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書籍詳細

授業・実習・国試に役立つ 言語聴覚士ドリルプラス

聴覚障害診断と治療社 | 書籍詳細:聴覚障害

熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科言語聴覚学専攻教授

大塚 裕一(おおつか ゆういち) 編集

熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科言語聴覚学専攻講師

兒玉 成博(こだま なりひろ) 著者

熊本駅前看護リハビリテーション学院言語聴覚療法学科専任教員

山本 麻代(やまもと まよ) 著者

初版 B5判 並製 96頁 2021年02月08日発行

ISBN9784787824950

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定価:2,090円(本体価格1,900円+税)
  

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言語聴覚士を目指す学生向けの問題集『言語聴覚士ドリルプラス』シリーズ9冊目.本ドリルは、音が聞こえない,あるいは聞こえにくくなっている状態である聴覚障害について,障害にかかわる解剖・生理から評価・訓練まで,国試で出題される範囲を中心に幅広くカバーした問題集になっています.主要用語は「読み解くためのKeyword」として解説! 実習や国試,そして臨床に出てからもずっと役立つ問題集です.

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目次

刊行にあたって     大塚裕一
聴覚障害の臨床を経験して     兒玉成博
聴覚障害学に触れて     山本麻代
編集者・著者紹介
本ドリルの使い方

第1章 聴覚障害リハビリテーションの歴史
1 16世紀以前~19世紀の歴史
2 19世紀~20世紀の歴史・日本の聴覚障害における歴史

第2章 聴覚障害の基礎
1 聴覚障害の定義
2 聴覚障害にかかわる解剖と生理
  ①耳の発生・外耳と中耳の解剖
  ②内耳の解剖
  ③聴覚伝導路・前庭神経の伝導路
  ④耳の生理・両耳聴覚作用
3 聴覚障害の症状
  ①難聴のタイプ
  ②急性外耳道炎ほか
  ③急性中耳炎・滲出性中耳炎
  ④慢性中耳炎ほか
  ⑤メニエール病ほか
  ⑥老人性難聴ほか
  ⑦聴神経腫瘍ほか
  ⑧遺伝性難聴・遺伝子診断
  ⑨胎生期性難聴ほか

第3章 聴覚障害の臨床
1 聴覚障害の評価
  ①純音聴力検査
  ②語音聴力検査
  ③ティンパノメトリー
  ④音響性耳小骨筋反射検査
  ⑤耳管機能検査
  ⑥耳音響放射
  ⑦内耳機能検査
  ⑧自記オージオメトリー
  ⑨聴性誘発反応
  ⑩新生児聴覚スクリーニング検査
  ⑪乳幼児の聴力検査
2 聴覚障害の訓練
  ①補聴器(概要と適応)
  ②補聴器の機能と調整
  ③補聴器装用評価・選択法
  ④人工内耳(概要と構造)
  ⑤人工内耳の適応と術前評価
  ⑥人工内耳の適合・調整・装用評価

第4章 聴覚障害の環境調整
1 聴覚ハビリテーション・聴覚補償
2 聴覚障害者のコミュニケーション

文   献
採点表
索   引

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序文

刊行にあたって
 現在わが国には,およそ70校の言語聴覚士の養成校が存在します。言語聴覚士法(1997年)の成立時にはその数は数校程度だったのですが,20年あまりで増加し,県によっては複数校存在しているという状況になっています。言語聴覚士の養成は,さかのぼれば1971年,日本初の言語聴覚士養成校である国立聴力言語障害センター附属聴能言語専門職員養成所での大卒1年課程の開設が記念すべきスタートになるかと思います。その後,開設された養成校の養成課程は,高卒3年課程や高卒4年課程の専門学校,大学での4年課程,大卒を対象とした2年課程などさまざまで,今後これらの課程に加え専門職大学での養成課程が加わろうとしています。
 言語聴覚士法が制定されてから,この約20年間での言語聴覚士にかかわる学問の進歩は著しく,教育現場で修得させなければならない知識・技術は増大する一方です。しかしながら入学してくる学生は,千差万別で従来の教育方法では十分な学習が困難となってきている状況もあります。
 今回,このような状況を改善する方策の1つとして,修得すべき基本知識を体系的に示したドリルを作成してみました。内容は,言語聴覚士の養成校で学ぶべき言語聴覚障害を専門領域ごとにまとめてシリーズ化し,領域ごとのドリルの目次は統一したものとし,目次を統一したことで領域ごとの横のつながりも意識しやすくなるようにしました。
 特徴としては
①すべての養成課程の学生を対象にしたドリルであること
②日々の専門領域講義の復習のみならず,実習,国家試験にも対応できる基本的な内容を網羅していること
③専門領域ごとにまとめたドリルであるが目次が統一されており,領域ごとの横のつながりが意識しやすいこと
などがあげられます。
 対象は学生ということを念頭においてシリーズ化したのですが,臨床現場で活躍されている言語聴覚士にも,基本的な知識の整理という意味で使用していただくことも可能かと考えています。
 最後に,この『ドリルプラス』シリーズが有効活用され言語聴覚士養成校の学生の学びの一助となることを期待します。

令和3年1月

大塚裕一



聴覚障害の臨床を経験して
 筆者は,2007年より聴覚障害に対する臨床に携わらせていただいている。おもに,聴覚評価として純音聴力検査,語音聴力検査,インピーダンスオージオメトリー,内耳機能検査,補聴器適合検査などを行ってきた。また,人工内耳のマッピングにもかかわらせていただき,本人または両親に対する術前指導から人工内耳のマッピング,装用評価などを行ってきた。
 大学生の頃,特に耳鼻咽喉科領域に興味をもっていた筆者は,聴覚障害や音声障害のことでわからないことがあれば大学教員の研究室へ出向き質問をしたり,著書・論文を検索してなるべく理解できるように心がけていた。しかし,耳鼻科領域,特に聴覚障害は,学べば学ぶほど新しい単語が出てきて,途方にくれていたのを今でも覚えている。
 仕事に就き,臨床をいざはじめると,教科書通りにいかないことが多く,大学生の頃よりもさらに勉強しながら患者さんと毎日向き合っていた。仕事に就いた当初,病院では,言語聴覚士は筆者1人であったため,周りの耳鼻科医の先生方にほぼ毎日のように質問させていただき,ご指導をいただいていた。さらには,県内の聴覚障害分野に長く携わっている言語聴覚士の先生方とも交流させていただき,小児聴覚障害のなかでも特に人工内耳装用児へのかかわり方についてご教示いただいた。
 現在は,教育の立場からどのようにすれば聴覚障害について学生の理解が深まり,そして興味をもってもらえるかを日々考えながら講義を行っている。特に1年次で講義を行う聴覚の解剖や生理,聴覚障害を生じる疾患については,白板にイラストを描きながら講義を行い,学生がなるべく聴覚分野に対して苦手意識をもたないように工夫しているつもりである。
 聴覚障害領域は,覚えることが多く,国家試験の出題数も多い。ぜひ,本書を国家試験勉強の材料として使用してもらいたい。そして,将来聴覚障害の臨床に取り組んでもらえる学生が1人でも多くいたら幸いである。

令和3年1月

兒玉成博




聴覚障害学に触れて
 筆者は言語聴覚士を志した当初から,聴覚障害に携わることを志望していました。しかし,言語聴覚士の養成校の講義は聴覚障害に関するものがたくさんあり,覚えることも膨大で,なかなか知識の整理がうまくいかずに心が折れそうになったことが何度もありました。自分にはむずかしい領域なのかもしれないと思ったこともありましたが,長期実習で聴覚障害児の評価・訓練をさせていただき,少しずつ座学と臨床が結びついていくと,まだまだ未熟で,気が遠くなるような数の知識が必要だと思ったと同時に,もっともっと聴覚を知りたい,頑張りたいとそこから聴覚にはまっていきました。人工内耳や補聴器を装用し,視覚と聴覚を最大限に活用し,コミュニケーション法を獲得していく子どもたちを見て,聴覚障害療育を専門的に学び,このような子どもたちを保護者とともに支えたいと決意しました。
 縁あって宮崎大学医学部附属病院耳鼻咽喉科に専属言語聴覚士として入職させていただき,気づけば約10年,全国学会や治験などに数多く参加させていただき,とても刺激的な毎日を送りました。臨床でも数多くの聴覚障害児者を担当し,座学と臨床が結びつく瞬間を何度も経験し,知識をつけていきました。人工内耳の「音入れ」の瞬間は何度立ち会っても感動で,保護者の涙はこれからのマッピングや訓練に向かう私の気持ちを奮い立たせてくれました。
 今回,恩師の一人である熊本保健科学大学の大塚裕一先生よりこの問題集のお話をいただいたとき,学生の皆さんに少しでも臨床に結びつく座学を,と思い作成させていただきました。「聴覚はむずかしいから,頭がよい人しか無理だ」というイメージをもっている学生が多いと思います。筆者もそうでした。本書では,国家試験に必要な知識を押さえることはもちろんですが,検査を覚えるうえでもそれがなぜ聴覚障害児者のために必要な知識なのか,膨大な聴覚の知識のなかでも特に言語聴覚士が知っておくべきことは何なのかを簡潔ですが抽出したつもりです。
 本書が,これから聴覚を極めたい方にも,また,聴覚に苦手意識をもち,何から手をつけたらいいのかわからない学生さんにも「言語聴覚士」と名乗るうえで必要な聴覚の知識を得る入口となれば幸いです。

令和3年1月

山本麻代