脳血管内治療の普及とレベルアップを目的に開催される「脳血管内治療ブラッシュアップセミナー2019」の演題をまとめたイヤーブック.エキスパートの基本技術から応用テクニック満載のセミナー演題に加え,実臨床に山積する課題をテーマにをとりあげた充実の内容.今版ではセッティングと再開通療法の最新情報を盛り込みました.最新のデバイスと治療技術を知るための定番書籍です.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
序 文 坂井信幸・他
執筆者一覧
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー2019
I ミニレクチャー:セッティングのすべて
1 完成してからでは遅い・完成してからでも間に合うアンギオ室レイアウトの工夫/ 伊藤 靖
1 はじめに
2 アンギオ室に必要な広さ・設置場所
3 アンギオ室の設置場所
4 アンギオ室内のレイアウト
5 おわりに
2 高リスク病変に対するハイブリッド治療のセッティング/ 飯原弘二,有村公一,西村 中
1 はじめに
2 セッティングの実際
3 治療の手順
3 水力学的考察に基づく灌流ラインのセットアップ/ 庄島正明
1 はじめに
2 Question1:最適な持続還流の流量とは?
3 Question2:最適な持続還流の方法とは?
4 まとめ
4 富山大式セッティングとデバイスハンドリング/ 秋岡直樹,桑山直也
1 はじめに
2 脳血管撮影時
3 血管内治療時
4 おわりに
5 術中血栓症トラブル等に備えたカテ室セットアップ/ 榎本由貴子
1 術前の抗血小板療法とその効果判定
2 術中の血栓形成予防のためのセットアップ
3 術中血栓症トラブルに備えたセットアップ
6 術中Cone-beam CT撮影のセッティング/鶴田和太郎
1 はじめに
2 2種類の高分解能cone-beam CT
3 頭蓋内STENT visualization
4 脳動脈瘤用VasoCT
5 Aorta VasoCT
6 Dural AVF用HR XperCT
7 まとめ
7 すべてに通じるガイディングカテーテルのセットアップ/ 津本智幸
1 はじめに
2 ガイディングシステム
3 ディスタルアクセスカテーテル(Distal Access Catheter:DAC)
4 動脈瘤塞栓術でのガイディングカテーテルの実際,tips
5 血栓回収術でのガイディングカテーテルの実際,tips
6 急性期血行再建術におけるディスタルアクセスカテーテルとしての吸引カテーテル
7 頚動脈穿刺
8 動脈瘤塞栓術における8Frバルーンガイドの有用性/ 大島共貴
1 はじめに
2 ガイド留置困難時の血流による誘導
3 コイル挿入時の血流コントロール目的
4 術中血栓性塞栓症に対する血栓回収のとき
5 逸脱コイルに対するレスキューステントまたはその回収が必要なとき
6 まとめ
9 後方循環脳動脈瘤塞栓術における両側椎骨動脈アプローチ(BVAA)の有用性/ 佐藤 徹
1 はじめに
2 BVAAの手技について
3 BVAAの安全性・有効性について
4 考察・結語
10 脳血管内治療に役立つ3Dプリンタの有効活用法とセットアップ/ 金子直樹
1 脳血管内治療における有効活用法
2 モデルの作製法
3 3Dプリンタ購入時の注意点
4 おわりに
11 光造形方式(SLA)3Dプリンタを利用したマイクロカテーテル先端シェイプ/ 坂本 誠,中島定男,宇野哲史
1 はじめに
2 材料と方法
3 3D中腔血管モデル作製とMC先端形成の実際
4 自験例のまとめとMCの評価
5 代表症例:65歳女性.偶然発見された未破裂前交通動脈瘤
6 まとめ
12 ヒートガンを用いたマイクロカテーテルシェイピングの至適設定/ 滝川知司
1 はじめに
2 方法
3 マイクロカテーテルのpreparation:ヘパリン生食のflash(外のみ・内腔のみ・両方)
4 マイクロカテーテルの安全性評価・表面変性の限界値
5 マイクロカテーテルシェイピングの至適曲げ角度・曝露温度・曝露時間
6 結果のまとめ
13 脳動脈瘤塞栓術のためのマイクロカテーテルとマイクロガイドワイヤー操作/ 石橋敏寛
1 はじめに
2 マイクロガイドワイヤーとマイクロカテーテルの準備,取り扱い─ヘパリン生食でフラッシュする
3 マイクロガイドワイヤーのシェイピング─先端を効かせる
4 マイクロガイドワイヤーとトルクデバイスの扱い
5 トルクデバイスの位置─トルクデバイスとマイクロカテーテルのハブの距離は短め
6 ガイドワイヤーの操作─ゆっくり回す
7 マイクロカテーテルの操作─押した分のたわみとタイムラグを感じる
8 動脈瘤のネック近くで抵抗がある場合─マイクロガイドワイヤーの出し入れでカテーテルが進む
9 おわりに
14 挿入困難な分枝確保のためのカテーテルセッテイング―大型動脈瘤に対してY,T stentを行うための
工夫/ 寺田友昭
1 はじめに
2 代表症例:63歳,脳ドックで発見された脳底動脈先端部最大径13mmの動脈瘤
15 ワーキングプロジェクションの考え方/ 東 登志夫・新居浩平
1 はじめに
2 基本のアングルを意識する
3 治療中それぞれのステップに至適なプロジェクションがある
4 治療中(たとえばコイル塞栓中)にプロジェクションを変更することがある
5 プライオリティとトレードオフ
16 硬膜動静脈瘻塞栓術の術前準備としての画像診断/ 泉 孝嗣
1 シャント形成部位の名称と位置同定の臨床的意義
2 MRAと3D-CTAの活用
3 3D-DSAを含めた脳血管撮影の活用
4 他のアクセスルートの評価法
17 安全なOnyx塞栓に必要なセットアップ/ 長谷川 仁
1 はじめに
2 Onyx塞栓に必要なセットアップ
3 Onyxの挙動を把握するための工夫
4 おわりに
18 How to setup the N-Butyl-Cyano Acrylate (NBCA) injection?/ 田中美千裕
1 はじめに
2 NBCA(Histoacryl)の薬理特性
3 適応
4 濃度調節
5 混合のセットアップ
6 注入のセットアップ
7 重合速度調整のためのセットアップ
8 適合カテーテル
9 NBCAによる塞栓後の変化と評価
10 まとめ
19 CASの周術期管理とセッティング/ 早川幹人
1 はじめに
2 アクセスルートの評価と選択
3 脳合併症(虚血性合併症・過灌流現象/症候群)のリスク評価とデバイス・手技選択
4 併存心疾患の検索と対応
5 腎機能障害等でヨード造影剤使用に制限がある場合の対応
6 術後管理
20 バルーン閉塞試験(BTO)のセッティング/ 山岡陽子,木谷尚哉,杉生憲志
1 はじめに
2 頚部ICAの閉塞試験
3 頚部CCAおよびICAの閉塞試験
4 頭蓋内血管の閉塞試験
5 まとめ
II 再開通療法―より広く,より早く,より確実に,D2Pを短くするためになすべきこと
A.画像診断,セットアップ
1 必要かつ十分な画像診断の選択と適応判断とは―時短優先vs安全優先/ 山上 宏
1 はじめに
2 発症6時間以内の重症例
3 発症または最終健常確認時刻から6時間以降の重症例
4 軽症例
2 短縮のための院内モダリティの活用とチーム作りへの努力/ 佐藤慎祐,新見康成
1 院内の複数の血管造影装置を有効利用した院内ワークフローの改変
2 可動式血管内治療デバイスカートの作成
3 新規上肢固定装具の作成
4 実際の時間短縮の改善結果とDynaCTを利用した診療ワークフロー
5 急性閉塞D2P短縮カンファレンス(シミュレーション教育)
6 院内脳卒中患者対応への取り組み(I-FASTポケットマニュアル作成)
3 画像診断とデバイス準備―敵を見極め,勝ちに行くコツ/ 堀江信貴
1 はじめに
2 敵(血栓)の本体を見極める―血栓の性状
3 血栓の性状からステントリトリーバー,吸引カテーテルの利点,欠点を理解する
4 敵(血栓)が攻めやすい所にいるかどうかを見極める―部位
5 敵(血栓)からどれだけ味方がやられているか見極める―組織評価
6 First pass TICI3を目指す意義
4 血栓回収療法における上腕動脈アプローチ,橈骨動脈アプローチへの切り替え/ 太田貴裕
1 はじめに
2 大腿動脈からのアプローチが困難な要因
3 大腿動脈アプローチからTBA or TRAへの切り替えの判断のタイミング
4 TBA
5 TRA
6 Gooseneck Snareの併用
7 まとめ
B.基本的手技,応用
1 Simple stent retriever/ 今村博敏,坂井信幸
1 ステントリトリーバー
2 Solitaire Platinum
3 Trevo XP ProVue
4 Tron FX
5 Embo TrapⅡ
6 ガイディングカテーテル
7 マイクロカテーテルとガイドワイヤー
8 実際の血栓回収
9 おわりに
2 ADAPT/ 太田剛史
1 はじめに
2 適応判断
3 機器選択
4 基本手技
5 トラブルシューティング
6 おわりに
3 急性期脳梗塞血栓回収術におけるステント・吸引併用療法のバリエーションとチップス/ 大島共貴
1 はじめに
2 CAPTIVE法(technique)
3 SAVE法(technique)
4 ARTS法(technique)
5 ASAP法(technique)
6 まとめ
C.機器,技術
1 REXAS technique/ 山上 宏
1 はじめに
2 手技の実際
3 REXAS techniqueの特徴
2 逆行性造影の応用/ 鶴田和太郎
1 逆行性造影の意義
2 逆行性造影法
3 新しいステントリトリーバーは何がよいのか:in vitroモデルにおける既存デバイスとの比較/ 金子直樹
1 はじめに
2 新規ステントリトリーバー
3 血栓回収療法における臨床研究とin vitro研究の関係
4 血管モデルを用いたin vitro研究の役割
5 おわりに
D.Tandem lesion/多発病変
1 複雑な背景を有する症例に対する機械的血栓回収療法/ 中村 元
1 はじめに
2 腹部大動脈瘤(AAA)を有する患者に対するMT
3 胸部大動脈瘤(TAA)のステントグラフト内挿術後患者に対するMT
4 補助人工心臓(VAD)装着患者に対するMT
5 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)患者に対するMT
6 担癌患者に対するMT
7 まとめ
2 AntegradeとRetrogradeの利点/ 石井 暁
1 タンデム閉塞とは
2 頚部病変にステント留置を行うべきか?
3 順行性アプローチ(antegrade approach)
4 逆行性アプローチ(retrograde approach)
5 順行性vs逆行性アプローチ
6 われわれの基本的戦略
7 症例提示
3 Tandem lesionの症例提示/ 木村尚人
1 Tandem lesionの特徴
2 おわりに
E.末梢病変
1 M2閉塞に対する治療適応と手技選択/ 早川幹人
1 はじめに
2 M2閉塞の自然歴とIV rt-PAの効果
3 血栓回収療法を考慮すべきM2閉塞の臨床像
4 M2閉塞に対する血栓回収療法の治療成績と治療手技
5 おわりに
2 閉塞血管灌流範囲に基づく治療戦略/ 榎本由貴子
1 はじめに
2 中大脳動脈の分枝variation
3 還流域と血管内治療の有効性
ページの先頭へ戻る
序文
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー(Brush-up Seminar of Neuroendovascular Therapy:BSNET)は,脳血管内治療技術と機器研究会が運営する脳血管内治療の最新情報の提供と教育を目的としたセミナーで,2010年にそれまで代表幹事(発足当時,坂井信幸,瓢子敏夫,宮地 茂)が運営してきた3つのセミナーをまとめて発足しました.2014年から仙台セミナーの合流を受けて瓢子敏夫先生に代わって江面正幸が加わって現体制になりました.
2019年は「セッティングのすべて」と「再開通療法―より広く,より早く,より確実に,D2Pを短くするためになすべきこと」をテーマとしてライブ供覧とレクチャーを展開し,セミナーで行われた講演がこの講演集に収められています.
エビデンスの確立により,爆発的な発展を遂げてきた急性再開通療法は,2018年になって適応判断が時間から画像へと大きく変化し,AHA/ASAおよびわが国の適正使用指針も書き換わりました.良好な結果を得るためには,短時間で有効な再開通を得る必要があることは言うまでもありません.ステントリトリーバーも吸引カテーテルも開発改良が続いています.本テーマでは,各機器のエキスパートにそのコツを解説していただき,適応と技術を学ぶことのできる臨床のノウハウを満載しました.
また「セッティングのすべて」では,20名のエキスパートが,脳血管内治療を成功に導くためのさまざまな工夫を紹介しています.
これから脳血管内治療に積極的に取り組もうとされる先生はもちろんのこと,すでに経験を積んだ先生方にも大いに参考になる企画になったと思います.このイヤーブックが脳血管内治療の発展に少しでも貢献できることを願っています.すべての関係各位に厚く御礼を申し上げます.
2020年6月
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー 代表幹事
江面正幸,坂井信幸,宮地 茂
同 運営幹事
松丸祐司,吉村紳一,石井 暁,今村博敏