多くの検査が普及した現在でも,心臓病患者でまず最初に行われ循環器病棟に勤務する研修医の多くが最初に学ぼうとする心電図検査の入門書である.理論的な部分はできるだけ省き,実例を多く取り入れつつ,薄くて誰でも読み切れるように工夫した.診断基準については,日常臨床で最もよく用いるものを中心に整理し,これらを覚えやすくまとめたKey Pointsの欄を用意した.
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目次
I 心電図の基礎知識
1.心電図の基礎
A. 心臓の刺激伝導系
B. 心電図の波形
C. 12誘導心電図
D. 電気軸(Axis)と回転(Rotation)
E. 心電図記録の実際
2.正常の心電図波形と異常所見
A. 心電図の見方
B. 心拍数(Heart Rate)
C. P波(P wave)
D. PQ間隔(PQ interval)
E. QRS幅(QRS width)
F. QRS波(QRS complex)
G. ST部分(ST segment)とT波(T wave)
H. QT間隔(QT interval)
I. U波(U wave)
II 疾患各論
3.冠動脈疾患(Coronary Artery Disease:CAD)
A. 心筋梗塞(Myocardial Infarction:MI)
B. 狭心症(Angina Pectoris)
4.高血圧症(Hypertension)と弁膜症(Valvular Heart Disease:VHD)
A. 高血圧症(Hypertension)
B. 大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis:AS)
C. 大動脈弁閉鎖不全症(Aortic Regurgitation:AR)
D. 僧帽弁狭窄症(Mitral Stenosis:MS)
E. 僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Regurgitation:MR)
5.心筋症(Cardiomyopathies)
A. 肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy:HCM)
B. 拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy:DCM)
C. 拘束型心筋症(Restrictive Cardiomyopathy:RCM)
D. たこつぼ型心筋症(Takotsubo Cardiomyopathy) 9
6.先天性心疾患(Congenital Heart Disease:CHD)
A. 心房中隔欠損症(Atrial Septal Defect:ASD)
B. 心室中隔欠損症(Ventricular Septal Defect:VSD)
C. 右胸心(Dextrocardia)
7.心膜疾患(Pericardial Disease)
A. 急性心膜炎・心筋炎(Acute Pericarditis/Myocarditis)
B. 心嚢液貯留(Pericardial Effusion)
C. 収縮性心膜炎(Constrictive Pericarditis)
8.肺性心(Cor Pulmonale)
A. 肺塞栓症(Pulmonary Embolism:PE)
B. 慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)
C. 原発性肺高血圧症(Primary Pulmonary Hypertension:PPH)
III 負荷心電図
9.運動負荷試験(Exercise Testing)
A. トレッドミル運動負荷試験
B. ダブルマスター2階段運動負荷試験
参考文献
索 引
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序文
本書の前身である「心電図マスターガイド」を出版して11年が経ち,今回「newLearners' 心電図テクニカルガイド」として再出発することになった.心電図は多くの検査が普及した現在でも心臓病患者でまず最初に行われる検査であり,循環器病棟に勤務する研修医の多くが最初に学ぼうと思うのが心電図である.筆者自身は子どもの時に湿疹で困ったのをきっかけに皮膚科医を目指し,東京都済生会中央病院で2年間の内科研修後に皮膚科入局を予定していた.内科の中でも循環器は難しいイメージがあったが,現在その常任顧問を務めておられる三田村秀雄先生に心電図の勉強をするかと勧められ,毎週1回病院で記録されたすべての心電図50・60枚を先に診断し,後でチェックしていただいた.最初は勉強したい気持ちと日々の研修で忙しく少々面倒くさい気持ちと半々であったが,数カ月後に初めて1枚の間違いもなく診断できた時の喜びを今でも懐かしく思い出す.ふと気がつくと,心電図そして循環器内科に強く興味をもち,循環器医になっていた.
当時,心電図を勉強するために英語の成書を買ったが,読むのに一苦労した覚えがある.自身の経験からはまずは薄い本を1冊読み,最低限の診断基準を覚えた上で,日々の診療で実例をみるのが,心電図を読めるようになる早道と思う.本書では心電図の理論的な部分はできるだけ省き,実例を多く取り入れつつ,薄くて誰でも読み切れるように工夫した.心電図では1つの病態に多くの診断基準が提唱され,それが勉強する人の混乱を招くことがあるが,本書ではわれわれが日常臨床で最もよく用いる基準を記載した.さらに,これを覚えやすくまとめたKey Pointsの欄を用意した.まず本書をひと通り読んだら実際の心電図をみて,わからない時や基準を忘れた時に再度読み直していただければと思う.
心電図はただ診断するのでなく病名や病態と照らし合わせることも大切である.心エコー所見との対比も勉強になる.筆者自身もこの本をきっかけに一層勉強していきたいが,先輩諸先生方の心電図診断にはいつも感心させられる.経験豊富な人ほど多くの情報が得られる奥深い心電図を学びたいと思う読者のため,本書が少しでも役立てばと思う.
現在勤務している国立病院機構東京医療センターにも毎年2名ずつ循環器科後期研修医がやってくる.循環器医を目指そうと意気込んで仕事をしている姿を見ると,いつも嬉しく感じる.そんな彼ら彼女らと,皮膚科医を目指していた自分に心電図の面白さを教えて下さった三田村先生にこの本を捧げる.
2011年5月
樅山幸彦