小児のCKD(慢性腎臓病),AKI(急性腎傷害)の治療方法について,日本で最も多くの治療実績をもつ旧・清瀬小児病院,東京都立小児総合医療センター腎臓内科のスタッフによる臨床マニュアル決定版.疾患の診断法や腹膜透析・血液透析の実際,各種合併症管理,移植などの具体的方法から,透析・移植前後での管理方法や日常の注意事項,患児と家族への心理的ケアまで,実際の経験から導き出されたノウハウを網羅,小児のCKD・AKI管理には必携の一冊.
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目次
序文
編集・編集協力者一覧
略語一覧
chapter 1 CKD総論
1. CKD概説
2. CAKUTの診断法
3. 治療選択と透析導入基準
chapter 2 PD(腹膜透析)
1. カテーテル選択と術式
2. 導入期カテーテル管理
3. 適正透析
4. 腹膜機能,透析効率の評価
5. PDの具体的な処方
6. 在宅移行に向けての指導
7. PD関連感染症
8. その他の合併症
chapter 3 HD(血液透析)
1. 方法と特徴
2. バスキュラーアクセス(カテーテル選択)
3. カテーテル関連合併症
4. バスキュラーアクセス(内シャント)
chapter 4 AKIの血液浄化療法
1. AKI概説,血液浄化療法の適応
2. 支持療法
3. 新生児・乳児のAKI
4. 透析方法と条件
chapter 5 CKD合併症の管理
1. 成長・発達
2. 栄養
3. 高血圧・循環器管理
4. CKD-MBD
5. 電解質(ナトリウム,カリウム)
6. アシドーシス
7. 腎性貧血
8. 保存期CKD患者に対する腎保護
9. 医薬品の投与法
chapter 6 腎移植
1. 移植前準備,ドナー選択・検査
2. 移植後管理
chapter 7 生活指導・支援
1. 生活指導
2. 子どもと家族のメンタルケア
3. 社会支援
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付図・付表
索引
COLUMN 1 重篤な疾患をもつ子どもの話し合いのプロセス
COLUMN 2 在宅夜間血液透析
COLUMN 3 PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)
COLUMN 4 副甲状腺インターベンション
COLUMN 5 家族のケアと社会的・心理的発達
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序文
日本の15歳以下の子ども達において,およそ550人が通常の腎機能の半分以下であり,毎年その1割強にあたる約60人が末期腎不全に陥り,腎代替療法を開始しています.また,年間350人以上の子ども達が急性血液浄化療法を受けています.
小児のCKD(慢性腎臓病),AKI(急性腎傷害)はこのような重篤な病態であるにもかかわらず,その対処法について実際に即して書かれた教科書,特に透析方法を具体的に記載したものはありませんでした.そのため,小児腎臓を専門にしている若い先生方から,実践的な本が欲しいという要望が多く寄せられていました.また,AKI治療は,小児腎臓専門医のいない地域においては一般小児科医や透析専門の成人領域の医師が携わっているのが現状であり,そういった第一線の諸先生方からも,小児におけるカテーテル選択,透析液流量設定など,より具体的な治療方法についての質問を多く受けてきました.
小児のCKDの原因の大半を占める先天性腎尿路異常では,成人に比してより軽度の腎機能障害の段階(CKDステージ2)から様々な合併症を呈します.これらの合併症治療やその予防についても,具体的な方法がどのようなものなのか,これまでの書籍では記載が乏しいと言わざるをえません.近年多く出版されているガイドラインも,その性質上具体性に欠け,実際の方法についての説明はあまり見られません.また臨床の現場で役立つような,経験でしか導き出せない部分の説明がなく,患者ごとに異なる問題点などについても把握しにくいのが現状です.移植に関しても,どの時期にどのように患者とその家族に話すかが非常に重要ですが,その点も不明瞭です.
そこで, CKD, AKIの治療や家族への説明を具体的にどう行うかについて,可能な限り実践的でわかりやすい本を,都立小児総合医療センター腎臓内科が中心になって作ることにいたしました.当センターの前身である旧都立清瀬小児病院は,日本で最も多くの患者を治療してきた実績をもちます.その約600例の末期腎不全からの豊富な治療経験に基づき,本書は製作されました.具体的治療法や注意すべき点をわかりやすく記したマニュアルになったと自負しております.
なお,製作過程では主幹の3人が中心になりましたが,多くの編集協力者の尽力がなくては本書は完成しませんでした.特に濱崎,坂井,濱田の三氏は両手では数え切れない回数に及ぶ長時間の編集会議に参加し,我々と共に最近の教科書やガイドライン,今までの治療法の吟味,書籍としての体裁の統一に至るまで,多大なる貢献をしてくれました.また,なんとか上梓できたのも,診断と治療社の皆さんのおかげです.本書が刊行されるにあたり深謝いたします.
2013年2月
東京都立小児総合医療センター腎臓内科
本田雅敬