研修医・一般小児科医・小児循環器科医に向けた小児循環器の入門書,改訂第2版.典型的な症例の呈示から診療のポイントを解説する基本構成や先天性心疾患の血行動態模式図など初版の特長は踏襲しながら,初版から約5年,この間の進歩を盛り込み,各項では胎児診断,移行期医療の解説を追加,また初版で未収載であった両大血管右室起始・左心低形成症候群・Fontan手術後なども新たに加え,さらに充実した内容に!
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目次
推薦のことば 山岸敬幸
改訂第2版 序文 三浦 大/前田 潤
初版 序文 三浦 大
執筆者一覧
Ⅰ 総論
A 診断のアプローチ
1.心雑音 山田浩之/三浦 大
2.胸 痛 髙砂聡志/三浦 大
3.心電図異常 住友直文/山田浩之
4.失 神 中村隆広/三浦 大
Ⅱ 各論
A 先天性心疾患
1.心室中隔欠損 前田 潤/三浦 大
2.心房中隔欠損 小山裕太郎/中村隆広
3.動脈管開存 山形知慧/福島直哉
4.房室中隔欠損 佐藤麻朝/三浦 大
5.Fallot四徴 前田 潤/三浦 大
6.両大血管右室起始 前田 潤
7.完全大血管転 大木寛生
8.三尖弁閉鎖 山形知慧/三浦 大
9.純型肺動脈閉鎖 大木寛生
10.総肺静脈還流異常 森川哲行/三浦 大
11.大動脈縮窄・大動脈弓離断 小山裕太郎/三浦 大
12.内臓錯位 永峯宏樹/渋谷和彦
13.左心低形成症候群 大木寛生
14.Fontan手術後 三浦 大
15.弁膜疾患 福島直哉
B 後天性心疾患
1.不整脈 住友直文/三浦 大
2.川崎病 三浦 大/宮田功一
3.心筋炎・心筋症 横山晶一郎
4.肺高血圧 矢内 俊/横山晶一郎
付録
器質的心疾患を認めない不整脈の学校生活管理指導ガイドライン (2013年改訂版)心室肥大判定
学校心臓検診二次以降の進め方
学校生活管理指導表
略語一覧
参考文献
索引
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序文
推薦のことば
「小児循環器学教育への熱い思いが込められた珠玉の1冊」が改訂第2版として発刊されました.
医師として,小児科医として,また小児循環器医として,小児循環器学をはじめて学ぶための工夫に富んだとても読みやすい教科書が,装いも新たに登場しました.前版同様,まず「総論」で症状をテーマに,「各論」で疾患をテーマに,やさしく解説するシンプルな構成が踏襲されています.そして,各項「症例」で始まるユニークな組立てによって,症状から診断に至るアプローチや疾患の概念と実際の診療について,実践的に学習することができます.はじめて学ぶ高度な知識でも具体的な症例がベースとなって,読者にとても理解しやすい印象を与えます.また各「症例」に解説されている「患者・家族への説明・指示」は,小児科医にとって患者と家族に対するフォローが重要であるという編者の思いと同時に,現場で悩む若手医師に対する温かい教育として特筆すべき点です.小児科専門医,小児循環器専門医の症例要約でも,「患者・家族への説明・指示」は重要項目とされており,それを書籍で学ぶことができる数少ない1冊です.
本書の特徴は,多くの典型的で鮮明な画像と明解なシェーマの組合せが視覚にうったえかけ,頭にスッと入ってくるところです.先天性心疾患では血行動態を理解することが,症状,身体所見,検査所見などすべてを考えるための基本です.血行動態を簡便に示したシェーマで病態を学ぶことができ,診療現場でそのまま家族に対するわかりやすい説明にも応用できます.小児循環器学は,命に直結する心臓・循環系を対象とし,今や胎児・新生児から学童・成人に至る幅広い患者さんを診る,高度に専門化・体系化された領域です.難しい専門分野を平易に学び,説明できることが,本書の明確な目的であると思います.はじめて学ぶ医師に必要十分な知識を提供し,さらに随所に散りばめられた「Level up」により専門性も高められています.そして,改訂第2版では,最近進歩の著しい胎児および移行期医療についての解説が充実し,初版では取り上げられていなかった,より複雑な病態である,両大血管右室起始,左心低形成症候群,Fontan手術後などが新たな項目として追加されました.
本書の執筆陣には,東京都立小児総合医療センター循環器科の若手医師も名を連ねています.編者の熱心な指導のもと,今回新たな知見を含めて,前版以上に文献を精読し推敲を重ねました.若手による若手のための「はじめて学ぶ小児循環器」改訂第2版が完成したこと自体が,小児循環器学教育の一つの形を表していることにほかなりません.今,小児循環器を学んでいる方,これから学ぼうという方,どなたでも,ぜひ本書を1冊読んで,診療にお役立てください.
令和2年6月
山岸敬幸
慶應義塾大学医学部小児科教授
周産期・小児医療センター副センター長
改訂第2版 序文
本書は,研修医,一般小児科医,小児循環器医を主な対象とした入門書として2015年に初版を発刊しました.幸いにして高い評価をいただき,このたび改訂版を上梓する運びとなりました.
改訂版では,この5年間における小児循環器領域の進歩を,なるべく取り入れるようにしました.初版では割愛した両大血管右室起始,左心低形成症候群,Ebstein病,Fontan手術後について新しく記載しました.また,小児循環器診療の入口となる胎児診断,出口となる長期予後や移行期医療についても,初心者が知っておくべき内容を各章に加筆しました.心電図,心エコー,造影写真などの図も,必要に応じて差し替えています.
一方で,よくある主訴に対する診断の手順を示した総論,先天性心疾患と後天性心疾患に分け,典型例の提示後に診療のポイントを解説した各論という基本的構成は変えていません.血行動態の模式図も,最近よく目にする立体的な図ではなく,敢えて平面的な図のままにしています.初版より約30ページ増えましたが,コンパクトで平易な入門書という方針は踏襲したつもりです.
著者は,東京都立小児総合医療センター循環器科の現役のメンバーか,卒業して他院で勤務している者です.総合診療科,新生児科,救命救急科,集中治療科,麻酔科,心臓血管外科などとのチーム医療を重視し,小児循環器の臨床に熱心に取り組んできたメンバーです.日々の診療を活かして書いた内容は,きっと皆様の臨床に役立つものと確信しています.
初版に引き続き,たくさんの心臓病の子どもたちとご家族,出版に際しお世話になった診断と治療社の坂上昭子様と土橋幸代様,ご多忙のところ推薦文をご寄稿いただいた慶應義塾大学医学部小児科,山岸敬幸教授に心より深謝申し上げます.
2020年6月
三浦 大
東京都立小児総合医療センター副院長
前田 潤
東京都立小児総合医療センター循環器科部長
初版 序文
小児の臨床のなかで大きなウエイトを占める循環器疾患に,苦手意識のある小児科医も少なくないようです.聴診での診断,心電図の判読,心エコーの描出などは高度な技巧にみえるのでしょうか.重症例を見逃すと致死的なこともあり得ますので,怖い感じがあるのかもしれません.苦手意識を克服する勉強法は,指導医に教わるか教科書で学び,臨床経験を積むことが王道です.
従来の小児循環器の成書は,各分野に特化した本や全分野を網羅した専門書が多く,1冊で広い範囲を基礎から学べる本は少なかったように思います.そこで,研修医,一般小児科医,専門医をめざしている小児循環器医を主な対象とした入門書を企画しました.平易な記載を心がけましたので,看護師,技師,薬剤師などの方々にも参考になるはずです.
総論として診断のアプローチ,各論として先天性心疾患と後天性心疾患に分け,各章では症例を呈示した後に,診療に必要なポイントを解説しています.症例は珍しいものではなく,日常診療で経験する一般的なものです.このような構成にした理由は,医学の勉強は症例に始まり症例に終わるからです.カルテやサマリーの記載,小児科専門医や小児循環器専門医の試験のための症例要約にも,役立ててください.
われわれの勤める東京都立小児総合医療センターは,専門的な小児病院ですが,総合診療科が中心にあり,救命救急科とともに24時間救急診療を担っています.多くのシニアレジデントも循環器科をローテーションしてくれ,スタッフが熱心に教育しています.本書の執筆方針は,専門に偏らず一般小児科との連携を大切にする,このような当院の文化に根ざしています.小児循環器を,これから学ぼうという方,難しいと感じている方,習い直したいと思っている方が日々の臨床の現場で活用できるよう,当科の総力を挙げて書き上げました.
本書を企画してからの約2年間,全面的にサポートいただいた坂上昭子様,土橋幸代様ほか診断と治療社の皆様,自宅での執筆活動を応援してくれた妻と娘達,たくさんの心臓病の子ども達とご家族,当院の各科の先生方,私にはじめて小児循環器を教えてくださり2014年9月28日に鬼籍に入られた恩師,小佐野 満 慶應義塾大学名誉教授など,多くの方々のおかげで本書が出来上がりました.心より感謝申し上げます.
2015年3月
三浦 大
東京都立小児総合医療センター循環器科部長