よくわかるNew保育・教育実習テキスト 改訂第3版診断と治療社 | 書籍詳細:よくわかるNew保育・教育実習テキスト 改訂第3版
白梅学園大学子ども学部・子ども学研究科教授
無藤 隆 (むとう たかし) 監修
東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科教授
鈴木 佐喜子 (すずき さきこ) 編著
白梅学園短期大学保育科教授/白梅学園大学・短期大学実習指導センター長
中山 正雄 (なかやま まさお) 編著
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授
師岡 章(もろおか あきら) 編著
改訂第3版 B5判 並製 208頁 2017年01月30日発行
ISBN9784787822994
定価:2,200円(本体価格2,000円+税)冊
好評を得ている保育・教育実習のためのテキストの改訂第3版.改訂第2版発行以降4年間の関係諸法令の改定・改正を踏まえデータを更新した.保育所・幼稚園・施設実習から小学校実習までを網羅し,学生だけではなく,養成校の指導教員,実習先の実習指導担当者の方々にも役立てていただける1冊.
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目次
監修の序
改訂第3版編集の序
改訂第2版編集の序
初版編集の序
執筆者一覧
第1章 実習とは何か 鈴木佐喜子
A 実習という学び方
1保育者・教師への学習の核となる実習―理論と実践を結びつける― 2保育・教育実習と実習指導
B 現場で学ぶということ
1体験型学習の意義とポイント 2保育・教育実習の三つの目的 3子ども・保育者・教師から学ぶ心構え
C 実習における自己発見と進路選択
1自分を見つめ,保育者・教師としての可能性を広げる 2多様な現場理解と進路選択
第2章 実習のためのカリキュラム・マネジメント 師岡 章
A 保育者・教員養成と実習教育
1実習に関する法的規程 2実習教育の実態 3実習観への着目
B 実習カリキュラムの策定
1実習の位置づけとカリキュラム編成のスタンス 2養成課程のカリキュラム・マネジメントのプロセス
3養成課程のカリキュラム・マネジメントの実際 4実習段階の設定
C 実習指導の組織体制
1教職員の協力・連携の必要性 2実習運営委員会の組織 3実習指導センターによるマネジメント
D 実習指導の内容と配列
1実習指導の種類 2事前指導の内容 3実習中の指導 4事後指導の内容
E 実習先との協力・連携
1実習先の確保と選定 2実習の依頼 3学生の配属 4実習先との連携
第3章 実習を迎えるための準備 小松 歩
A 実習の段階と目的
1事前指導(オリエンテーション)の内容 2各実習の段階・方法 3実習の目的・内容
B 事前学習の内容
1実習先での事前指導(オリエンテーション) 2実習前に準備すること
C 実習生としての心構え
1実習生に求められる心構え 2実習を行うにあたっての留意事項
D 実習日誌の意義,書き方のポイント
1記録の意義 2日々の記録(保育活動)の書き方 3一般的な留意事項
第4章 幼稚園実習 髙田文子
A 幼稚園とは
1幼児教育制度と幼稚園 2幼稚園のカリキュラム 3幼稚園ブームから少子化へ 4認定こども園制度
5幼稚園の1日の流れ 6適当な環境とは 7幼稚園の行事 8幼稚園教諭の資質
B 実習段階と学習目標
1幼稚園実習の種類と期間 2見学・観察実習とは 3参加・指導実習とは
C 指導実習の進め方
11週目―幼児をよく観察する― 22週目―部分実習を体験し,指導方法を学ぶ―
33週目―一日実習を行い,深く感じ,考える― 4反省会
第5章 保育所実習 近藤幹生,鈴木佐喜子
A 保育所の目的と法的根拠
1保育所の目的 2子ども・子育て支援新制度による保育所の運営 3保育所の1日 4保育士の役割と専門職性
B 実習段階と学習目標
1「保育実習」における実習の種別と段階 2保育所実習の目的・内容と方法
C 参加・指導実習の進め方
1実習前の準備 2クラスに入って最初に行うこと 3指導案の作成と指導実習に向けて
4乳児クラスでの指導実習 5異年齢クラスでの指導実習
第6章 施設実習 中山正雄,西村章次
A 実習段階と学習目標
1施設実習とは 2施設実習の意義と目的 3実習の段階
B 児童福祉施設での実習
1実習を行う施設 2施設とは 3実習で学ぶ目標
C 養護系施設での実習の進め方
1養護系の施設 2施設実習の進め方 3実習の内容と留意事項
D 障害系施設での実習の進め方
1障害系の施設 2障害の理解と支援内容 3障害者自立支援法から障害者総合支援法へ
第7章 指導実習のポイント 松嵜洋子
A 指導実習とは何か
1実習の種類と指導実習 2指導実習の流れ
B 指導案とは
1指導案の構成 2指導案を立てる際のポイント
C 子どもの実態把握と目標設定
1子どもの実態把握 2保育のねらい
D 活動・教材の設定
1活動の時間帯 2活動・教材の選択に際して 3活動・教材を選ぶポイント
E 指導実習の展開
1指導案の展開 2指導案を見直すポイント
F 指導実習の評価・省察
G 自由保育の指導案作成のポイント
H 一日実習の指導案作成のポイント
第8章 小学校実習 村越正則,星野征男
A 小学校とは
1小学校における教育実習の意義 2小学校教育の概要
B 実習とその目標
1教育実習の総括的目標 2教育実習指導(教育実習にかかわる事前及び事後の指導)とその目標
3教育実習とその目標
C 授業実習の進め方
1日課表と教育実習生の1日 2授業観察 3授業実習 4授業以外の指導 5実習日誌 6学習指導案
D 介護等体験における学習
1介護等体験の意義 2介護等体験の目標 3介護等体験を履修する条件 4介護等体験の施設への配属
5介護等体験の留意事項
第9章 実習を終えて 金子恵美
A 学生の自己点検・自己評価
1実習先での反省会 2学内での振り返り 3自己点検を行う際の留意点
B 日誌等の保管,守秘義務
1守秘義務 2倫理 3日誌等の保管
C 実習先とのかかわり方
1実習終了時 2お礼の手紙 3実習先の子どもとの関係 4実習終了後の訪問やかかわり
コラム
・教育実習の歴史 鈴木佐喜子
・実習に関する現場との共同研究を進めよう! 師岡 章
・実習への意欲 小松 歩
・実習を通して気づく自己課題 髙田文子
・部分実習・指導実習のヒント―ふれあい遊び・つながり遊び― 頭金多絵
・こども園のゆくえ 師岡 章
Q&A
・自分の考えに合いません.このまま実習を進めてよいのでしょうか.
・乳児とどうかかわってよいかわかりません.どうしたらよいですか.
・障害児・者施設とか,障害のことをまだしっかり勉強していません.障害系施設での実習が不安です.
・養護施設には初めて行きます.不安で仕方ありません….
・実習時間や宿泊の場合に実習生の食事はどのようになるのですか.
・指導案は不要と言われました.どうしたらよいですか.
・どのような絵本を選んだらよいですか.
・私の研究授業の後の協議会で,「一部の子どもだけの話し合いが中心で,学習活動が単調であった」と指摘されました.私は具体的にどのように改善すればよいのでしょうか.
・教育実習で,小学校3年生の学級に配属されました.授業中,私に対する子ども達の言葉はまるで友達同士のようで,担任の先生と比べて明らかに乱雑です.このような状況にどう対処す
ればよいのでしょうか.
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序文
監修の序
本書は保育・教育実習のためのテキストです.特に,三つの特色があります.
第一に,実習指導の実務とポイントに精通した教員が執筆していることです.具体的ですぐに使える記載となっています.実地に試されたことばかりです.実習を始める前から実習中・実習の後に学生のみなさんが出会うような問題や,指導側が配慮すべき点が網羅されています.毎年,実習指導に活用する中で細かい点まで改良に努めてきました.
第二は,保育士(施設実習を含む),幼稚園教諭,小学校教諭等,いくつもの免許・資格を総覧していることです.いくつかの免許・資格を並行して取ることができる養成校が増えてきたので,それらを1冊にまとめました.
第三,そして最大の特徴は,実務と理論的な意義付けの双方を解説し,その統合を図っていることです.マニュアルとしての要素もありつつ,それに留まることなく,なぜ実習は必要なのか,講義や演習とどうつながるか,また実習の反省をどう生かして,専門職としての保育士・幼稚園教諭・小学校教諭になっていくのかを見通しています.それはその仕事について,実地に業務を進めつつ,それを振り返り専門性を高めていく際の土台となる力を育てることでもあります.
今回の改訂は,2016年度における保育所保育指針や幼稚園教育要領および幼保連携型認定こども園教育・保育要領さらに小学校学習指導要領等の同時改定,またそれに伴う養成課程の改定を反映させると共に,児童福祉法・児童虐待防止法などの法律改正を踏まえています.児童福祉法では特に「全て児童は,児童の権利に関する条約の精神にのっとり,「…権利を有する」とされ,児童の権利の確立に大きく進みました.なお,児童の養育を家庭が育成の第一義的責任を負い,さらに家庭における教育環境と同様の養育環境また家庭養護・家庭的養護を推進することなども明記されています.
その際,大きな流れとしては,何より養成課程の充実ということがあります.実習指導について,実習園・校と協力して,実をあげることが求められます.養成校としては実習を指導の園・学校に任せきりにすることなく,事前指導・事後指導について丁寧に進めると共に,実習中も緊密な連携を進め,他の養成課程の授業とのつながりを明確にしていく必要があります.
国の施策の動向として,乳児保育の充実,幼稚園・保育所・幼保連携型認定こども園の幼児教育としての共通化,幼児教育と小学校の連携・接続,子育て支援の拡充などがあげられます.その意味でも,それらの実習やその考え方を1冊にまとめるような本書のアプローチは有効なものとなるわけです.
最後に学生のみなさん自身の姿勢について触れたいと思います.最終的に,実習を実りのあるものにするには,その実習を受ける学生自身の主体的かつ積極的な態度を欠かすことはできません.具体的なマニュアルを手がかりに実習を進める上での基本を学ぶことで,さらに実りある有用な実習となります.
本書がその手がかりとなることを期待してやみません.
2017年1月
無藤 隆
改訂第3版 編集の序
保育・教育・福祉に関して法律の制定,制度や基準などについての改正が,前回改訂後の4年間でもいくつか行われています.
制定された法律としては,児童・生徒の自殺が大きな社会問題となっている中2013年に制定,同年施行された「いじめ防止対策推進法」.障害者の権利に関する条約の批准に向けて2013年制定,2016年施行の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」.そして,子どもの貧困問題への対応として2013年制定,翌年施行の「子どもの貧困対策の推進に関する法律」等があります.
また,改正された法律等では,2015年6月改正の「学校教育法」は翌年4月より施行され,小中一貫校を「義務教育学校」として位置付けることや高等学校等専攻科修了生が大学へ編入学できることを定めています.2016年5月には,「児童福祉法」の抜本的な改正が行われ第1条~3条は即日施行,順次施行され2017年4月には全て施行されます.関連して児童虐待防止法なども改正されています.
今回の改訂第3版では,実習を行う上で必要な追記・修正と可能な限りデータの更新を行っています.なお,現在,保育所における幼児教育の位置付け等を加えた保育所保育指針および幼稚園教育要領の改定が進められています.2016年度中には告示される見通しです.
児童福祉法の改正は,本書の実習内容に直ちに影響しませんが児童に関する基本法ですので,原理に関する改正のポイントについて触れておきます.
第1条では,改正前の「すべて国民は…努めなければならない.」から,改正後「全て児童は,児童の権利に関する条約の精神にのっとり…権利を有する.」となり,国民の義務を定めた法律から児童を主体とした児童の権利を定めた法律として位置付けられたものになっています.
第2条では,“児童の意見表明権”“児童の最善の利益が優先”そして“保護者が育成の第一義的責任を負うこと”を新たに明記するとともに児童の権利を保障するための国及び地方公共団体及び国民の責任を明確にしたものとなっています.
第3条では,“児童が家庭で養育される権利”を示した内容となっています.そして,家庭において養育が困難等の場合,従来の大規模な施設での集団的養育を行わず“家庭養護・家庭的養護の下で養育されること”を明確にしたものとなっています.
保育・教育・福祉は,国民の生活の現実に合わせて常に変化していきます.この書で全てを著すことは困難です.法律等についても関心を持ち,条文を確認し,本書と併せて学びを深めていただきたいと願います.
2017年1月
鈴木佐喜子・中山正雄・師岡 章
改訂第2版 編集の序
初版発行後約5年が経過しました.この間,保育・教育・福祉における制度改革が著しく,多くの関係諸法令が改定されました.改訂第2版では,こうした動向を踏まえて「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」「小学校学習指導要領」の改訂(改定)に準拠することをはじめ,指定保育士養成施設におけるカリキュラム及び保育実習の実施基準の改訂に合わせて記載内容を変更し,認定こども園の動向について追記し,第9章にコラム「こども園のゆくえ」を加えました.これらの修正に加えて,第6章の施設実習では,「児童福祉法」の一部改正と児童福祉施設の種別の変更,「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」や「障害者総合支援法」の改正・制定等の内容を反映させました.第8章の小学校実習でも「教育基本法」「学校教育法施行規則」の一部改正等に伴う追記・修正を行いました.また,各章に掲載されているデータを可能な限り更新するよう努めました.
この5年間の保育・教育・福祉分野の変化の激しさを改めて実感しますが,今後もさらなる改変が予想されます.これからもその動向を注意深く見守っていく必要があるでしょう.激動の時代のなかで,保育者や教員となっていく若者たちが,希望とやりがいを感じ,成長していくことの出来る保育・教育・福祉現場であるように,と願ってやみません.
2012年11月
鈴木佐喜子,中山正雄,師岡 章
初版編集の序
保育・教育実習とは,保育者・教師を目指す学生が,各現場において,体験的な学習を進めるものです.子ども・保育者(教師)・保護者等に直接触れ,保育所・児童福祉施設・幼稚園・小学校等の役割や存在意義を肌で感じ取る体験は,保育者・教師の養成教育において核となるものでしょう.本書は,こうした認識のもと,実習及びその指導のあり方・進め方を整理することを試みたものです.
なお,対象とする読者は学生だけにとどめず,養成校の指導教員,実習先の実習指導担当者も視野に入れました.内容も,保育士資格と幼稚園教諭免許状に加え,小学校教諭免許状の取得を前提とした実習も取り上げました.理由は,近年,改めて保育者・教師の資質向上,専門性の高度化が求められているからです.これらは,理論と実践の結合が図られる中で,初めて達成できる課題です.養成段階における学内での学習と学外での実習をつなげていくことは,その端緒となることでしょう.これを有効に進めていくためには,実習にかかわる全ての人々が共通の認識に立ち,その方法を共有していくことが不可欠です.
また,乳幼児期だけに限定した学習だけにとどめず,その先の発達も見通せる保育者・教員養成も求められています.しかも近年,4年制大学による保育士養成への参入,保育士資格と幼稚園教諭免許状に加え,小学校教諭免許状の取得も目指した学部・学科の新設等の動きも顕著となっています.こうした事情もふまえ,本書は,従来の保育・教育実習に関する著作の大半が,2年制での保育士資格と幼稚園教諭免許状取得を前提に,学生向けの実習テキストとなっていたことを踏襲せず,読者対象・内容を広げることを意図したわけです.
そのため,「幼稚園教育要領」 「保育所保育指針」 「学習指導要領」に準拠しつつ,保育・教育実習の最新情報及び知識をできるだけ具体的に取り上げ,読者が保育・教育実習のあり方・進め方を具体的にイメージできるように工夫しました.具体的には,第1・2章において保育・教育実習全体のあり方を論述した後,事前指導―実習―事後指導という実習の流れに沿うかたちで進め方を紹介しました.各実習については,第4~8章において,実習の種別の相違・特徴をふまえた進め方を紹介することを心がけました.特に,保育所・幼稚園・施設実習とは異なる特徴をもつ小学校実習については,第8章に特化するかたちで,そのあり方・進め方を紹介しています.以上の本文に加え,章の間に「コラム」や「Q&A」等も設けました.ご活用していただきたいと思います.
ただ,執筆者の大半が同じ養成校に所属しているため,その内容に偏りも見られると思います.しかし,実習の指導は一教員としての実践ではなく,養成校全体としての取り組みです.一般論のみを示されても役に立たないことも多いことでしょう.その際,一つの養成校の試み,その全体像を具体的に示すことが,手かがり・示唆となるのではないかと考えました.批判的に読み解いていただき,読者の自主的・自律的な取り組みにつなげていただければ幸いです.
2008年1月
鈴木佐喜子,師岡 章