小児IgA血管炎は皮膚症状・関節症状・消化器症状を三主徴とする小児に好発する血管炎である.小児期には頻度の少なくない疾患とされるが,全身性の疾患で合併症・併存症が多岐に及ぶため,治療には専門的な知識が要されることから、これまで国内には診療ガイドラインがなかった.この度学会を横断したガイドライン作成チームが結成され,国内で初の診療ガイドラインが上梓された.
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目次
発刊にあたって
はじめに
小児IgA血管炎診療ガイドライン2023 委員一覧
本ガイドラインの作成について
CQ・推奨一覧
◎小児IgA血管炎に対する治療の概略
◎小児紫斑病性腎炎に対する治療の概略
Ⅰ 総論
1.小児IgA血管炎の概念と病態
2.小児IgA血管炎の疫学と予後
3.小児IgA血管炎の診断
4.小児IgA血管炎の皮膚症状
5.小児IgA血管炎の皮膚病理組織像
6.小児IgA血管炎の関節症状
7.小児IgA血管炎の消化器症状
8.小児IgA血管炎のまれな合併症
9.小児IgA血管炎の治療総論
10.小児紫斑病性腎炎の概念と病態
11.小児紫斑病性腎炎の診断
12.小児紫斑病性腎炎の臨床分類,病理分類およびそれらと予後の相関
13.小児紫斑病性腎炎の治療総論
Ⅱ クリニカルクエスチョン(CQ)
CQ1 小児IgA血管炎患者に安静や運動制限は推奨されるか?
CQ2 小児IgA血管炎患者に止血薬,血管強化薬投与は推奨されるか?
CQ3 小児IgA血管炎患者の関節症状に消炎鎮痛薬やステロイド薬投与は推奨されるか?
CQ4 小児IgA血管炎患者の消化器症状にステロイド薬投与は推奨されるか?
CQ5 小児IgA血管炎患者の消化器症状に第XIII因子製剤投与は推奨されるか?
CQ6 小児IgA血管炎患者の消化器症状に抗潰瘍薬投与は推奨されるか?
CQ7 ステロイド薬に効果不十分な小児IgA血管炎重症/難治患者(腎炎を除く)に対する追加治療には,どのようなものがあるか?
CQ8 小児紫斑病性腎炎の発症予防にステロイド薬は推奨されるか?
CQ9 小児紫斑病性腎炎にレニン・アンジオテンシン系(RA系)阻害薬は推奨されるか?
CQ10 小児紫斑病性腎炎の重症例にステロイド薬および免疫抑制薬は推奨されるか?
CQ11 小児紫斑病性腎炎の重症例にステロイドパルス療法は推奨されるか?
CQ12 小児紫斑病性腎炎の重症例にパルスウロキナーゼ療法は推奨されるか?
CQ13 小児紫斑病性腎炎の重症例に血漿交換療法は推奨されるか?
CQ14 小児紫斑病性腎炎の重症例に口蓋扁桃摘出術およびステロイドパルス療法との併用は推奨されるか?
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索引
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序文
発刊にあたって
このたび「小児IgA血管炎診療ガイドライン2023」が発刊されました.本ガイドラインは,日本小児腎臓病学会が中心となり日本小児リウマチ学会,日本小児栄養消化器肝臓学会,日本小児皮膚科学会,日本皮膚病理組織学会からなるガイドライン統括委員会委員,システマティックレビューチーム,そして3名の外部委員というメンバーによって作成されました.日本小児腎臓病学会の使命の1つは「小児腎臓病医療の進歩・発展の推進」であり,そのような観点から診療ガイドラインの作成は重要で,学会活動の1つとして鋭意推進されているところであります.この診療ガイドラインもその目的に添い,有用な財産となることを確信いたします.学術委員会前委員長の金子一成先生の指導のもと,清水正樹先生の卓越したリーダーシップにより多くの人々が関わり完成を見るに至りました.
IgA血管炎はご存じのとおり小児に多く小児科医師であれば誰もが診療に携わる疾患でありますが,エビデンスという観点からは十分にあるとは言えないのが現状です.特に腎炎がその長期予後を規定するという特徴から,小児腎臓病を担当する医師の間では様々な議論が交わされることが日常茶飯事で,診療における一定の指針が示されることが待ち望まれており,本診療ガイドラインの意義は大きいと考えます.十分とは言えないながらも精密に文献を紐解き,指針を示された執筆者のご尽力に心より敬意を示したいと思います.
最後に,本ガイドラインの作成に携わられた全ての皆様に改めて感謝申し上げます.
本ガイドラインが診療に携わる多くの人々のお役に立つことを期待しております.
2023年6月
一般社団法人 日本小児腎臓病学会 理事長
中西浩一
はじめに
日本小児腎臓病学会(以下,本学会)は,「子どもの腎臓病の原因を解明し,より良い治療法を開発すること」,「子どもの腎臓病を早期発見し適切な対応をするための支援を行うこと」,そして「子どもの腎臓病の診療・教育・研究を担う小児科医を育成すること」をミッションとして掲げています.このうち「子どもの腎臓病を早期発見し適切な対応をするための支援を行う」ツールとして,ニーズの高い疾患や病態に関する診療ガイドラインを作成して参りました.そして2019年の本学会学術委員会において,「小児のIgA血管炎の診療にあたって,どのような重症度・合併症をきたしていても,エビデンスの高い良質の医療を行えるよう,推奨治療を示した診療ガイドラインを作成する」ことが満場一致で決まりました.
言うまでもなく,IgA血管炎は,小児期にはまれならずみられる頻度の高い疾患で,重症度や合併症・併存症に多様性があり,治療に苦慮することも少なくないため,多くの小児科医が診療ガイドラインの発刊を待望していました.しかし少なくともこれまで国内には診療ガイドラインは存在しませんでした.この理由としては,IgA血管炎が全身性疾患であり,合併症・併存症が多臓器に及び,その治療にあたっては専門的な知識が必要で,単独の学会では作成が困難であることがあげられます.そこで本診療ガイドライン作成にあたっては,本学会が中心となって学会横断的に作成チームを作ることにしました.具体的には,日本小児リウマチ学会,日本小児栄養消化器肝臓学会,日本小児皮膚科学会,日本皮膚病理組織学会に協力を呼びかけ,17名のガイドライン統括委員会委員,35名のシステマティックレビューチーム,そして3名の外部委員という大所帯で作成することにしました(詳細は,別項の「小児IgA血管炎診療ガイドライン2023 委員一覧」をご参照下さい).このような大所帯にも関わらず,「船頭多くして船山に登る」状況にならなかったのは,作成委員長である清水正樹先生,作成副委員長の野津寛大先生や亀井宏一先生の人格と人脈によるところが大です.改めて彼らの尽力に心から感謝したいと思います.
2021年7月にキックオフミーティングを開催してから約2年,作成チームの献身的な活動で,ようやく上梓の運びとなったこの「小児IgA血管炎診療ガイドライン2023」は,「エビデンスの高い良質の医療を行えるよう,推奨治療を示す」という所期の目的は達成できたものと自負しております.
本書が臨床の最前線で活躍されている小児科医はもちろんのこと,小児科医を目指す初期研修医や小児科専攻医の方々,さらにはサブスペシャルティ領域で活躍の先生の診療の一助になれば幸いです.本書を読まれてお気づきの点やご意見がございましたら,是非ともご一報いただきたく存じます.
最後に本書の編集・出版を担当して下さった(株)診断と治療社,森さとこ女史に心より御礼申し上げます.
2023年6月
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
学術委員会前委員長
小児IgA血管炎診療ガイドライン2023作成委員会 作成統括責任者
金子一成