慢性疾患の認知行動療法 ワークブック診断と治療社 | 書籍詳細:慢性疾患の認知行動療法 ワークブック
アドヒアランスとうつへのアプローチ
国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター センター長
堀越 勝 (ほりこし まさる) 監訳
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所心身医学研究部ストレス研究室長
安藤 哲也 (あんどう てつや) 監訳
ハーバード医科大学心理学科准教授
Dr. Steven A.Safren 原著
マサチューセッツ総合病院心理部門
Dr. Jeffrey S. Gonzalez 原著
マサチューセッツ総合病院精神科
Dr. Nafisseh Soroudi 原著
初版 B5判 並製 128頁 2015年06月30日発行
ISBN9784787821867
定価:2,640円(本体価格2,400円+税)冊
糖尿病や高血圧、HIV感染症などの慢性疾患の臨床では,いかに長期の治療を続けるかという治療アドヒアランスの問題とともに,疾患に併発するうつが大きな問題となっています.本書は慢性疾患を抱え,うつを併発する人の,アドヒアランスとうつの問題に焦点を当ててCBTの介入法を精選.記入用紙を利用し,段階的にスキルを学べる実践書です.
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目次
推薦の辞
原書のシリーズ監修者による序文
第 1 章 導 入
1 背景となる情報と本プログラムの目的 2 「アドヒアランス」とは? 3 うつとは? 4 本治療プログラムの作成とその根拠 5 本治療プログラムのリスクと利益 6 代わりになる治療 7 薬物治療の役割 8 本治療プログラムの概略 9 本治療プログラムの構造 10 ワークブックを使う 11 アドヒアランス行動の概観 12 まとめ
第 2 章 プログラムの概要
1 うつと慢性疾患 2 うつの構成要素 3 あなたのうつモデル 4 うつのサイクル 5 治療の焦点 6 治療のフォーマット 7 プログラムに参加するあなたの目標 8 モチベーションのエクササイズ
第 3 章 ライフステップ
1 うつ尺度のふり返り 2 週間アドアランスチェックのふり返り 3 前のモジュールのふり返り 4 ライフステップ:アドヒアランスとセルフケアの向上 5 問題解決のステップ:目的法 6 ふり返り
第 4 章 活動計画
1 うつ尺度のふり返り 2 週間アドアランスチェックのふり返り 3 前回までのモジュールのふり返り 4 活動計画 5 活動リスト 6 週間活動記録
第 5 章 適応的な考え方(認知再構成):パートI
1 うつ尺度のふり返り 2 週間アドアランスチェックのふり返り 3 前回までのモジュールのふり返り 4 適応的な考え方/認知再構成 5 考え方のくせリスト 7 自動思考 6 自動思考の特定 8 認知再構成の説明文
第 6 章 適応的な考え方(認知再構成):パートII
1 うつ尺度のふり返り 2 週間アドアランスチェックのふり返り 3 前回までのモジュールのふり返り 4 合理的反応 5 コーチングについてのたとえ話 6 適応的な考え方:合理的反応の形成
第 7 章 問題解決
1 うつ尺度のふり返り 2 週間アドアランスチェックのふり返り 3 前回までのモジュールのふり返り 4 問題解決の戦略 5 問題解決の五つのステップ 6 大きな課題を扱いやすいステップに分ける 7 大きな課題を扱いやすいステップに分ける方法
第 8 章 リラクセーション練習と腹式呼吸
1 うつ尺度のふり返り 2 週間アドアランスチェックのふり返り 3 前回までのモジュールのふり返り 4 呼吸法の再練習 5 腹式呼吸のテクニック 6 筋肉のリラクセーション法
第 9 章 今までのふり返りとメンテナンス・再発予防
1 治療の終結について考える 2 治療ツールの有用性 3 メンテナンス 4 困難に対するよくある問題 5 おわりに
索引
原著者紹介
訳者一覧
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序文
推薦の辞
いわゆる身体疾患の治療で,身体へのアプローチだけでなく,精神面へのアプローチが重視されるようになってきたという話を近年よく耳にするようになりました。ところが,精神面へのアプローチといわれてもどのようにすればよいか,具体的なアプローチがわからず戸惑っている医療関係者が少なくないように思います。
そうした人たちの心強い味方である治療者用のセラピストガイドと患者用のワークブックが,ついに日本でも翻訳,刊行されました。この2冊は,原書のシリーズ名がTreatments That WorkTMとなっていることからわかるように,効果が実証されているアプローチを具体的かつ実践的に紹介する内容になっています。しかも,セラピストガイドとワークブックを提供することで,治療者と患者が力を合わせて治療に取り組めるようになっているところが,いかにも臨床的です。
内容もきわめて臨床的で,慢性疾患の治療に好ましくない影響を与える二つの要因であるうつ病と低い治療アドヒアランスに焦点が当てられています。身体疾患にかかった人がうつ病などの精神的不調を体験するようになることが多いことは種々の調査から明らかになっています。そうすると,身体疾患の治療経過に好ましくない影響が現れてきます。
うつ病は,自律神経やホルモンの変調,免疫機能の低下などを通して,直接身体疾患に影響してきます。さらに,うつ病になると,治療に取り組む意欲が薄れてきて,アドヒアランスが低下してきます。いくら医療者が的確な指示を出しても,その指示をきちんと守ることができず,結果的に治療効果が上がらなくなります。もちろんアドヒアランスは,うつ病にかかっていない人の場合でも,身体疾患の治療の大きな阻害要因になります。このように慢性疾患の治療に強く影響するうつ病とアドヒアランスに対して認知行動療法が有効であることがこれまでの研究から実証されてきていますが,この2冊の本ではその具体的な方法が詳しく紹介されています。また,これまで国内外で行動医学の実践に取り組んでこられた堀越 勝先生と安藤哲也先生が監訳されたこともあって,とても読みやすくできあがっています。
セラピストガイドとワークブックを多くの方が手にとっていただき,臨床に生かしていただくことを願っています。
一般社団法人 認知行動療法研修開発センター
大野 裕
原書のシリーズ監修者による序文
―Treatments That WorkTMについて
さまざまな障害や疾患を抱えた患者の方々が直面している最も困難な問題の一つは,受けることのできる支援のなかで最もよいものを見つけることです。一見よさそうな専門家による治療を求めた友人や家族が,結局,元の診断は間違っていたとか,勧められた治療が不適切なものであったとか,ともすると有害でさえあったということを,後で別の医師にかかることによって知ることがあるのは,誰もが知っていることです。多くの患者や家族の方たちはこの問題に対して,症状について入手できるものはすべて読み,インターネットで情報を探し,友人や知人から知識を引き出すために積極的に「聞き回る」ことをしています。政府やヘルスケア政策立案者もまた,ニーズのある人々がつねに最良の治療を手にできているわけではないことに気づいています。そしてこれは,「ヘルスケアの実践における妥当性」といわれるものです。
今,世界中のヘルスケアシステムは,「エビデンスに基づく実践」を導入することにより,この妥当性を正そうと試みています。これは,単純に,患者が特定の問題に対する最新の,そして最も効果的なケアを受けることができるようになることが,すべての人の関心事だということを意味しています。ヘルスケア政策立案者はまた,ヘルスケアの利用者にできる限り多くの情報を与えることは,非常に有用であることも理解しています。そうすることで,ヘルスケアの利用者自身が,身体とこころの健康を改善するための協働的な努力について,聡明な決定ができるからです。本シリーズTreatments That WorkTM*は,まさにそれを成し遂げるために企画されました。特定の問題に対する最新の,最も効果的な介入法が,使う人にとって親しみやすい言葉で書かれています。本シリーズに含まれるには,それぞれの治療プログラムは,科学諮問委員会によって定められた現行のエビデンスの最も高い基準を通過しなければなりません。したがって,問題に悩まされている人やその家族が,自分たちの抱えている問題への介入に精通している専門医を探し,彼らが適切であるかを判断する際,自分たちは今ある最良のケアを受けていると確信することができるでしょう。当然,あなたのヘルスケアの専門家は,あなたにとって,どのような治療を組み合わせるのが適切かを判断することができます。
本書は,慢性的な疾患を抱えて生きる人のうつとアドヒアランスの両方をターゲットとした認知行動的な治療を記したものです。慢性的に医療を必要とする状態を抱えた人は,うつを抱えやすい傾向があり,そのためにかれらが医師から勧められた治療プログラムに従う能力を損なうことがあることが示されています。もしあなたがHIVや糖尿病,高血圧,心疾患,がん,喘息や他のタイプの長期的な病気を患っており,うつに苦しめられていたなら,本書のなかのプログラムの概要は,あなたの役に立つかもしれません。認知行動療法の原則に則り,このプログラムは,うつを克服するために必要なスキルだけでなく,あなたの治療計画へのアドヒアランスを改善するスキルを教えます。あなたは,問題解決法とネガティブな考えを変える方略,また,症状と副作用に対処するためのリラクセーションの方法や呼吸法を学びます。最も重要なことは,診察の予約を取ること,医師とのコミュニケーションを取ること,時間どおりに服薬すること,薬とサプリメントを適切に保管することです。治療全体を通して,治療者とともに作業を行い,あなた自身にとって可能な限り最もよいケアを行うのを妨げる障壁に対処します。セルフケア行動を行い続けることは,あなたを身体的に楽にするばかりでなく,あなたのメンタルヘルスも向上させてくれるでしょう。
このプログラムは,あなたの主治医との協働的な取り組みにおいて,最大の効果を発揮します。
*Oxford University Pressのシリーズ企画。本書の原書“Coping With Chronic Illness:Workbook”は,同シリーズのなかの1冊である。
デイビッド・H. バーロウ
Treatments That WorkTMシリーズ監修者
マサチューセッツ州ボストン