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不随意運動の診断と治療 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:不随意運動の診断と治療 改訂第2版
動画で学べる神経疾患 DVD

徳島大学大学院医歯薬学研究部医科学部門内科系臨床神経科学分野 教授

梶 龍兒(かじ りゅうじ) 編集

改訂第2版 B5判 2色 308頁 2016年05月25日発行

ISBN9784787819093

定価:19,800円(本体価格18,000円+税)
  

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神経内科をはじめ多くの専門領域の外来で診られる不随意運動.その的確な診断と治療は実際の運動をみてみないと困難なところがある.本書は付録DVDの動画を活用することで効果的に診断のコツを習得できるように構成されている.200を超える動画DVDを付したバイブル的書籍,待望の改訂第2版!!

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目次

執筆者一覧
緒  言 木村 淳
序  文 梶 龍兒

第1部
不随意運動
第1章 運動制御のメカニズム
1 大脳皮質 島津秀紀
2 大脳基底核,視床 村瀬永子
3 小  脳 村瀬永子
第2章 不随意運動の診かた 梶 龍兒
1 医療機関における運動障害をきたす疾患・病態の頻度
2 運動の分類
3 異常運動の起源
4 Parkinson病とパーキンソニズム
5 各種不随意運動
6 異常運動の臨床的な鑑別
第3章 痙  縮 塚本 愛
1 定義・病因・臨床的特徴
2 疫  学
3 病態生理
4 治  療
第4章 振  戦 宮本亮介/西村公孝
1 概  説
2 分  類
3 Parkinson病および類縁疾患でみられる振戦
4 本態性振戦
5 本態性振戦に類似する振戦
6 その他の振戦
第5章 舞踏症 坂本 崇
1 定義,鑑別
2 病  態
3 病  因
第6章 アテトーゼ 坂本 崇
1 総  論
2 脳性麻痺
3 偽アテトーゼ
4 発作性運動源性舞踏アテトーゼ
5 発作性非運動源性舞踏アテトーゼ
第7章 バリズム 松本真一/高橋正年
1 概  念
2 病  因
3 病  態
4 治  療
第8章 ジストニア
8-1 ジストニアの臨床 目崎高広
1 定  義
2 分  類
3 疫  学
4 歴史的考察
5 臨床特徴
6 表面筋電図における特徴
7 代表的なジストニアの臨床特徴
8 二次性ジストニア
9 治  療
8-2 ジストニアの遺伝研究 瓦井俊孝
1 早発性一次性捻転ジストニア(early-onset primary torsion dystonia)
2 遅発性一次性捻転ジストニア(late-onset primary torsion dystonia)
3 DYT7,DYT21(常染色体優性PTD)
4 ジストニア・プラス症候群
5 発作性非運動源性ジストニア・ジスキネジア(paroxysmal dystonia/dyskinesia)
6 脊髄小脳変性症に伴うジストニア
7 その他の遺伝子異常によるジストニア
8-3 X-linked recessive dystonia-parkinsonism(XDP,DYT3)と新しい基底核のモデル 梶 龍兒/後藤 惠
1 XDPの臨床像
2 XDPの遺伝子解析
3 XDPの治療法
4 XDPの病理像
5 大脳基底核の新しいモデル:線条体コンパートメントモデルとXDP
第9章 ジスキネジア─薬剤誘発性運動異常症,発作性運動異常症,その他まれなジスキネジア 村瀬永子
1 薬剤誘発性運動異常症(薬剤誘発性ジスキネジア)
2 発作性運動異常症
3 その他のジスキネジア
第10章 ミオクローヌス 人見健文/寺田清人/池田昭夫
1 定  義
2 病  因
3 分  類
4 病態診断のための検査
5 病態生理
6 ミオクローヌスと神経伝達物質
7 治  療
8 病因・原疾患別の診断と治療
9 他の不随意運動との鑑別
第11章 チック 松本真一/高橋正年
1 診断,分類
2 診断ガイドライン
3 鑑別診断
4 病因による分類
5 病  因
6 病  態
7 治  療
8 予  後
第12章 スパズム 野寺裕之
1 概  念
2 スパズムを起こしうる疾患とそのメカニズム
3 スパズムと類似した疾患との鑑別
第13章 筋痙攣 野寺裕之
1 概  念
2 原因疾患
3 発症機序
4 検  査
5 類似疾患との鑑別
6 治  療
第14章 運動失調 和泉唯信
1 概  念
2 症  候
3 診断の進め方
4 運動失調を呈する疾患
5 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症に伴う不随意運動
第15章 Parkinson病でみられる運動異常症 宮本亮介
1 臨床的特徴
2 症  候

第2部
ボツリヌス治療
第1章 ボツリヌス毒素の基礎 目崎高広
1 ボツリヌス毒素製剤の開発史
2 ボツリヌス毒素
第2章 ボツリヌス治療の実際
1 解  剖 坂本 崇/松本真一/高橋正年
2 手  技 目崎高広
補遺 その他の適応症 目崎高広
1 口・下顎ジストニア
2 攣縮性発声障害
3 手のジストニア(書痙など)
4 振戦,チック
5 頭  痛
6 消化管疾患
7 膀胱機能障害
8 分泌腺の異常
9 美  容
10 周術期の使用

第3部
運動異常症の外科的治療法
第1章 脳深部刺激術 後藤 惠/大北真哉
1 DBSの手術法
2 DBSの標的神経核の同定
3 DBSの特性
4 DBSの治療効果
5 DBSの刺激条件設定
6 DBSの合併症

付  録
 遺伝性ジストニアの難病指定について 宮本亮介
索  引

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序文

緒  言

 『不随意運動の診断と治療』は,かねてから私と柴崎浩先生と一緒に京都大学神経内科で指導してきた諸君とジストニアの研究に携わってきた梶先生とを中心としてまとめた初学者にもわかりやすい入門書である.幸い,第1版は多くの読者を得ることができたと聞く.
 梶君は1989年にさかのぼるが,私がアイオワから京都に帰国した際,一緒にアメリカから京都大学神経内科に戻ってきてくれた仲間である.当初は筋電図を用いた末梢神経疾患を専門として活躍していただいた.ある日,右手の症状を訴える患者が外来にやってきて,当初正中神経障害が疑われて私の外来に紹介された.いろいろと検討しているうちに書痙(手のジストニア)であることがわかり梶君に治療を依頼することがあった.これを機に彼は筋電図の手技を生かしてジストニアのボツリヌス治療を担当するようになり,次第に基底核疾患など,末梢から中枢に彼の研究の対象が移ってきている.
 わが国での神経内科教育では,特に末梢の神経学は,教育のなかでも“末梢”であったが,“末梢を通して中枢がみえる”が私の持論で,何度も教室で話し合っているうちに,梶君のグループは本当に中枢へ移ってしまった.徳島に教室を構えてからもさらに基底核疾患の研究に打ち込んでおり,さらにすばらしいスタッフを集め,次々と新しい仕事を展開している.

 本書は,機能的・神経生理学的な側面から不随意運動を理解することができるようになっており,患者の症状を理解し治療へ直結する分野を平易に解説している.特に若い諸君にお勧めしたい.治療についても詳しく述べており,私たちがモットーとしている“なおる神経内科疾患”の扉として,第1版同様,多くの読者のご支持が得られれば幸いである.

2016年4月 アイオワにて 木村 淳


序  文

 不随意運動は,神経内科,内科,脳外科,小児科,精神科,整形外科をはじめ,多くの専門領域の外来でみられ,近年ボツリヌス毒素治療や深部脳刺激法などの外科的な治療により劇的な治療効果があげられる分野になった.しかし,その的確な診断や治療は実際に運動を見てみないと理解が困難なところがある.幸い10年前に出版した「不随意運動の診断と治療 第1版」は予想外に多数の読者に恵まれ完売したのを機に,今回第2版を出版することにした.
 本書の特色はやはり第1版と同じく,動画を用いることにより効果的に診断法が習得できるようになることである.そのために,多くの患者さんにお願いして医師の教育用として不随意運動の動画を記録させていただいてき200を超えるビデオクリップを収載することができた.

 本書は次の特徴をもっている.
  (1)種々の不随意運動を,なぜそのような現象がみられるのかといった神経生理学的な基礎から解説したこと.
  (2)代表的な不随意運動について動画を見ながら習得できること.
  (3)治療法については,実際的な方法について詳説したこと.

 本書の使い方として,時間を十分にとることができない場合,まず,第1部第2章の「不随意運動の診かた」を動画とともに熟読いただくだけでも,おおよそその鑑別ができるように構成したので,是非そうしていただきたい.第2部ボツリヌス治療や第3部の外科的な治療は必要に応じて読むことをお勧めする.
 不随意運動の多くは大脳基底核疾患による.この部位は運動のみではなく,認知や行動,情動や精神活動にも重要な役割を果たしている.したがって,Parkinson病など不随意運動を示す患者は精神症状や,認知障害を示すことが多い.逆に,不随意運動を通してヒトの精神活動まで含めた基本的な脳の構築を垣間見ることができる.
 また,本書で仮に「心因性」とさせていただいた種々の病態について,お断りしなければならない.欧米の運動障害クリニックでParkinson病についで2番目に多いジストニアは,30年ほど前まではしばしば「心因性」に分類されていたものである.現在「心因性」に分類されていても,将来器質的な原因が見出される可能性があり,決して「気の病」ではない.このような分野こそ,今後の臨床研究を通じて治療法を開発せねばならない.
 本書を通じてより多くの人々が基底核の機能や関連した脳研究に興味をいだいていただければ幸いである.
 最後に,本書を執筆・編集するにあたってご助言をいただいた恩師,木村淳先生(京都大学名誉教授,現 アイオワ大学教授),不随意運動についてご指導を賜った柴崎浩先生(京都大学名誉教授,現 武田総合病院顧問),柳澤信夫先生(信州大学名誉教授),萬年徹先生(元 東京大学教授),さらに,遅筆にもかかわらず忍耐強く脱稿をお待ちくださった診断と治療社 堀江康弘氏,小川原智氏に深く感謝する.
 また,医学教育の目的のための動画使用を快諾くださった患者様各位には深甚な謝意を表する次第である.

2016年4月 徳島にて 梶 龍兒 識