日本夜尿症学会による5年ぶりの改訂版.本改訂版では,前版の内容のブラッシュアップを行うとともに,前版であまり触れられていなかった非単一症候性夜尿症のエビデンスとコンセンサスに基づく診療指針の提示,診療アルゴリズムの更新など大幅な改訂を行った.夜尿症患者のQOL向上を目指し,病態把握から治療までをわかりやすく記載.小児科医のみならず,内科医,泌尿器科医など,夜尿症診療に携わるすべての医師必携の1冊.
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目次
刊行にあたって
序文
作成組織
Introduction
CQ・推奨文・推奨グレード 一覧
夜尿症の診療アルゴリズム
略語等一覧
総 論
1.定義,原因,分類
総論1︱夜尿症の定義,原因,分類
2.疫学,予後
総論2︱夜尿症の頻度(有病率)と経過
3.診療
総論3︱夜尿症の初期診療
総論4︱単一症候性夜尿症の治療総論
総論5︱非単一症候性夜尿症の治療総論
総論6︱その他の治療総論
Clinical Question(CQ)
1.診療
CQ 1︱夜尿症の診療において積極的な治療は推奨されるか?
2.検査
CQ 2︱夜尿症の診療に検査は必要か?
2-1 夜尿症の診療において尿検査,血液検査は推奨されるか?
2-2 夜尿症の診療において腹部超音波検査は推奨されるか?
2-3 夜尿症の診療において腹部単純X線検査は推奨されるか?
2-4 夜尿症の診療において排尿時膀胱尿道造影法(VCUG)は推奨されるか?
2-5 夜尿症の診療において尿流測定は推奨されるか?
3.治療
CQ 3︱夜尿症の診療において生活指導は推奨されるか?
CQ 4︱夜尿症の診療において排尿指導,がまん訓練は推奨されるか?
4-1 夜尿症の診療において排尿指導は推奨されるか?
4-2 夜尿症の診療においてがまん訓練は推奨されるか?
CQ 5︱夜尿症の診療において便秘の精査・加療は推奨されるか?
4.薬物療法
CQ 6︱夜尿症の診療においてデスモプレシンは推奨されるか?
CQ 7︱夜尿症の診療において抗コリン薬は推奨されるか?
CQ 8︱夜尿症の診療において三環系抗うつ薬は推奨されるか?
5.アラーム療法
CQ 9︱夜尿症の診療においてアラーム療法は推奨されるか?
6.併用療法
CQ 10︱夜尿症の診療において早期からアラーム療法とデスモプレシンを併用することは推奨されるか?
7.併存症治療
CQ 11︱注意欠如・多動症(ADHD)を併存する夜尿症に対して,ADHDの治療は推奨されるか?
参 考
参考1︱宿泊行事への対応
参考2︱夜尿症患者の睡眠について
参考3︱発達障害のある尿失禁患者へのアプローチ
参考4︱夜尿症と扁桃肥大との関係
参考5︱男児夜尿症患者における後部尿道弁
索引
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序文
刊行にあたって
このたび,5年ぶりの改訂となる『夜尿症診療ガイドライン2021』が発刊されました.2004年には初版が,2016年には12年ぶりとなる改訂版が発刊されましたが,特に改訂版では初めて夜尿症(nocturnal enuresis)の診療アルゴリズムを掲載し,また,クリニカルクエスチョン形式を採用して第一線で診療している医師たちの疑問に答える形でわかりやすくまとめられました.多くの先生方に日々の診療の参考として活用され,高い評価を得られたものと確信しております.
今回の改訂においては,この5年間のエビデンスを追加するとともに,前回の改訂版ではあまり触れられていなかった非単一症候性夜尿症(non―monosymptomatic nocturnal enuresis)についても最近のエビデンスに基づいた診断,治療法を中心に記載しております.実際,夜尿症患者が昼間の症状を訴えることも稀ではなく,この非単一症候性夜尿症の診断と治療は夜尿症を診療する医師にとって必須のものであると考えられます.これに伴い,夜尿症の診療アルゴリズムも改訂され,より実臨床に役立つアルゴリズムとなったと思います.
夜尿症はわが国の小中学生の約6.4 %が罹患する有病率の高い疾患であり,患者や家族への精神的・社会的影響やQOL(生活の質)の低下をもたらします.ただ,他人に相談することを躊躇する場合も多く,医療機関を受診することをためらう場合もあります.診療には小児科医,内科医,泌尿器科医など多くの医師が関係しますが,これらの患者や家族にエビデンスに基づいた診療を提供し,少しでも早く笑顔で朝が迎えられるようにするために,本ガイドラインを役立てていただければ幸いです.
最後に,本ガイドライン作成に多大なご尽力をいただきました内藤泰行委員長をはじめ委員の皆様に心より感謝申し上げます.
2021年10月
日本夜尿症学会理事長
河内明宏
序 文
日本夜尿症学会において,河内明宏理事長の監修のもと,『夜尿症診療ガイドライン2021』の作成を約1年半の期間をかけて委員の先生方とともに行ってまいりました.2016年に刊行された『夜尿症診療ガイドライン2016』の改訂版となります.
わが国における夜尿症(nocturnal enuresis)の診療と研究の歴史は長く,本学会では2004年にガイドラインを作成しました.その後,国際小児禁制学会(International Children’s Continence Society:ICCS)や英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence:NICE)などから診断・治療に関する詳細なガイドラインの提示があるとともに,治療方法,特に薬物療法の飛躍的な進歩がみられたことにより,わが国の診療体系も整理の必要に迫られ,『夜尿症診療ガイドライン2016』が刊行されました.このガイドラインは,公益財団法人日本医療機能評価機構による『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』に基づいて作成され,国内外からの夜尿症診療のエビデンスを重要視し,おもに単一症候性夜尿症(monosymptomatic nocturnal enuresis)の診療指針がまとめられました.
今回の改訂では,『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』に基づき,前版の内容を見直してブラッシュアップするとともに,非単一症候性夜尿症(non—monosymptomatic nocturnal enuresis)の診療指針について取り組み,同時に診療アルゴリズムの大幅な改訂を行いました.また,新しい治療方法やその関連事項について,夜尿症診療に取り組まれているすべての方々に最新情報を届けられるよう工夫しました.さらに,関連学会で用いられている用語との整合性を図り,読者の先生方に理解しやすいよう努めました.
最後に,今回の改訂にあたって多くのアドバイスを賜った森實敏夫先生と,文献検索を担当された山口直比古先生,貴重なコメントをお寄せいただいた日本小児腎臓病学会,および日本小児泌尿器科学会の先生方に深謝いたします.
2021年10月
日本夜尿症学会
夜尿症診療ガイドライン作成委員会委員長
内藤泰行