わが国は世界一の超高齢社会に突入し,重複障害を有する患者が激増している.内科診療で感じることは,対象患者の複数の臓器機能の低下と脳神経疾患や運動器疾患などの合併,フレイル・サルコペニアなどからもたらされる運動機能・生活機能の低下である. 運動機能・生活機能の低下は,認知機能の低下,摂食・嚥下機能の低下による誤嚥性肺炎などを伴い,生命予後を短縮する.患者の生活の質を低下させ,家族の介護負担を増やす. 超高齢・重複障害に対する医療の切り札として注目されているのがリハビリテーション医療である.リハビリテーション(以下,リハビリ)の語源は「再び適した状態にすること」という意味である.広辞苑にも「治療段階を終えた疾病や外傷の後遺症をもつ人に対して,医学的・心理学的な指導や機能訓練を施し,機能回復・社会復帰をはかることである」と載っている. しかし,リハビリはこの10年で大きな進歩を遂げ,その概念が変化し,対象疾患が拡大してきた.かつては,医療は「寿命の延長(Adding Years to Life)」が,リハビリは「生活・運動機能の改善や生活の質の改善(Adding Life to Years)」が主目的と考えられたが,その概念が変化した.すなわち,リハビリは,心不全などの予防・再発予防などを通じて“Adding Life to Years”のみならず,「生活・運動機能の改善や生活の質の改善に加えて寿命の延長(“Adding Life to Years and Years to Life”)」というパラダイムシフトが起きて,「理想の医療」となってきた. 対象疾患の変化に関して,従来は安静が治療であった心不全,慢性腎臓病,肝疾患などにも積極的なリハビリ(運動療法)が推奨され,リハビリ医療の対象者が激増した.さらに,ロボット,ICT,デジタルセラピューティクス(DTx)など最新技術の導入も行われており,最近のリハビリ医療の変貌ぶりには目を見張るものがある. 本特集では,超高齢・重複障害に対する医療の切り札として,内科でも活かせるリハビリ医療をエキスパートの先生に解説いただいた.この特集が,一般医家の先生のみならず,リハビリ医療の専門の医師も含めた多くの読者に役立つことができるものと確信している.