重症心身障害児者や医療的ケア児者の診療や看護にあたるスタッフの基本的知識や具体的手技をまとめた実践的マニュアルが7年ぶりに改訂.最新の進歩や知見を取り入れ,内容が拡充されている.満載の図表・イラストだけでなく,補足解説としてのコラムを掲載し,さらに理解を深めることができるようになった.医師・看護師・リハビリテーションスタッフなど,重症児者にかかわるすべての方に役立てていただける一冊.
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目次
はじめに 編集者一同
執筆者一覧
第1章 重症心身障害・医療的ケア児者の基本知識,診察のポイント
A 重症心身障害・医療的ケア児者の概念と定義の歴史的変遷と現在の定義
B 合併障害の相互関連と,ライフサイクルにおける状態の変化
C 健康状態の把握と体調変化の判断・評価
D 診察,アセスメント
第2章 おもな障害に対する診療と看護ケア
A 呼吸障害の治療・看護
1 重症児者・医療的ケア児者の呼吸障害の病態・対応の基本
2 上気道狭窄
看護・ケアのポイント 筋緊張亢進による呼吸困難への対応
3 気管気管支軟化症・狭窄の病態と対応
コラム 自己膨張式バッグ(救急蘇生バッグ,アンビューバッグ,バッグバルブマスク等)
看護のポイント 気管軟化症
4 気管切開
①気管切開,誤嚥防止手術,合併症
②気管カニューレ選択と,定期交換・応急的挿入のポイント
コラム 歩ける気管切開児での注意点
③気管切開している重症児者・医療的ケア児者への看護ケア
5 気道分泌物についての理解,気道からの吸引のポイント
コラム 喉頭閉鎖術・声門閉鎖術について
6 誤嚥性肺炎・荷重性肺疾患,変形による肺の変化と対応方法
7 呼吸障害におけるポジショニング
8 重症児者への肺理学療法手技
9 パーカッションベンチレーター(IPV),カフアシスト,ハイフローセラピーなど
コラム 在宅でのハイフローセラピーの実際
10 人工呼吸器療法
①非侵襲的人工呼吸器療法(NPPV)
②気管切開人工呼吸器療法(TPPV)
③陽陰圧体外式人工呼吸器療法(BCV)
④在宅,学校,通所などでの人工呼吸器使用
B 消化器障害の治療・看護
1 胃食道逆流症・食道裂孔ヘルニア
①病態と内科的治療・姿勢管理
コラム 吃逆の原因と対応
②胃食道逆流症への外科的治療
2 重症児者における消化管通過障害・イレウス
3 便 秘
看護・ケアのポイント 日常生活支援からアプローチする排便コントロール
4 下 痢
5 膵 炎
コラム 非閉塞性腸管虚血(NOMI)
C 嚥下障害,経管栄養,栄養水分管理
1 重症児者の嚥下障害・誤嚥の特徴
2 重症児者への摂食介助のポイント
3 重症児者への適切な食形態
4 経管栄養・胃瘻
①経鼻経管栄養チューブの挿入,管理の注意点
②口腔ネラトン法(間欠的経口胃経管栄養法)
③経鼻空腸カテーテル・経胃瘻空腸カテーテルの挿入・管理法
コラム 経腸栄養分野での小口径コネクタ製品切替えに関する経過
④重症児者での胃瘻造設法と胃瘻管理のポイント
⑤重症児者の経管栄養注入の注意点
コラム 重症児者の経管栄養の注意点
看護のポイント 注入時の看護
⑥胃瘻のある重症児者の看護ケア
5 重症児者の栄養水分管理
D てんかん
1 重症児者におけるてんかん発作の把握・観察
2 重症児者における抗てんかん薬の選択と使用法,副作用などの注意点
3 重症児者のけいれん重積症の治療
E 筋緊張亢進
1 筋緊張亢進の原因と薬物治療(内服薬・坐薬による治療)
2 ボツリヌス毒素治療,バクロフェン髄注療法(ITB)
3 筋緊張亢進への姿勢管理における対応
F 生活リズム・行動の障害
1 重症児者の睡眠障害の原因と対策・薬物治療
2 興奮・自傷行動
3 異食(異物誤飲)
G 内分泌・代謝・循環器系の障害
1 代謝系の障害―Fanconi症候群,カルニチン代謝
2 重症児者の内分泌機能障害
3 下肢深部静脈血栓症
コラム 重症児者での下肢静脈超音波検査で特に注意することは?
H 婦人科系の障害
1 月経など女性ホルモン周期に関連した問題
2 その他の婦人科疾患
I 排尿障害・腎尿路疾患
1 尿閉・乏尿の原因と対処
2 尿路結石
3 腎疾患(囊胞腎,水腎症,腎機能への薬物の影響)
4 膀胱瘻・腎瘻
J 骨折・骨粗鬆症
1 重症児者の骨折
コラム カルシウムアルカリ症候群―活性型ビタミンD3製剤とマグネシウム製剤併用などによる,高カルシウム血症
2 骨折の原因としての骨粗鬆症,骨折予防のための薬物療法
K 皮膚・爪の障害
1 褥 瘡
2 ストーマ周囲皮膚障害
3 爪白癬
L 眼の問題
1 角膜乾燥・自傷による眼の障害
M 鼻・耳の問題
1 鼻のケア―鼻炎・副鼻腔炎・鼻ポリープなど
2 中耳炎など,耳のケア
N 歯の問題
1 う蝕・歯肉炎と,その予防のための診察と看護ケア
コラム 採血・静脈確保のための手浴の方法,手指基部・手関節近くの表在静脈
O 緩和ケア
1 悪性腫瘍の緩和ケア
2 その他の疾患・状態の緩和ケア
P 重症児者への漢方薬治療
第3章 看護ケアなどのポイント
A 重症児者の,看護・処置手技などの実際的ポイント(一般医療と違う留意点など)
1 状態悪化時の対応,救急・準救急的対応
2 採血・静脈確保など
B 生活におけるケア
1 更衣,体位変換,移乗のケア
2 排泄ケア
3 入浴ケア
4 誤嚥性肺炎予防のための口腔ケア
5 爪のケア
6 服薬ケア,坐薬1
C 重症児者とのコミュニケーション
D 成長・発達を促すケア
E リハビリテーション的ケア
F 重症児者の訪問看護
G 感染症対策・予防
H アドバンスケアプランニング
I 災害時の停電への対応(停電時の対応と備え)
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序文
はじめに
人生の早い時期から重度の運動機能障害と重度の知的障害を併せ持って生活している重症心身障害児者の方々(以下,本書では重症児者と略)への医療と看護ケアは,生命と生活を支えるための「支える医療・看護」という役割と特性を大きく持っています.重症児者への医療・看護は,一般の医療・看護での方法論をベースにしながら,重症児者での特徴や問題点をしっかりと認識しながら行われることが必要です.在宅で暮らす重症児者が増加してきているのに伴い,重症児者への適切な医療・看護は,専門的な療育医療施設だけでなく,一般の病院や診療所においても,また,在宅診療・訪問看護においても,その重要性が増してきています.学校や,保育所,通所など,教育と福祉・地域生活の場での重症児者への医療的支援と看護のニーズも増えてきています.
このようななかで,専門的な療育医療施設において重症児者の診療・看護にあたるスタッフの基本的かつ実践的な知識の習得と整理を目的とするとともに,一般病院,診療所,訪問診療・訪問看護等での,重症心身障害を専門としない医師・看護師による重症児者の診療と看護や,教育や地域生活の場での医療的支援と看護にも役立つことを願い,本書を編集しました.医師・看護師だけでなくリハビリテーションスタッフなど,重症児者にかかわるコメディカルスタッフにも参考にしていただけるよう,配慮しました.初版の『重症心身障害児・者 診療・看護ケア実践マニュアル』は,2015年1月に発行してから,多数の方々に活用いただいています.
その改訂版である本書は,重症心身障害には該当しないが医療的ケアを必要とする児者が増加してきているなかで,そのような児者への診療・看護の内容も含むことから,書名を『重症心身障害/医療的ケア児者 診療・看護実践マニュアル』と変更しています.初版発行の後の進歩や知見も取り入れるとともに,「コラム」として補足の解説を入れるなど,内容を拡充しています.
執筆は,医師,リハビリテーション療法士については,おもに日本重症心身障害学会の評議員・会員の方々にお願いいたしました.改訂版では,療育機関の現場を離れたための執筆辞退の例も含め,一部の執筆者を交代していただいています.看護関係の事項については,おもに日本重症心身障害福祉協会認定の重症心身障害看護師制度にかかわっている看護スタッフのネットワークを通して執筆をお願いし,全国の各地域で行われているこの制度関連の講習会のテキストとしても活用されることを念頭において,編集しています
ページ数の限度の関係もあり,記述が十分でない項目もかなりありますが,本書で引用紹介されている関連図書も参照しながら,本書を役立てていただければ幸いです.
2022年11月 編集者一同