泌尿器科医,小児外科医のみならず小児科医,新生児科医も対応するケースが多い小児泌尿器疾患を,腎・尿路の発達の理解から検査の落とし穴,診断のコツ,保護者とのコミュニケーション,そして手術手技に至るまでフルスペックで詳述した,類書のない教科書! 貴重な症例写真満載のカラー口絵8ページを設けたほか,本文にも写真・シェーマをふんだんに掲載し、初学者にもわかりやすくグラフィックに詳述した決定版テキストである.
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目次
カラー口絵
執筆者一覧
序文
I 総論:小児泌尿器疾患の特徴と診断へのアプローチ
A.腎・尿路機能の発達
1.胎児期,新生児・乳児期の腎・尿路の発育
a.腎・尿路の発生/ b.胎児腎機能の発現と尿量の変化/ c.腎血流量/ d.糸球体濾過量(GFR)/
e.尿細管機能/ f.新生児・乳児期の腎機能評価法/ g.胎児の腎機能を予測する方法
2.排尿機能の発達
B.小児泌尿器の症状,徴候と診断へのアプローチ
1.問診,現症のとり方
2.検尿と所見の読み方
a.採尿法/ b.膿尿(白血球尿),細菌尿/ c.血尿/ d.蛋白尿
3.排尿にかかわる症状
a.尿量の変化/ b.尿回数/ c.排尿痛/ d.排尿困難/ e.不随意の尿漏出
4.発熱
5.痛み:陰茎痛,腹痛,側腹部痛
6.帯下の異常
7.外性器の診察
C.画像診断
1.超音波検査
a.腎・尿路系/ b.鼠径部,陰囊内容
2.排尿時膀胱尿道造影(VCUG)
3.核医学検査
4.MRU
5.排尿機能検査
D.小児泌尿器の周術期管理
E.泌尿器科異常を合併する先天異常症候群
1.概要と診断のプロセス
2.遺伝カウンセリング
F.保護者への説明
II 各論:小児泌尿器疾患診療の実際
A.尿路感染症
B.腎・尿路の異常
1.先天性水腎症〔腎盂尿管移行部狭窄(PUJO)〕
2.囊胞性腎疾患(cystic renal disease)
3.その他の腎先天異常
4.膀胱尿管逆流(VUR)
5.巨大尿管(原発性閉塞性巨大尿管)
6.重複尿管,尿管開口部異常
a.重複尿管/ b.異所性尿管/ c.尿管瘤
7.膀胱の先天異常
a.先天性膀胱憩室/ b.尿膜管の異常/ c.膀胱欠損,膀胱低形成/ d.重複膀胱/
e.先天性巨大膀胱/ f.膀胱外反症/ g.尿道上裂/h.総排泄腔外反症/ i.プルンベリー症候群(PBS)
8.尿道の先天異常
a.後部尿道弁/ b.前部尿道弁(尿道憩室)/ c.その他の尿道の異常
9.神経因性膀胱
10.機能的排尿異常(昼間尿失禁,尿路感染症,便秘)
11.夜尿症
C.陰囊,陰囊内容の異常
1.停留精巣,非触知精巣,移動性精巣(遊走精巣)
a.停留精巣/ b.非触知精巣/ c.ホルモン療法/d.移動性精巣/
e.最新の停留精巣ガイドライン(AUA guideline 2014)から
2.陰囊水腫(精巣水腫),精索水腫(精索水瘤)
3.陰茎前位陰囊,二分陰囊
4.異所性陰囊,副陰囊
a.異所性陰囊/ b.副陰囊
5.精索静脈瘤
D.陰茎の異常
1.包茎とその合併症
2.尿道下裂,陰茎彎曲症
3.その他の異常
a.埋没陰茎/b.マイクロペニス/c.陰茎欠損/d.縫線囊胞/e.傍外尿道口囊胞
E.女子外陰部の異常
1.陰唇癒合
2.陰唇間腫瘤(interlabial mass)
a.尿道脱/ b.傍尿道囊腫(paraurethral cyst)/ c.処女膜閉鎖,過形成/ d.その他
3.perineal groove
F.性分化疾患(DSD)
1.性分化疾患の基礎
2.代表的な性分化疾患
a.染色体異常によるDSD/ b.46,XY性分化疾患/ c.46, XX性分化疾患
G.小児の腎尿路・性器腫瘍
1.腎,副腎の腫瘍
a.腎芽腫(wilms腫瘍)/ b.神経芽腫
2.横紋筋肉腫(RMS)
3.精巣腫瘍
H.尿路結石症
1.小児尿路結石
I.緊急を要する小児泌尿器疾患
1.急性陰囊症
a.精索捻転/ b.精巣上体炎/c.精巣付属器捻転(精巣垂捻転,精巣上体垂捻転)/
d.鼠径ヘルニア嵌頓/e.その他の急性陰囊症
2.新生児における泌尿器科緊急
3.外傷
J.鎖肛,総排泄腔遺残,尿生殖洞奇形
1.鎖肛・直腸肛門奇形(anorectal malformation, imperforate anus)
2.総排泄腔遺残(patent cloacal anomaly)
3.泌尿生殖洞奇形
Column
胎児診断と胎児治療
腹腔鏡手術の周術期管理
UTIの危険因子と自然防御機構
先天性尿路通過障害による腎の変化
逆流性腎症(RN)
中部尿管狭窄
逆流性巨大尿管(refluxing megaureter)
二分脊椎の排便管理
妊孕性改善を目的とするホルモン治療
包皮の生物学的・生理学的な意味合い
嵌頓包茎
先天性副腎過形成女子のセクシュアリティ
JRSGプロトコール
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序文
小児泌尿器科の手ごろな教科書を書かないか,とのお話をいただいたのは,この7月に発行の運びとなった
「性分化疾患ケースカンファレンス」(小社刊)の編集が軌道に乗った頃でした.小児泌尿器科疾患は従来か
ら,泌尿器科の1つの専門分野として泌尿器科医が対応すべしと日本泌尿器科学会が表明してきましたが,全
国的にみると泌尿器科医のみならず,小児外科医も多数の症例に対応しているという現実を忘れてはなりませ
ん.
わが国における小児泌尿器科の全国的な発展は,1977年に泌尿器科医と小児外科医とが共同で作り上げた
小児泌尿器科勉強会が始まりでした.その後,小児泌尿器科研究会を経て1992年に日本小児泌尿器科学会が
設立され22年が経ちますが,この20数年間の小児泌尿器科領域の発展には目覚しいものがあります.周産期
泌尿器科の進歩,先天性泌尿・生殖器疾患に対する形成手術の確立と安定した手術成績,小切開・腹腔鏡手術
によるさらに侵襲の少ない術式,Deflux注入療法の承認により選択肢が広がった膀胱尿管逆流(VUR)治療,
外反症や総排泄腔遺残症など治療の困難な症例に対する挑戦,などの外科的側面に加え,性分化疾患や尿路再
建術後の多職種による長期ケア,成人期への移行などが注目を集めております.
このような最近の話題に加え,今回重きを置いたのは総論です.疾患ごとの各論でハウツーを知っていただ
くことも大切ですが,小児,とくに周産期から乳児期にかけての腎・尿路の生理的な発達を背景にして治療を
考えていただきたい,との思いでページ数を多くいただきました.また,基本的な検査の落とし穴も参考にし
ていただければ幸いです.
本書は泌尿器科医,小児外科医のみならず,小児科医,新生児科医,看護師,臨床心理士など他職種の皆様
にも参考にしていただけるよう,画像やシェーマを多く載せました.各疾患の治療方針は,主として大阪府立
母子保健総合医療センターで行っている方法を採りあげ,これまで当センターで苦労を共にした先生方や,小
児外科疾患,看護・セクシュアリティー領域の御指導をいただいた先生方にも執筆をお願いしました.ここに
改めて御礼申し上げます.
最後になりましたが,画像のデジタル化を御担当いただいたMCの峯近様,本書発刊に全面的な御助力をい
ただきました,診断と治療社の日野秀規様,土橋幸代様,堀江康弘様に深謝いたします.
2014年12月 島田 憲次