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小児泌尿器科学診断と治療社 | 書籍詳細:小児泌尿器科学

日本小児泌尿器科学会 編集

初版 B5判 並製 368頁 2021年02月19日発行

ISBN9784787824226

定価:9,900円(本体価格9,000円+税)
  

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日本小児泌尿器科学会の編集となる本書では,充実した基礎領域とともに,小児泌尿器科の最前線で活躍する精鋭執筆陣が重要疾患や必須事項についての最新知見を惜しみなく紹介.忙しい日々の診療業務のなかで役立つよう,どの項目からでも読み進められる独立した頁構成とした.さらに図表やカラー写真を適宜用いて「見やすく,読みやすく」表現することを心がけた.小児泌尿器科のみならず,多くの近接領域で手許に置いて役立てたい1冊.

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目次

口絵カラー

刊行にあたって……金子一成
「小児泌尿器科学」への期待……宮北英司
患児を,「自分の子どもに置き換えて」考える……山髙篤行
「小児泌尿器科学」を手にとってくださった皆様へ……林 祐太郎
執筆者一覧

Ⅰ 腎尿路生殖器の発生学

 1 先天異常(総論)……藤本幸太,水野健太郎,林 祐太郎,山田 源
 2 胚葉形成と初期器官分化……上田祐子,山田 源,原 勲,村嶋亜紀
 3 腎と尿管の発生……井出大志,西中村隆一
 4 膀胱と尿道の発生
    ……日向泰樹,中井秀郎,中村 繁,林 祐太郎,水野健太郎,松丸大輔,村嶋亜紀,鈴木堅太郎,山田 源
 5 生殖腺の発生……嶋 雄一
 6 生殖器の発生(内生殖器の発生)……上田祐子,日向泰樹,山田 源,原 勲,村嶋亜紀
 7 生殖器の発生(外生殖器の発生)
    ……藤本幸太,松丸大輔,村嶋亜紀,水野健太郎,林 祐太郎,鈴木堅太郎,山田 源

Ⅱ 小児泌尿器科学総論

A 診断総論 
 1 小児の泌尿器科的評価……藤丸季可
 2 小児の泌尿器科的診察……田中征治
 3 小児の症候論……池田裕一
 4 小児の腎機能評価……西﨑直人
 5 小児の内分泌学的評価……長谷川奉延
 6 小児に対する画像診断(1)……宮坂実木子
 7 小児に対する画像診断(2)……内藤泰行
 8 小児の排尿機能検査……市野みどり
 9 小児の下部尿路機能検査……橘田岳也
 10 小児の膀胱尿道鏡検査……宋 成浩
 11 出生前診断……米倉竹夫

B 治療総論
 1 小児泌尿器科の手術……山髙篤行
 2 周術期管理……古賀寛之
 3 小児の腹腔鏡手術……岩村正嗣
 4 小児のロボット支援手術……小島祥敬
 5 小児の薬物療法……金子一成

Ⅲ 小児泌尿器科学各論

A 腎・上部尿路の先天異常
 1 腎の先天異常(1)……辻 章志
 2 腎の先天異常(2)……上仁数義
 3 腎嚢胞性疾患……郭 義胤
 4 先天性水腎症……河野美幸
 5 先天性腎盂尿管移行部通過障害(1) ―治療方針・手術適応……野口 満
 6 先天性腎盂尿管移行部通過障害(2) ―診断……中根明宏
 7 先天性腎盂尿管移行部通過障害(3) ―自然経過……小川哲史
 8 先天性腎盂尿管移行部通過障害(4) ―内科的・保存的治療……小川哲史
 9 先天性腎盂尿管移行部通過障害(5) ―手術治療……羽賀宣博
 10 先天性腎盂尿管移行部通過障害(6) ―管理と予後……守屋仁彦
 11 膀胱尿管逆流(概要)……宮北英司
 12 膀胱尿管逆流(1) ―診断……木全貴久
 13 膀胱尿管逆流(2) ―内科的・保存的治療……新村文男
 14 膀胱尿管逆流(3) ―手術治療……佐藤裕之
 15 膀胱尿管逆流(4) ―管理と予後……鯉川弥須宏
 16 膀胱尿管逆流(5) ―逆流性腎症……松岡弘文
 17 巨大尿管……佐藤裕之
 18 尿管瘤……杉多良文
 19 異所性尿管(尿管異所開口)……杉多良文

B 膀胱および周辺臓器の先天異常
 1 尿膜管の異常……石井啓一
 2 膀胱の異常(1)……岡崎任晴
 3 膀胱の異常(2)……金森 豊
 4 膀胱外反……野口 満
 5 総排泄腔外反……窪田正幸
 6 総排泄腔遺残……窪田正幸
 7 鎖肛と泌尿器科的合併症……矢内俊裕

C 尿道の先天異常
 1 尿道上裂……長谷川雄一
 2 尿道下裂……吉野 薫
 3 後部尿道弁……久松英治
 4 その他の尿道の異常(1)……西 盛宏
 5 その他の尿道の異常(2)……徳永正俊

D 陰茎の先天異常など
 1 包茎……林 祐太郎
 2 その他の陰茎の異常(1)……青木勝也
 3 その他の陰茎の異常(2)……中村 繁,中井秀郎

E 陰嚢内容の異常
 1 停留精巣の診断……浅沼 宏
 2 停留精巣の治療……生野 猛
 3 停留精巣の類縁疾患……岩村喜信
 4 陰嚢水腫……世川 修
 5 精索静脈瘤……白石晃司
 6 急性陰嚢症(1)―精巣捻転(精索捻転)……水野健太郎
 7 急性陰嚢症(2)―その他の原因疾患……佐藤雄一
 8 陰嚢自体の異常……西尾英紀

F 女児外陰部の異常
 1 女児外陰部の異常……本間澄恵

G 性分化疾患
 1 性分化疾患を理解するための基礎知識……長谷川奉延
 2 性染色体性性分化疾患……濱島 崇
 3 46,XY性分化疾患……石井智弘
 4 46,XX性分化疾患……佐藤武志
 5 その他の(広義の)性分化疾患―環境によると思われる性分化疾患……佐藤武志
 6 性分化疾患に対する手術治療(1) ―男性外陰形成術……吉野 薫
 7 性分化疾患に対する手術治療(2) ―女性外陰形成術……丸山哲史

H 小児の下部尿路機能障害など
 1 下部尿路機能の発達と評価……宮里 実
 2 小児の神経因性下部尿路機能障害……井川靖彦
 3 小児の非神経因性下部尿路機能障害……三井貴彦
 4 小児の排便障害……岡和田 学
 5 夜尿症……大友義之

I 小児の泌尿器科腫瘍
 1 神経芽腫……宗崎良太
 2 腎芽腫・腎明細胞肉腫・腎横紋筋肉腫様腫瘍・ほか……上原秀一郎
 3 腎細胞癌・腎血管筋脂肪腫……高橋遼平,浅沼 宏,大家基嗣
 4 横紋筋肉腫……木下義晶
 5 精巣腫瘍……田村大地,小原 航

J 小児の尿路感染症
 1 小児の尿路感染症……木全貴久

K 小児の性器感染症
 1 小児の性器感染症……兼松明弘,山本新吾

L 小児の尿路結石症
 1 小児の尿路結石症……河野美幸

M 小児の腎不全
 1 小児の慢性腎臓病(CKD) ……服部元史
 2 小児の腎不全(外科的管理)―治療(腹膜透析)……東武昇平
 3 小児の腎不全(外科的管理)―治療(腎移植)……矢澤浩治

N 小児泌尿器科臓器の外傷など
 1 腎外傷……坂井清英
 2 副腎と上部尿路の外傷……濱野 敦
 3 下部尿路・陰茎の外傷など……佐々木ひと美
 4 精巣・陰嚢・陰唇の外傷……迫田晃子

索引
写真提供者一覧
編集後記……佐藤裕之

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序文

刊行にあたって

このたび,日本小児泌尿器科学会(本学会)が編集した初めての教科書,「小児泌尿器科学(本書)」が発刊の運びとなりました.
約30年の歴史を持つ本学会の社会的使命は,子どもの泌尿器疾患に関して,「原因を解明し,より良い治療法を開発する(学術レベルの向上)」,「早期に発見し適切な対応をするための診療支援を行う(診療レベルの向上)」,「診療・教育・研究を担う次世代の医療者を育成する(人材育成)」,そして「様々な診療に関する情報を広く国民に発信し提言する(社会貢献)」ことです.
これらの社会的使命達成のツールとして,学会が責任を持って編集した教科書は欠かせません.本学会では,これまでにも様々な診療ガイドラインを作成してきましたが,教科書はありませんでした.
そこで2019年7月に私が理事長を拝命したことを機に,林 祐太郎教授(名古屋市立大学小児泌尿器科)を委員長とする教科書編集委員会を立ち上げ,以下の点に留意しながら,編集作業を進めました.すなわち,①小児泌尿器科学を学ぶ医師として知っておくべき事項は過不足なく網羅する,②執筆者は本学会員に限定せず,各分野のオピニオンリーダーに依頼する,③忙しい診療の中でも短時間で理解できるよう,執筆者には規定原稿量を厳守いただく,④執筆者による表記・表現の差や齟齬をきたさないように,編集委員会が責任を持って最終校正する,といったことを徹底しました.
その結果,「わが国の小児泌尿器科学の正書としてこれ以上のものはない」と自負できる素晴らしい教科書が完成しました.これは編集委員の先生方の努力もさることながら,執筆者の先生方が発刊趣旨をご理解くださり,様々な修正依頼に快く協力してくださったお陰です.この場をお借りして改めて御礼申し上げます.とくに基礎医学系の先生をはじめ学会員でない執筆者の方々には,失礼な依頼もあったかと存じます.ご寛容ください.
小児泌尿器科学に関する必要不可欠な最新情報を網羅した本書を,小児泌尿器科の診療に携わる医師,看護師,コ・メディカルの方々,すべてにお読みいただきたいと思っています.そして本書を読み,一人でも多くの方が小児泌尿器科学に興味を持っていただけたら望外の喜びです.
最後に,本書の編集・出版を担当してくださった株式会社診断と治療社,専務取締役・堀江康弘様,編集部・森さとこ女史に心より御礼申し上げます.

令和3年1月
編集主幹・日本小児泌尿器科学会理事長
金子一成
(関西医科大学小児科)



「小児泌尿器科学」への期待

このたび,日本小児泌尿器科学会の中心メンバーが主体となり作成された,「小児泌尿器科学」が上梓されることを心からお慶び申し上げます.
医学部学生の教育を担当していると,時代の変遷を感じることが多いものです.我々が医学部の学生時代には,科目ごとに教科書を用意し,それをもとに勉強したものですが,昨今は,コンパクト化した教科書ないし手引き,またはネットを駆使した勉強方法に変わってきているように思います.現代の学生は,できるだけ無駄を省きたいという意図があるのかもしれません.専門分化が先鋭化し情報量が格段に増加したことを背景に,より必要度の高い情報・内容を得たいという表れだと思います.しかし,いつの時代にも基礎的事項の理解は必須であり,教科書がその役割を担う点に変わりはないものと思います.
今回,類書があふれる中で「小児泌尿器科学」が発刊されることは教科書本来の役割を取り戻すことになり,読者は教科書を読み進めることで自然に知識を習得し,この分野において体系化された最新の知見が得られるものと思います.泌尿器科学の中でもとくに専門性の高い小児泌尿器科学の症候学,検査,診断,治療に関する内容が本教科書には明快に記載されており,小児科,小児外科,泌尿器科の先生,研修医,また新たに勉強し知識を得る学生の座右にあって手軽に活用されることを願ってやみません.
子どもたちには先の長い人生があります.一生戦い続けなければならない病気を持っていることもあります.治療結果のわずかな違いがその子どもの運命を大きく左右することさえあります.その責任を担うためにも本教科書を使用して得た知識をもとに,子どもたちがこの先の長き人生を喜々として過ごせるように,子どもたちの輝く未来のために貢献できることを期待いたします.

令和3年1月
編集主幹 宮北英司
(東海大学医学部付属大磯病院泌尿器科)



患児を,「自分の子どもに置き換えて」考える

読者の皆様,とくに若手の先生方には,執筆者の情熱が込められたこの「小児泌尿器科学」で誰にも負けない小児泌尿器科診療の知識と技術力を身につけ,日本の小児泌尿器科医療を牽引していただきたいと存じます.また,将来,本書の刊行が,皆様が臨床と学問の双方で世界の小児泌尿器科をリードしていくための一助となることを願ってやみません.
私は,患児の治療を行う際,患児を自分の子どもに置き換えます.そして,診断のためにどのような血液検査を行うか,画像診断には何を使用するか,どのような手術を選択するかを考えます.私は外科医ですから,患児に手術が本当に必要なのかを見極め,いつ行うのか,開腹手術であろうと腹腔鏡手術であろうとロボット支援手術であろうと,患児のために自分の実力に見合った手術法を選択しなければなりません.そのためには,常日頃から謙虚に学び,診断力,手術力,術後管理力の全てをしっかりと身につける必要があります.このプロセスに終わりはないのです.私も本書を繰り返し読み,勉強して行かねばならない者の一人です.
しかし,勉強だけでは真の医師にはなれません.真の医師になるためには本書でコツコツと勉強すると同時に,日々の臨床・手術で地道な努力・研鑽を積む必要があるのです.
日本のお家芸である柔道で対外国選手に生涯無敗という偉業を成し遂げた,ロサンゼルスオリンピック金メダリストの山下泰裕氏が,日本小児外科学会の講演で語られました.「勝つだけでは不十分」「人の痛みがわかるチャンピオンが本当のチャンピオン」と.正にそのとおりであります.私も若い頃恩師から「患者,そしてご家族の心の痛みのわかる医師になれ」との指導を徹底的に受けてきました.皆様にも,本書で学問の実力をつけていただくと同時に,日々の臨床で人間力を鍛え「人の心の痛みがわかる医師」になっていただきたいと思っております.
最後になりますが,本書の発刊に関し,ご尽力賜りました執筆者の先生方に深く感謝いたします.また,予定どおりの刊行に至ったのは,ひとえに編集委員長である林 祐太郎先生の小児泌尿器科医療に対するほとばしる情熱・熱意の賜物であり,編集・出版を担当してくださった株式会社診断と治療社の皆様のお陰であります.誠にありがとうございました.

令和3年1月
編集主幹 山髙篤行
(順天堂大学医学部小児外科・小児泌尿生殖器外科)



「小児泌尿器科学」を手にとってくださった皆様へ

本書を手にしてくださった方に,編集委員会を代表して本書の特徴をお示しします.利用される際の参考にしていただければと存じます.

【1】基礎領域の充実を図って
教科書がハンドブックやマニュアルともっとも異なる点の1つは,内容が理解しにくい項目を排除せずに網羅することです.その最たるものが基礎医学に関係するパートです.小児泌尿器科学領域では発生学がそれに当たります.本書では泌尿生殖器の発生学について臨床医との関係を深く繋いでくださっている3名の先生方に執筆いただきました.熊本大学の西中村隆一教授が腎を,川崎医科大学の嶋 雄一教授が性腺を,和歌山県立医科大学の山田 源教授が尿路・生殖器を担当くださり,最新の知見を含めて図解して臨床医に必要な発生学を著してくださいました.現在,日本で考えられる最高峰の3名の先生方の教室をあげて執筆くださった基礎項目を読んでしっかり勉強してください.

【2】小児の診察を始めるにあたって
小児の診察では成人の診察とは違う設備,心構え,準備,工夫が必要になります.編集委員の小川哲史先生を中心とした小児科の先生方が外科系医師にも理解できるよう,図や写真,表を用いて記載してくださっています.画像診断については国立成育医療研究センター放射線診断科の宮坂実木子部長が秘蔵の画像を駆使して概説してくださいました.

【3】ガイドラインや診療手引きを根拠にして
日本小児泌尿器科学会では学会の学術活動としてガイドラインや診療手引きを発刊してまいりました.小児泌尿器科領域の重要疾患である停留精巣,膀胱尿管逆流,腎盂尿管移行部通過障害,尿管瘤,異所性尿管などはその項目を担当された,その疾患についてのオーソリティーの先生方が,エビデンスに基づいた様々な知見をアルゴリズムや図を用いてコンパクトにまとめてくださっています.日常診療に役立ててください.

【4】小児腎臓病のエキスパートによる執筆
小児泌尿器科学は小児腎臓病学とかなりオーバーラップします.腎機能,腎疾患,腎不全などについては東京女子医科大学の服部元史教授ら小児腎臓病学の専門の先生方に執筆いただきました.既刊の「小児腎臓病学」(日本小児腎臓病学会 編集)とともに愛読ください.

【5】小児内分泌疾患のエキスパートによる執筆
小児泌尿器科学には小児内分泌学と共通の疾患があります.その代表的なものが性分化疾患です.編集委員である長谷川奉延先生が性分化疾患の診断と内科的治療について専門の先生方を束ねて編集されました.腹腔鏡検査や手術治療を担当する外科系医師に必須の情報です.既刊の「小児内分泌学」(日本小児内分泌学会 編集)のエッセンスを勉強できます.

【6】下部尿路機能障害のエキスパートによる執筆
かつては排尿の問題は神経因性膀胱という疾患名とその分類さえ知っていれば事足りました.今や排尿と蓄尿とは別に考える時代で,神経性と非神経性の下部尿路機能障害という診療体系が確立されています.日本排尿機能学会のプロフェッショナルの先生方にこの分野を執筆いただき,編集委員の三井貴彦先生が皆様にご理解いただけるよう編集されました.ぜひ,時間をかけて精読ください.

【7】腫瘍性疾患のエキスパートによる執筆
小児がんに関しては,1940年代には5年生存率が20%前後であったものが,今や80%を超すようになり,長期生存する患児のQOLを改善し,二次がんへの対応を考える時代になりました.編集委員の木下義晶先生が神経芽腫,腎芽腫,横紋筋肉腫などの小児に特有の腫瘍を編集されました.また,腎細胞癌や腎血管筋脂肪腫という成人とも共通する腫瘍については,日本泌尿器科学会の理事長で慶應義塾大学の大家基嗣教授にお願いしました.小児期と青年期の二峰性に発生する精巣腫瘍は岩手医科大学の小原 航教授に執筆いただきました.稀少とはいえ生命予後を左右する小児がんにおいては,手術,化学療法,放射線療法による集学的治療が必須です.ガイドラインに基づく最新の知見を確認してください.

【8】最先端医療の紹介
過去半世紀に成人の外科系医療は開放手術から腹腔鏡手術などの低侵襲手術に移行しました.その経験が小児医療にも応用されるようになり,小児泌尿器科領域においては欧米では尿道下裂以外は腹腔鏡手術が採用されているといっても過言ではありません.
さらに,低侵襲手術は腹腔鏡手術からロボット手術に移行し,国産のロボット機器が採用される日も遠くありません.福島県立医科大学の小島祥敬教授が10年前にフィラデルフィア小児病院のCanning教授・Casale教授のもとで研鑽を積んで,日本に初めて導入した小児ロボット手術の腎盂形成術は,本書の編集作業中に保険収載されました.臨床医には時の流れの速さに対応する柔軟性が求められています.

【9】小児泌尿器科領域の患者の医療に関わるすべての皆様のために
本書は小児泌尿器科医療に携わるすべての皆様を対象にしているため,各疾患について手術過程や使用する器具や物品などを詳述することはせず,手術の中の最も重要な場面やエッセンスを抽出して図解してもらいました.
約100項目にわたる本書の編集は「診断と治療社」編集部の皆様のお力によるものですが,専門的な内容に関する記述の変更や追加,削除などに関しては,私たち編集委員が執筆された先生に直接相談をしてブラッシュアップさせていただきました.なかでも副編集委員長の佐藤裕之先生は最多の27項目を担当してくれました.私が編集主幹の先生方との編集方針の審議や編集部の方々との発刊へのスケジュール管理などに専念できたのも,佐藤先生の実務執行のお陰です.

【10】コロナ禍での教科書の作成を終えて
本書は2019年7月から日本小児泌尿器科学会の教育委員会と学術委員会で編成した準備委員会を核として,9月に教科書編集委員会を編成し,1年半をかけて発刊の運びとなりました.ご存じのように2020年初頭から社会,とくに医療界はコロナ禍にありました.コロナ対応で執筆どころではなかった方もおられたと思います.とくに首都圏の先生方,北里大学病院の岩村正嗣病院長,東京女子医科大学病院の世川 修副院長におかれましてはコロナ対策の最前線に立たれているにも関わらず,執筆を快諾してくださいました.

【11】“見やすく,読みやすく” を編集のモットーに
本書の各項目は各領域,各疾患の第一人者に執筆していただきました.ただし,充実した内容であっても,日常の診療に疲れた心身にとって読みにくい書籍になってはいけないと考え,“見やすく,読みやすく”をモットーに編集を行いました.そのために各項目は新しいページから始まるようにして,どの項目からでも読んでいただけるようにしました.また,長い段落を避け,小見出しを多用し,図やアルゴリズムを適宜掲載するようにしています.
本学会は固有の用語集を持っておりません.執筆者はそれぞれの所属する基幹学会の用語集か日本医学会の用語集に基づいて記述しておられます.いくらか齟齬が生じるのは仕方ないとはいえ,可能なかぎり表記を統一すべく編集委員の矢内俊裕先生が全原稿の最終査読を行いました.矢内先生は本学会で作成した様々な診療手引きの作成の際にも,私の右腕として最終編集作業を行ってくれました.本書が読みやすい教科書であると皆様に感じていただければ幸いです.

「小児泌尿器科学」編集委員会
編集委員長 林祐太郎
(名古屋市立大学大学院医学研究科小児泌尿器科学分野)