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書籍詳細

日本小児科学会新生児委員会編
新生児のプライマリ・ケア診断と治療社 | 書籍詳細:新生児のプライマリ・ケア

日本小児科学会新生児委員会 編集

初版 B5判  308頁 2016年05月20日発行

ISBN9784787822109

定価:本体6,800円+税
  

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NICUに入院するようなハイリスク新生児の診断・治療に重点がおかれがちな新生児領域では,ローリスク新生児のために知っておくべき診療・ケアについて,これまで十分には語られてこなかった.本書はそうした背景もとに企画された,日本小児科学会新生児委員会編による,日常的にローリスク新生児の診療に携わる小児科医・産科医,また助産師や看護師に向けた,新生児のプライマリ・ケアに役立つ1冊.

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目次

口 絵
発刊に寄せて …五十嵐 隆
序 …板橋家頭夫
執筆者一覧

第Ⅰ章 総 論
 1.小児科医として新生児を診る・母子にかかわる必要性 …堀内 勁
 2.望ましい新生児ケアの体制 …佐藤和夫
 3.最近の母子保健統計 …楠田 聡
 4.NICUに入院しない正期産新生児の特徴と留意点 …佐藤和夫
 5.ケアに必要な産科情報の利用法 …佐藤和夫
 6.プレネイタルビジット …佐藤和夫
 7.母親学級・両親学級 …渡辺とよ子
 8.胎児の異常と母体搬送の適応 …大木 茂
 9.出生前診断への対応 …古庄知己
10.周産期からの虐待予防 …澤田 敬

第Ⅱ章 母体の感染(症)と新生児のリスク
 1.B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス …杉浦時雄
 2.HIV …細川真一
 3.HTLV-1 …板橋家頭夫
 4.インフルエンザ …高橋尚人
 5.TORCH症候群 …遠藤 剛/杉浦時雄
 6.結 核 …宮沢篤生
 7.B群溶血性連鎖球菌 …高橋尚人
 8.麻疹,水痘ウイルス …高橋尚人

第Ⅲ章 母体疾患(感染症を除く)と新生児のリスク
 1.特発性血小板減少性紫斑病 …高橋幸博
 2.甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症 …河井昌彦
 3.膠原病 …五石圭司
 4.気管支喘息 …五石圭司
 5.肥 満 …伊藤裕司/塚本桂子
 6.糖尿病 …河井昌彦
 7.妊娠高血圧症候群 …伊藤裕司/塚本桂子
 8.精神疾患 …伊藤裕司/塚本桂子

第Ⅳ章 分娩室での対応
 1.小児科医の分娩立ち会いの必要性と留意点 …田村正徳
 2.分娩室での新生児の評価と蘇生 …細野茂春
 3.低体温療法の適応 …細野茂春
 4.分娩室内での身体診察 …細野茂春
 5.出生時のルーチンケア …渡部 晋
 6.早期母子接触の必要性と留意点 …渡部 晋一
 7.前期破水があった新生児の対応 …川村直人/網塚貴介
 8.羊水混濁があった新生児の対応 …和田雅樹
 9.染色体異常や先天異常症候群が疑われるときの対応 …和田雅樹
10.自施設で入院管理不能な(超)早産児に対する分娩室での対応 …網塚貴介
11.分娩室内でのパルスオキシメータの使用 …大久保沙紀/中尾秀人
12.新生児搬送の準備 …中村友彦

第Ⅴ章 産科入院中のケア
 1.母子同室の意義と留意点 …北島博之
 2.母子同室を推進するにあたっての体制整備のポイント …田村正徳
 3.出生後の身体診察 …長 和俊
 4.血糖測定の適応と留意点 …河井昌彦
 5.家族の面会と留意点 …吉尾博之
 6.産科病棟(新生児室)のアウトブレイクの対応と予防 …佐藤吉壮
 7.入院中のルーチンケア
   A.沐 浴 …久保 実
   B.臍帯のケア …久保 実
   C.皮膚のケア …久保 実
   D.母乳育児支援 …水野克己
   E.補足と人工乳 …水野克己
   F.ビタミンK投与 …伊藤 進
 8.経皮黄疸計の使用と留意点 …日下 隆
 9.新生児聴覚スクリーニング検査 …長 和俊
10.新生児マススクリーニングの実施と異常への対応
    ―特にタンデムマス法について …山口清次
11.母体に投与された薬剤と新生児のリスク …関 和男
12.退院時診察と家族への説明 …長  和俊
13.チャイルドシート …市川知則

第Ⅵ章 産科入院中のよくある症状,注意すべき症状への対応
 1.早期新生児期の緊急疾患 …中村友彦
 2.黄 疸 …米谷昌彦
 3.発熱,体温低下 …有光威志/池田一成
 4.発 疹 …國方徹也
 5.心雑音 …与田仁志
 6.著しい体重減少,体重増加不良 …和田和子
 7.嘔吐,哺乳不良 …和田和子
 8.排尿遅延,排便遅延 …猪谷泰史
 9.多呼吸,無呼吸 …中村友彦
10.チアノーゼ,motteling …与田仁志
11.何となく元気がない(not doing well) …城 裕之
12.低血糖 …河井 昌彦
13.新生児発作 …早川 昌弘
14.吐血,下血 …東海林宏道
15.分娩外傷
   A.産瘤,頭血腫,帽状腱膜下血腫 …茨  聡
   B.腕神経叢麻痺 …茨  聡
   C.骨 折 …茨  聡
16.頭蓋の異常 …内山 温
17.正中頸囊胞 …内山 温
18.口唇顎裂,口蓋裂 …内山 温
19.副耳,多指症,合指症 …林谷道子
20.先天性歯,上皮真珠腫 …林谷道子
21.血管腫,血管奇形 …田中太平
22.停留精巣,尿道下裂 …田中太平
23.鼠径ヘルニア,陰囊水腫 …福原里恵
24.仙骨皮膚洞 …福原里恵
25.新生児TSS様発疹症 …高橋尚人

第Ⅶ章 退院後
 1.2週間健診の目的と診療のポイント …渡辺とよ子
 2.1か月健診の目的と診療のポイント …渡辺とよ子
 3.退院後の相談と対応
   A.黄疸の遷延  …米谷昌彦
   B.体重増加不良 …水野克己
   C.臍ヘルニア,臍肉芽腫 …福原里恵
   D.母乳不足感,母乳育児支援 …水野克己
   E.心雑音 …与田仁志

第Ⅷ章 Late preterm児のケア
 1.定義と疫学 …板橋家頭夫
 2.早期新生児期の異常 …板橋家頭夫
 3.産科病棟におけるケアと留意点 …藤田花織/森岡一朗
 4.退院後のリスクと健診のあり方点 …藤田花織/森岡一朗
 5.育児支援 …水野 克己

第Ⅸ章 胎児発育不全,SGA児のケア
 1.SGAの定義 …板橋家頭夫
 2.早期新生児期のリスク,産科病棟におけるケアと留意点 …板橋家頭夫
 3.SGA児の予後と健診時の留意点 …板橋家頭夫

第Ⅹ章 多胎児のケア
 1.産科病棟におけるケアと留意点 …渡辺とよ子
 2.退院後の育児支援 …渡辺とよ子

第Ⅺ章 育児支援,母子保健
 1.愛着形成 …堀内 勁
 2.母子健康手帳の活用 …佐藤和夫
 3.乳幼児突然死症候群 …加藤稲子
 4.メディアリテラシー …佐藤和夫
 5.特定妊婦(社会的ハイリスク)から出生した児と母への支援  …側島久典
 6.パリビズマブ投与の適応 …楠田 聡

付 録 1.産科医療補償制度の補償対象
     2.便色カードの使い方

索 引

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序文

発刊に寄せて

 日本小児科学会新生児委員会が中心になって作成した『日本小児科学会新生児委員会編 新生児のプライマリ・ケア』がこのたび上梓されることを喜ばしく思います.
 小児科医は新生児から思春期の子どもたちまでの総合医として,日々診療に従事しています.小児科医のなかでも新生児科医はリスクの予想される分娩に立ち会い,出生後速やかに病的新生児の診療を行っています.一方,リスクの少ない大多数の新生児の診療は新生児科医だけでなく一般の小児科医あるいは産婦人科医が担当しています.新生児期は人生のスタートをはじめる重要な時期で,この時期の母子相互作用が母性の形成に大きく影響します.さらに,すべての新生児がこの時期に適切なケアを受けられることが,その後の児の人生にとって大変に有益なものとなります.トロント小児病院のスローガンである“Every child deserves a healthy start, a strong mind, and a bright future”はすべての生まれてきた新生児に対して私ども大人が深く認識しなくてはならない言葉です.
 これまでの小児科学はリスクの高い病的新生児の治療に重点がおかれてきました.新生児医療・医学は小児科学のなかでも極めて専門性の高い分野です.先見性にあふれた意欲的で優れた先輩小児科医の御尽力により,人工サーファクタントの開発,優れた人工呼吸療法の導入,効果的な栄養管理の実施,実効性のある感染症対策など,様々な面での医学・医療技術の進歩が未熟児・新生児医療に導入されました.そして,現在ではわが国の未熟児・新生児医療は世界のトップレベルにまで到達しています.
 一方,リスクの少ない大多数の新生児の診療はこれまでは「育児」の範疇に属するとされ,経験が重視され,標準的な診療やケアの仕方について学会レベルで十分に検討されることが少なかったと考えられます.その意味で,今回日本小児科学会新生児委員会が中心になって作成した本書は画期的で,経験だけでなくエビデンスやサイエンスを重視し,リスクの少ない普通の新生児の診療やケアの仕方を示す客観的な指針といえるものとなっています.
 すべての小児科医だけでなく,産婦人科医や新生児を扱う医療関係者にも本書が愛用され,診療の大きな助けになることを願っています.
 
平成28年春

公益社団法人 日本小児科学会会長
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター理事長 五十嵐 隆





 わが国では施設別分娩件数のうち,約半数が一般病院であり,多くの施設には小児科医が勤務していると思われる.育児のエキスパートであるはずの小児科医ではあるが,わが国の新生児医療の歴史的経緯もあってか,ローリスク新生児のケアや診療体制などについてのかかわりは比較的少ないように思われる.早期新生児期は育児のスタートとして重要な時期であり,この時期の診療やケアのありようは,母性の成熟過程に影響する可能性が高い.現状の保険診療のもとでは,医療的介入がなされない限り,あくまでも新生児は母体の付属物としての対象である.そのため,ローリスク新生児のケアに必要な人員配置は十分とはいいがたいのが現状である.しかしながら,小児科医の本分を考えるならば,産科スタッフとともに安心で安全な医療体制を工夫するとともに,家族が希望をもって育児のスタートを切れるように支援すべきである.
 また,留意しなければならない点として,分娩施設を退院する大部分の新生児は,結果的にローリスクであったということであり,出生直後からローリスク新生児と決まっているわけではない.つまり,いつでもハイリスク新生児に転ずる可能性がある.それゆえ,分娩歴や今回の妊娠・分娩経過,日常診察によりその予兆を察知しなければならない.そのためには,小児科医がローリスク新生児の診療にあたる際に知っておくべきポイントは多々ある.だが,これまで小児科医に対する新生児領域の卒後教育では,おもに新生児集中治療室(NICU)に入院するようなハイリスク新生児をどのように診断・治療するかといった事項に重点がおかれ,ローリスク新生児の診療やケアについては必ずしも十分ではなかった.
 そこで,このような背景をもとに,日本小児科学会新生児委員会において本書の出版が企画された.新生児委員会において数回の会議を経て内容が検討され,最終的に日本小児科学会理事会の承認を得た.本書は新生児委員会のメンバーを中心に執筆を依頼したが,委員以外の方々にも執筆していただいた.さらに,内容の偏りを最小限にするため,一部の新生児委員が原稿を査読し,適宜著者に修正を依頼した.各項目は,原則としてエビデンスをもとに執筆されているが,現時点でエビデンスが不十分な場合にはエキスパートオピニオンとなっている.
 本書は小児科医の卒後教育に役立つように企画されてはいるが,日常的にローリスク新生児の診療に携わる小児科医や産科医,助産師・看護師の方々にも役立つ内容になっており,是非ご一読いただきたい.わが国の新生児のプライマリ・ケアの向上や重要な時期の育児支援に本書が役立つことができれば,執筆者一同,このうえない喜びである.

平成28年春

公益社団法人 日本小児科学会新生児委員会委員長 板橋家頭夫