアルな内容を感じ取っていただければ幸いです.
 本書が筋疾患をもつ子どもたちの生活の向上や診療に少しでも役に立つことを願います.

2009年4月
小牧宏文