脳血管内治療の普及とレベルアップを目的に開催される「脳血管内治療ブラッシュアップセミナー2017」の演題をまとめたイヤーブック.エキスパートの基本技術から応用テクニック満載のセミナー演題に加え,実臨床に山積する課題をテーマにをとりあげ,質問回答コーナーも掲載した充実の内容.今版ではアクセスのノウハウとAISの最新情報を盛り込みました.最新のデバイスと治療技術を知るための定番書籍です.
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目次
序 文/坂井信幸・他
執筆者一覧
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー2017
I ミニレクチャー「アクセス・私の工夫」
1 急性期血行再建術でのバルーン付きガイディングカテーテル留置のtips/津本智幸
1 はじめに
2 BGC
3 インナーカテーテル
4 バルーン付きガイディングカテーテルの誘導におけるtips
2 VB系の血栓回収療法におけるアクセス/山上 宏
1 はじめに
2 椎骨動脈の解剖と血管径
3 一般的なガイディングシステム
4 蛇行が強いVAでのアクセス
5 VB系のtandem occlusion
6 おわりに
3 Pull-through法/杉生憲志,高橋 悠
1 はじめに
2 Pull-through法の実際
3 Pull-through法の主なアプローチルート
4 代表症例
4 J型ガイディングカテーテル“Stiff-J”とA弁ターン法の有効性/小林英一
1 はじめに
2 器具の特性
3 Stiff-Jの誘導方法
5 カテーテルアクセス時のGoose Neck Snare活用法/長谷川 仁
1 はじめに
2 GNSの種類と使用方法および適合カテーテル
3 カテーテルアクセスにGNSを応用した実際の症例
4 おわりに
6 MarathonとMagicの使い方/松丸祐司
1 はじめに
2 構造と適応
3 準備
4 カテーテリゼーションのコツ
5 まとめ
7 Onyx塞栓術中にカテーテルがトラップされて抜去困難に陥った時の対処法/兵頭明夫
1 はじめに
2 Monorail Snare Technique
3 中間カテーテルを被せて引っ張る方法
4 症例紹介
5 おわりに
8 脳血管障害に対する複合治療としてのハイブリッド治療の有用性
/飯原弘二,有村公一,西村 中,黒木亮太,河村陽一郎
1 はじめに
2 ハイブリッド手術室
3 アクセス困難な症例に対するハイブリッド治療
4 考察
9 マイクロカテーテル誘導『難所での対処法』/鶴田和太郎
1 マイクロカテーテル誘導の難所とは
2 マイクロカテーテル誘導の基本
3 難所 その1:急峻な分岐
4 難所 その2:大血管から小分枝への選択(ILT,MHT)
5 難所 その3:末梢蛇行血管
6 おわりに
II アクセスのすべて-脳血管内治療成功の鍵
1 大動脈弓部の変異と異所性鎖骨下動脈/田中美千裕
1 異所性右鎖骨下動脈
2 発生学的考察
3 Stewart-Edwards分類
4 まとめ
A.基礎編
1 診断血管撮影のSkill up/石橋敏寛
1 はじめに
2 大腿動脈穿刺
3 患者とのコミュニケーション
2 こんなに違うYコネ,止血弁―自分のお気に入りをみつけよう―/伊藤 靖
1 はじめに
2 Yコネの機能と構造・選択時の注意点
3 トリコネ
4 代表的なYコネ
5 症例によるYコネの選択
6 おわりに
B.各論に入る前に
1 ファカルティーはこんな使い方をしている
―BSNETファカルティーへのアンケート結果―/宮地 茂
1 背景
2 方法
3 結果
4 考察
C.穿刺と止血
1 大腿動脈穿刺に関連する局所解剖/庄島正明
1 背景
2 穿刺部位と穿刺部合併症
3 鼠径部の局所解剖と総大腿動脈
4 適切な穿刺を行う前に確認すべき解剖学的ランドマーク
5 適切な穿刺が行われたか確認するための解剖学的ランドマーク
6 おわりに
2 穿刺部合併症への対処法と止血デバイス/榎本由貴子
1 はじめに
2 さまざまな穿刺部合併症
3 止血デバイス
D.Type IIIアーチをどう克服するか
1 私の克服法/吉村紳一
1 アプローチの選択
2 インナーカテーテルの選択
3 ガイドワイヤ―の変更
4 Exchange法
5 Carotid compression法
6 バルーン付きガイディングカテーテルへの変更
7 Guardwireの併用
8 スネアの併用
9 結語
2 NeuroEBUの活用/石井 暁
1 はじめに
2 NeuroEBUを用いて交換用ワイヤーを上げる方法
3 NeuroEBUを用いて中間カテーテルを上げる方法
4 まとめ
E.上腕,橈骨動脈
1 上腕アプローチによるCAS―tips & pitfall―/岐浦禎展
1 はじめに
2 アプローチルートの評価と穿刺部位の決定
3 使用する機器と治療方法
4 代表症例
5 治療後
6 まとめ
2 trans-radial approachの方法とピットフォール/里見淳一郎
1 橈骨動脈穿刺の手順
2 橈骨動脈経由でのカテーテルの誘導
3 経橈骨動脈用の診断カテーテル,スーパーロングシース
4 止血器材
F.直接穿刺
1 小切開による頚動脈直接穿刺法/藤中俊之
1 はじめに
2 小切開による頚動脈直接穿刺法:手技の流れ
3 頚動脈直接穿刺法の合併症
4 おわりに
G.中間カテーテル
1 セルリアンDD6を確実にC4まで挿入する方法(sliding technique)/寺田友昭
1 はじめに
2 テクニック
3 症例
4 考察
5 結語
2 液体塞栓物質使用時のintemediate guiding catheter使用の意義と有用性
/東 登志夫,福本博順,湧田尚樹
1 はじめに
2 アプローチ
3 マイクロカテーテルの抜去時
4 Coaxial guiding catheter system
5 まとめ
3 欧米における中間カテーテルの開発と臨床応用/立嶋 智
1 はじめに
2 脳血管内治療専用のガイディングシース
3 脳血管内治療専用の遠位到達型ガイディングカテーテル
4 コアキシャルカテーテルの変遷
5 現在のコアキシャルカテーテル
6 最後に
H.マイクロカテーテルの準備
1 3Dプリンタのセットアップ/金子直樹,立嶋 智
1 3Dプリンタとは何か
2 熱溶解積層方式
3 実際の流れ
4 脳神経外科,脳血管内治療における役割
5 課題
2 3Dプリンタを活用した脳動脈瘤塞栓術/根本 繁
1 脳動脈瘤コイル塞栓術におけるカテーテルshaping
2 脳血管撮影の3D画像
3 3Dプリンタによる血管モデルの作成
4 カテーテルshapingの実際
5 動脈瘤へのカニュレーション
6 コイル挿入
7 カテーテル回収
8 3D動脈瘤モデルの利点
9 3Dモデルの問題点
10 3Dプリンタを用いたカテーテルshapingの今後
2 マイクロカテーテルのらせん曲げ/泉 孝嗣
1 らせん曲げとは
2 らせん曲げの回転方向の決定
3 らせん曲げの作成
4 動脈瘤への導入
I.dAVF,TVEへの工夫
1 IJV経由のアクセスに必要な静脈解剖/キッティポン スイーワッタナクン
1 はじめに
2 IJVの解剖
3 Cranio-cervical junctionにおけるIJVの局所解剖
4 鼠径部から頭蓋内までのカテーテルのアクセス
2 海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻,閉塞しているIPSをどうやって探るか?
/遠藤英樹,大石英則
1 はじめに
2 下垂体静脈洞(inferior petrosal sinus:IPS)
3 デバイス
4 手順
5 注意点
3 硬膜動静脈瘻のTVE.罹患静脈洞に到達するコツ
―デバイスと手技の工夫―/桑山直也
1 カテーテルの組み方
2 静脈洞への進入法
3 静脈洞内でのカテーテルワーク
4 内頚静脈直接穿刺による頭蓋内静脈病変へのアプローチ/佐藤 徹
1 はじめに
2 方法
3 考察・結語
III AISの血管内治療はここまで進んだ
A.最良の結果を得るためにどう取り組むか?
1 Onset to door/早川幹人
1 はじめに
2 CSCへの直接搬送と転院搬送
3 転院搬送例の時間枠
4 Door-in-door-out time(DIDO)
5 “PSC ELVO protocol”
6 おわりに
2 Door to Reperfusion/今村博敏,坂井信幸
1 はじめに
2 ガイドライン
3 来院から画像検査まで
4 画像検査からIV-rtPAまで
5 画像検査から穿刺まで
6 穿刺から再開通まで
7 おわりに
3 Acute Ischemic Stroke:米国における取り組み/立嶋 智
1 5つのランダム化試験がもたらした重責
2 SEERとSTRATISからみるランダム化試験と実臨床
3 ロサンゼルスにおける救急搬送体制再構築の試み:理想と現実
4 もう一つの選択肢:Mobile Stroke Unit
5 まとめ
B.知っておくべき最新のエビデンス
1 Nashville Hope後,何が明らかになって,何が今後の課題か?/山上 宏
1 はじめに
2 血栓回収療法vs.内科治療のRCT
3 治療適応
4 併用療法と治療手技
5 おわりに
C.機器をどう使いこなすか?
1 Penumbraカテーテル/津本智幸
1 はじめに
2 Penumbraカテーテルを運ぶ際のインナーカテーテルは何を使う?
3 ACE68,ACE60,4MAX,3MAXの使い分けは?
4 ADAPTが得意とする状況,不得意とする状況?
5 ステントリトリーバーとの併用,中間カテーテルとしての役割,CAPTIVE technique
6 動脈硬化性病変の治療におけるPenumbraカテーテルの応用
2 Revive SE/松本康史
1 はじめに
2 構造
3 Closed-ended basket design
4 症例
3 Solitaire FR/今村博敏,坂井信幸
1 構造
2 血栓回収療法のセッティング
3 Solitaire 使用時のtips
4 Trevo XP/今井啓輔,濱中正嗣,山﨑英一
1 はじめに
2 Trevoの構造
3 血栓除去術のセッティングとTrevoの使い方
4 Trevo使用時のtips
5 おわりに
誌上回答コーナー
エキスパートがズバリ!あなたの疑問に答えます
監修:坂井信幸,吉村紳一
回答者:榎本由貴子,津本智幸,長谷川 仁,早川幹人
Q1 ヒートガンの温度設定は何度でしょうか? また,熱風を当てる秒数はどのように決めていますか?
Q2 局所麻酔で血管内治療を行う場合は,患者さんの頭部が動かないよう工夫をされているのでしょうか?
Q3 Neuro EBUとSY6のそれぞれの特徴を比較できますでしょうか?
Q4 Semi-jailに適しているのはどんなステントでしょうか? また,メリットとデメリットについて教えてください
Q5 穿刺部止血デバイスはどのような症例に使用されていますか?
Q6 DOAC内服中の方でステント使用した場合のDAPT使用期間はどの程度がいいのでしょうか?
Q7 基本的な質問ですが,アコーディオン現象とスパズムの病態はどのように違うのですか?
Q8 全身麻酔と局所麻酔でスパズムの起きやすさに差はあるのでしょうか?
Q9 後方循環系の治療に際して,ビギナーは原則,両側穿刺のほうがよいでしょうか?
Q10 再発例の場合,コイル選択について初回コイルのプライマリ径は考慮しますか?
Q11 整流効果を狙う場合はどんなステントが適しているのでしょうか? また,より整流効果が出やすい部位は
ありますか?
Q12 「serpentine aneurysm」というのは何でしょうか?
Q13 小径瘤へはMarathonの適応はどうでしょうか?
Q14 動脈瘤の部位についての質問です.ICA caveとIC SHAの区別がよくわかりません.見分け方を教えてください.
Q15 脳動脈瘤塞栓におけるステントの使い分け方を教えてください.
Q16 高度な屈曲部位でステントが折れないように留置するコツはありますか?
Q17 マイクロカテーテルのらせん状の形成に関してですが,患側に対する巻きの向きやそのサイズや形など,
いろいろなバリエーションがあると思います.解説していただけますか?
Q18 トランスセルでダブルカテーテルは可能でしょうか?
Q19 術後の抗血小板薬継続期間は,金属量の多さ等を考慮してステントによって変えますか?
Q20 AHAないし日本の脳卒中治療ガイドラインにはDAWN trialが反映されていませんが,治療適応の決定に
参考にされていますか?
Q21 Penumbra ACEは滑りがよくて剛性があるので,ガイドワイヤーでlesion crossせず,カテーテル自体を押して
誘導するのもよいように思いますが,いかがでしょうか?
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序文
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー(Brushup Seminar of Neuroendovascular Therapy:BSNET)は,脳血管内治療技術と機器研究会が運営する脳血管内治療の最新情報の提供と教育を目的としたセミナーで,2010年にそれまで代表幹事(発足当時,坂井信幸,瓢子敏夫,宮地 茂)が運営してきた3つのセミナーをまとめて発足しました.2014年から仙台セミナーの合流を受けて瓢子敏夫先生に代わって江面正幸が加わって現体制になりました.
2017年は「アクセスのすべて―脳血管内治療成功の鍵」をテーマとしてライブ供覧とレクチャーを展開し,セミナーで行われた講演がこの講演集に収められています.血管解剖,撮影と機器の基本,穿刺と止血,Type IIIアーチの克服法,上腕・橈骨動脈アプローチ,穿刺ポイントとカテーテル,dAVF,TVEへの工夫など,臨床のノウハウを満載しました.ミニレクチャー「アクセス・私の工夫」では,9名のエキスパートが珠玉のテクニックや対応法を紹介しています.
また,今,最も進歩発展が著しい急性虚血性脳卒中(AIS)の最新情報DAWN trialの結果報告を含め,治療の取り組み方,最新のエビデンス,機器の使い方など最新情報を解説しました.
ライブ会場で寄せられた質問に対する回答コーナーもお役立てください.
これから脳血管内治療に積極的に取り組もうとされる先生はもちろんのこと,すでに経験を積んだ先生方にも大いに参考になる企画となったと思います.このイヤーブックが脳血管内治療の発展に少しでも貢献できることを願っています.すべての関係各位に厚く御礼を申し上げます.
2018年2月
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー 代表幹事
江面正幸,坂井信幸,宮地 茂
同 運営幹事
松丸祐司,吉村紳一