見て読んでわかるNASH/NAFLD診療―かかりつけ医と内科医のために診断と治療社 | 書籍詳細:見て読んでわかるNASH/NAFLD診療―かかりつけ医と内科医のために
横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室 主任教授
中島 淳(なかじま あつし) 監修
佐賀大学医学部肝疾患医療支援学講座 教授
江口 有一郎(えぐち ゆういちろう) 編著
高知大学医学部消化器内科学 講師
小野 正文(おの まさふみ) 編著
京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 講師
角田 圭雄(すみだ よしお) 編著
広島大学病院消化器・代謝内科 診療講師
兵庫 秀幸(ひょうご ひでゆき) 編著
初版 A5判 並製ソフトカバー,2色刷(一部4色) 184頁 2014年09月01日発行
ISBN9784787820310
定価:4,620円(本体価格4,200円+税)冊
近年,NAFLDには肝硬変や肝がんに進行するタイプがあることが明らかとなり,その対策が急務となっています.本書では,NASH/NAFLDを早期発見,治療するにはどうしたらよいか,適切な治療と患者さんのコンプライアンスの維持にはどうしたらよいか,診療連携をどうするかなど,かかりつけ医が1,000万人以上とも推定されるNAFLD患者と向き合うための知恵と知識を満載しました.生活習慣病を診る医師は必読.
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目次
巻頭カラー 見てわかるNASH/NAFLD
A NAFLDの病期 江口有一郎
B NAFLDの病理 角田圭雄
はじめに 中島 淳
監修・編集・執筆者一覧
監修・編集者のプロフィール
1 地雷! 日常診療に潜むNASH/NAFLD
— 示唆に富む症例 江口有一郎
A こんな患者さんに注目! ― 日常診療に潜む地雷“NASH”
B NASHを疑わせる所見 ― “肝臓の炎症と線維化”は推定できる?
C 糖尿病で診ていたはずの患者さんが肝硬変に!
D 皆さんが診ている患者さんは大丈夫ですか?
2 NASH/NAFLDってどんな病気!? 角田圭雄
A 脂肪肝を知ろう!
脂肪肝の分類
飲酒量の基準
ALDとNAFLDの違い
B NAFLDを知ろう!
NAFLDの定義
NAFLDの病因と病態
NAFLDの症状と経過
C NASHを知ろう!
NASHの定義
NASHの病因と病態
NASHの症状と経過
3 NASH/NAFLDの疫学
― 日常診療で最も遭遇する肝疾患 小野正文
A 脂肪肝の頻度 ― 日本人の20〜30%
脂肪肝の疫学的検討
糖尿病に潜む肝疾患の重要性
B NAFLDの頻度 ― 日本人の非飲酒者の約30%
C NASHの頻度 ― 日本人の3~5%
4 NASH/NAFLD診療の“主役”は
かかりつけ医! 江口有一郎
A NASH/NAFLD診療の理想像とは?
“診療連携型”によるNASH/NAFLD拾い上げの意義
NASH/NAFLDの拾い上げ精度を高めよう!
B かかりつけ医によるNASH/NAFLD診療手順
― 4つのステップ
ステップ1 血液検査(肝機能検査含む)
ステップ2 脂肪肝(NAFLD)拾い上げのための腹部エコー
ステップ3 NASH拾い上げのための血液検査
ステップ4 専門医の紹介
5 プロから学ぶスクリーニング術 江口有一郎
A スクリーニングの全体像 ―脂肪肝の発見こそ第一歩!
脂肪肝拾い上げの流れ
B 健康診断によるスクリーニング
血液検査の活用
腹部エコーの活用
「太ってないから大丈夫」は間違い!?
生活習慣病から脂肪肝を拾い上げる
C 画像検査によるスクリーニング
腹部エコーで脂肪肝をみる際の着眼点
腹部エコーのコツ
腹部エコーでみた脂肪肝
腹部エコーによる診断はどこまで可能か!?
最新装置における注意点
腹部CTの利点と欠点
6 NASH/NAFLDの診断
― 線維化進行例を見逃すな! 角田圭雄
A かかりつけ医にできるNASH予測
NASHを疑うべき患者さん
NAFICスコアの活用 ― NAFLとNASHの鑑別
FIB-4インデックスの活用 ― 肝線維化進行度の予測
日常診療で目安となる指標は?
B 肝臓専門医が行っているNASH予測
血液検査による診断
エラストグラフィによる診断 ― 肝硬度測定
C 鑑別診断
他の慢性肝疾患の除外
薬剤起因性NASHに対する配慮
D 肝生検による確定診断
肝生検の概要
病理診断における染色法
NAFLの組織所見
NASHの組織所見
burned-out NASH
病理診断結果の記載
E かかりつけ医でフォローアップ可能なNAFLD
F こんな所見があれば肝臓専門医を紹介!
7 日常診療におけるマネジメント
― かかりつけ医に期待される患者管理 兵庫秀幸
A かかりつけ医が配慮するべき全体像
まずは患者さんの全体像を捉えよう!
多彩な周辺疾患に配慮しよう!
B 様々な生活習慣病との関連
メタボリックシンドロームとNASH/NAFLD
喫煙とNASH/NAFLD
睡眠障害とNASH/NAFLD
GERDとNASH/NAFLD
果糖(フルクトース)とNASH/NAFLD
歯周病とNASH/NAFLD
C NASH/NAFLDが引き起こす怖い転帰
NAFLD関連疾患の相関関係
日常診療におけるマネジメント
D 知らぬ間に肝硬変,肝がん
増え続ける非B非C型肝がん
なぜ非B非C型肝がんは増えているのか?
NAFLDの進展様式
“知らぬ間に肝硬変,肝がん”を回避するために
8 NASH/NAFLDの治療
― かかりつけ医に期待される治療
A 適切な食事療法とは? 長尾晶子,岡 壽子
食事療法の指導
B 有効な運動療法とは? 河江敏広,木村浩彰
運動の効果
運動療法の種類
運動療法の指導にあたって
C 薬物療法どうしよう! 兵庫秀幸
薬物療法の種類
2型糖尿病合併NASH/NAFLDに対する薬物療法
脂質異常症合併NASH/NAFLDに対する薬物療法
高血圧合併NASH/NAFLDに対する薬物療法
抗酸化療法
瀉血療法
肝庇護療法
Farnesoid X Receptor(FXR)アゴニスト
その他の薬物療法
かかりつけ医における薬物療法
D チーム医療 兵庫秀幸
チーム医療の意義
医療スタッフの役割
コミュニケーションと情報共有の重要性
9 早わかりQ&A
A 疫学/全般
Q1 肥満やメタボがない人でもNASH/NAFLDになることはありますか?
Q2 NASHの診療において忘れてはならない合併症の管理とは?
Q3 小児や若年者でもNASHを発症しますか?
Q4 NASH/NAFLDは遺伝しますか?
Q5 NASHの発症機序は“two-hit theory”が定説ですか?
Q6 NASH/NAFLDの発症に成長ホルモンなどは関係していますか?
Q7 脂肪肝のまま進行しない人はいますか?
Q8 NASH/NAFLDに詳しい医師はどこにいますか?
Q9 保健師や管理栄養士などはNASH/NAFLDを知っていますか?
Q10 一般の人はNASH/NAFLDを知っていますか?
Q11 “高度な脂肪肝”はNASHに移行しやすい?
B 診断
Q12 お酒を“少し飲む人”のNASHはどう取り扱うのですか?
Q13 一般的な健診のように血小板数が検査項目に含まれていない場合,
どのようにNASHを見分ければよいですか?
Q14 肝生検を施行せずにNASHを否定できる臨床検査項目はありますか?
Q15 肝生検を施行せずにNASHを疑う臨床検査項目はありますか?
Q16 脂肪肝になると血清AST,ALT,γ-GTが上昇するのはなぜですか?
Q17 肝生検は定期的に行うものですか?
Q18 線維化マーカーって何ですか?
Q19 NASHの診断にフェリチンが有用なのはなぜですか?
Q20 NASHの進行とともに血小板数が減少するのはなぜですか?
Q21 脂肪肝やNASHを拾い上げるのに腹部エコーは必須ですか?
Q22 肝臓の脂肪化が強く,腹部エコーでは奥までみえません
Q23 腹部CTでは造影剤が必要ですか?
Q24 腹部エコーで脂肪化が認められないのにNASHであることはありますか?
C 合併症
Q25 高頻度の合併症を教えてください
Q26 NASH由来肝硬変に肝がんは発生しますか?
Q27 糖尿病内科や循環器内科などの患者さんにNASHは潜んでいますか?
Q28 NASH由来の肝硬変や肝不全に特徴はありますか?
Q29 NASH/NAFLDでもウイルス性肝硬変と同様の肝合併症は起こりますか?
Q30 ウイルス性肝炎とNASHの合併はありますか?
D 治療
Q31 NASHの管理において,糖尿病におけるHbA1cのような指標はありますか?
Q32 NASHの重症度判定に有用なミニマムデータセットを教えてください
Q33 保険診療で使えるNASH治療薬はありますか?
Q34 食事指導のコツを教えてください
Q35 肝臓の脂肪がとれればNASHは改善しますか?
Q36 やせればNASHは改善しますか?
Q37 治療効果判定の目安となる期間は?
Q38 NASH診療における肝臓専門医の役割とは?
Q39 ウルソデオキシコール酸(UDCA)は有効ですか?
Q40 強力ネオミノファーゲンCは有効ですか?
Q41 合併症の治療はNASHに有効ですか?
Q42 NASHに適応のある治療薬はいつ登場しますか?
Q43 患者さんは“NASH”という診断名だけできちんと通院してくれますか?
Q44 NASHのフォローアップでは,患者さんにどの検査値に注意してもらえばよいですか?
Q45 NASHのフォローアップにおいて,血清ALT値の変動は病勢と関係しますか?
おわりに 江口有一郎
和文索引
欧文-数字索引
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序文
はじめに
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は簡単に言うと「さほど飲酒をしない人の脂肪肝」です.従来は良性疾患と考えられ,そのほとんどが放置されてきました.ところが,2007年の日本糖尿病学会において「糖尿病患者の死因のトップは肝疾患関連死(13.3%)」と報告されて以降,NAFLDが注目されるようになりました.NAFLDには肝硬変や肝がんに進行するタイプがあることがわかってきたのです.NAFLDの大きな特徴は「患者数の多さ」です.わが国の患者数は1,000万人以上とも推定されており,成人男性では実に約1/3が脂肪肝とされています.最近は健診の普及によって,多くの人が脂肪肝で外来を訪れるようになりました.読者の皆様が他疾患で診ている患者さんの中にもNAFLDが潜んでいるかもしれません.
本書は,そうしたNAFLD患者と遭遇する機会の最も多い一般医家に向けた書籍です.NAFLDへの理解を深めていただくとともに,適切なNAFLD診療をマスターしましょう.以下に本書の特長を述べます.
これ一冊でNAFLD診療を完璧にマスター!
本書の執筆陣は,わが国で研究,臨床ともに第一線で活躍中の医師達です.最新かつ最適な情報を網羅し,平易な文章で解説しています.また,視覚的な理解を進めるために図や画像,表を多く盛り込みました.日々の臨床で数多くのNAFLD患者を診ている編集陣による解説ですから,今すぐに日常診療で役立ちます.教科書に書かれてない臨床上のコツやピットフォールも随所に盛り込んでいます.かゆいところに手が届く,まさに秘伝虎の巻です.初学者からエキスパートまで,幅広い層の先生方にご活用いただけます.
NAFLDは「病気のデパート」―外来診療における適切な対応
NAFLDの20〜30%は予後不良な非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進展します.そして,NAFLD患者の多くは肥満,高血圧,脂質異常症,糖尿病,睡眠時無呼吸,逆流性食道炎,うつなど複数の疾患を抱えています.また,NAFLDは肝疾患でありながら,患者さんの死因が心血管疾患であることも少なくありません.このように,NAFLDは多方面への配慮を要する病気なのです.本書では,この点について,非専門医でもスムーズな対応を行えるよう解説しています.
脂肪肝を漫然と経過観察しない―非専門医にできる対応
健診で脂肪肝と診断された患者さんが外来に訪れた際,「あまりお酒を飲まれないようですので経過をみましょう」という言葉だけですませていませんか? そのような対応では,NAFLDに隠れた地雷を踏んでしまう危険性が高まります.前述のようにNAFLDは「病気のデパート」です.NAFLDを診た際は「目前にある危機」と捉え,日常診療で適切なマネジメントを行っていく必要があります.専門医でなくとも,また肝生検や特殊検査を施行せずとも,NASHの高リスク例をスクリーニングしたり,他の生活習慣病を管理することは可能です.本書では,非専門医におけるNAFLDの管理のコツを解説しました.
本書が読者の皆様の外来診療の一助となり,多くの患者さんが救われることを期待します.
2014年8月
横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室 主任教授
中島 淳